30 まさかの入団希望者
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ここから第二章です。
その日、ミオが国王との朝食を終えて魔導師団の執務室に行くと、入団希望者が来ていた。
「おはようございます、師団長。あれ、お客さんですか?」
「あー、客じゃない、入団希望者だ」
「入団希望者……ってことは、魔導師さん!」
「そうだ。ようやく人が増えるなー」
「良かったですね…………え」
ミオがカミーユの机の前まで歩み寄って行き、その入団希望者と並んで顔を向けると……ラウルだった。
「な、何故あなたがここに!?」
「えー、師団長さんも言ってたじゃん。俺、魔導師団に入ろうと思ってさー」
「何だ、ミオの知り合いか?丁度良かった。それじゃあお前が面倒見ろ」
「ななな、何で私が!?」
「知り合いなんだろ?よろしくな。まずは宿舎に案内してやれ。部屋はそうだな……空いてるとこなら何処でもいいぞ」
「……はい」
「よろしくねー、ミオちゃん!」
ミオはラウルを連れて宿舎へと向かった。
きっとラウルは凄い魔導師なんだと思う。
でも……本当に信用していいんだろうか?
最近誘われて入ったとはいえ、黒ローブの一員だった人物だ。
「あの……どうして魔導師団に?」
「だって、ここに入ればミオちゃんに会えるじゃん?それに、魔導師の募集してたし」
「……別に、あなたが楽しめそうなことなんてないですよ?」
ラウルはミオの前に立つと、いつもの笑顔ではなくて、とても真剣な顔をしてミオの頬に手を伸ばした。
「俺は、ミオちゃんがいればそれでいいよ」
「……っ!?」
ラウルの唇がミオの額に押し付けられた。
いったい何をするんだこの人は!
耳まで真っ赤になったミオを見て、ラウルはクスッと笑いながら離れた。
「それにしてもさぁ、魔導師の皆はどこにいるの?全然会わないんだけど」
「……副師団長は学校、4人の魔導師はポーション作ってて、今日は騎士団に1人同行しているので明日まで帰って来ません」
「あとは?」
「フェルドーに1人、サンブリーに1人派遣されてます」
「……え、もしかしてそれだけ?」
「はい」
「マジでー!?魔導師団ってそんなに魔導師少なかったんだ!」
黒ローブの組織に何か流れなければ、魔導師団はもっと潤っていたんですよ!
なんて、ラウルに言っても仕方がないので言わないでおく。
「ここが、魔導師の宿舎です。部屋は……こことか空いてますけど」
「ミオちゃんの隣は?」
「ないです」
「ないです……って意味わかんないけど?やっぱり俺って嫌われてる?」
「……私の部屋は、両隣に部屋はないです」
「あー、そういうこと?なんだぁ、残念」
部屋があったとしてもお断りだ。
絶対に部屋に侵入して来そうだ。
ラウルは部屋に荷物を置いてすぐに出て来た。
「次は食堂に行きますね」
「ねーねー、その敬語やめない?普通に話そうよ」
「習慣みたいなものなので、気にしないでください」
「うーん……じゃあ、そのうちね?」
ミオはラウルを連れて食堂に行った。
食堂ではスージーが昼食の準備をしていた。
「スージーさん、こんにちは」
「あら、いらっしゃい。どうしたんだい?」
「新しく魔導師団に入った方です。えーと……ラウルさんです」
「ラウルでーす!よろしくね、スージーさん!」
「おや、随分と元気な子だね。よろしく頼むよ!」
正直、ラウルのコミュニケーション能力には驚かされる。
誰に対してもフレンドリーに接することが出来るって、凄いことだ。
ミオには……ちょっと無理だと思う。
「食堂は、騎士団と魔導師団と共同で使ってるので」
「りょーかい!」
食堂を出て浴室に案内すると、丁度侍女が掃除をしているところだった。
「お疲れ様です。いつもお掃除ありがとうございます」
「ミオ様。とんでもないですよ」
「この人、新しく魔導師団に入ったラウルさんです」
