39 巨大サンドワーム
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ミオが、魔物が出現していないことを祈りながら玄関のドアを開けると、ホールの前にはさっきよりも大きいんじゃないかと思うサンドワームが出現していた。
思わずドアを閉めてしまったけれど……行くしかない。
「ミオちゃーん、大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です」
エミリーが心配そうに声をかけてきた。
シャルルは剣を持って来ていないし、ジェラールも持って来ていないだろう。
今、魔物と戦えるのはミオだけだ。
ミオは深呼吸をしてドアから出て行った。
それにしても、何故こんな場所に魔物が現れたんだろう?
舞踏会を狙っても、何の得もないような気がするのだけれど……悪いことを企む人の心理ってよくわからない。
サンドワームを間近で見てみると、腹部の上辺りに……って、どこからどこまでが腹部なんかはわからないけれど、口のようなものがついていて本当に気持ちが悪い。
ミオがステッキを持ちながら両手をサンドワームに向かって翳し、フロージングランスを放とうとすると、サンドワームがミオに向かって体を倒してきた。
慌てて避けるミオ。
「ミオ!大丈夫か!?」
「だ、大丈夫です。てゆーか、このサンドワーム成長しました?」
「いや、さっきと同じだ!」
2階のホールから見るよりも近いから、大きく感じるだけか。
ミオはもう一度構えてフロージングランスを放った。
ステッキによって魔力が増幅しているため、フロージングランスの威力も上がっていて、さっきよりも強いダメージを与えられたようだ。
続けてフロージングランスを放とうとした時、今度はサンドワームが口から吸いこみ始めた。
「え……わっ!ち、ちょっと吸い込むのやめてもらえます!?」
「ミオ!!」
何処にもつかまる場所がなく、サンドワームに吸い寄せられていくミオ。
パニックに陥りながらも、何とかアイスブロックで吸い込みから逃れることが出来た。
死んだかと思った……ふぅっと息を吐き出すと、今度は吸い込んだ空気を吐き出し始めた。
アイスブロック、お願いだから耐えてください!
突風が止むとすぐに、ミオはアイスブロックを解除してフロージングランスを何発も放った。
いくつも命中したフロージングランスによって、サンドワームは凍りついて砕け散った。
「私、魔法陣を消してきますね!」
「あぁ、気をつけるんだぞ!」
「はい!」
サンドワームによって破壊された壁の向こう側に走って行くミオを見ながら、シャルルは何も出来ない自分に唇を噛みしめていた。
すると、ミオが慌てた様子で走って来るのが見えた。
「どうした、ミオ!?」
「魔法陣消す前に、成長したサンドワームが出て来ちゃって……わっ、来た!」
ミオの後ろから、さっきの倍はありそうな大きさのサンドワームが姿を現した。
口から何かを放出してきて、避け切れなかったミオが弾き飛ばされる。
「ミオ!」
「だ……大丈夫です」
「くそっ!」
シャルルはシルヴィーに急いでここから離れるように伝えると、ホールから出てジェラールを探した。
招待客達は全員別の部屋へと避難したらしく、廊下には誰もいなかった。
奥の部屋から出て来たジェラールを見つけて、シャルルが叫ぶ。
「ジェラール兄さん、剣はありませんか?ミオ1人に戦わせるわけにはいきません!」
「待て、今取りに行ってくる!」
ジェラールの家はこの屋敷の隣の敷地で、シャルルも一緒に向かった。
外に出て、巨大なサンドワームを目にして固まるジェラール。
「何だ、アレは?」
「おそらく、巨大(ヒュージ)サンドワームだと思われます」
巨大サンドワームの下で、攻撃しているミオの姿が見えた。
「急ぎましょう、兄さん!」
「そうだな」
―――――――
―――――
―――
「……うーん…氷だとイマイチ効果がない気がする……やっぱ風属性じゃないとダメなのかな」
風属性魔法は、まだ練習を始めたばかりなので正直自信がない。
でも、そんなことを言っている場合でもないか。
ミオは、自分に魔力強化魔法・マジカライトを使うと、巨大サンドワームに向かって両手を翳した。
「ウインドブレード!」
大きな風の刃が巨大サンドワームを切り裂く。
ミオはまだ上手く操作できないため、2回くらいしか続けて切り裂くことが出来なかったけれど、それでも効果はあるようだった。
続けてウインドブレードを放とうとした時、巨大サンドワームがミオに向かって体を倒してきた。
慌てて避けたけれど……さっきのサンドワームよりも巨大なため、下敷きにはならなかったものの、サンドワームが地面に衝突した衝撃で弾き飛ばされてしまった。
「痛たたた……」
本当に、くねくね動くのやめてもらえます?
