閑話 異世界
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「で、どうだったんだよ?ミオがいた世界ってのは」
「そうだな……全てが魔法のような世界だった」
ここは、魔導師団の執務室。
シャルルがカミーユへの用件を伝え終えると、カミーユは紅茶を入れ替えてミオの世界の話を始めた。
先日、シャルルはミオがいた世界に行って来た。
カミーユとヴィクシスの目の前で、ミオとシャルルが光りに包み込まれていたのはほんの数分。
その間に数日間もミオの世界に行っていたと言うのだから、カミーユとしてもとても気になるのだ。
「は?魔法はないってミオは言ってただろうが」
「魔法は存在しなかったよ。だが、目にするもの全てが魔法のようだった」
「全く想像が出来ん」
「説明するのも難しいが……最初に驚いたのは、ミオの家というか部屋?が11階だったということだ。とても高い場所だった」
「11階だと!?どんな家だよ!アイツ、毎日そんな高さまで階段上り下りしてたってことか?」
「そうじゃないんだ。四角い箱のようなものに乗ると、選んだ階まで行くことが出来るんだ。一番上は18階だったな、確か」
「18階!?想像もつかない高さだな。それに、何なんだ?その箱」
「木箱などをロープで吊るして持ち上げるだろう?原理としてはそんな感じだとミオが話していたよ。詳しい仕組みは説明が出来ないと言って、説明書きを見せてくれたが……私には何が書いてあるのか全く分からなかったよ」
エレベーターの詳しい構造や仕組みなどは、ミオには説明できなかったから、ネットで検索してパソコンの画面をシャルルに見せた。
当然のことながら、シャルルには理解できない言葉が多すぎて、ミオが話してくれた簡単な原理しか覚えていない。
「それから、家で買い物ができる」
「……ミオの家は店なのか?」
「違うよ。ミオがよく使っている便利道具……スマホと言ったか?あれや、パソコンというもっと性能の良い道具を使って、品物を選んで購入することが出来るんだ。確かあの時は、夜中に注文して……午後には品物が届けられていたな」
「……便利だな」
この世界では、ミオのスマホは写真や動画を撮るくらいしか使い道はないけれど、ミオがいた世界に行っていかに便利な道具なのかがわかったと、シャルルはカミーユに説明した。
「あぁ、そういえばこっちに来た頃は、便利道具を使って何か調べようとしてよく項垂れていたな」
「そうなるのもわかる気がしたよ」
移動手段が馬や馬車ではないことにも、カミーユはとても驚いた。
ミオがいた世界での移動手段については、シャルルは上手く説明することが出来なかったけれど、馬や馬車よりも便利に早く移動できるということは説明が出来た。
「電車という乗り物は、移動するのには多く使うようだが……便利ではあるけれど、とても混雑していて大変な乗り物だった」
「乗り物が混雑するということが理解できん」
「カミーユにも経験してもらいたいものだな。ミオはいつも押し潰されながら仕事に行っていたらしい」
「……それは、本当に便利な乗り物なのか?」
「色々な場所に行けるから、便利ではあるよ。それから、空を飛ぶ乗り物もあった」
「空を飛ぶ乗り物だと!?それも魔法ではないのか?」
「我々から見れば、あれは魔法と言えるのかもしれないな……そういえば、水竜に乗っているような疑似体験が出来る乗り物もあったな」
「とんでもない乗り物が想像できる」
シャルルが言っているのは、ジェットコースターのことだろう。
ミオが水竜に乗るとこんな感じだと説明していた。
あれは、シャルルには少しキツイ乗り物だったようで、自分には水竜を乗りこなすことは不可能だと、苦笑いしながらカミーユに説明した。
「偶然ではあったが、ミオの友人にも会った。とても元気のいい女性だったよ」
「そりゃあ、ミオも喜んだだろう」
「楽しそうだったよ。おそらく、ミオの一番の親友なのだろう……だがな、カミーユ」
「何だ?」
シャルルはとても悲しそうな顔をカミーユに向けた。
「もう、二度と友人に会うことが出来ないとしたら、どう思う?」
「そりゃあ、悲しいな」
「ミオは、もう会えなくなる友人と会って、どのような気持ちで話していたのだろうと考えると、とてもいたたまれない気持ちになるんだ」
「またそのうち、突然向こうの世界に戻ることもあるんじゃないか?」
「それはない」
「何故そう言い切れる?」
シャルルは少し考えると、ミオが話していたことをカミーユに伝えた。
「今回向こうの世界に戻ったのは、ミオにどちらの世界で生きていくかを選択させるためだったらしい」
「じゃあ、ミオの奴は……」
「そうだ。この世界で生きていくことを決めたんだ。よく、あんなに短い期間で決断出来たなと思うよ」
「まぁ、逆に長ければ長くなるほど、決断出来なくなるかもしれないしな」
「そういうものか」
少しの間、沈黙という静かな時間が2人を包み込んだ。
ミオは元の世界から戻って来た後もいつもと変わらない様子なのだから、2人がここまで神妙になる必要もないのだけれど。
「私は、ミオの世界に行った時にはミオがいたからそこまで不安ではなかったが、もしも1人だったらと考えると、とても不安で恐ろしくなるんだ」
「そりゃあ、誰だってそうだろうさ」
「ミオも、この世界に来た時にはとても大きな不安を抱えていたのだろうな」
「そうは見えなかったけどな」
「本当に凄い子だと思うよ。それに、ミオのいた世界はこの世界とは比べ物にならない程、便利なものがたくさんあった。よく、こんな不便な世界にやって来て、文句も言わずにやってるなと思う」
「いや、文句なら言ってるだろ?魔法で何とかしたりしてるが」
「そうだな」
2人は顔を見合わせながら笑った。
それにしても、ミオの適応能力には驚かされる……と、シャルルもカミーユも改めて感じたようで、ミオの話題は尽きず、笑いも絶えなかった。
「とにかく、ミオのために出来ることは何でもやっていきたいと思う」
「そうだな……ところで、お前はいつミオと結婚するんだ?」
「なっ!?何故急にそんな話になるんだ!?」
「いい加減捕まえとかないと、誰かに取られちまうぞ?」
「…………そんなことは分かっているよ」
珍しく頬を赤く染めながら視線を逸らすシャルルを見て、ニヤニヤしながらせかすカミーユだった。
異世界とは、どのようにつながっているものなのだろうか?
1つの世界とだけつながっているのか、それとも複数の世界とつながっているのか……この世界は謎に包まれているものである。
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