44 ラウルと旅人
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「ミオちゃん、一緒に食べよー」
「お疲れ様」
ミオが昼食を食べていると、隣にラウルが座った。
カミーユは仕事があるとかで、先に食べ終えて執務室に行ったのでミオは1人だ。
「ミオちゃんと食べるご飯は美味しいなぁ」
「スージーさんのご飯は、誰と食べても美味しいよ」
「そういうことじゃないんだよねー、まぁ、いいけど」
「んー?よくわかんないけど」
ラウルの言っていることがよくわからず首を傾げるミオ。
ラウルは笑いながら、パンをちぎって口に放り込んだ。
「ねぇ、ミオちゃん」
「なぁに?」
「港町で噂になっているあの竜の話ってさ……本当の話だと思う?」
「あれは、人間が勝手に広めた、ただの噂だよ」
「やっぱそうだよねー」
「うん、氷竜がそう言ってた」
「……氷竜が?」
「うん」
「え、ちょっと待ってよミオちゃん。氷竜が言ってたって……竜と話せるの!?」
「……えーと……まぁ、話せるかな」
「凄いねミオちゃん!いったい何者!?」
「……ただの魔導師だよ」
「あ!別に探るとかそういうんじゃないからね!?」
「うーん……もう、ラウルさんのこと警戒してないから大丈夫だよ?同じ王国魔導師団の仲間だし」
ラウルは黒ローブの組織の一員だったけれど、今は魔導師団の仲間だ。
魔導師団に来た頃は、正直なところ信用していいのかがわからなかったけれど、魔導師団として一緒に過ごしてきて、ラウルは悪い人ではないことがわかったし、今では信用できると思っている。
ただ、気になったことは追及したい性格らしく、そういうところが誤解を招くようだ。
「そういえば、ラウルさんにちょっと聞きたいんだけど」
「何?」
「結界を通り抜けちゃう体質とかある?」
「結界を通り抜ける体質?何それ、聞いたこともないんだけど」
「やっぱり知らないよね……」
「え、めちゃくちゃ気になるんだけど。そんな人いるの?」
「……まぁ……私なんだけど」
「ミオちゃんが!?これ食べたら見せてよ!訓練場行こう!」
こうして、ミオとラウルは昼食を食べて訓練場へと向かった。
―――――――
―――――
―――
「凄いねミオちゃん!ホントに何者!?」
「いや、だからただの魔導師」
ラウルが作るどの結界も通り抜けてしまうミオ。
このミオの現象は、ルシヨット魔導国から来たラウルにもわからないようだった。
今のところ、結界を通り抜けるからといって何か支障をきたしているわけでもないから、そんなに気にするようなことでもないだろう。
「知らないで結界の中に入らないようにね」
「うん、気をつける」
「午後は何するんだっけ?」
「ポーションが出来上がったら、サンブリーかフェルドーに届けるんだよ。1人ずつ両方に届けちゃえば早いのに……何でラウルさんは1人で行ってもいいのに、私はダメなの?納得いかないんだけど」
「師団長ってミオちゃんに対してちょっと過保護すぎるよねー。ま、わからなくもないけど」
「え、何で?私にはわからないんだけど?」
ミオが1人での外出を許可されているのは、モンフォワールの街だけだ。
もっと自由に出歩きたいと思っているミオには、とても窮屈なことだ。
こうしてミオとラウルが話していると、ポーションが出来上がったらしくカミーユが2人を呼びに来て、ミオとラウルは出かける準備をした。
ポーションは1個ずつだと重くはないけれど、容器が瓶なので数があると結構な重さだった。
箒の前後にぶら下げて飛ぶのに、気をつけないとバランスを崩してしまう。
ポーションって、濃縮してタブレットとかカプセルに出来ないんだろうか?
そうすればかさばらないから携帯しやすいし、飲みやすいと思うのだけれど。
きっと、改良の余地はあるだろう。
「それじゃあ、行ってきますね師団長」
「あぁ。気をつけて行けよ」
「はい」
今日はフェルドーに運んで、1泊して明日の午前中に王都に戻って来る予定だ。
あれ以来、魔物騒動は起きていないけれど、何があるかはわからないから魔物の気配に注意しないといけない。
それにしても……一夜にして複数出現した、あの魔物達は何だったんだろう?