ミオが起き上がると、巨大サンドワームはまだ地面に倒れたままだった。
もしかして……倒れる攻撃の後、すぐには体勢を戻せないのでは?
ミオは両手を巨大サンドワームに向けて、何回もウインドブレードを放って切り裂いた。
ゆっくりと体を起き上がらせていく巨大サンドワーム。
でも、ミオの攻撃は効いているらしく、さっきよりも動きは遅くなった。
再びウインドブレードで攻撃すると、巨大サンドワームはまた口から何かを放出してきて、ミオはホーリーシールドで防いだ。
「……いつまで吐き出し続けるんだろ……ちょっとシールドが持たない……かも……わっ!?」
ホーリーシールドが乾いた音を立てて割れてしまい、巨大サンドワームが放出したものがミオに直撃する。
砂の塊のようなもので、当たると痛いし砕けてじゃりじゃりするので凄く嫌だ。
巨大サンドワームの攻撃が止むと、そこら中に砂が撒き散らかされていた。
ミオがウインドブレードを放つと、今度は吸い込み始めた。
さっきのサンドワームよりも吸引力が強く、ミオは咄嗟に柱につかまったものの、ミオの腕力では数秒も絶えることは出来ずに吸い上げられてしまった。
「ミオ!!」
「あれはさすがに近づけん!」
巨大サンドワームの口に吸い寄せられていくミオ。
何とか巨大サンドワームの方に体を向けて、両手を翳した。
「アイスブロック!」
巨大サンドワームの口にアイスブロックが出現し、吸引がピタッと止んでミオの体は地面に転がった。
いや、もう、本当に痛いんですけど!?
口にアイスブロックが挟まって、もがいて暴れる巨大サンドワーム。
ミオは避け切れないと思い、その場でウインドストームを放った。
既にマジカライトの効果は切れているため、巨大サンドワームを空中に巻き上げるほどの威力はないけれど、ミオがその場から離れる時間くらいは稼げるだろう。
巨大サンドワームが、暴風に包み込まれて動きを封じられている間に、ミオはその場から離れた。
「ミオ!大丈夫か!?」
「……シャルルさん」
「また、こんなに傷だらけになって」
「だ、大丈夫ですよ。あとでヒール使いますから」
「ミオさん、アレはどうなっているんだ?」
「暴風で足止めしてるだけです。あれでも、少しずつはダメージ入ってるはずですよ、だいぶ弱ってはきてるんで」
「なるほど」
「だったら、あの風が止んだら斬り込みますか?ジェラール兄さん」
「そうだな」
「私も…」
「ミオは少し休んでるんだ。そんなに傷だらけだろう?」
「いやいや、動けますよ?」
「……お願いだから、休んでいて」
シャルルが今までにない程に心配そうな顔を寄せてきたので、これ以上戦うとは言えなかった。
あぁ、また心配させてしまったな……
「だったら、2人に強化魔法をかけますね」
「強化魔法?」
「はい。ジッとしててください」
ミオは2人に、防御力強化と攻撃力強化の魔法をかけた。
驚くシャルルとジェラール。
「ミオ……これは?」
「少しだけ強くなる魔法です。あ、ウインドストームが切れますよ」
巨大サンドワームを包み込んでいた暴風が消えた。
さすがの巨大サンドワームも、かなりダメージを受けたようで倒れ込んだ。
「今です、ジェラール兄さん!」
「わかった!」
「じゃあ、私は魔法陣を消しに行きますね!」
シャルルとジェラールが、倒れ込んだ巨大サンドワームに斬り込んで行き、ミオはその間に魔法陣を消しに行く。
また新たなサンドワームが出てきたら、もう戦えるかわからない。
破壊された壁の向こう側に魔法陣はあった。
さっきは間に合わなかったけれど、この魔法陣は魔物が出現している間は新しい魔物は出現しないらしい。
