52 激しい攻防戦再び
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―――ミオ……助けて、ミオ
「ん……水竜…さん?」
深夜、ミオは水竜の声が聞こえた気がして目をこすりながらベッドの上に起き上がった。
気のせいだろうか?
―――ミオ
水竜さん?
―――湖の周りで、何かしている人がいるんだよ。何だろう?僕、何だか嫌な予感がするんだ
……今すぐに行くから待っていて!
ミオはベッドから降りると、急いで着替えてローブを羽織った。
そして、ローブの内ポケットにステッキが入っていることを確認し、箒を手にすると部屋を飛び出してカミーユの部屋のドアをノックした。
「師団長!」
「何だ、どうしたんだこんな時間に」
「ネーオールの森で何かしている人がいます!水竜が助けを求めて来て……私、今から行って来ます!」
「待て待て、1人では危ないだろうが」
「でも……また、水竜が危険な目に合ってしまうかもしれません!私は先に行ってます!」
「あ、おい、ミオ!……ったく」
ミオが走り去り、カミーユは急いで着替えると箒を持ってシャルルの部屋へと向かった。
騒ぎを聞きつけた騎士や魔導師達が廊下に顔を出す。
「何かあったのか?師団長」
「ネーオールの森で不穏な動きがあるようだ。ちょっと行って来る」
「俺達も行った方が良いんじゃないか?」
「……騎士団については、第一騎士団の団長の指示に従ってくれ。今から俺が報告に行く」
「わかった」
「俺達は?師団長」
「ラウル、ディナール、コルトは待機。リシャールとジェラリーは俺と来い。レオポールとヴィクシスはポーションを持って来てくれ」
カミーユは皆に指示を出すと、シャルルに報告をしてネーオールの森へと向かった。
ミオの姿はもう見えない。
報告を受けたシャルルは、今回の相手がルシヨット魔導国の魔導師かはわからないが、今後のために見ておきたいと言う騎士達と夜勤の第一騎士団を率いて、馬を全速力で走らせてネーオールの森へと向かった。
―――――――
―――――
―――
ミオがネーオールの森につくと、湖には水竜の姿はなかった。
無事なのだろうか?
湖の中央で、注意深く周囲に目を向けると、4方向から赤い光の柱が上がった。
「……魔法陣?」
―――ミオ!助けて!
水竜が助けを求める声が聞こえ、ミオは胸の前で両手を組んで自身に魔力強化魔法を使うと、詠唱を口にする。
「開かれし古の扉を封印せし。ティアドロップ!」
ミオの胸元でネックレスの石が光り始め、光が集まって雫となると、4方向へと飛び散った。
そして、光の柱を打ち消すように包み込み、赤い光は白く変わっていった。
次の瞬間、ミオに向かって攻撃魔法が放たれ、ミオは一気に上空へと上がった。
そして、攻撃が繰り出された場所に人影を見つけると、急下降して行きフロージングランスを放つ。
すると、別の方向からも攻撃魔法が放たれて、ミオはホーリーシールドで防ぎ、そっちの方向にサンダーボルトを放った。
ミオの前にいた魔導師が上空へと上がって行き、ミオはすぐ後を追いかけながらフロージングランスで攻撃をする。
背後からの攻撃はホーリーシールドで防ぎながら、目の前の魔導師を追った。
―――ミオ
ごめん、水竜さん。話してる余裕ないから隠れてて
―――わかった!
ミオは目の前を逃げ回る魔導師を、見失わないように必死に追いかけながら、フロージングランスをいくつも放っていった。
逃げている魔導師は避け切れずに負傷する。
同時に、後方から放たれる攻撃魔法を、ホーリーシールドリフレクションで跳ね返しながらカウンター攻撃をし、2人を相手に見事な戦いぶりを見せた。
こっちだって必死に訓練してるんですよ!
この2人組の魔導師は、以前メーヌの森で戦った2人だ。
一度戦ったミオには確信できる。
前回は逃げられてしまったけれど、今度こそ捕まえる。
ミオは全神経を集中させて2人の魔導師と戦った。
カミーユがネーオールの森につくと、湖の上空でミオと2人の魔導師が戦っているところだった。
ミオ達の戦いの激しさに目を見開く。
ラウル達との戦闘訓練とは、まるで違う戦いが目の前で繰り広げられていた。
遅れてやって来たリシャールとジェラリーも、息を吞みながらミオの戦いを見上げた。
「師団長……俺達は何をすれば」
「下手に手を出せば、ミオの邪魔になってしまうな……」
「俺は、タイミングを見ながら回復魔法をかけます」
激しい攻防戦が繰り広げられていて、ミオは無傷とはいかずかなり負傷しているように見えた。
でも、それは相手も同じで、ミオの攻撃をくらって2人の魔導師もかなり負傷しているようだった。
「ポーション、持って来たっすよ!」
「師団長、ミオは?」
「あそこだ」
指差した先で、いまだに激しい戦いを繰り広げているミオ。
かなり息が上がってきているようで、魔力消費が激しいように見える。
ポーションを渡したいけれど、おそらくミオには飲む余裕なんてないだろう。
「ヴィクシス」
「はいっす!」
「魔力回復魔法は使えるか?」
「あー、俺はまだ使えないっすよ」
「そうか……よし、今日からは魔力回復魔法の訓練も開始するぞ」
「はいっす!あー、でも魔力回復魔法なら、ザールさんも使えるっすよ」
「……早く言えよ、そういうことは」
そんな話をしている間も、上空ではミオと2人の魔導師の激しい攻防戦が続けられている。
どれくらいの時間戦っているのだろうか?
