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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
第二章 魔導師の国
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36 旅人

のんびり更新中♪

 マルセーヌの町に訪れた、2人組の旅人。

 世界中を旅して周っているという2人は、特に変わった様子などもなく、普通の旅人に見えた。

 しばらくはこの王国に滞在し、あちこちの町や村を訪れる予定だと言う2人。

 町の住人達とも和気藹々と接し、とても旅慣れしている様子だった彼らだったが、住人達には1つだけ気になることがあった。

 それは……


「この王国には竜がいるのか?」


 彼らがこの町の住人に尋ねたこの質問だった。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「この草原って、けっこう草スライムがいるんですね!」


 シャルルが率いている騎士団に同行して、マルセーヌの町に向かう途中の草原の見回りに来ているミオは、草スライムに遭遇して少しはしゃいでいた。

 今まで何回もマルセーヌの町までの道は通ったけれど、こうして草原の中を見回ったことがあまりなかったので、こんなに普通に魔物に遭遇するとは思っていなかった。

 草スライムは触るとぷにぷにしていて気持ちがいい。


「ここの魔物達は、人間が近づくと隠れてしまうからな」

「え、そうなんですか?」

「雪兎の時もそうだったが、ミオには魔物に好かれる特殊能力でもありそうだ」

「……もしそうなら、可愛い魔物だけに発動してほしい能力ですね」


 虫系の魔物とかにも発動したら発狂してしまいそうだ。

 草原にはフワフワと綿毛のようなものも飛んでいて、タンポポの綿毛みたいに植物が種を飛ばしているのかと思っていたら、ケセランパサランという無害な魔物だった。


「ケセランパサランって、本当にいたんですね」

「本当に?」

「私のいた世界では空想上のものみたいに扱われていて、実はその正体は動物の毛とか植物の綿毛なんじゃないかとか言われてました」

「なるほどな」


 まさか、この世界でケセランパサランに出会えるとは。

 今度、魔物図鑑のようなものを探して見てみたら楽しいかもしれない……ミオは休みの日にでも図書室に行ってみようと思った。


 途中で休憩を挟んで草原を見回り、ちょうど昼時くらいにマルセーヌの町へと到着し、ここで昼食を摂ることになった。

 町に入ると一度解散し、それぞれが好きなところで昼食を食べる。

 ミオがシャルルと一緒にマリーの店へと向かうと、何人かの騎士も一緒について来た。


「こんにちは、マリーさん」

「あらぁ、いらっしゃいませ。今日はお仕事ですか?」

「はい、そうなんです。あ、でもカレー粉あったら買っていきたいです」

「あんな店にも出していないものをいつも購入していただいて……本当にありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ!あんなに美味しいカレー粉を分けていただけて、本当に感謝ですよ!」