いまだに謎に包まれていた。
それに、この王国に竜がいるのかを町で聞いていたという旅人についても、何もわかっていない。
王国を訪れる旅人は少なくはないので、見つけ出すのも困難だろう。
小説や漫画なんかだと、こういった事件は関連があったりするのだけれど……どうなんだろう?
ミオが考えたところで結論は出ない。
こんな時、コ○ン君がいたらな……って、ダメだ。
コ○ン君がいたら殺人事件が起きてしまう!
ミオは頭を振って非現実的な考えを振り払った。
「え、どうしたのミオちゃん!?大丈夫?」
「あ、大丈夫だから気にしないで。うぅぅ……寒くなって来たね。上着を着ようかな」
「そうだねー」
一度箒から降りて、ミオは上着を着てマフラーと手袋を装着し、再び箒を浮上させた。
フェルドーに向かうなら、上空よりも地上付近を飛行した方が寒くはないのだけれど……道に沿って行くと時間がかかるし、直線で向かうとなると森の中を抜けることになるから大変なのだ。
完全防備で寒さに耐えながら進む。
こうして、日が暮れる前にはフェルドーに到着したミオとラウル。
急いで帰れば夜には王都につけるなとミオが呟くと、ラウルが全力で拒否したので予定通りフェルドーで1泊することにした。
―――――――
―――――
―――
「え、ラウルさんお酒飲めるの?」
「もちろん!ミオちゃん飲まないの?」
「私は……お酒はちょっと苦手かな」
「嬢ちゃんは一口で眠っちまったからな」
「そうなの?えー、俺も見てみたいなぁ」
「飲まないからね!」
意外にもラウルは酒に強いらしく、ここの強い酒を飲んでもいつもと変わらないように見える。
ジェラリーは、酒は飲めるけれどそんなには強くないようで、真っ赤な顔になってミオの隣で鍋をつついて休憩中だ。
「大丈夫です?ジェラリーさん……真っ赤ですけど」
「俺?あー、赤くなりやすいだけだから大丈夫だよ。でもなー、ここの酒はキツイ」
「第二騎士団の皆さんは、本当に凄いですよね。てゆーか、ラウルさんがあんなにお酒強いのには驚きましたけど」
「アイツ、凄いな。何杯目だ?」
騎士と飲み比べを始めたラウル。
明日、二日酔いにならないといいけれど……
こうして賑やかな夕食を楽しみ、翌朝ミオとラウルは、王都に帰るためにフェルドーを出発した。
「ラウルさん、昨日かなり飲んでたけど大丈夫なの?」
「俺?全然へーき」
「凄いなぁ」
「ミオちゃんがお酒飲んで寝ちゃうとこ、見たかったなー」
「見なくていい!」
上空を箒で飛びながら時々見えてくる道には、馬車や馬に乗る人や歩く人の姿があった。
こちらの世界では車などの交通手段はないので、これが当たり前の光景だ。
歩いて旅をするとか、交通網の発達した世界で生きてきたミオには考えられないことだ。
王宮から街までの道を歩くだけでも大変だと思っているくらいだし。
「この世界の人って、凄いよね」
「この世界?え、どういうこと?」
「あ、何でもない」
「えー、気になるじゃん」
「遠くまで移動するのに歩いて移動する人もいるでしょ?そういうのって、この王国だけなの?」
「俺もそんなにたくさんの国には行ったことないけどさ、だいたい同じなんじゃない?ルシヨット魔導国だって、魔導師以外は徒歩か馬車だし」
「そうなんだ」
魔導師が箒に乗れる世界で良かったと、ミオは心から思った。
こうして2人が王宮の近くまでやって来た時、道を歩いていた2人組の男性が、ミオの姿を見て声をかけてきた。
「あ、えーと……確か、ミオちゃんだっけ?」
「え?」
突然名前を呼ばれて、驚いてミオが振り向くと……前にモンフォワールの街で会った2人組の旅人だった。
ミオは箒から降りて2人の前に立った。
「旅人さん達……何で私の名前を?」
「収穫祭の時に、一緒にいた彼がそう呼んでたから」
「あ……」
