55 戦いの始まり
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2月1日―――
1隻の巨大な船が、オルレーヌの港に着港した。
しばらくすると、船から数人の魔導師が降りて来て、港町の様子を探った。
「何だ?この港町は……随分と静かだな」
「誰もいないのか?」
「おいっ!あれを見ろ!」
1人が何かを指差した。
他の者達がその指の先に目を向けると……そこには巨大サンドワームが姿を現していた。
よく見ると、巨大サンドワームは1体だけではなく、何体も出現していて町を破壊しているようだった。
「巨大サンドワームの出現で、港町は崩壊したってことか」
「とりあえず、報告を入れる」
1人がクリスタルを取り出して、船の中で待機している人物に報告を入れた。
しばらくすると、船からぞろぞろと人が降りて来た。
そして、大勢の人の後ろから姿を現したのは……ルシヨット魔導国国王・ガストビだった。
「随分と派手にやられたようだな、この王国は。本当に竜がいるのか?とても王国を竜が守っているとは思えんな」
「どうなさいますか?」
「こんなに遠くまで足を運んだのだ。せっかくだし、王都まで行ってみようではないか」
「サンドワームは……倒しますか?」
「倒さないと進めんのか?あの数は……面倒だと思うが」
「空から行けば問題はないかと思われます」
「だったら、無駄に魔力を消費することもないだろ」
「わかりました」
ガストビ達が空から王都に向かう準備をしていると、どこからか数体のロック鳥が現れた。
これでは、空も安全とは言えない。
「はぁ、どうなっているんだ?この王国は」
「魔物の襲撃にでもあったんでしょうか?」
「仕方がない。あのサンドワームを倒しながら進むとするか」
「では、陛下は船でお待ちください」
ガストビが船に戻ろうとした時、凄まじい衝撃で船が揺れた。
ガストビはすぐに船から降ろされ、数人の魔導師がガストビの前に立って船に向かって構えた。
「まったく……今度は何事だ」
「わかりませんが……あれは!?」
大きく船を揺らしながら、海の中から何かが姿を現した。
巨大な大きさのその生物は……リヴァイアサンだった。
リヴァイアサンによって巻き起こった高波が港に襲いかかり、回復などの支援魔法を担当する魔導師達が、シールドを使って被害を防いだものの、船は高波に流されて沖の方に離れて行ってしまった。
「…………サンドワームを倒せ」
ガストビは何かを考えながら、港から離れた安全な場所に用意されたテントの中に入り、椅子に座った。
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―――
ルシヨット魔導国がやって来る数日前―――
「師団長」
「何だ?」
「港町って、建物が崩壊しちゃってもいいんだよね?」
「そりゃあ、戦争だからな。建物を壊さずに戦うなんてことは無理だろ」
「じゃあ、今から破壊してもいい?」
「は?」
ラウルが人懐っこそうな笑顔を浮かべながらカミーユに言った。
町を破壊する?
何故?
「別にわざわざ壊す必要はないだろうが」
「はぁ……これだから、戦争を経験してない人って困るよねー」
「何だと!?」
「考えてみなよ。本来は賑わっているはずの港町が、誰もいなくなってるって凄く不自然なことだよね?まるで待ち構えていましたって感じで」
「……確かに、そうだろうな」
「そうなると、こっちの作戦なんてほぼ失敗が確定なんだよ」
ラウルの言う通りだ。
だが、カミーユ1人では判断出来ないため、シャルルにも相談した上で各騎士団の団長と話し合い、ラウルの作戦が決行された。
ラウルの作戦はこうだ。
港町に複数の巨大魔物を出現させて、建物を崩壊させる。
壊し過ぎても不自然なので、ある程度は建物を残しておく。
そして、巨大サンドワームを出現させる魔法陣を数カ所に描いて隠ぺいしておき、頃合いを見て出現させる。
それだけだと、空から侵攻されてしまうので、空からやって来そうな場合はラウルの魔物使いの能力でロック鳥か何かの魔物を出現させて、空からの侵攻を断念させる。
船が港に着港したままだと厄介なので、こちらもラウルの魔物を使って沖に流す。
こちら側は見えないように、結界を張ってカモフラージュする……
「まぁ、ガストビに勘付かれる可能性は高いけどねー。アイツ、勘だけは良さそうだから」
「そうなの?」
「でも、これで支援魔法の魔導師はある程度把握できると思うし、できるだけそっちから魔力を封印出来れば、この人数でもかなり勝算が高くなると思うよ」
「そうなんだ……私には難しいことはよくわからないし、戦略を考えるのって苦手だから、ラウルさんが指示してくれると凄く助かるよ」
「任せといて!」
町が破壊されていくことには心が痛んだけれど、戦いに勝つためには仕方がないことなのだろう。
悲しげに、壊れていく町を眺めているミオの傍に、シャルルがやって来て優しく頭に手を乗せた。
「そんなに悲しそうな顔をしないで。町は復興すれば元に戻るから」
「シャルルさん……そうですね」
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―――
「とりあえずは作戦通りだねー」
「うん……てゆーか、リヴァイアサン!?」
「ミオちゃんてさ……あーいう魔物に詳しいよね?」
「そんなに詳しいわけじゃないけど……いいなぁ、私もリヴァイアサン欲しいなぁ」
「え、何で!?」
「だって、リヴァイアサンなんか使えたらカッコいいじゃん」
リヴァイアサンは、実物を見るのは初めてだけれど、アニメやゲームなどでは有名な魔物だ。
見た目はカッコいいし、強いし……あれが自分のモノになったら凄くないですか?
