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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
第二章 魔導師の国
46/132

42 収穫祭

のんびり更新中♪

 ペリグレット王国の王都・モンフォワール。

 普段から多くの人で賑わっている街だけれど、今日の賑わい方はいつもの倍以上だ。


 そう、今日は待ちに待った収穫祭。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「うわぁ、凄い人ですね!」

「王都は港町にも近いから、人が集まりやすいんだ」

「なるほど」


 今日はどの店も休業で、テラス席なども片付けられているため、いつもよりも道が広くなっているけれど、露店やちょっとしたゲームのようなものがあったり、この人の多さでかなり混雑していた。


「噴水広場に行ってみようか。あそこは確か、市場のようになっていたはずだ」

「そうなんですね」


 シャルルがミオの手をつかんで歩き始めた。

 人の流れに従って噴水広場に向かって歩いていると、道端で大道芸をしている人を見つけた。

 こちらの世界にもあったんだ、大道芸。

 思わず立ち止まって眺めていると、シャルルが耳元に顔を寄せて声をかけてきてドキッとする。

 そうか、この人の多さだから、こうしないと声が聞こえないのかもしれない。


「少し見ていこうか」

「はい」


 大道芸をしている人の近くに移動して見物する。

 やっている内容は、この人もミオと同じ世界から転生して来たんじゃないだろうか……という程、元の世界で見たことがある大道芸と同じものだった。


「こっちの世界でもコレが見られるとは思いませんでした」

「ミオの世界にもあったの?」

「ありましたよ。全く同じ感じです。転生者なんじゃないですか?あの人」

「ふふ、そうかもしれないな」


 こうして大道芸を楽しんでいると、投げていたボールがミオの手元に飛んで来て、思わずキャッチしてしまった。

 笑顔で手招きをする大道芸人。


「ミオを呼んでいるよ」

「え……」


 どうやら、前に出て来いということのようで、ミオは戸惑いながら出て行きボールを手渡した。

 ちょっと恥ずかしいんで、戻ってもいいですか?

 ミオの他にもう1人ボールを受け取った客がいて、その人も前に出て来た。

 大道芸人は、ミオともう1人に1本のロープを持たせ、大縄跳びのように回すよう説明した。

 ミオがもう1人と一緒に、せーのでロープを回し始めると、大道芸人は中央で縄を飛びながら芸をし始めた。

 おー、凄いぞ!

 思わず拍手をしそうになったけれど、今は縄を回しているんだった。


 素晴らしい縄跳び芸が終わると周囲から大歓声が上がり、大道芸人がミオともう1人の手を取って深々とお辞儀をしたので、ミオも慌ててお辞儀をした。

 めちゃくちゃ恥ずかしいのですが……

 手伝ったお礼にクッキーを貰い、ミオはシャルルの所に戻った。


「お疲れ様。楽しかった?」

「ちょっと恥ずかしかったですけど……楽しかったです。クッキーも貰っちゃったし」

「良かったな」


 こうして、最後まで大道芸を楽しむと、ミオ達は噴水広場に向かうため再び人混みの中に入って行った。

 その時、ミオの足元に男の子がしがみついて来て、驚いて立ち止まった。

 迷子だろうか?