 今日はリリアンナの姿が見えなかったけれど、リリアンナは来月から学校に通うため、父親と一緒に準備に出かけているらしい。

 どうやらこちらの世界では10月が年度の切り替わりのようだ。

 騎士団も、普段から募集はしているようだけれど、毎年10月に養成所を卒業した新人が入って来るらしい。

 魔導師団は……ここは触れないでおこう。


「リリアンナちゃん、学生さんになるんですね。おめでとうございます」

「ありがとうございます」


 今度、お祝いを持って遊びに来よう。

 こうして、美味しい料理を頂いてカレー粉を購入し、町の中心へと戻って行くと、住人から報告を受けた騎士がシャルルに駆け寄って来た。

 騎士の報告では、町を訪れた2人組の旅人が、この王国に竜がいるのかと聞いて回っていたということだった。


「特に変わった様子はない普通の旅人だったそうです」

「そうか、わかった。さて、どうしたものか……」


 港町では警戒はしているものの、普通の旅人であれば警戒のしようがない。

 こうして普通に王国の中に入って来てしまう。

 このことは、王都に戻ってから国王と相談することにし、シャルルは町長の家に行くと、くれぐれも竜のことを口には出さないよう町の住人には徹底してもらうことを指示した。


 昼休憩を終えた騎士団はマルセーヌの町を後にし、午前中とは反対側の草原を見回りながら王都へと帰還した。


「お疲れ様でした」

「お疲れ様。国王への報告に行くから、カミーユにも声をかけてもらえるか?一緒に話を聞いてもらった方がいいと思う」

「はい、声かけておきますね」

「それと……ミオ」

「はい?」


 ミオがカミーユの所に向かおうとすると、シャルルが腕をつかんで引き止めた。

 ミオが振り返ると、シャルルが少し気まずそうな顔をしながら言った。


「いや……すまない、今伝えることでもなかったのだが…」

「えーと……?」

「今度、一緒にマリアンナのお祝いの品を買いに行こう」

「え、いいんですか?」

「ミオと一緒に行きたいんだ」

「はい!」


 仕事中だからこんな私用の話はダメだと思ったんだろうか?本当にシャルルは真面目だなと思うミオだった。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「あれ、師団長1人ですか?」

「ジェラリーは騎士団と見回りで、アルにはラウルの付き添いでサンブリーに行ってもらったからな」

「そうなんですね」


 アルバンとラウル……何だか衝突しそうではあるけど、まぁ、大丈夫だろう。


「今日、マルセーヌの町に行って来たんですけど、ちょっと嫌な話を聞いたのでパトリエール団長が王様に報告しに行くそうです。師団長も同席してほしいと言っていました」

「シャルルが?わかった、すぐに行く。何だ?嫌な話って」

「この王国に竜がいるか聞いて来た旅人がいたらしいです」

「そりゃあ、嫌な話だな」


 苦虫を噛み潰したような顔をしながら、カミーユは執務室を出て行った。

 ……誰もいない執務室、静かすぎる。


 ミオは、食堂に行ってスージーにカレー粉を渡すと、調べ物をしに図書室へと向かった。

 魔物の図鑑はまた今度探すことにして、今日は魔導師の道具について調べる。

 今後、魔導師を相手に戦うことも想定される今、この魔導師団の魔導師の数で戦うには、やっぱり魔力の増幅は必須だろう。

 今から修行で上げられる魔力量なんてたかが知れているから、やっぱりここは道具に頼るしかない。

 そこで、ミオがラウルから貰ったステッキのようなものが作れれば……と思って文献を探しに来たのだけれど…


「うーん……なかなか書いてある本ってないのね」


 簡単に見つかるものであれば、この王国でも道具が出回っているはずだ。

 やっぱり、ルシヨット魔導国まで行かないと手に入らないのだろうか?

 ミオが魔法道具の本を探していると、とても気になる題名の本がミオの目に留まった。


『ウサギ系魔物について』


 ウサギ系だと!?

 読みたい、今すぐ読みたい。

 でも、今は魔法道具について調べないと……でも、気になる。

 今度の休みに読もうとは考えるものの、やっぱり今すぐ読みたい衝動に駆られて葛藤すること数分……いや、数十分か?


 前に魔法陣について調べていた時には持ち出し禁止だと言われてしまったけれど、魔物の本だしな……とうっすらとした希望を胸に確認してみると、なんとこの本は持ち出しOKだった。

 寝る前にでも読もうと本を机に置き、魔法道具の本を探す。

 こうして、随分と長い時間探してみたけれど、思い描いていたものは見つからず、今日は部屋に戻ることにした。


 ウサギ系の魔物についての本を抱きかかえながら、ウキウキとした気分で外に出ると、もうすっかり日が暮れて真っ暗になっていた。

 どれくらい図書室にいたんだろう?

 魔導師の宿舎に向かって歩きながら、ふと夕食のことを思い出して立ち止まる。


 あれ?

 夕食の時間……


 ミオは食堂に向かって走った。

 真っ暗になっている食堂を見て、両手と両膝をついて項垂れるミオ。

 心の中で涙を流しながら、トボトボと自分の部屋に戻って行った。

 こうしてミオが部屋に入ると、何だか美味しそうな香りが漂ってきた。


「ん?」


 ミオが部屋の灯りをつけてみると、何と、テーブルの上にトレーに乗せられた料理が置いてあった。

 神様ですか!ここには神様がいるのですか!