何もできずにカミーユが拳を握りしめていると、シャルル達もやって来た。
「カミーユ!」
「シャルルも来たか」
「ミオは大丈夫なのか?」
「かなり傷を負っているようだが、まだ戦っているよ」
シャルルと一緒にかけつけた、領主の騎士団の騎士達も、初めて見る魔導師同士の戦いに目を見開く。
騎士団の戦いとは全く違う戦いに、驚きを隠せないようだ。
「俺達は、あのような魔導師を相手にするということだな」
「そうだ」
「これは……かなり気を引き締めないと死ぬ戦いだ。戦いまでに、魔導師との対戦もしておかないとだな」
課題だらけの魔導師団だけれど、魔導師との戦いの経験のない騎士団にとっても、課題は多いようだった。
こうして、駆け付けた皆が見守る中、ミオが相手の攻撃をくらって地面に激突し、カミーユ達の前に転がって来た。
「「ミオ!」」
「……師団長……シャルルさんも」
「ミオさん、今のうちに魔力回復のポーションを!」
「ありがとう、ヴィクシスさん」
ミオがポーションを飲んでいる間に、ジェラリーとカミーユがヒールで回復した。
ある程度傷と魔力が回復したミオは、すぐに箒で飛び上がる。
多少なりとも体力と魔力が回復したミオは、今なら2人組の魔導師よりも有利な状況だ。
何とか2人を近くに並ばせるため、自身に魔力強化魔法を使いながら飛び回って、2人を攻撃していく。
そして、2人が近づいた瞬間……
「マジカロース!」
ステッキを持った両手を翳して、2人に魔力低下の魔法をかけた。
湖に向かって落下して行く2人の魔導師。
このままでは湖に落ちてしまう……湖の中に落ちてしまったら逃げられてしまうかもしれない。
ミオは咄嗟に湖に向かって手を翳した。
「アイスフロアー!」
湖がスケートリンクのように凍りついて、2人の魔導師はその上に転がった。
ミオは2人をスノーフロストで凍りつかせて動きを封じると、1人ずつ両手で押し出してカミーユ達の所まで滑らせて送った。
そして、2人を凍っていない地面まで動かすと、湖を凍らせていた魔法を解除して水竜に声をかけた。
水竜さん、もう大丈夫ですよ。あ、顔は出さないで下さいね、また誰かに見られると危険なので。
―――ありがとう、ミオ!
今回は水竜が操られる前に阻止出来て、本当に良かったと思う。
それにしても……何でいつも水竜が狙われてしまうんだろうか?
まぁ、他の竜に比べると、湖なんて見つけやすい場所ではあるけれど……
拘束した2人組の魔導師は、王宮の地下牢へと運ばれることになる。
魔力を封じておくため、ミオはポーションで魔力を全回復してから、2人に魔法を使った。
「我が光の裁きをもって、開かれし封印の扉。マジカルシーリング」
2人の首に、光のリングが装着された。
これで、魔法は使えないはず。
シャルル達が2人の魔導師を馬に乗せている間に、ミオはカミーユにヒールで回復してもらった。
「よく、あの魔導師達を捕えたな」
「途中でポーションが飲めて、魔力が回復できたのが大きいですよ。戦いながらだと、ポーションなんて飲んでる余裕ないですし……」
「やっぱり余裕はないか」
「ないですね。集中していないとすぐにやられてしまいます」
「安心しろ。ヴィクシスには魔力回復魔法を習得してもらう。それに、魔力回復ならザールも使えるらしい」
「ホントですか!それは凄く助かりますよ!」
「てゆーか、いつの間に魔力封印の魔法なんか覚えたんだ?」
「母の日記の空白のページの最後に、偶然見つけました。でも、魔力を全回復しないと使えないみたいで……戦いの最中に使えたらいいんですけど」
「魔力消費量が大きいってことか」
「たぶん、そうだと思います」
ネーオールの森に静けさが戻った。
ミオ達は王宮へと戻って行き、カミーユとシャルルが国王に報告をした。
夜が明けてからは、騎士団によって2人組への尋問が始まる。
これで、ルシヨット魔導国が本当に攻めて来るのか、いつ頃に攻めて来るのかが聞き出せるだろう。
それにしても……
ミオでさえ2人を相手にするのが精一杯だった。
ルシヨット魔導国が攻め込んで来たら、2人だけを相手にするわけではないだろう。
きっと、1人で10人以上……もしかしたら何十人も相手にしなければならないかもしれない。
無理ゲーなのでは?
まったくと言っていい程、勝てるビジョンが思い描けない戦いだと頭を抱えるミオだった。
魔導師として、ペリグレット王国の王女として、どうやって守って行けばいいのだろう……
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