57 長かった夜明け
のんびり更新中♪
ブックマークしていただき、本当にありがとうございます!
ルシヨット魔導国がペリグレット王国に攻め入り、激しい攻防戦が繰り広げられた。
日が暮れて、ガストビの提案によって戦いは一時休戦となり、いつ再開されるかわからない緊張感に包み込まれながらも、皆束の間の休息を取っていた。
「ミオ?」
焚火を囲みながら食事を摂って休んでいると、ラウルの隣でミオがうとうととし始めたのにシャルルが気がついた。
ラウルの肩に寄りかかるミオ。
「ラウル、すまないがミオを運んでもらえるか?」
「え、俺が運んでもいいの?俺は別に構わないけど」
「起こさないように運んであげてくれ」
ラウルはミオを抱き上げると、テントまで運んだ。
ジーッとミオの寝顔を見ながら、ミオの頬に手を当てて顔を寄せるラウル。
「ここまで無防備だと、何にも出来ないよね逆に……ズルいなぁ」
ガッカリしたような顔でテントから出て来たラウルは、テントを振り返るとため息をつきながら皆がいる焚火の所に戻って行った。
一方、ルシヨット魔導国側では、数が減った召喚魔導師達が集まって、魔法陣を囲みながら何かを呟き続けている。
その様子を見ていた1人の魔導師が、ガストビに報告に向かった。
「陛下、間もなく召喚できそうです。召喚でき次第攻撃を開始しますか?」
「まぁ、待て。今日は休戦すると約束したからな」
「では、夜明けまで待ちますか?」
「いや、日が変わったら攻撃を開始する」
ガストビが不敵な笑みを浮かべながら、そう魔導師に告げた。
―――――――
―――――
―――
「ミオ……そろそろ起きて」
日付が変わる少し前、シャルルはミオを起こしに行った。
ミオがガストビのことを胡散臭いと言ったけれど、それはミオだけではなく誰もが思っていたことであり、日が変わると同時に攻撃をして来るだろうという意見でまとまった。
そのため、日が変わる前に準備を整えられるよう、シャルルがミオを起こしに行ったのだ。
「……ん……シャルルさん?」
「そろそろ、準備を整えておいた方がいい」
「すみません……寝ちゃいました」
ミオが目をこすりながら起き上がると、シャルルが中に入って来てミオの隣に座った。
そして、優しくミオの肩を抱き寄せた。
え、何ですかこれ……
「もう少し寝かせておいてあげたいのだが……すまない」
「いえいえ、大丈夫ですよ!ぐっすり寝れたんで、しっかりと目が覚めました!」
「そうか、それなら良かった」
この状況に、ぼんやりとしていた頭が一気にクリアになった。
イケメンのこのおかしな距離感には、睡魔すらも撃退されるらしい。
ミオは、ライトニングでテントの中を照らすと、カバンからブラシを取り出して髪の毛をとかし、いつものようにサイドにゆるくまとめてシュシュで結んで準備を整えた。
「準備オッケーです!いつでも戦えますよ!」
「ふふ、それは頼もしいな」
箒を持って、シャルルと一緒に皆が集まっている門の前に向かった。
てゆーか、がっつり眠っていたのってミオだけだったのだろうか?
門の前には既に大勢の騎士達が集まっていた。
この場所での待機では、戦いが始まってもすぐに対応出来ないため、開戦時と同じようにアイスブロックの前に結界を張ってこちら側が見えないようにして、全員で配置につくことにした。
これからまた、緊迫した空気に包まれながらの待機となる。
こうして、日付が変わった時……
「団長!巨大な何かが現れました!」
アイスブロックの上から騎士が叫んだ。
巨大な何かって……何だ?
ミオが携帯を取り出して写真を撮る。
暗くてわかりにくいけれど、拡大して見るといくつもの頭がある巨大な蛇のようだった。
「何だろう……大蛇?」
「え、何その道具」
「便利道具」
「ホントにミオちゃんって何者?」
「ただの魔導師だよ」
「まぁ、いいけどさ。ちょっと見せてよ……暗くてよくわかんないけど……ヒドラかも?」
「何だと!?そんなものも呼び出せるのか!?」
「あの魔導師の数じゃあ、大変だったと思うよ?」
ヒドラ?