今のうちに消してしまおう。
「開かれし古の扉を封印せし。ティアドロップ!」
ミオのネックレスが光を放ち、魔法陣は消えた。
魔法を使わないと消せない魔法陣だった。
この魔法陣を描けるのは、ラウルしかいないはず……でも、まさかラウルが描いたとは思えない。
一体誰が……
ミオが屋敷に戻ると、巨大サンドワームは消滅していた。
ようやく終わったのか。
「ミオ!」
「シャルルさん……ケガはしてないですか?魔法陣は消して来ました」
「私は大丈夫だ。それよりも、ミオの方が重傷だろう?こんなに傷だらけになって……」
「私も大丈夫ですよ。でも、少し疲れました……てゆーか、お屋敷は壊されなくて良かったですけど、せっかくのお庭が……」
「そんなことは心配しなくていよ」
「そうだよ、ミオさん。それよりも医者を呼ぼう」
「あ、お医者さんは呼ばなくても大丈夫ですよ。自分で治せるので」
「そうなのか?」
「今は……魔力が残り僅かなので、そんなには回復出来ないですけど」
ミオは、今治せる分だけヒールを使って傷を回復させて、シャルル達と一緒に屋敷の中へと戻って行った。
魔物の討伐が終わったことを、早く知らせた方が皆も安心できるだろう。
玄関を開けると、心配で様子を見に出て来たエミリーが階段を下りているところだった。
エミリーはミオの姿を見るなり、血相を変えて階段を駆け下りて来た。
「ミオちゃん!?こんなに傷だらけになってぇ!すぐにお医者様を呼ばなくちゃ!」
「お、お母様……私は大丈夫なので…」
「何処が大丈夫なんですか!シャルルもシャルルよ。どうしてミオちゃんがこんなになるまで戦わせたの!」
「……申し訳ありません」
「あの、シャルルさんを責めないで下さい……本当に大丈夫なので。今日はちょっと魔力が残っていないので治せませんけど、明日には魔力も回復すると思うので……」
エミリーの声が聞こえたのか、シルヴィーも様子を見に階段を下りて来た。
これは……何だか面倒なことになりそうだ。
案の定、傷だらけのミオを見て騒ぎ始めるシルヴィー。
ミオは、医者は呼ばなくていいこと、今は魔力切れで治せないけど明日には治せることを説明して、何とかシルヴィーを宥めた。
今日の舞踏会は、このまま続けることは出来ないため、中止にすることにして招待客はお帰り頂くことになった。
ミオが傷だらけのまま招待客の前に出ると大変なことになりそうなので、シャルルと一緒にリビングで待つことになった。
―――――――
―――――
―――
「何だか大変な舞踏会になっちゃいましたね」
「そうだな。それにしても、何故ここに魔法陣が描かれたのだろうな」
「それも、わかりませんね……」
今回の魔物の出現は、本当に謎すぎる。
目的が全くわからなかった。
「でも、あんな魔物もいるんですね。私ももっと修行しないとです」
「ミオは十分強かったと思うよ。1人であんな魔物と戦ったのだからな」
「シャルルさん達が来てくれなかったらヤバかったです」
「ミオがあそこまで弱らせてくれたから、私と兄は倒すことが出来たんだよ。ありがとう、ミオ」
シャルルは、ミオの頬に優しく手を当てると、ゆっくりと顔を近づけて……ミオの額に唇を当てた。
ミオの顔は一気に耳まで真っ赤になったけれど、シャルルがそのままミオを抱き寄せたので、顔を見られることはなかった。
でも……これってどういう状況なんですか?
ミオは頭がクラクラしてきて、何も考えられなかった。
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