53 騎士団と魔導師団の合同訓練
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1月に入り、ペリグレット王国王都・モンフォワールでも雪が降り始めた。
まだ地面を覆うほどの雪は降っていないけれど、雪が降るほどに気温は低くなり、本格的な冬が到来した。
「ううぅ……寒いですよ師団長」
「冬だからな」
「こんな寒いのに、外で訓練ですか?」
「室内で戦闘訓練が出来るか!」
雪がちらつく中、今日は騎士団と合同の戦闘訓練が行われる。
先月捕らえたしたルシヨット魔導国の魔導師から得た情報だと、ルシヨット魔導国がペリグレット王国に攻め入るのは2月1日らしい。
どれくらいの魔導師が攻め込んで来るのかはわからないけれど、2月1日までは残り1ヵ月を切った。
少しでも戦力を上げて行かなくてはならない。
騎士団に入団した新人騎士達はまだ魔物の討伐をしたことがないため、今からラウル達が召喚する魔物達と戦うようだ。
さすがに、ルシヨット魔導国との戦いで前線に立つことはないと思うけれど、何が起こるかはわからないのだから、経験は必要だ。
「ミオ様」
「ナターシャ、ベネット、クリスティーヌ。おはよう」
騎士団に入った新人女性騎士の3人が、ミオの姿を見つけて駆け寄って来た。
「お前、何だよその格好は?少し着すぎじゃないのか?」
「そんなことはないよ!これが普通なの!」
「ミオ様らしいですね」
「ミオ様の対抗戦も見られるんだよね?楽しみだなぁ」
「私のは別に楽しみにしなくていいよ。他の人の対戦を楽しんで」
「噂には聞くものの、正直お前が戦う姿なんて想像も出来ないからな」
「本当ですよ」
「お、私の番だ。行って来るよ、ミオ様」
「頑張って来てね、クリスティーヌ」
ナターシャとベネットは次の討伐らしく、ミオの隣でクリスティーヌの討伐を見学した。
「ミオ」
「何ですか?師団長」
「そろそろ俺のことも名前で呼べ」
「ムリです」
「何でだよ!」
ミオとカミーユのやり取りを見て、くすくすと笑うナターシャと豪快に笑うベネット。
3人の女性騎士達はすっかりミオとは仲良しとなり、時々一緒に街に出かけて行ってお茶をする仲となっていた。
こうして、新人騎士達の魔物の討伐訓練が終わり、次は騎士団と合同で魔導師と戦う訓練が始まった。
相手はラウル達ルシヨット組。
最初は第一騎士団が戦うらしい。
シャルルと騎士が10人程が訓練場の中央に出て来た。
「よし、ミオ。行って来い」
「え、私1人ですか?」
「そうだ」
「えー」
「いいから行って来い!」
カミーユに背中を押されてミオがシャルル達の所に駆け寄り、対戦が始まった。
対戦開始とともに、ミオは魔法陣を描こうとしたラウル達にサンダーストームを放つ。
その後、自分に魔力強化をかけて騎士達に防御力強化と攻撃力強化の魔法を使った。
サンダーストームが消えると、ラウル達が上空から攻撃魔法を放って来て、ミオがホーリーシールドリフレクションで跳ね返す。
上空にコルトの姿がなく、その姿を探すとミオ達の前で魔法陣を完成させていた。
現れたのは巨大サンドワーム。
シャルルの指示で、巨大サンドワームの腹部を狙って騎士達が攻撃を開始した。
ラウル達が騎士に向かって攻撃しようとしているのが見え、ミオがフロージングランスで攻撃して阻止する。
すると、ミオ達の後方にディナールが降りて来て魔法陣を描いていて、ミオは急いでスノーフロストを使ってディナールを首まで凍らせた。
「げぇー、これじゃあ魔法が使えないじゃないか」
「少し大人しくしていてくださいね!」
ミオは、魔法陣を描こうとしているラウルを攻撃しながら、上空に逃げる2人を箒で追いかけた。
下ではシャルルと騎士達が、巨大サンドワームに苦戦している。
何とか風属性魔法でサンドワームを攻撃しようとしたミオだったけれど、ラウルとコルトの激しい攻撃を避けながらでは上手く魔法を発動できない。
「ミオ!こっちは大丈夫だから、2人に集中するんだ!」
「はい!」
シャルルに言われて、ミオはラウルとコルトに集中する。
その時、巨大サンドワームが口から吸い込みを始めた。