聞いたことがあるような、ないような……
「ヤバい魔物なんですか?」
「ヤバいなんてもんじゃない!アレは……毒を撒き散らす」
「毒!?めちゃくちゃヤバいじゃないですか!」
「火炎武器と火属性武器を用意しろ!」
シャルルの指示で騎士達が一斉に動き出した。
火属性?
「もしかして……火属性で攻撃な感じですか?」
「そうだな。アイツには火属性以外効かない」
「えー……私、火属性魔法はまだ使えないですよ…」
「状態異常解除が必要になるから、そっちを頼む」
「わかりました」
第一騎士団が用意した火属性武器や火炎武器は、全員には行きわたらない。
そのため、通常武器しか持たない騎士は、門の向こう側での待機となった。
「普通の武器じゃダメなんです?」
「普通の武器だとすぐに数を増やして再生してしまう。火属性の武器だと再生速度が遅くなり、斬ったところを火で焼けば再生出来なくなるんだ」
「そうなんですね」
「毒の息を吐き出すから、吸い込まないように注意するんだよ」
「わかりました」
ルシヨット魔導国め、とんでもない魔物を召喚してくれたよ、本当に。
こうして、準備を整えて結界が解除され、再び戦いが始まった。
敵魔導師が召喚したヒドラは、複数ある頭を揺らしながら、ペリグレット王国側にゆっくりと近づいて来る。
頭の数は……9本?ちょっと多くないですか?
雪の白さで若干見やすくはなっているけれど、月明かりもない中では敵も味方も良く見えない。
しかも、雪が降ってきて視界も悪くなってきた。
ミオが両手を翳してヒドラに向かってライトニングを放ち、ヒドラの姿が照らし出された。
騎士達が一斉に走り出し、火属性魔法が得意なカミーユとリシャールが空から攻撃を開始した。
ディナールとコルトも火属性魔法が使えるので、カミーユ達とともに攻撃をする。
ミオはカミーユ達に魔力強化魔法をかけ、騎士達には攻撃力強化魔法をかけた。
防御力強化は……効果があるのかはわからないけれど、一応使っておく。
遠くてよくわからなかったけれど、騎士団が斬りかかったのを見ていると、ヒドラの大きさは半端なかった。
そのうちにヒドラが9本の頭を大きく揺らした。
え、何かするの?
ヒドラは、9本の頭を揺らしながら口を大きく開けて息を吐き出した。
毒の息だ。
「皆さん伏せてください!ウインドストーム!」
ミオが咄嗟に放った暴風によって、ヒドラが吐き出した毒が吹き飛ばされた。
でも、すべての毒が吹き飛ばされたわけではないので、少しずつ毒を吸ってしまう。
息を止めながら攻撃するのは無理な話だ。
ガスマスクとかはないんですか?
敵魔導師達は鼻まで布のようなもので覆って、毒を吸い込まないようにしている。
ヒドラは、毒の息を吐き出すだけではなく、体からも毒を噴出するらしい。
ミオがウインドストームで毒を吹き飛ばしているけれど、辺りはだんだん毒で満たされてきてしまった。
1人2人と倒れていく。
ミオ、ラウル、アルバン、レオポールの4人で、毒を吸い込んで倒れた人達の治療を行った。
「解毒ポーション、あるだけ持って来たっす!」
「ありがとう」
「今、パトリックさんが薬草を持って来てくれたんで、急いで解毒ポーションを作ってるっすよ!」
「本当に?ありがとう、とても助かるよ」
ミオ達の懸命な治療にも関わらず、毒で倒れる人の数が多すぎて戦える人数が激減していった。
毒が充満した中での戦いでは、ペリグレット王国側に勝算は見えてこない。
ミオのウインドストームでは吹き飛ばせないほどに毒が充満してしまっている。
「団長!」
「え……シャルルさん?」
遂には、シャルルも毒に倒れてしまった。
騎士に抱えられながら運ばれて来たシャルルに、状態異常解除と回復魔法を使って治療を行う。
意識を取り戻したシャルルだったけれど、かなりの毒を吸い込んでいるようで顔色が悪い。
「ポーションも飲んでくださいね」
「……すまない」
毒は空気よりも重いらしく、地面に近い方が毒が濃くなっている。
カミーユ達は上空を飛んでいるため、そこまで毒の影響は受けていなさそうで、それだけでも良かったと思えた。
でも、下で戦う騎士達の状況は最悪だ。
このままでは、全滅してしまう……
ミオが、なす術がなくヒドラを見つめていると、突然強風が吹いて毒を吹き飛ばした。
一体、何が起こったんだ?
