閑話 あったかローブとドロボー
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モンフォワールへと向かって歩いているミオ。
いい加減、箒で行くことを許可してもらいたいけれど……そもそも、何故箒で行ってはいけないんだ?
ミオが魔導師なことは知られていることなんだし、箒で行っても問題ないのでは?
何とも腑に落ちないミオだったけれど、こっそり箒で行くと怒られるし、仕方がないので徒歩で向かう。
今日のミオの目的は、よく服を買いに行く仕立て屋さんだ。
大きなカバンを肩から下げて、ポカポカと柔らかい日差しが降り注ぐ道を歩く。
道端には小さな花がいくつも咲いていて、この世界での春の訪れを感じていた。
ペリグレット王国での学校などの始まりは10月だけれど、元の世界での感覚がまだ抜けないので、ミオ的にはこうして春の訪れを感じると、新年度が始まるなという気分になる。
まぁ、季節を感じながら歩くというのも、たまにはいいかもしれない。
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「ミオ様、いつもご贔屓にしていただき、ありがとうございます」
「こちらこそ、いつもありがとうございます」
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
ミオが今日仕立て屋にやって来たのは、魔導師団のローブについての相談をするためだ。
魔導師団のローブは、魔法が施された特殊なものだと思っていたけれど、ただ単に王国魔導師団の制服のようなものだったということがわかり、ローブを作っているこの仕立て屋を訪れた。
相談というのは、冬場に羽織る暖かいローブについての相談だ。
ちょうど、元の世界に戻った時に冬の上着を持って帰ってきたので、説明しやすいように今日はそれを持参してきたのだ。
さすがに、冬場に今着ているローブでは寒すぎる!
ミオは、持参した上着をテーブルの上に並べる。
「えーとですね、このローブだと冬場凄く寒いんですよ。なので、少し改良していただけないかなと思いまして」
「なるほど。そのようなご用件でしたか。それで……こちらは?」
店主が、ミオが並べた上着に手を差し出しながら戸惑ったような顔を向けて来た。
「これは、私が着ていた冬場の上着です。例えば、こんなふうに内側にあったかい素材をつけられないかなと思って、見本に持って来ました」
「そうでしたか。拝見させていただきますね」
「それか、このような素材だと暖かいのですが、こちらにも似たような素材があるかなと思いまして」
「……本当ですね。これでしたら暖かそうです」
店主は、ミオが持って来た上着を触ったりしながら少し考えると、奥からいくつかの布を持って来た。
似たような素材のものを持って来てくれたらしい。
「内側にモコモコした素材をつけるとなると、ミオ様の上着のようなものは難しいかと思います。かなり分厚くなってしまうので」
「……本当ですね」
裏起毛の上着と似たような素材の布に、今のローブの布を重ねてみると、かなりの厚みが出てしまうようで動きにくくなってしまいそうだった。
「こちらでしたら、似たような感じで仕立てられるかと思います」
メルトン素材のポンチョ風コートの隣に、似たような素材の布を並べながら店主がミオに笑顔を向けた。
これなら暖かそうだし動きやすそうだ。
ミオが今着ているローブは、母親が使っていたローブなのでミオには少しサイズが大きかったため、店主が改めて採寸してくれた。
ミオが持って来たポンチョ風コートの形も見ながら、より動きやすそうなローブに仕立て上げてくれるらしい。
「てゆーか、形とか変えても大丈夫なんです?」
「問題ございませんよ。この魔導師団の紋章が入っていれば、多少の形の変更は許可されておりますので」
「ふぅん、そうなんですね」
「長さはこれくらいでよろしかったですか?」
「はい、大丈夫です」
採寸した数字をメモに書き込んでいく店主。
これで、次の冬は着ぶくれせずに済みそうで、出来上がりが楽しみだ。
1週間ほどで出来上がるらしく、王宮まで持って来てくれると言ってくれたのだけれど、それは申し訳ないので、1週間後以降の休みの日に受け取りに来ることを伝えて、ミオは仕立て屋を後にした。
「せっかく来たんだし、少しブラブラして行こうかな」
他に用事はなかったけれど、ミオは街をブラブラして帰ることにした。
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「わぁー、まるでヨーロッパ!」
ミオが思うがままに路地を抜けて出て来ると、カフェや果物屋、野菜屋などの商店が並んでいる小さな商店街のような場所だった。
どうやってここまで来たのかはわからないけれど……きっと何とかなるだろう。
カフェでミルクティーを買って、店の前の路地に並んだカフェテーブルに座る。
「1人旅にでも来たみたいだな」
小説でも持ってくれば良かったと思ってしまう。
優雅にミルクティーを飲みながら、ヨーロッパ旅行な気分にひたっていると、突然大きな声が聞こえてきて一気に現実世界へと引き戻された。
「ドロボー!!誰か捕まえてくれー!!」
両手でたくさんの果物?を抱えながら、ミオの方に向かって走って来るドロボーの男性。
後ろから、長い棒を持ちながら店主らしいおじさんが追いかけて来るのが見えた。
え、マジですか!?