騎士達が剣を地面に突き刺して耐える中、ミオだけが簡単に吸い寄せられてしまった。
「嘘でしょ!?何で私だけ!?」
ミオは何とか巨大サンドワームの方に向きを変えて両手を翳し、アイスブロックで巨大サンドワームの口を塞ぐ。
前に戦った時と同じだ。
「シャルルさん、少し暴れると思うので離れた方が良いかもです!」
「わかった!」
シャルルの指示で騎士達が巨大サンドワームから距離を取った。
口にアイスブロックが挟まった巨大サンドワームは、もがくように体をうねらせながら、大暴れして地面に倒れ込んだ。
「たぶん、しばらく起き上がらないと思います!」
「よし、一斉に叩くぞ!」
騎士達が巨大サンドワームに向かって一斉に斬りかかる。
それと同時にラウルが騎士達の側面に召喚魔法の魔法陣を描き、大量の魔物達が出現した。
これはマズい……
ミオがスノーフロストで魔物達を凍りつかせたけれど、この魔法陣からは定期的に魔物が現れる。
早く魔法陣を消さなくては。
でも、魔法陣を消そうにも2人の激しい攻撃に詠唱する余裕がない。
それに、前回ミオの魔力低下を喰らっている2人は、激しく動き回ってミオが狙いを定められないようにしている。
ヤバいヤバい……そのうちに、魔法陣から新たな魔物が出現してしまい、騎士達が二手に分かれて、巨大サンドワームと魔物の討伐に追われることになってしまった。
最悪なことに、強化魔法も全て効果切れとなった。
マジですか……
ミオは自分に魔力強化を使い、ラウル達の前に箒を止めて両手を翳した。
「え?」
「ミオちゃん?」
「ホーリーマジカロース!」
「えー、マジで!?」
「うわぁー!」
ラウル達の魔力が削られて、前回と同様に地面に落下して行った。
そして、ミオも魔力が残りわずかとなって地面に飛び降りた。
急いでバッグからポーションを取り出して魔力を回復させると、ラウルとコルトを凍らせて、上空へと上がる。
「開かれし古の扉を封印せし。ティアドロップ!」
2つの魔法陣が消え、魔物の出現はこれで止まった。
あとは今出現している魔物達を討伐するだけだ。
ミオはシャルル達の攻撃力を強化すると、騎士達を大量の魔物の討伐に回して、シャルルと2人で巨大サンドワームの前に立った。
巨大サンドワームがゆっくりと体を起き上がらせる。
「ウインドブレード!」
風の刃が何度も巨大サンドワームの腹部を斬り裂いていき、再び地面に倒れ込んだところに、シャルルがとどめを刺して巨大サンドワームは砕け散った。
大量の魔物達も、騎士達の手によって全て消えた。
こうして、1戦目の対戦はミオ達の勝利となった。
「疲れました……」
「私が運んであげようか?」
「そ、それは大丈夫です!」
こんな皆が見ている前で抱き上げられたら、恥ずかしくて爆死してしまいますって!
真っ赤になるミオに、シャルルはクスッと笑いながら、ミオの背中に手を当てながらカミーユの所に向かった。
途中で、魔法を解除してと言うラウル達の声が聞こえて来て、慌てて3人の魔法を解除した。
「ミオちゃんさぁ、動き回ってても魔力低下使えるわけ?」
「範囲魔法にすれば使えるけど……魔力消費が激しいからあんまり使いたくなかったんだよね」
「あんなの使えるのミオちゃんだけだって。ズルいなー」
「え、そうなの?」
ラウル達は次の対戦があるけれど、かなり魔力を削られてしまったため、ポーションを飲んで少し休憩が必要だ。
ミオはシャルルと一緒にカミーユの所に向かい、並んで隣に座った。
3人の新人女性騎士達は、ミオの対戦が終わると副団長に呼ばれてどこかに行ったらしい。
「お前、よくその格好であそこまで動けるな」
「ん?」
そんな格好って……どんな格好だ?
普通に、上着を着てマフラーを巻いて手袋をつけているだけですが?
あ、上着の上にローブを羽織っているから、多少着ぶくれしているように見えるかもしれない。
「冬用のローブってないんです?裏起毛のヤツとか」
「うらきもう?何だそれは」
「内側にあったかいモコモコがついてるヤツです」
「そんなものは見たことがない」
「作ってくださいよ」
「そんなことは仕立て屋に言え」
仕立て屋って……え、魔導師のローブって特別な衣装じゃないんですか?
