40 魔物に襲われた王国
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窓から眩しい光が差し込み、ミオはゆっくりと目を開けた。
昨日の騒ぎがまるで嘘だったかのような、静かな朝だ。
ベッドの上でひと伸びして……全身を襲う痛みに顔を歪める。
「痛たたた……」
いつもなら、ヒールで回復してしまうからこんな痛みに襲われることもない。
昨日は魔力が底をついていたので、回復しないまま寝たんだった。
これが、いわゆる打ち身というヤツだろうか?
ミオは何とか体を起き上がらせて、ベッドの上に座った。
まぁ、あれだけ地面を転がったんだから、体が痛くて当然だ。
よく死ななかったな、私……今考えてみれば、死んでもおかしくない戦いだったのではないだろうか?自分の体の頑丈さに少し驚く。
「さすがに魔力は回復したわよね……」
随分とぐっすり眠ったような気がするから、魔力も回復しているはずだ。
ミオは、ヒールを使って傷や全身の痛みを癒していった。
―――――――
―――――
―――
「おはようございます」
「あらぁ、ミオちゃん。おはよう……体は大丈夫?」
「はい。起きて回復してきたので、もう傷もないですよ」
完全復活したミオは、顔を洗って身なりを整えると、リビングに顔を出した。
リビングにはエミリーとシャルルがいて、ミオの顔を見るなりエミリーが駆け寄って来た。
「あらぁ、本当に綺麗に治ってるわね!私も魔導師になろうかしら」
「母上には無理だと思いますよ」
「やぁね、冗談よ冗談。まったく、シャルルには冗談も通じないのだから。ほら、ミオちゃんも座って。もうすぐ朝食の用意が整うから」
「はい」
ミオはシャルルの隣に座った。
昨夜のこともあって、少しドキドキしてしまう。
「よく眠れた?」
「はい。それはもう、ぐっすり眠れましたよ!」
「それは良かった」
「お父様やシルヴィーさん達は?」
「もう出かけたよ。父は庭の修理のことで業者に相談に行っている。シルヴィー兄さんは、昨夜のこともあって忙しいらしい」
「あれだけの騒ぎでしたもんね……」
「私達も、王都に戻ったら国王に報告だよ?」
「はい」
そんな話をしていると、執事が朝食の用意が整ったことを知らせに来て、3人は朝食が用意されている部屋へと移動した。
こうして、朝食を食べて部屋に戻り、帰り支度をしながらミオは壁にかけられたドレスを見上げた。
せっかく買ってもらったのにな……そういえば、ドレスってどうやって洗濯するんだ?
ミオは、荷物を詰め込んだカバンとドレスを手に、リビングへと下りて行った。
「お母様、ドレスってどうやって洗濯してお返ししたらいいですか?水洗いしてしまって大丈夫です?」
「あらぁ、ミオちゃんはそんなことしなくてもいいのよ。こっちでやっておくから」
「いえいえ、せっかく買って頂いたドレスですし、きちんと洗濯をして持って来ますよ」
「こういうのはね、専門家にお願いするのが一番なのよ。また着せてあげるから、いつでも遊びにいらっしゃい」
「すみません……ありがとうございます」
「ミオ、そろそろ出発するよ」
「あ、はい」
シャルルがリビングに入って来て、ミオのカバンを持ちながら玄関へと促した。
「あ、自分のカバンくらい自分で持ちますよ!」
「ミオちゃんは持たなくていいのよー。シャルルに持たせておきなさい」
「で、でも……」
「行くよ、ミオ」
「……はい」
こうして馬車に乗り、ミオとシャルルはパトリエール邸を後にした。
昨日サンドワームと戦った庭は、日の光の下で見ると、より一層激しい戦いだったことがわかる。
サンダーボルトなんか放たなくて本当に良かった……もし使っていたら、さらに酷い惨状になっていたと思う。
自分にもっと力があったら、ここまで酷いことにならなかったのかな……そう思いながら馬車の小窓からミオが眺めていると、シャルルがミオの頭に手を乗せた。
「庭はそのうちに元に戻るから、心配はいらないよ。屋敷が崩されなくて良かった」
「……誰がこんなことをしたんですかね?やっぱり、竜の噂と関係があるんでしょうか」
「どうだろうな。竜に関係していたとしても、私の家を狙う意味はわからない」
「そうですよね」
今回の件に関しては謎だらけだ。
馬車が港町に入ると、街の様子はいつも通りで昨夜の出来事は影響していないようだった。
街への被害がなかったことにホッとする。
こうして馬車が門の前に到着し、ミオとシャルルが馬車から降りると、ジェラールと話していたシルヴィーが駆け寄って来た。
「ミオちゃん!体は!?怪我はもう大丈夫なのかい!?」
「傷は全部治したので大丈夫ですよ。ご心配をおかけして、すみませんでした」
「おー、やはり魔法とは凄いものだな。どうだい、ミオちゃん。私とお付き合いを……」
「シルヴィー兄さんもしつこいですね」
「あはは……」
凄いな、シルヴィー。
どうしたら諦めてもらえるんだろうか?