魔法を使おうか悩んだミオだったけれど、ドロボーとは言えごくごく普通の人に使ってもいいものかと悩み、近くの壁に立てかけてあったデッキブラシを手に取った。
そして、走って来たドロボーに向かって走って行き、横側に立つとデッキブラシを振り上げて、ドロボーの足のすね辺りを狙って思い切り振り払った。
デッキブラシは見事にすねに命中し、ドロボーは勢いよく転倒してすねの痛みに悶え苦しんだ。
追いかけて来た店主と、周囲にいた男性でドロボーを取り押さえたけれど……往生際の悪いドロボーだったようで、隙を見て足を引きずりながら逃げ出した。
魔法を使うのはためらっていたミオだったけれど、さすがにここは使ってもいいだろうと思い、ドロボーに向けて両手を翳す。
「スノーフロスト!」
ドロボーの足元だけを凍らせるように調整してスノーフロストを放ち、ようやくドロボーの逃走は阻止された。
店主と男性達によってロープで縛られるドロボー。
そこに、誰かが呼びに行った騎士が駆け寄って来た。
「あれ、ミオ様じゃないですか」
「え?」
何と、街にも第一騎士団の騎士が、治安維持のために派遣されていた。
1年近くここで過ごしてきて、今初めて知ったというのは……少し恥ずかしい気がする。
ミオがドロボーの足元を凍らせていた氷を解除すると、ドロボーは騎士に連行されて行った。
「よぉ、ありがとうな嬢ちゃん。まさか魔導師さんだったとは驚いたよ。大したもんじゃないが、これを持って帰ってくれ」
「え、いいんですか?ありがとうございます!」
ドロボーを捕まえたお礼として、果物屋の店主がいちごをたくさん持って来てくれた。
ミオはありがたくもらって帰ることにする。
スージーさんにお願いして、今日の夕食に出してもらおう。
ミオが果物屋の店主にお礼を言って、飲みかけのミルクティーを置いたままのカフェテーブルに戻ると、何と新しいミルクティーと交換してくれた。
この街の人は何て優しい人達なんだろう。
ありがたく温かいミルクティーを頂いて、ミオは王宮へと戻ることにした。
そんなミオの姿をジーッと見ていた3人の少年達。
「オイ、あれを見たか?」
「見たぜ!凄かったな、魔導師だってよ!」
「魔法を使わなくても強かったしな!小さいけどアイツは凄い魔導師だ!」
「アイツに、魔法と戦い方教えてもらおうぜ!魔導剣士になれるかもしれないぞ!」
「そうだな!」
「さんせー!」
それからというもの、ミオがモンフォワールの街を訪れるたびに、この3人組の少年に見つかると絡まれることになった。
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お読みいただきありがとうございました!
次回から第三章の予定です。とても短い物語になります。