 ミオがしゃがみ込んで男の子と目線を合わせると、男の子の目から大粒の涙が零れ落ちた。


「えーと……お母さんと来たの?」

「……パパと……ママ……グスッ」

「そっかぁ……それじゃあ、一緒に探そうか」

「……うん……グスッ」

「ボク、お名前は?」

「……リオ」

「リオ君ね、パパとママはどんな人かなぁ?うーん……髪の色とか……着ていた服とか」

「……パパは大きくて、ママはちょっと大きい」

「そ、そっかぁ(どうしよう、全然わかんない…)」


 ミオはとりあえずシャルルに知らせようと立ち上がったけれど……


「シャルルさん……あ、あれ?」


 そこにシャルルの姿はなかった。

 しまった、はぐれてしまった……


 ちょうど、ミオがリオにしがみつかれてしゃがみ込んだ時、シャルルはミオと手をつなごうと振り向いたところだった。

 そのため、シャルルの目にミオの姿が映ることはなく……キョロキョロとミオを探しながら、人に流されて離れて行ってしまった。


「(こ、困った……どうしよう…)」


 きっと、迷子センターなどという気の利いた場所もないだろうし……そもそも、あったとしてもアナウンスも出来ないし。

 とりあえず、リオの両親を探すのが先だ。


「じゃあ、あっちに行ってみようか」

「……うん」


 ミオはリオと手をつないで歩き始めた。

 顔も特徴もわからない人を探すって……どうすればいいんだ?

 とりあえず、呼びかけてみよう。


「リオ君のご両親いませんかー?」


 この人混みの中で、どれくらいミオの声が通るんだろうか?

 こんな時、上空からだったら、子供を探してそうな大人を見つけることが出来るかもしれないけれど、残念ながら今は箒がない。

 ミオはリオの手を離さないように気をつけながら、必死に声を張り上げて歩いた。


「抱っこぉ……」

「だ、抱っこね……おいで」


 歩き疲れてしまったらしいリオが、ミオに向かって両手を伸ばしてきた。

 ミオはリオの両脇に手を入れて抱き上げ……重たっ!

 子供って、こんなに重いんですか!?

 軽々と抱きかかえている母親とかよく見かけるけれど、凄くないですか!?

 ミオは、リオを落としてしまわないよう、両手でしっかりと抱き上げながら、リオの両親を探して人の流れに沿って歩いて行く。


 てゆーか、人の背中しか見えないミオに、リオの両親が探せるのだろうか?


