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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
第三章 数日間の帰郷
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59 元の世界と異世界と

のんびり更新中♪

短いですがここから第三章です。

 ペリグレット王国の王都・モンフォワールの雪も融け、ポカポカと暖かい日差しが降り注ぐようになって来た3月の半ば。

 それは突然起こった。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 ミオが、いつものように王宮で国王と一緒に朝食を食べ、庭園を散策しながら魔導師団の執務室へと向かっていると、騎士団の訓練場の前でシャルルと出会った。

 カミーユの所に行こうとしていたようで、一緒に執務室へと向かう。


「すっかり雪が融けちゃいましたね」

「そうだな」

「日差しが暖かくなってきて、とても嬉しいです」

「ふふ、ミオは寒がりだからな」

「シャルルさんは、今日も復興作業ですか?」

「私は今日は執務室で仕事だよ。ミオは草原の見回りだったか?」

「はい」


 2人で話しながら執務室のドアを開けると、そこにカミーユの姿はなく。

 とりあえず、紅茶を入れて2人で飲みながら待ってみたけれど……一向にカミーユが戻ってくる気配がない。


「何処に行ったんでしょうね?特に何も言ってなかったと思うんですけど」

「まぁ、私はこうして、朝からミオと2人でお茶ができて嬉しいけどな」


 ニッコリとシャルルに笑顔を向けられて、一気に顔が熱ってくるミオ。


「ふふ、真っ赤だよ」

「き、気のせいですよ!」


 くすくすと笑っているシャルル。

 そんなに可笑しいですか……


「それにしても……戻って来ませんね。訓練場にでも行ってるんでしょうか?」

「そうかもしれないな。行ってみようか」

「はい」


 騎士団が見回りに行くまでまだ時間があるため、ミオもシャルルと一緒に訓練場へと向かった。

 すると、カミーユがヴィクシスと一緒に何かの練習をしているところだった。

 ミオとシャルルは2人に歩み寄って行った。


「何してるんです?師団長」

「ん?2人揃ってどうした?」

「俺がカミーユに用事があったんだ」

「あぁ、すまんな。こいつの練習に付き合ってたんだよ」

「俺も箒に乗れた方がいいかなと思って、師団長に教えてもらってたっす!」

「そうなんだ。その箒って……まさか買ってきたものじゃ」

「あのな……同じ失敗はしないぞ、さすがに」

「師団長に教えてもらって、自分で作ったっすよ!」


 これで同じ失敗をしていたら、またアルバンに馬鹿呼ばわりされてしまう。

 箒に乗れたら便利だし、支援の幅も広がるだろう。

 それに……攻撃魔法も覚えてこっち側に来てくれたら凄く嬉しい気がする。


「とりあえず、師団長が見つかって良かったですね」

「あぁ、付き合わせてしまってすまなかったな、ミオ」

「いえいえ、私も時間がありましたし。それじゃあ、私は見回りに行って来ますね」

「気をつけて行って来るんだよ」

「はい」


 ミオが訓練場から立ち去ろうとした時、グラグラと地面が揺れ始めてミオは座り込んだ。

 そして、突然ミオの体が光り出す。

 これって……もしかして……


「……え?」

「「ミオ!?」」

「ミオさん!?どうしたんすか!?」


 3人がミオに向かって手を伸ばすのが見えた。

 そして……


「ミオ!」


 シャルルの声が聞こえて、ミオの手を誰かが掴んだ感覚を最後に、ミオの視界から3人の姿が消えた。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 ミオの体を浮遊感が包み込む。

 これって……ペリグレット王国に行った時と同じだ。

 ということは……しばらくすると、ミオの体を包み込んでいた浮遊感が消え、座り込んだ足の下に、ザラザラとした地面の硬さを感じた。


 ミオを包み込んでいた光が消えていく。

 いつの間にか閉じていた目をゆっくりと開けてみると……目の前には、見覚えのある風景が広がっていた。


 ……戻って来た。


 ミオが座り込んでいる場所は、あの日、自宅マンションへと向かって歩いていた道だった。

 何で今頃戻って来たんだろうか?

