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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
第二章 魔導師の国
47/132

43 収穫祭2

のんびり更新中♪

 ペリグレット王国の収穫祭は、町や村ごとに違うけれど、だいたい2~3日間行われるらしい。

 昨日、王都・モンフォワールでの収穫祭を楽しんだミオとシャルルは、馬車に乗ってジョブリンという町に向かっていた。

 この町は、8月に結界の点検をした際に第一騎士団と一緒に泊った町で、納涼祭でビショビショになった町だ。


「昼間も色々なイベントが開催されているが、夜はとても奇麗なんだ」

「そうなんですね。楽しみです」


 こうして、ミオがシャルルと一緒に馬車で移動している頃、魔導師団の執務室では……


「えー、ミオちゃん今日も休みなの?」

「そうだ」

「仕事終わったら、一緒に収穫祭行こうと思ってたのにー」

「残念だったな、ミオは明日まで戻らん」

「えー!?何で!?」

「何でって……出かけているからな」

「誰と?」

「それは教えられん」

「何でだよ!」

「何でミオのプライベートを教えなきゃならないんだ?俺が勝手に教えていいわけないだろうが」


 ミオが明日までいないことを知ったラウルが、カミーユにブーブー文句を言っていた。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「うわぁ、大きなかぼちゃですね!こっちはお化けニンジン!」


 ジョブリンの町に到着したミオとシャルルは、宿の手続きをして荷物を置くと、町の中心で開催されているいろんな大会を見に来ていた。


「色々な野菜の大きさを競う大会だよ。あとは、面白い形の野菜とかもあるんだ」

「見たことはなかったですけど、私がいた世界でもやってましたよ、こういうの」

「そうなのか?」

「はい。あ、これは……大きな葉っぱ?」

「キャベツだな」

「おー」


 こんなに大きく実った葉っぱに出来たキャベツって……超巨大なキャベツになるんだろうか?

 栗の大食い大会なんてのも開催されていた。

 何故、栗?

 皮をむいた栗を食べるのかと思っていたら、自分でむいて食べる大食い大会だった。

 栗の皮ってむくのが大変なのよね、硬いし中に薄皮もあるし。

 見ていると、薄皮ごと食べている人がほとんどだった。

 凄いな、栗の大食い大会。

 そんな栗の大食い大会が開催されている近くのブースでは、栗を使ったスーツが販売されていた。


「あ、モンブラン」

「モンブラン?」

「これです、これ」


 ミオがモンブランを指差すと、このケーキは栗のクリームケーキだと教えてくれた。

 モンブランという名前の由来は山の名前なので、こちらの世界でモンブランが通用しないのは仕方がない。


「ミオの世界ではモンブランというケーキなのか」

「確か、モンブランって山があって、それをモチーフにして作ったから、モンブランって呼ばれてたと思います」

「確かに山っぽいかもしれないな」


 そう言いながら、シャルルがモンブランを1つ買ってくれた。

 ミオが1人で食べるには少し大きなケーキだったので半分ずつ食べたけれど……栗の風味が濃厚で、とても美味しいケーキだった。

 本当に、こちらの世界の食べ物は美味しいと思う。


 町のはずれの牧草地では、巨大な鍋で作った野菜がたっぷり入ったスープや、野菜入りの巨大オムレツなどが振舞われていた。

 こういう巨大鍋を使ったイベントって、世界が違っていてもあるものなんだな。


「ミオはここに座って待っていて」

「一緒に行きますよ?」

「いいから、座っていて」


 シャルルは、優しく微笑みながらミオを座らせると料理を貰いに行き、しばらくすると、トレーに野菜スープとオムレツとパンを乗せて戻って来た。


「ありがとうございます。わぁ、どれも美味しそうですね!」

「ここの大鍋料理は、とても評判がいいんだ」

「そうなんですね」


 シャルルが言う通り、スープもオムレツもとても美味しいものだった。

 パンも巨大な何かを使ったのかと思ったら、普通にパン屋さんのパンらしい。


 こうして昼食を食べて少しのんびりした後、牧場の柵の中にいた羊やヤギを見に行ったのだけれど……ヤギが紙を食べないということを知り、衝撃を受けたミオだった。

 逆に、ミオのいた世界のヤギは紙を食べるのかとシャルルに聞かれたけれど……どうなんだ?ヤギは紙を食べる生き物だと思っていたミオには説明が出来なかった。

 ヤギなんて見たこともなかったし。


 この町での日中の祭りは、日が暮れる前に一旦終了となるらしい。

 片付けをして、夜の祭りの準備が始まるからだ。

 ミオとシャルルは宿に戻って、日が暮れるのを待つことになった。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「ミオ?」


