45 魔導師団の新しい仲間
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「俺はディナールだ。25歳、彼女なし」
「俺はコルト。ディナールとは同い年で、俺も彼女はいないよ」
「……何ですか、そのアピールは……私は、ミオ・サクライです」
「はいはーい、2人とも俺のミオちゃんから離れてね」
「ラウルさんのっていうのも違うけどね。私はモノじゃないよ」
魔導師団に、新しい魔導師が入団した。
2人は、ラウルと同じルシヨット魔導国の出身ということで、かなりの魔力と魔法能力を持っていた。
こんなに優秀な人材が入ってくれたことは、魔導師団としても心強いことだ。
「よし、人数も増えたことだし対戦するぞ。これを1本ずつ引け」
「これは?」
「対戦相手を決める札だ。同じ番号同士で戦ってもらう」
「なるほど」
全員で札を引いて対戦相手が決まった。
番号順に対戦をする。
決まった対戦は次の通りだ。
①レオポールvsディナール
②ラウルvsカミーユ
③ミオvsコルト
アルバンは学校に行っているので、今回の対戦には参加しない。
「そんじゃ、レオポールとディナールの対戦から始めるぞ」
2人が訓練場の中央に立ち、対戦が始まった。
的として設置してあるアイスブロックは、そのままの状態で戦うらしい。
ディナールがローブの内ポケットから何かを取り出した。
手のひらに乗せたそれは、光を放つと大きくなって……杖になった。
「え、杖?」
「俺が使っているステッキと同じように、杖も魔力を増幅させるんだよ。箒のように飛ぶことも出来るしねー」
「てゆーか、あんな小さくして持ち運べるの?」
「そうだよ」
杖って……もしかして箒よりも便利なのでは?
街に出かける時に乗って行っても、あんなに小さく収納できるなら背負う必要もない。
「あの杖も自分で作らないと使えないよ」
「え、そうなの?」
「うん。箒よりも難しいんだ」
箒よりも難しいとなると……ミオには作れない気がする。
箒も作ったことはないけれど。
こうして対戦が始まって、訓練場の傍の斜面に座って見ていると、シャルルがやって来てミオの隣に座った。
「あれ、シャルルさん今日はお休みですか?」
「そうだよ。カミーユが対戦すると言うから見に来たんだ」
「そうなんですね」
対戦は、杖で魔力を増幅させられるディナールが優位に立っているようだった。
ただし、上空に上がって戦う場合、杖による魔力増幅が使えなくなるため、レオポールは上空での戦いに誘導して戦っていた。
それでも、ディナールはルシヨット魔導国の魔導師ということもあり、魔力の増幅なしでもレオポールの能力を上回っており、上空でもレオポールは苦戦を強いられた。
再び地上に降りてくると、ディナールが杖を地面に突き立てて詠唱を唱えた。
地面に魔法陣が浮かび上がる。
「あれって……」
「召喚魔法だね」
なんと、ディナールも召喚士だった。
ペリグレット王国には召喚士はたぶんいないけれど、ルシヨット魔導国の魔導師には、召喚士はとても多いのだとラウルが教えてくれた。
魔法陣から現れたのは……サンドワーム。
驚くミオとシャルル。
このサンドワームって……
レオポールは、サンドワームの弱点が風属性だということを知っているようで、すぐに風属性での攻撃を始めた。
レオポールの得意属性は風属性なのだ。
でも、いくら得意属性とはいえ魔力強化が出来ないレオポールに、サンドワームを倒せる力はなく……この対戦はディナールの勝利で終了となった。
「僕もまだまだ鍛え方が足りないみたいだよ」
「でも、惜しかったですよ!魔力強化なしでもあそこまで戦えたんですから!」
「ありがとう、ミオ」
「レオポールもさー、杖作ってみたら?たぶんだけど、君には杖が合ってると思うんだよね」
「杖?」
「そうだよー。ディナール、今度作り方教えてあげなよ」
「はい。わかりました、ラウルおう……ラウルさん」
ラウルおう……?