 ゆっくりと立ち上がってみると、あの日の服装に変わっていて、通勤バッグも持っていた。

 バッグから携帯を取り出して日付と時間を確認する。


「4月25日……やっぱ戻って来ちゃったんだ」


 この世界に戻りたいと思ったこともない。

 向こうの世界で、竜と王国を守って行こうと決めたのに……突然の終わりに、何だか胸の中にぽっかりと穴が開いてしまったような感覚に包み込まれた。


 とりあえず……家に帰ろう。

 ミオが歩き出そうとした時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえて来た。


「ミオ?」

「……え?」


 ミオが振り返って見ると、そこには地面に座り込んだシャルルの姿があった。


「シャルルさん!?」

「……ここは?」


 シャルルがゆっくりと立ち上がって辺りを見回した。

 何故、シャルルがここに?

 てゆーか、鎧は着てないのになんか目立つぞこの人!


「と、とりあえず私の家に行きますよ!」

「ミオの家?」


 ミオはシャルルの手を取って走り出した。

 ここからマンションまではそんなに遠くはない。

 深夜だし、大丈夫だとは思うけれど、全く人が通らないわけではない。

 どうか誰にも会いませんように!


 どうにか誰にも会わずにマンションまでやって来た。

 さすがにこの時間だし、エレベーターには誰も乗っていないだろう。


 入り口の自動ドアを開けてエレベーターに駆け乗る。

 シャルルは見るものすべてが初めて目にするもので、常に驚いた表情をしていた。

 まぁ、当たり前だ。


「ミオ……ここがミオの家なのか?」

「家と言えばそうなんですけど……ここはまだ共有エリアです。あ、降りますよ」

「降りる?」


 エレベーターのドアが開き、ミオはシャルルの手を取ってエレベーターから降りた。

 廊下を進んで行き、自宅のドアの鍵を開けて中に入る。

 廊下から見える中庭を見て、ここの高さにシャルルがとても驚いていた。


「ふぅ……ここが私の家というか、部屋です。あ、靴はここで脱いで上がってくださいね」

「靴を脱ぐのか?」

「はい」


 ミオが玄関で電気をつけると、靴を脱いで上がって見せた。

 シャルルは驚きながらミオを見て、はいていたブーツを脱いだ。

 廊下を進んで行き、部屋の電気をつけると、その明るさにまたシャルルが驚く。


「ここは……随分と明るい場所だな」

「こっちでは、夜でも明るく出来るんですよ。適当に座っててください、今お茶入れるので」


 ミオはキッチンでお湯を沸かすと、マグカップを2つ出してティーバッグを入れた。

 少ししてお湯が沸き、マグカップにお湯を注ぐ。


「王宮みたいに美味しい紅茶ではないですけど……どうぞ」

「すまない」


 ミオは、ソファーに座っているシャルルの隣に座った。

 どう説明すればいいんだ?