「王宮の魔導師さんなんだ」
「えーと……」
「ミオちゃ~ん、どうしたの?その人達……」
ラウルも箒から降りて駆け寄って来た。
すると、ラウルを見た2人の旅人が目を見開いて驚き、ミオはよくわからずに旅人とラウルを交互に見た。
「も、もしかして……ラウルお…」
「わーっ!!ちょっと君達、向こうで話そうか!」
「え、どうしたの?ラウルさん」
「俺、ちょっとこの2人と話してくるからさ、ミオちゃんは先に戻っててよ!」
「え……この旅人さん達ってラウルさんの知り合いなの?」
「ま、まぁ、そんな感じ。だからさ、先戻ってて」
「うん……じゃあ、先に行ってるけど……早く帰らないと、お昼ご飯の時間終わっちゃうからね?」
「俺の分も取っといて!」
何だか様子のおかしいラウルに首を傾げながら、ミオは王宮へと戻って行き、ラウルはミオの姿が見えなくなると、2人の旅人と向き合った。
「やっぱり、ラウル王子ですよね?」
「ここでは王子と呼ばないでもらえるかな。そもそも、今は王子ではない」
「何故、ここに?」
「……元々は竜の噂を聞いて来たんだけどね。今は、王宮魔導師団の魔導師だよ」
「竜の噂……ということは、やはりこの王国は竜に守られているんですか?」
「それを聞いてどうするんだよ?ガストビに報告するの?」
「いえ……俺達はもうあの国には戻らないと決めたので」
「は?何言ってるの?君達、死ぬよ?」
「クリスタルは……どこかの海に捨ててもらうよう、船乗りに渡してきました」
「そんなことくらいでは、逃れられないかもしれませんが……」
ラウルは、実はルシヨット魔導国の前国王の息子だった。
現国王であるガストビによって、父親である前国王が暗殺されたことを知ったラウルは、ガストビによって命を狙われ、命からがらルシヨット魔導国から出国していた。
そして、以前から耳にしていた竜の噂から、父親を生き返らせることが出来るのではないか……とこの王国に来て、黒ローブの組織に入って竜を調教して手中に収めようとしていたのだ。
でも、父親を生き返らせるなどということは不可能だと悟り、今は純粋にミオの傍にいたくて魔導師団に入っている。
旅人達が船乗りに預けたというクリスタルとは、ルシヨット魔導国で通信手段として使っているもので、国王であるガストビが竜の情報を集めるために部下達に持たせているものだ。
通信手段だけでなく、部下のいる場所を把握することにも使われている。
旅人達は、ガストビの指示で動いていたものの本心では忠誠を誓っておらず、この王国に移住するために、クリスタルを海に沈めてもらうといった苦肉の策に出たというわけだ。
「俺達も……魔導師団で雇ってもらえませんか?」
「まぁ……この王国は魔導師が不足してるからね。でも、俺には決める権利はないし、自分達で師団長の所に行きなよ。案内くらいはしてあげるからさ。但し、俺のことは絶対に王子とは呼ぶな」
「わかりました」
「ありがとうございます!」
こうして、2人の旅人はラウルと一緒にカミーユの所に向かい、魔導師団への入団希望者としてカミーユに紹介された。
ラウルはカミーユに2人を託して、昼食を食べるため食堂へと走って行った。
すでに昼食の時間は終わっていたけれど、ミオがラウルの分の食事を用意してくれていたので、ミオと一緒に遅い昼食を食べた。
「あの旅人さん達は?」
「ここの魔導師団に入りたいらしいよ」
「え、本当に?魔導師だったんだあの人達」
「まぁね」
「嬉しいな、これで魔導師が増えるよ」
「そうだねー」
魔導師不足の王国魔導師団にとって、魔導師が増えるということはとても嬉しいことだった。
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お読みいただきありがとうございました!