ミオとシャルルは、シルヴィーやジェラールと少し話をすると、門を出て王都へと戻った。
昨夜のことは、早急に報告をしておいた方がいいだろう。
それに、騎士団には養成所を卒業した新人の騎士達も入団したため、シャルルも忙しいのだ。
でも、舞踏会は毎年この時期に開催されるので、いつも副師団長に任せて参加しているらしい。
「新しい騎士さんって、何人くらい入ったんです?」
「今年は70人くらいだったよ。昨年に比べるとかなり多いな」
「そうなんですね」
「しばらく第一騎士団で基本的な仕事を覚えてもらってから、第二・第三に振り分けるんだ」
「それじゃあ、帰ったら凄く賑やかになってるんですね」
「そうだな」
10月に入ってすぐに舞踏会が開催されたため、ミオはまだ新しい騎士達には会っていない。
あの場所に騎士が70人も増えたとなると、かなり賑やかになっているだろうと思う。
魔導師団も、早く賑やかになるといいな。
―――――――
―――――
―――
「ど……どうしたんですか、コレ」
ミオとシャルルが王宮に戻ると、怪我人や疲弊しきった人達で溢れていた。
戦争でもあったんですか?
カミーユの話だと、またメーヌの森に向かう途中の草原で魔物が出現したらしい。
以前と違うのは、魔物が大量に出現したのではなく、キマイラが出現したということ。
この王国には存在しない魔物らしい。
ミオ達が戦ったサンドワームの件についての報告もあったので、詳しいことはそこで聞くことにし、ミオはシャルルやカミーユとともに国王の元へと向かった。
「ミオ~~~~~!良かった、ちゃんと帰って来てくれて父は嬉しいぞ!」
「いや、帰って来ますって……私を何だと思ってるんですか」
国王の執務室に入るなり、号泣しながらミオに抱きついてきた国王に、シャルルもカミーユも苦笑いしていた。
シャルルの母親がミオのことをとても気に入っていたので、国王はミオがもう帰って来ないのではないかと、眠れない夜を過ごしたらしい。
泣き止まないと口を利かないというミオの言葉で国王はすぐに泣き止み、ようやく落ち着いて話を始めることが出来た。
昨夜、ミオがサンドワームと戦っていた頃、王国のあちこちで魔物が出現していたらしい。
パトリエール邸に出現したサンドワーム、メーヌの森に向かう途中の草原に出現したキマイラ、フェルドーからサンブリーに向かう途中の林に出現したサーペント、サンブリーの南側に広がる荒野に出現したスケルトン、どれもこの王国には存在しない魔物達だ。
「キマイラの出現が魔法陣によるもので、ラウルが解除したんだが……あいつが他にも魔法陣があるかもしれないと言って探しに行ったんだ。すると、サーペントやスケルトンも魔法陣によって出現していたというわけだ」
「そのサーペントとスケルトンは、ラウルさんが倒したんです?」
「いや、第二・第三騎士団が戦っているところを見つけたらしい。魔法陣を消して、ラウルは戦力が劣っている方を手伝った」
偶然にも、魔物が出現した場所は町への被害が及ばない場所だったので良かったけれど……何故、一夜でこんなにも魔物が出現したのかが気になるところだ。
「それにしても災難だったな、シャルル。まさか舞踏会でお前の屋敷にサンドワームなんかが出現するとはな」
「まったくだ」
「ちょっと待ってくださいよ。何で師団長が舞踏会のこと知ってるんですか?」
「何でって、毎年開催してるからな」
「知ってたんなら教えといてくださいよ……私、お母様に言われるまで知らなかったんですから…」
「教えたらお前、行かなそうだろ?」
カミーユとエミリーが同じ考えなことに驚く。
教えてあげられなくてすまなかったと謝るシャルルだったけれど、シャルルは悪くない。
「とにかく、今はこの件についてだな」
「その魔物を出現させる魔法陣は、この王国の者が描いたものなのか?」
「うーん……召喚士って珍しいって言ってましたよね、師団長」
「俺は今まで会ったことがなかったからな。黒ローブにもいなかっただろう?陛下、おそらくこの王国の者ではないと考えられます」
「そうか」
「オルレーヌの門でも警戒は強めていますが、魔導師かどうかは判断出来ないので、他国の魔導師が入って来ていると考えるべきでしょう」
「はぁ、せっかく黒ローブの件が終わったと思ったのになぁ。国民への被害が出る前に、何としても解決せねばならんのぅ」
王国に入って来たと考えられる魔導師は、黒ローブのように「私悪い人ですよ」みたいな格好をしているわけではないので、見つけるのは困難だと思われる。
それにしても、いったい何が目的なのだろうか?
竜のことが関係しているのであれば、魔物を出現させた場所にどのような意味があったのだろうか?
もしも、今回魔物を出現させた人達と戦うことになれば、この王国の戦力では勝てるかどうかわからない。
出来ることならば、戦いは避けたいところだ。
今後の対策のため、長い長い話し合いが行われた。
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