「えーと……ここが、私がいた世界です」

「だろうな。見たこともないものばかりある」

「そして、今日は、私がペリグレット王国に行った日です。なんか、同じ日に戻って来ちゃったみたいですね」

「そうなのか?」

「なので、今は深夜で、朝になったら私は仕事に行かないといけません」

「仕事?」

「はい」


 あの日に戻ったということは、今日も明日も平日だ。

 普通に仕事がある。

 明日は……午後から有休を貰うことにしよう。

 それと、明後日から数日間も。


「ご飯食べます?」

「さっき朝食を食べたばかりだな」

「ですよね……寝ます?」

「それも、さっき起きたばかりだ」

「ですよね」


 とりあえず、ミオは部屋着に着替えるため自分の部屋に行き、荷物を置いてリビングに戻った。


「すみません……母と2人暮らしだったから、シャルルさんが着れそうな服がなくて」

「私はこのままで構わないよ」


 ミオはテーブルにパソコンを乗せて開いた。

 シャルルの服を買いに行きたいけれど……とりあえず出かけるには1着購入しないと部屋から出られない。

 このままでも良いのだけれど……凄く目立ちそうなのだ。


「今の格好だと、たぶん凄く目立っちゃうので……とりあえず1着買って、届いたら買い物に出かけましょうか」

「わかった……それで、それは?」

「パソコンです。えーと……この便利グッズの、もっと性能がいいものって感じの道具です」


 ミオが携帯を見せながら説明する。

 こうして、すぐに届きそうなサイトでシャルルの服を注文し、サイトを閉じる。


「凄いな。私にはミオが何をしているのか、全くわからないよ」

「向こうの世界には、パソコンはないですからね」


 ミオは携帯も操作して見せた。


「これも、写真を撮るだけじゃなくて、こんなふうに調べたり、地図を見たり、凄く便利に使えるんですよ」

「本当だな。それにしても……ミオの世界の地図は、とても複雑なのだな」

「道がたくさんありますから」


 とりあえず、思いつくこの世界のことや、シャルルがこの部屋で過ごすのに必要そうなことを説明したりしていると、あっという間に夜が明けた。

 ミオは会社に行く準備をして、シャルルに昼過ぎまでは帰ってくることを伝えて家を出た。

 眠くなった場合はミオの部屋のベッドを使うよう言って来たけれど……変なニオイとかしないわよね?


 気になることはたくさんあるけれど、とにかく昼までに仕事を終わらせられるよう頑張らないとだ。

 ミオが帰るまで、何もトラブルが起きていませんように!






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「ただいま……シャルルさん?」


 ミオが帰って来てリビングに入ると、シャルルがソファーで眠っていた。

 起こさないように自分の部屋に行き、着替えて出てくる。

 あまり音を立てないように、キッチンで紅茶を入れる準備をしていると、インターホンが鳴った。

 起こしてしまうじゃん!

 ミオは慌ててインターホンに出た。

 どうやら、シャルルの服が届いたらしい。

 早かったな。


「……ミオ?」

「すみません、起こしちゃいましたね……」

「いや、大丈夫だよ」

「荷物受け取って来るので、ちょっと待っててくださいね」

「荷物?」


 シャルルがソファーで起き上がると、不思議そうな顔で見ていた。

 ミオは玄関のドアを開けて荷物を受け取ると、リビングに戻って箱を開けた。


「夜中に注文した、シャルルさんの服ですよ。これで、お買い物に出かけられます」

「店にも行っていないのに……服が届くのか」

「一度着てみてくださいね。不具合があったら交換してもらうので」

「わかった」

「こ、ここじゃなくて!私の部屋で!」


 ミオの前で服を脱ごうとしたシャルルを、慌ててミオの部屋に押し込む。


「別に、ミオになら見られても大丈夫だよ?」

「私が恥ずかしいですよ!」

「ふふ、ミオは恥ずかしがり屋だな」


 そうじゃなくて!

 まったく、このイケメンは!


「どうです?」

「……これで、合っているのか?」

「大丈夫です。良かった、サイズもちょうどいい感じですね。じゃあ、タグ外すんでちょっとここに座ってください」


 シャルルをソファーに座らせて、ミオはタグを外した。


「シャルルさん、お昼食べてないですよね?」

「あぁ、眠ってしまったからな」

「私もまだなので、このままお出かけしましょうか」

「そうだな」


 準備をして玄関まで行ったところで、新たな問題が発生した。

 そうだ、シャルルが履いていたのはブーツだった……母親のクロックスなら履けるかな?

 少し小さそうだったけれど、靴屋まで我慢してもらうことにして、2人で外に出た。



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お読みいただきありがとうございました!

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