ラウルと話す時に何だかぎこちないディナールが気になるところだけれど、次の対戦が始まるので置いておこう。
「次は、カミーユか」
「そうですね」
カミーユとラウルが訓練場の中央で向かい合った。
カミーユは強いけれど、ラウルも強い。
どんな戦いになるのか楽しみだ。
「師団長、少しは手加減してよねー」
「お前に手加減なんかしたら俺が怪我するだろうが」
「えー」
ラウルはいつもの笑顔で、どこか余裕に見える。
やっぱり、ルシヨット魔導国の出身ということで、魔法能力は相当なものなのだろう。
まだ、全力のラウルを知らないため、その能力の高さは未知数なのだ。
こうして、カミーユとラウルの対戦が始まった。
カミーユは、ラウルが魔物を召喚する前に激しい攻撃を繰り出した。
これでは、ラウルは召喚魔法を発動するタイミングが図れず、本来の力を発揮することが出来ない。
それでもどこか余裕に見えるラウル。
「カミーユと互角に戦っているのだから、あのラウルという人物はなかなかに強そうだな」
「まだ、本気じゃないと思いますけどね、たぶん」
「本気ではない?」
「はい。ラウルは召喚士で、魔物使いなんですよ。だから、それを見せてないから本気じゃないのかなって」
「ほう、そうなのか」
激しい魔法攻撃の攻防戦が繰り広げられる中、ラウルが両手を振り広げた。
すると、何体もの魔物が出現して、ラウルが指示を出すと魔物達がカミーユを取り囲むように移動した。
ラウルが詠唱を始めると……魔物達の前に魔法陣が浮かび上がり、カミーユに向かって攻撃魔法が一気に放たれた。
咄嗟に箒で上空へと飛び上がったカミーユだったけれど、攻撃を防ぎきれずに負傷したようだ。
「あれは……召喚魔法なのか?」
「うーん……たぶん、テイムした魔物に魔法を転送して攻撃したって感じですね」
「テイム?」
「あ、調教した魔物を使って攻撃したってことです」
アニメで、テイマーが魔物に魔法を転送して使っているのを見たことがある。
たぶん、ラウルの攻撃もそんな感じのものだと思う。
うん、テイマーってなんかいいな……今度、テイムの仕方教えてもらおうと思ったミオだった。
対戦は互角に進んでいき、決着がつかないまま時間切れとなったため、カミーユとラウルの対戦は引き分けという結果で終わった。
やっぱりラウルは強い。
「あーあ、やっぱ師団長には勝てなかったねぁ」
「でも、ラウルさん全力じゃなかったよね?」
「えー、そんなことないよ」
「あれで全力じゃないって……恐ろしい奴だな、お前」
「やだなぁ、師団長。俺、けっこう全力だったよー?」
「俺もまだまだ修行が足りないってことだな。ほら、次はミオだぞ」
「もっと修行したいんだったら、師団長が続けて戦ってくれてもいいんですよ?」
「うるさい。早く行け」
「……はーい」
「頑張って、ミオ」
「はい、頑張ります」
シャルルが優しく微笑みながらミオを見送り、訓練場の中央でコルトとミオが向かい合って立った。
「よろしくお願いします」
「よろしくね、ミオちゃん」
コルトがどんな戦い方をするのかわからない。
でも、それはコルトも同じようにミオの戦い方を知らないわけだから、条件は同じだ。
ミオがステッキを手にすると、コルトはディナールと同じようにポケットから杖を取り出して地面に突き立てた。
これは……召喚魔法?
地面に魔法陣が現れて、たくさんの魔物達が出現した。
ミオは咄嗟にスノーフロストで魔物達を凍らせて、箒で砕き割る。
でも、魔法陣からは次々と魔物が出現して来た。
この魔法陣を消さないと、魔物の出現は終わらないらしい。
ミオは魔物達を凍りつかせると魔法陣を消した。
「もしかして、ミオちゃんって魔法陣消せる人?参ったなぁ……」
コルトは、ミオを囲むように4つの魔法陣を描き、大量の魔物を召喚させた。
でも、ミオのスノーフロストは360度が効果範囲なので、スノーフロストで一気に凍らせることが出来る。
それに、これくらいの範囲なら、魔法陣はまとめて消すことが出来る。
「マジかぁ……これは、あんまり使いたくなかったけど…」
「ん?」
コルトは、それまでとは違う魔法陣を描いて魔物を召喚させた。
その魔物は……何と、キマイラだった。
キマイラって、確か草原に出現した魔物よね?