 日が暮れてきて、シャルルはミオの部屋のドアをノックした。

 けれど、返事は聞こえて来ず……

 少し悩んで部屋のドアを開けて中に入ってみると……ベッドでうつ伏せになって眠っているミオの姿があった。

 シャルルはクスッと笑いながら、ベッドの端に座ってミオの頭を優しく撫でた。


「ミオ……そろそろ行くよ」

「……………」

「……これは…?」


 シャルルが、ミオの耳に何かが入っているのを見つけて、指でそっと外してみると、ミオがゆっくりと目を開けた。


「起きた?」

「……シャルルさん!?……す、すみません、寝ちゃってました」


 目をこすりながら起き上がるミオ。


「耳にこれが入っていたが……」

「あ、イヤホンです」

「イヤホン?」

「音楽を聴く道具ですよ。えーと……こんな感じです」


 ミオは、静かめの曲を流してシャルルの耳にイヤホンを当てた。

 イヤホンから聞こえてくる音に驚くシャルル。


「これが……ミオの世界の音楽なのか?」

「まぁ、そうですけど……たくさんのジャンルがある中の1つですよ。いろんな音楽があったので」

「今度、ゆっくり聴かせてもらえるか?」

「はい」


 こっちの世界の音楽がどんなものかはわからないけれど……ミオが聴いている曲を聴いたら驚いてしまうのではないだろうか?


 ミオは、ベッドから降りると部屋の灯りをつけて、バッグからブラシを取り出して髪の毛を整えた。


「すみません、お待たせしました」

「そんなに待ってないから大丈夫だよ。それに……ミオの可愛い眠っている姿も見られたしな」

「えっ!?」

「ふふ、耳まで真っ赤だよ」

「うぅぅ……」


 最近、こうしてからかわれることが多くなってませんか!?


 シャルルは笑いながら立ち上がると、ミオの手を取って部屋を出た。






 道端や建物に飾られたジャック・オー・ランタンに火が灯され、町の雰囲気が昼間とは全く違うものになっていた。

 ジャック・オー・ランタンは可愛らしいものが多く、他にもキャンドルや可愛らしいランタンなども飾られているため、おどろおどろしさは全くない。

 柔らかい光が、町を幻想的な空間に変えていた。


「綺麗ですね!」

「そうだな。広場では、音楽祭が開催されるんだが……良かったら行ってみないか?」

「はい!」


 どんな音楽が聴けるんだろう?楽しみだ。

 広場には、小さなステージが設置されていて、グランドピアノやバイオリンなどの楽器が並べられていた。

 こちらの世界も、ミオがいた世界も、楽器に違いはなく同じに見える。

 ステージの前には、丸太を半分にしたようなベンチが観客用にいくつも並べられていて、ミオとシャルルは空いていた一番前のベンチに座った。


「私、こっちの世界の音楽って知らないので楽しみです」

「ここの音楽祭は確か……楽器演奏の他にも、子供達の合唱などもあったと思うよ」

「そうなんですね」

「少し、よろしいかね?」

「「?」」


 ミオとシャルルが話していると、小太りの中年男性が話しかけてきた。

 何だろう?


「お嬢さん、ピアノが弾ける顔をしておるな」

「……それ、どんな顔ですか。弾けませんよ、私」

「いーや、弾けるな。顔に書いてある」


 思わず両手で顔を覆ってしまったミオ。

 確かに、ミオはピアノは弾けるけれど……この男性は何でそんなことがわかるんだ?