てっきり、防御力とか魔力を高めるような魔法が施されているのかと思っていたミオだったけれど、そうではないらしい。
魔導師の衣装として身につけるのだと、カミーユが説明をした。
「今回の対戦はちょっと厳しかったですね。でっかい魔物を召喚されると、人手は取られるし、倒すのに時間がかかるから厄介です」
「そうだな。だが、ミオはよく1人で、あそこまで支援しながら戦えたなと思うよ」
「いっぱいいっぱいでしたよ」
「何でもっと早くラウル達に魔力低下使わなかったんだ?」
「あれ、範囲で使うと魔力消費凄いんですよ……でも、使った方が効率的に倒せたかもしれません」
「だが……実際の戦いでは敵の数がもっと増えるわけだろう?魔力が切れた場合、すぐに回復出来るのか?」
「それなんだよな。ポーション飲んでる余裕はないだろうな」
「そうなんですよ……」
やはり、この少ない魔導師の数では対抗するのが難しいように思う。
でも、戦わなくてはいけないのだ。
「ポーションって、もっと濃縮してタブレットみたいにならないんです?」
「たぶれっと?何だそれは……って、このくだり多いと思わないか?」
確かに多いけれど……仕方がないことだ、今まで普通に使ってきた言葉なのだから。
「えーと……噛み砕ける薬のようなものです」
「薬なんて粉か液体だろうが」
「え?」
「え?……って、見たことないのか?」
「ラムネは?」
「知らん」
「えー、じゃあ、説明のしようがないですよ……ソフトカプセルは?」
「知らん」
シャルルも不思議そうな顔で見ていた。
この世界にタブレットが誕生するのはいつのことだろうか……てゆーか、薬って粉なの?苦いじゃん!
病気にはならないようにしようと思うミオだった。
休憩を挟んで、騎士団と魔導師の合同戦闘訓練が再開したけれど、ミオ以外の魔導師ではラウル達に太刀打ちできないということが明るみになった。
ここまで攻撃魔法とかの強化をしてきたけれど、さすがにこの短期間ではその差を埋めることは不可能だった。
また……詰んでませんか?この状況って……
―――――――
―――――
―――
「ミオ様!」
「え?……あ、皆」
ミオが風呂に入っていると、ナターシャ達が入って来た。
浴室の前に列が出来ていて、何の列なのかを聞いたらミオが入ってることを教えられて3人も入って来たらしい。
「え、列が出来てるんだったら上がらないと」
「大丈夫だよ。急がなくていいって言ってたし」
「そうなの?」
「それよりも、ミオ様の戦う姿、鳥肌が立ちました!」
「本当に戦えたんだな、お前。めちゃくちゃ強かったじゃないか」
「本当だよ!私らじゃあ、何年かかっても戦えそうにないよ」
「そんなことはないよ。あれね、ちょっと失敗しちゃったからなぁ」
「どこがだよ?」
「魔法の使い方?」
「何で疑問形なんだ?」
今回の対戦では反省点も多いし、もっと全体的な戦い方を考えていかなければいけないと思っている。
それに、魔力強化もしていかないと、今の魔力量ではすぐに魔力切れになってしまいそうだ。
ルシヨット魔導国が攻め込んで来るまで時間はないのに、課題は山ほど残ったままだ。
「もっと修行しないとだなぁ」
「あれほどお強いのにですか?」
「欲張りだなぁ」
「いやいや、私なんてまだまだだよ?魔力使い切ると寝込んじゃうし」
「え、そうなの?」
以前よりは魔力量も増えたようで、そうそう寝込むことはなくなったけれど、ポーションがなかったら寝込んでいたかもしれないと思うことは多い。
やっぱりここは修行あるのみだ。
騎士達をあまり待たせてはいけないと思い、お喋りはこのくらいにして上がることにした。
自分の髪の毛を乾かした後に3人の髪の毛も乾かしてあげて、軽く掃除をしていると驚かれてしまった。
「え、だって髪の毛とか落ちてたら、次入る人が嫌な気持ちになるよね?」
ミオの話を聞いて、自分達もそんな気遣いが出来るようになろうと思う3人だった。
こうして、風呂に入って自分の部屋に戻ったミオは、ルシヨット魔導国の魔導師との戦い方について、いろんな戦法を考えながら書き出してみた。
色々考えてみたけれど、結局のところ修行をして魔力を高めていかないと無理だということに行きつく。
「……頑張ろう!」
ミオは大きく伸びをするとベッドに寝転がった。
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お読みいただきありがとうございました!




