50 戦いに向けての準備
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ペリグレット王国には王国騎士団と領主の騎士団があり、王国騎士団の手が回らない場所などは、領主の騎士団が中心となって安全を守っている。
そんな領主が所有する騎士団は、港町を中心に警備しているパトリエール家の騎士団以外には、モルティエ家、レヴィナス家、ラルゴス家、ロイヤー家の4つの騎士団だ。
国王からの招集がかかり、王国第二・第三騎士団、各領主及び各領主の騎士団の団長達が王宮へと集まって来た。
滞在中は、領主は王宮の客室を、騎士団団長達は第一騎士団の宿舎を使うらしい。
明日には全員が集まるようなので、話し合いは明後日に行われる予定だ。
「アンプロテクション!」
「……お前、何で魔導書は理解できないのに、この魔法は使えるようになるんだ?」
「それは……私にもちょっとわかりません」
ミオが、カミーユに教えてもらった弱体化魔法を使ってみると、防御力低下と魔力低下の魔法が使えた。
カミーユの話だと、弱体化魔法は習得が難しいということだったけれど……何故か、ミオはそんなに苦労せずに使うことが出来た。
「うーん……どれくらい防御力が下がっているのか、ちょっと攻撃してみてもいいですか?」
「いいわけがないだろうが!俺を殺す気か!」
「そんなわけないじゃないですか……ちょっとケガをするだけです」
「俺に何か恨みでもあるのか?」
「ないですよ」
弱体化魔法がどれくらいの効果があるのかはわからないけれど、使えないよりは戦いやすくなるだろう。
ミオは、弱体化魔法を出来るだけ強化していくため、限られた時間の中で訓練を重ねることにした。
「お、ミオさんは特訓中か」
「ん?……ジェラールさん。もういらしてたんですか?」
「先程到着した。カミーユ、久しぶりだな」
「お久しぶりです、ジェラールさん」
「少し、訓練を見ていてもいいか?」
「それは構いませんが……退屈ではありませんか?」
「魔法など、なかなか見れるものではないからな。退屈などとは思わないよ」
こうして、ジェラールが見学する前で魔法の練習を始めたミオだったけれど……見られていると思うと、凄く緊張するのですが!
魔力強化をしてアイスブロックに向かって攻撃したのだけれど、力が入りすぎてしまいアイスブロックを破壊してしまった。
「お前なぁ……」
「す、すみません!でも……今なら凄く頑丈なアイスブロックを作れると思いますよ!」
ミオ自身の魔力も上がっているようで、魔力強化の魔法とステッキによって強化されたアイスブロックは、今までのものよりもかなり頑丈になったようだった。
―――――――
―――――
―――
「何か……このテーブルだけ、凄く濃いメンバーですよね」
「まぁ、隊長が集まってるからな」
「私……向こうに行きますね」
「別にここで食べればいいだろうが。知らない顔でもあるまいし」
「そ、そうですけど……」
夕食の時間、ミオがいつものようにシャルルやカミーユと一緒に座っていると、第二騎士団団長のランディ、第三騎士団団長のレオポルド、シャルルの兄ジェラールが同席して来た。
何て言うか……圧が凄い。
少しすると、ジェラール以外の領主の騎士団団長2人も同席して来た。
隊長が集まっていたから、ここで食べるものと思ったらしい。
「随分と賑やかじゃねぇか、第一騎士団はよぉ」
「新入隊員がまだ振り分けられていないからな」
「今年は70人程だったか?」
「そうだ。今回の件が終わるまでは振り分けるのを待ってくれ」
「そんなこたぁわかってるよ。それよりも、相変わらずここの料理は刺激が足りないな」
「料理は美味いが、酒が物足りねぇよなぁ」
「……お前達はよく体を壊さないな」
本当にシャルルの言う通りだと思う。
第二・第三騎士団の騎士達の体は、他の人達とはつくりが違うんじゃないだろうか……本気でそう考えてしまう。
「そういえばカミーユ」
「何だ?」
「魔導師はいつになったら増えるんだ?」
「そんなことは俺にはわからん」
「あー、それなんですけど」
「嬢ちゃんは何か知ってんのか?」
「両親が魔導師だと、子供が魔力を持って生まれてくる確率が高いらしいですよ」
ミオは前にラウルが教えてくれたことを話した。
すると、ランディがとんでもないことを言い出した。
「だったら、カミーユと嬢ちゃんが結婚すればいいだけの話じゃねぇか」
「は?」
「なっ!?」
何故、そうなる?
「馬鹿な事を言うな。俺はシャルルに殺されたくはない」
「シャルルさんは今関係ないですよね?」
「それに、俺にだって選ぶ権利はある」
「わ、私にだってありますよ!」
「あははは!冗談だ、冗談!」
笑いごとですか?
この人、アルコールの強さ関係なく酔っぱらってるんですか?