「……って、書いてあるわけないじゃないですか」

「すまんが、手を貸してもらえんか?」

「だから、弾けませんって。私、ここの音楽とか知らないですし」

「ピアノ奏者が弾けなくなってしまってな。間もなく音楽祭が始まってしまうし、困っておるのだよ」

「ケガなら治しますよ?」

「それよりも、代わりに弾いてくれ」

「……話聞いてます?」


 小太りな中年男性は、ミオの前で膝をついたまま動こうとしない。

 どうしたものか……


「……私、初見で弾けるほど上手ではないので」

「心配しなくてもいいぞ。そこまで難しい曲ではない」

「そういうことではなくてですね……」

「すまないが、この子をあまり困らせないでもらえるか?」

「だが、このままでは音楽祭が始められないのだよ」


 ミオとシャルルは、困ったように顔を見合わせた。

 この男性、きっと諦めたりはしないだろう。

 そもそも、何故ミオがピアノを弾けると思ったんだ?

 そういう能力なのか?


「じ、じゃあ、楽譜を見てから考えます」

「引き受けてくれるのか!」

「いや、楽譜を見てからって言いましたよ?」

「今持って来るぞ!」


 小太りな中年男性は、体格のわりには軽やかな足取りで走って行った。


「ミオは……ピアノが弾けるのか?」

「まぁ……昔、母にスパルタで教えられましたから、多少は……」

「スパルタ?」

「えーと……めちゃくちゃ厳しく教えられたってことです。何だか知りませんけど、ピアノは厳しかったんですよ、私の母」


 でも、最近はピアノなんて触ってもいないし、指が動く気がしない。

 初見の曲を練習もなしで弾くなんて、到底無理な話だ。

 そこに、中年男性が小走りで戻って来た。


「これが今日の楽譜だ。さぁ、行こうではないか!」

「ち、ちょっと待ってくださいよ!見てから、楽譜全部見てからですって!」


 ミオは手渡された楽譜を、パラパラとページをめくりながら見ていった。

 まぁ……弾けないこともなさそうだけれど……


「指が届かないところとか、弾きにくい所は変えてもいいです?それなら弾けそうですけど」

「好きにしてくれて構わないさ。時間がない、行くぞ」

「わ、ちょっと……シャルルさん…」

「私はここで見ているよ。頑張って」


 こうして、音楽祭を見に来たはずなのに、何故か演奏者としてステージに上げられてしまったミオだった。

 元々、ピアノを弾くはずだった人は、怪我で弾けなくなったわけではなく、緊張のあまり朝からトイレにこもりっぱなしで出て来れなかったらしい。

 何故、今日の奏者に選ばれたんだろう……






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「とても良い音楽祭だったよ」

「私も聴きたかったです……」


 音楽祭は無事に終了し、ミオとシャルルはお礼にと夕食をご馳走になり、宿へと向かって歩いている。


「ふふ、私はミオのピアノが聴けて幸せだ」

「もう、必死すぎてどんな曲を弾いたのかも覚えていませんよ、私……」

「とても上手に弾けていたよ。いつか、ミオが今まで弾いてきた曲を聴かせてほしい」

「たぶん……知っている曲なんてないですよ?」

「かまわないさ」


 シャルルは、足を止めてミオに笑顔を向けた。


「私は、ミオのことをもっとたくさん知りたいと思っている」

「私のことですか?別に面白いことなんてないですよ?」

「別に面白さを求めているわけではないよ。ただ、ミオのことが知りたいだけだ」


 ミオの頬に、シャルルが優しく手を当てて、ミオの心臓がドキドキと音を立て始めた。

 シャルルが微笑みながらミオに顔を寄せて来て……額に唇を押し付けた。

 一気に顔に熱を持つミオ。

 このままでは心臓が口から出て来てしまう!

 てゆーか、魂も抜けて行ってしまう!


「ふふ、ミオの顔は真っ赤なのだろうな」

「そそそ、そんなことは……」


 シャルルってこんな人でしたっけ!?

 2人でいると、こんなこと多くなってませんか!?


 シャルルは笑いながら、少し散歩をしながら宿に戻ろうと言って、ミオの手を握って歩き始めた。

 町の優しい光が、2人を包み込んだ。



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お読みいただきありがとうございました!

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