テイマーの素質がないミオには、リヴァイアサンを使ってカッコよく戦うなんて、夢のまた夢なわけだけれど。
そんな話はさて置き……ついに、ルシヨット魔導国との戦いが始まった。
とても苦しい戦いになることは間違いないだろう。
船から降りて来た魔導師の数は、1000人には満たないかもしれないけどかなりの人数だ。
それに対してペリグレット王国側の人数は、騎士の数を入れれば近い人数にはなるものの、魔導師の数はたったの13人だ。
しかも、戦闘要員は9人しかいない。
最初に、ルシヨット魔導国側の人数を出来るだけ削っておきたいところだ。
「左後方、たぶんあれが支援魔導師だろうね」
「わかった」
全員がラウルの魔法陣に囲まれた場所に入ったら、こちらも攻撃開始だ。
緊張が高まっていく。
ミオは、震える手を落ち着かせるように深呼吸をした。
ミオが立っているのは、ペリグレット王国側の最前線。
張られている結界のすぐ後ろだ。
めちゃくちゃ緊張するんですけど!?
「そろそろ始めるよ」
「……うん」
ミオは、大きく息を吸い込んだ。
そして……戦いが始まった。
「マジカライト!……我が光の裁きをもって、開かれし封印の扉。ホーリーマジカルシーリング!」
ルシヨット魔導国の魔導師の首に、次々と光の輪がはめられていく。
何が起こっているのかわからず混乱する魔導師達。
「ま……魔法が使えないぞ!」
「魔力封印か?すぐに解除しろ!」
「……解除できない!?」
どうやら、ミオの魔力封印は解除が出来ないらしく、想定外ではあるが嬉しい誤算となった。
ミオは魔力封印を使うと全魔力を消費してしまうため、使った瞬間からヴィクシスとザールで魔力回復を行っている。
魔力回復魔法を使えなかったヴィクシスも、特訓の末に使えるようになっていた。
「もっかい魔力封印を使うね!」
「大丈夫?ミオちゃん」
「大丈夫!」
ミオがもう一度魔力封印を使ったので、かなりの魔導師が戦闘不能になったはずだ。
次に魔力が回復したら、魔力低下の範囲魔法を使って一気に攻撃をする。
ミオは魔力回復のポーションを飲んだ。
「じゃあ、俺は魔法防御を下げるから、あとはよろしくねー」
「わかった」
ラウルが相手の魔法防御力を下げると同時に、ミオはホーリーマジカロースを放って魔力を低下させた。
ラウルの魔法陣のおかげで、こちらの魔法がかなり強化されているようだ。
やっぱり、ラウルは凄い魔導師なのだろう。
ここまでは順調に進んでいる。
あとは、これで一気に戦力を削るだけだ。
「マジカライト!セレスティアルスター!」
ミオが空に向かって両手を大きく広げると、まるで流星群のように、大量の光がルシヨット魔導国側に降り注いだ。
おそらく、今ミオが使える攻撃魔法の中では、魔力消費は激しいけれどこれが最も攻撃力の高い範囲攻撃だ。
出来るだけ多くの魔導師が倒れてくれることを祈る。
ミオはカバンからポーションを取り出して飲んだ。
ザールとヴィクシスの魔力もかなり消費したようで、2人ともかなり息切れを起こしていた。
「ありがとうございます、ザールさん。ヴィクシスさんもありがとう」
「魔力回復の魔法、間に合って良かったっす!あとは……はい、ポーション交換していくっすね!」
ヴィクシスが空になったミオのポーションを回収して、新しいポーションと交換する。
ポーションの数にも限りがあるし、ヴィクシスやザールの魔力回復にも限界はある。
魔力消費の激しい魔法は、そう何回もは使えない。
いったい、どれくらいの戦力を削ることが出来ただろうか……
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―――
「……やってくれるではないか、ペリグレット王国」
「報告します!魔力封印と先程の攻撃で、我が国の魔導師の半数以上が戦闘不能です!支援魔導師もほとんどがやられました!」
「召喚魔導師は?」
「それでしたら、かなりの数が残っております」
「ならば、大量の魔物で攻め込め。あとは、そうだな……ゴーレムでも使ってみるか」
かなりの戦力を削られたルシヨット魔導国だったけれど、ガストビの顔に焦りなどはなく……部下からの報告を聞いて、不敵な笑みを浮かべていた。
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