この人達……今はそんなこと考えてる場合じゃない、目の前のキマイラを倒さなくては。
「キマイラの弱点って……何だっけ?ゲームによって違ってたわよね」
ここはゲームの世界ではないけれど、とりあえずゲームでのキマイラの弱点を思い出しながら攻撃を仕掛けてみる。
ミオは、ステッキを持った両手をキマイラに向かって翳して、サンダーボルトを放ってみた。
「あの馬鹿!」
「ミオ!?」
ミオがサンダーボルトを放った瞬間に、カミーユが立ち上がった。
サンダーボルトがキマイラを直撃すると……何と弾き返してきたのだ。
「え……ウソでしょ!?」
もの凄い威力の雷攻撃が襲いかかり、必死に避けながら逃げるミオ。
その被害は斜面で見ていた皆の所まで及び、カミーユがミオに向かって叫んだ。
「ミオ!俺達を殺す気か!」
「いやいや、そんなつもりはこれっぽっちもないですよ!」
雷攻撃を弾き返すってことは……ゲームだとそんなキマイラの弱点は氷だったはず。
何種類もの属性を弾き返すなんてことはないと信じたい。
ミオは、ステッキを振り上げてフロージングランスを放った。
キマイラの弱点は氷属性で合っていたようで、フロージングランスはかなりのダメージを与えた。
ミオは自分にマジカライトをかけて、もう一度フロージングランスを放つ。
すると、キマイラは一気に砕け散って消えた。
「え……マジか」
「スノーフロスト!」
「うわっ!」
ミオがすかさずスノーフロストを放って、コルトの足元から首までを凍らせた。
これで魔法は使えないはず。
こうして、ミオが箒を持ってコルトに詰め寄り、箒の柄を首元に向けて動きを止め、ミオの勝利となった。
こうして、対戦試合が終わると、ラウルがディナールとコルトに詰め寄った。
すると、2人の顔が引きつり、大量の汗を流し始めた。
「君達さぁ、もしかして何かやってない?」
「「…………す、すみませんでした!!」」
ディナールとコルトの2人が、土下座をして頭を地面につけた。
そして、先日の魔物騒動のことを自白した。
2人は、ルシヨット魔導国の国王・ガストビの指示で、ペリグレット王国に竜の調査に訪れていた。
国民から情報を聞き出そうとしたけれど、なかなか有力な情報を得ることが出来ず、強大な力を持った魔物を複数出現させれば、王国を守るために竜が姿を現すのではないかと考えたらしい。
でも、2人はガストビの指示で王国を訪れたとはいえ、ガストビへの忠誠はなかったため魔物の召喚にはかなりの抵抗があった。
2人には、ペリグレット王国に被害を及ぼしたくないという気持ちがあったものの、ガストビの指示に歯向かうことは出来ず……国民への被害が出ないように場所を選んで魔物を出現させたのだと説明した。
「でも、サンドワームはシャルルさんの家の庭に出現しましたよ?大勢の人達が危険に晒されました」
「あれは……手違いと言うか。サンドワームが魔法陣から離れてあんなに動くとは思わなかったんだ。本当に申し訳ない!」
「魔導師団に入団したのは?竜を探す為か?」
「いや、それは違います!俺達は純粋にこの王国に移住したくて……」
「あー、それは本当だよ、師団長」
「信用してもいいのか?その2人」
「まぁ、大丈夫だと思うけどね。もしも裏切るようなことがあれば……」
「絶対に裏切るようなことはしません!ラウルお……ラウルさん!」
「そうですよ!俺達、本当にあの国から出たかったんだ!」
「はぁ……まぁ、いい。魔物の出現に対する謎は解決したしな。だが、ルシヨット魔導国の情報は教えてもらうぞ」
「「何でも話しますよ!」」
とりあえず、ディナールとコルトが悪い人達ではないということがわかった。
魔導師としての能力も高く、ペリグレット王国の魔導師団としていてもらえたら心強い存在だ。
それに、これでルシヨット魔導国の目的もわかるし、情報が手に入る。
竜の情報を集めている魔導師は、この2人だけではなく他にも大勢いるらしいので、この2人が竜を見つけられず情報を流せなかったとしても、いずれこの王国を守っている竜のことは知られてしまう可能性は高い。
魔法による戦力差は、明らかにペリグレット王国が劣勢だ。
少しでも戦力を上げるため、対策を講じていかなければならない。
出来ることなら、戦いは避けたいところではあるけれど……
黒ローブによる脅威はなくなったものの、ルシヨット魔導国の件は黒ローブよりも深刻な問題だと言えるだろう。
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お読みいただきありがとうございました!