 立ち止まったり、振り返ったり、戻ったりしながら随分歩き、ミオの腕が限界を迎えたため、一旦人混みから抜けて道の端っこに出て来てリオを降ろした。

 そんなミオの姿を見つけたのは、シャルル……ではなく、先日この街で会った2人の旅人だった。


「あれー?あの子って、こないだ薬草買ってた子じゃないか?」

「そうだな……子供?」

「え、もしかして子持ちなのか?信じられないな」

「いや、誰かを探しているみたいだぞ」


 ミオは、少し休んで腕を振ると、再びリオを抱き上げて両親を探し始めた。

 すると、ミオの声を聞いて女性と男性が駆け寄って来た。


「パパ!ママ!」

「「リオ!」」


 リオが駆け寄って来た2人に向かって手を伸ばし、リオの母親であろう人物がミオの手からリオを抱き上げた。


「リオ君のご両親ですか?良かったです、見つかって」

「本当にありがとうございました!このお礼は……」

「お礼なんていいですよ。人が多いので、はぐれないようにしてくださいね」

「「ありがとうございました!」」

「お姉ちゃん、バイバーイ!」


 ミオは手を振りながらリオ達を見送り、自分はどうしたものかと近くにあったベンチに座った。

 疲れた……本当に疲れた。

 明日は腕が筋肉痛に違いない。


「……携帯は使えないし……どうやって探そう?」


 シャルルを探す手段がわからず、流れていく人混みを見ながら途方に暮れるミオ。

 そんなミオに誰かが話しかけてきた。


「君、こないだ薬草買ってた子だよね?」

「え……(誰!?)」

「あー、覚えてないかな?こないだ、雑貨屋さんの近くで声かけたんだけど」

「…………あ、あの時の旅人さんですか?」

「そうそう。また会えるなんて驚いたよ。それにしても、凄い人の数だねここのお祭り」

「そ、そうですね……私も驚きました」

「1人で来たの?」

「いえ……ちょっと迷子の子と話していたらはぐれてしまって……」

「あー、そういうこと?一緒に探してあげようか?」

「だ、大丈夫ですよ……自分で探しますので」

「人混みに紛れちゃったら、相手も探せないだろうし……君はこのベンチにいなよ。俺達が探してあげるから。で、どんな人?」

「で、でも……旅人さん達にご迷惑をおかけするわけには…」

「迷惑なんて思わないから、心配しなくてもいいよ。どうせ、俺達も暇なんだし。な」

「まぁ、そうだな」

「ほら、どんな人か教えて」

「……えーと……とても奇麗な金髪で、背がとても高くて……あ、髪の毛は長めで後ろで1本に結んでいます。目の色はアクアブルーっていうか…」

「うーん……背が高いって、どれくらい?」

「あなたよりも……たぶん少し高いです」

「ってことは……もしかして彼氏さん?」

「いえ、違いますよ!」

「おー、即答」

「す、すみません……」


 こうして、2人の旅人がシャルルを探してくれて、そんなに時間がかからずにミオはシャルルと再会できた。

 やっぱり、背が高いっていいなと思う。


「す、すみません。ちょっと迷子の子と話してたら、シャルルさんいなくなっちゃってて……」

「いや、私がもう少し気をつけるべきだった。すまない」

「この人達、旅人さんなんですけど、一緒に探してくれて」

「そうか。礼を言わせていただく」

「いやいや、俺達もたまたま見かけたからさ。困っていそうだったし」

「この人混みだ、はぐれてしまっても仕方がないだろう」

「しっかり手をつないであげないと。ね、彼氏さん」

「だ、だから、そういうんじゃ……」


 1人の旅人が、ミオとシャルルの手を取ると、2人の手をつながせてニッコリと笑った。

 ミオとシャルルは、顔を見合わせて苦笑いすると、2人に頭を下げて噴水広場へと向かった。


「なぁ、俺達にはあの2人がどうなるのか、見届ける義務があると思わないか?」

「は?そんな義務はないだろ」






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「おー、何だか可愛らしいマルシェですね!」


 噴水広場に到着すると、いつもとは全く違った景観に変わっていた。

 野菜や雑貨、アクセサリーなどの露店が並び、ワゴン販売のような可愛らしい店もあって、何だかウキウキしてしまう空間となっていた。


「ミオの世界では、市場のことをそう呼ぶのか?」

「オシャレな街とかにあるのはマルシェって呼んでますけど……まぁ、正直なところよくわからないです」


 ミオがケラケラと笑いながら答える。

 収穫祭では、ふだんは王都では購入できないような野菜や雑貨などもたくさん売られるらしい。

 他国の商品も並べられるようで、それなら魔導師のステッキも……と思って探してみたけれど、それは見つからなかった。


 露店の中には、ちょっとしたゲームが楽しめる場所もあり、子供だけではなく大人も楽しむことが出来た。

 以前にたまたま参加した納涼祭(放水祭り)のようなビックリイベントはないものの、王都の収穫祭も十分楽しめる。

 大きな通りでは、パレードも行われているようだった。

 野菜や果物の仮装をしたり、野菜や果物の山車のようなものを引いて歩いたり……何だか元の世界での祭りを思い出す。

 仮装が野菜や果物っていうのがちょっと面白い。


「前に水を浴びた祭りに参加したのを覚えてる?」

「はい、ビショビショでしたけど、楽しかったですよね」

「明日は、あの町の収穫祭に行こうと思っているのだが……」

「そうなんですね。楽しみです!」

「祭りは夜がメインだから、1泊しないといけないんだ。カミーユには私から話していたから、ミオも休みにしてもらっているはずなんだが」

「あー、だから休みだって言われたんですね、私」

「大丈夫?」

「え、何がですか?私は大丈夫ですけど」

「そうか、それなら良かった」


 シャルルは、1泊することにミオが抵抗はないのかと心配だったけれど、それを言ってしまうと逆に意識されてしまうのではないかと思い、口にすることが出来なかった。

 ミオが気にしていないようだったので、心の中で安堵のため息をついた。


 こうして、ミオとシャルルが祭りを楽しんで王宮へと戻ったのは、日が暮れ始める頃だった。

 楽しい時間はあっという間に過ぎていくものだ。



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