こうして、いつもとは違った賑やかな夕食となり、あっという間に夜が更けていった。
―――――――
―――――
―――
「ラウル、ミオの半径3m以内に入るなよ」
「それは無理だよー。ミオちゃんのこと守れなくなっちゃうじゃん」
「うるさい、副師団長命令だ」
「いくら副師団長命令でも、そればっかりは従えないなぁ」
「だったら、ミオはここで待機だ!」
「アル君、それは無理だよ……てゆーか、仲良くしようね?」
今日は、王宮で会議が行われているため、カミーユの代わりにアルバンが執務室で待機することになっている。
ミオはラウルと一緒に騎士団と見回りに行くのだけれど、アルバンとラウルがバチバチと火花を散らせていて、盛大にため息をつきながら見ていた。
てゆーか、子供相手に何やってんだか……
「そろそろ行くよ、ラウルさん」
「うん。それじゃあ、行ってくるよー、副師団長」
「あー!ミオに触れるなよラウル!」
ミオは苦笑いしながら執務室を後にした。
シャルルは会議に出席しているため、騎士団の指揮を執っているのは副団長のシリルだ。
今日は、ネーオールの森とその周辺、メーヌの森に向かう途中の草原、結界までの3カ所に分かれての見回りを行うようで、ミオとラウルは結界方面の見回りに同行する。
他の2カ所には、コルトとディナールが同行することになっている。
「私はネーオールの森の見回りに行くので、何かあればこの者に申し付け下さい」
「わかりました、ルヴィエ副団長」
ラウルは見回りの準備を手伝いに行ったけれど、ミオは相変わらず手伝わせてもらえずに、頬を膨らませながら眺めている。
いい加減、手伝わせてくれても良くないですか?
別に包丁を使うわけでもないんだし……
こうして、それぞれ準備が整った隊から王宮を出発した。
12月に入ったというのに、とても晴れていて暖かい日が続いている。
「この辺りは、冬でも暖かいんです?」
「いえ、もうすぐ雪が降り始めますよ。この暖かさも今月の半ばくらいまでです」
「そうなんですね」
そういえば、母親の日記にもそのようなことが書いてあった気がする。
元の世界では雪はあまり見ることがなかったから、雪が降って来ると何だかウキウキしていたけれど、正直寒いのは苦手だ。
こっちでは、フェルドーに行けばいつでも雪が見れるから、元の世界にいた時ほど雪を見てもウキウキしなくなったし。
12月か……元の世界では、クリスマスで街中がキラキラと飾り付けられる季節だな。
こっちでもクリスマスはあるんだろうか?
「12月は何かイベントってあるんです?」
「イベントですか?王都では特にないですね。他でも……聞いたことはないです」
「そうなんですね」
何もないってことは、年越しのイベントなどもなさそうだ。
母親の日記にも年越しのことは一度も書かれていなかったな。
「ミオちゃんって、この王国の冬が初めてなの?」
「そうだよ」
「え、ミオちゃんの出身ってここじゃないの?」
「うーん……まぁ、違うかな」
「え、どこ出身なの?」
「……日本」
「ニホン?聞いたことがない国だなぁ」
「小さな国だからね」
モンフォワールの街を抜けて間もなく、二手に分かれて見回ることになり、この日の見回りは何事もなく終了し、王宮へと戻って行った。
ミオ達が見回りから戻って来ると、王宮で開かれていた会議も終了していて、カミーユから決定事項の説明を受けた。
内容は次の通りだ。
ペリグレット王国への入国は、オルレーヌの港からのみとなっているため、ルシヨット魔導国が攻め込んでくる場合も港から入って来る。
王国の北側と西側は海であるため、そちらからも侵入出来そうだが、雪原と火山があるため侵入は不可能らしい。
東側に回るにはかなり遠回りになるし、上級の魔物が放たれているためこちらも侵入は不可能と言える。
このことから、ルシヨット魔導国は必ずオルレーヌの港町にやって来ることになる。
そのため、全勢力をオルレーヌに集めてルシヨット魔導国と戦い、王国内への侵攻を防ぐことで決定した。
「え、ちょっと待ってください師団長」
「どうした?」
「それって、港町は……」
「港町は戦場となる。そのため、直ちに住民達を王都へと避難させる」
「……そんな」
「オルレーヌは元々そういう取り決めがされているんだ。まぁ、俺が知る限り今まで戦争など起きたことがなかったが……あの町の住人は理解した上で生活をしている」
「そうなんです?」
「町は破壊されても復興すればいい。住人が生きていれば復興は可能だからな」
確かに、住人の命を守ることが出来れば、町は復興していけば元に戻る。
王国を守るためには、これが最善なのだろう。
港町の住人は、モンフォワールの街と周辺の町や村、王宮で受け入れる予定だ。
「それとだな、交代で派遣している魔導師にも戻って来てもらう。戦力を上げるために残された時間で特訓だ」
「特訓?」
「この人数でどう戦っていくか、作戦も立てないといけないしな」
本当に戦争が始まってしまうのだろうか?
戦争なんて、誰も幸せになんてならないのに……
―――――――
―――――
―――
ルシヨット魔導国から、ペリグレット王国の竜を探しに来た2人組の魔導師。
ネーオールの森以外で竜を見つけられず、ルシヨット魔導国へと報告を入れた。
報告を受けた者が国王のガストビに報告をする。
「竜が1体か……残りの3体は、王国を手に入れてからでも探すとしよう。準備を始めろ、王国への侵攻開始は……2月1日だ」
「わかりました」
「それまで、竜の捜索は続けるよう伝えておけ。それから……竜を操ることが可能かどうかもな」
ガストビの命令が2人組の魔導師に伝えられた。
2人の魔導師は、先に竜を操れるのかを確かめるため、ネーオールの森へと向かうことにして行動を開始する。
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