 ミオは、神様のような人に感謝しながら、美味しい夕食を食べた。


 翌日、王宮に行く前に食堂に食器を返しに行くと、スージーが夕食を運んでくれたのはシャルルだと教えてくれた。

 さすがに、勝手に部屋に入るのは悪いだろうと言ったシャルルだったけれど、カミーユが「ラウルなら怒るだろうがシャルルなら大丈夫だ」などと、よくわからない理由で説得してシャルルに運ばせたのだ。


 ミオは、王宮で父親と一緒に朝食を食べて少し雑談した後、執務室に向かう途中でシャルルの姿を見つけて駆け寄った。


「パトリエール団長、おはようございます」

「おはよう、ミオ」

「昨日は夜ごはんを部屋に運んでくれて、ありがとうございました」

「いや、勝手に入ってしまってすまない」

「そんな。食堂真っ暗だったし、お腹が空いたまま寝るのかって思ってましたから、運んでくれた人は神様だと思いながら食べましたよ!」

「ふふ、それなら良かった。それにしても、遅くまで何をしていたんだ?」

「ちょっと図書室で調べものです」

「そうか。集中するのもいいが、食事は忘れないように」


 シャルルが優しくミオの頬に手を添えて、ミオの心臓はドキドキと音を立て始めた。

 顔が赤くなっているのが自分でもわかる。

 何で異世界のイケメンは、こんなふうにサラッとスキンシップしてくるんだ、心臓がどこかに飛んで行ってしまいそうなのですが!?


「ふふ、ミオは本当にすぐに赤くなるな」

「パ、パトリエール団長!?」


 優しく微笑みながらミオを見下ろすシャルル……やっぱり確信犯だな。

 しばらくミオを見つめた後、シャルルはミオの頬に当てていた手を頭に乗せてポンポンと撫でてクスッと笑った。

 何ですか、その笑いは!?


「私は今からカミーユの所に行くから、一緒に行こう」

「……はい」


 こうして、ミオはシャルルと一緒にカミーユがいる執務室へと向かった。


「そういえば、旅人の件ってどうなったんです?」

「全町村に文書で知らせることになったよ。第二・第三騎士団にも知らせて、近辺の町や村に文書を届けてもらう」

「あー、それだったら私がフェルドーとサンブリーに行きましょうか?」

「ミオが?」

「箒で行けば今日中には伝えられますよ?」

「だが、1人でというのはな……とりあえず、カミーユと相談してみよう」

「はい」


 それにしても……全町村に文書でって、手書き?

 文書作成する人も大変だなと思う。

 パソコンで文書作って印刷出来れば、あっという間に作れてしまうのにな。


 てゆーか、町や村には魔導師が届ければ早いのでは?






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「ミオ、少し飛ばし過ぎだ!」

「いやいや、これくらい急がないと配れなくなりますよ、師団長」


 シャルルやカミーユとの話し合いの結果、サンブリーとフェルドーにはミオ達が文書を届けることになった。

 騎士団は、港町・オルレーヌやマルセーヌの町など、今日中に届けられる町や村に文書を届け、それ以外はミオ達が戻り次第届けに行く。

 たぶん、明日中には全ての町や村に届け終わるはずだ。

 それにしても……文書を書き上げた人達が凄いと思う。


 本当はミオとラウルが一緒に行く予定だったけれど、シャルルがそれは駄目だとカミーユに言ったため、カミーユとミオがサンブリーに向かい、ラウルがフェルドー、アルバンは王都近隣の町村に騎士団と分担して回ることになった。

 魔導師が箒での移動が出来るようになったことで、以前よりも物事の伝達が早く出来るようになったのは良いことだ。






 王国内で竜について探っている者が、旅人2人だけなのか、他にもいるのか……それはまだわからないけれど、とりあえず王国全体に、竜について口にしないという国王の指示を伝達することが出来た。


 あとは、このまま噂だけで収束していってくれると良いのだが……



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お読みいただきありがとうございました!

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