風が止むと、ミオ達の上空に巨大な何かが現れた。
―――随分とやられてるじゃねぇか、ミオ
え、この声は……
「炎竜さん!?」
「炎竜……だと?」
驚いて上空を見上げるミオとシャルル。
他の騎士や魔導師達も、上空に現れた竜に目を見開いていた。
―――ミオー、僕も来たよー!
水竜さんも?……わっ!?
水竜がミオを加えて空に放り投げた。
久しぶりだな、これ……などと思いながら、ミオは水竜の頭の上に着地する。
さっきの強風はもしかして……空を見上げると、めちゃくちゃ離れたところに風竜の姿があった。
―――何で俺達のことを呼ばねぇんだよ
だって、そんなインターホン押しに行く余裕なんてありませんから!
てゆーか、皆さん狙われてるんですよ?出てきたら危険ですから!
―――俺達は王国を守るためにいるんだろうが。それに、俺達のことはミオが守るんだろ?
ま、まぁ……そうですね
―――あの蛇倒せばいいのか?
はい。火属性でしか倒せないみたいなので……炎竜さんに倒してもらえるととても助かります
炎竜がヒドラに向かって飛んで行き対峙すると、「随分とでけぇな」とぼやいていた。
確かに、炎竜よりもヒドラの方が大きかった。
でも、さすがは炎竜だ。
大きさなんか関係なく強い。
ヒドラと戦う炎竜を見て、ガストビは興奮しながら立ち上がった。
「やはり、この王国に竜がいるというのは本当だったか!いいぞ、これで私は永遠の命と魔力を手に入れられる!おいっ!今すぐあの竜を操る準備をしろ!」
「は、はい!」
ガストビの指示で魔導師達が動こうとした時、真っ白な竜が彼らの前に現れた。
氷竜だ。
大きく息を吸い込んだ氷竜は、ガストビ達に向かって息を吐き出した。
氷竜が吐き出した息は、全てを凍らせる息。
ルシヨット魔導国の陣営側は、人も物も全てが氷漬けにされた。
―――凄いなぁ、氷竜も炎竜も!
水竜さんは?
―――僕?僕は皆の応援!
……応援って
水竜はミオを乗せて上空を飛び回った。
ヒドラは炎竜によって倒され、ルシヨット魔導国の陣営は氷竜によって全滅させられた。
こうして、東の空がだんだん白んできて、長かった夜が明けた。
―――――――
―――――
―――
「この人達、どうします?」
「この人数を運ぶのは骨が折れそうだ」
「この氷は……融けるのか?」
「たぶん、すぐには融けないと思いますよ?氷竜の氷ですし」
「だったら、しばらくはこのままにしておくか」
「そうだな」
ルシヨット魔導国との戦いが終わり、休息を取りながら毒に侵された人達の回復を待って、片付けをしながら王宮へと荷物を運んでいる。
明日中には全ての荷物を運び終えるだろう。
ガストビやルシヨット魔導国の魔導師達は……人数も人数なので、少しこのまま放置させてもらう。
ルシヨット魔導国の船は、ラウルがリヴァイアサンを使って港に戻し、終始ミオが羨ましそうにずっと見ていた。
こうして、ペリグレット王国の危機は去った。
もう二度と、このような危機に晒されないことを祈る。
.
お読みいただきありがとうございました!