「どうも、ラウルって言います。よろしくー」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「浴室も騎士団と共同なので」
「ミオちゃんは?」
「私もですよ」
「え!?それって危険なんじゃ……」
「だ、大丈夫ですよ!ちゃんと札下げて入ってますから!」
ミオは、誰も入っていない時に入り口に「入ってます」という札を下げて入っている。
そのため、札が下げられている間は誰も入っては来ない。
行列が出来てしまうこともあるので、申し訳ないとは思っている。
まぁ、その行列が出来る理由というのは、ミオの後に入りたい人達がたくさんいるからなのだけれど。
「ここが訓練場です」
「へぇー。あの、氷の壁は?」
「あー、あれは……ちょっと的が壊れてしまったので、的よりも頑丈なものにしました…」
ミオがサンダーストームで全ての的を壊して以来、的の代わりにアイスブロックを的にしている。
元々あった的よりも頑丈だし、夏場は涼しいため重宝しているのだ。
「ミオちゃんが壊したの?」
「ちちち、違いますよ……」
「ぷっ……ミオちゃんってさー、嘘つけないでしょ?」
「……………」
図星すぎて何も言い返せないミオ。
まぁ、ちゃんと代わりの的を作ったんだから、何も問題はないはずだ。
こうしてその後、騎士団の宿舎と訓練場を案内して、カミーユのいる執務室へと戻った。
「師団長、案内してきましたよ?」
「そうか。だったら、ソイツがどれくらい魔法が使えんのか見てみるか。お前も一緒に来い」
「えー、私必要あります?」
「あるある。ほら、行くぞ」
「行こうよ、ミオちゃん!」
3人で訓練場に行き、ラウルの魔法を見せてもらった。
ラウルは、召喚術を使って大量の魔物達を出現させた後、なんと、セイレーンを召喚した。
「え……もしかして…セイレーンですか!?」
「へぇ、ミオちゃんセイレーン知ってるんだ?」
「あれはこの王国にはいないはずだが……お前の世界にはいたのか?」
「いるわけないじゃないですか……空想の生き物ですよ」
召喚術の後には、今までテイムした魔物を紹介した。
あ、この世界ではテイムとは言わなかったんだっけ?
ラウルは、スライムに白狼、銀狼(シルバーウルフ)、炎(ファイア)スライム、森兎(フォレストラビット)など、下級~上級までの魔物を所持していた。
「へぇ、魔物使いか。珍しいな」
「珍しいんです?」
「俺は会ったことがない。てゆーか、魔導師団にはいないだろ?」
「あ、確かに」
「お前、ラウルと戦ってみろ」
「え、何でですか?」
「魔導師派遣してから対戦とか出来てないんだし、丁度いいだろ?」
「師団長がやってくださいよ……」
「俺は忙しい」
「見てるだけじゃないですか!」
「ほら、行ってこい」
「わっ……もう、わかりましたよ…」
背中を押されて前に出され、ミオは仕方がないのでラウルの前に立った。
とても嬉しそうな顔をしているラウル。
ミオは、両手で箒を持って構えた。
ラウルの魔法能力はかなりのものだった。
ただ、ミオとの相性は悪いため、圧倒的にミオの方が強かったけれど。
「ずるいよミオちゃーん。俺が召喚する魔物、全部凍らせちゃうなんてさぁ……」
「これも戦いなので」
ミオはスノーフロストを使って、ラウルが召喚する魔物を片っ端から凍らせた。
ラウルは決して弱くはない。
でも、ミオのような戦い方をされると手も足も出ないようだ。
こうして、対戦ではミオの圧勝だったけれど、ラウルは本気ではなかったとミオは思っている。
あんなに凄い魔法陣を使えるラウルが、こんなに簡単にミオに負けるはずがないのだ。
まぁ、ミオもすべての魔法を見せたわけではないのだから、ラウルだってそうに違いない。
「そのステッキって何なんですか?」
「あーこれ?これは魔力を増幅させるステッキだよ」
ラウルは魔法を使う時にステッキを手にしていた。
確かここではそんな道具使わなかったのでは?
「魔力を増幅?そんな道具は存在しなかったはずだが」
「この王国ではでしょ?魔法が発展してる国では、これがないと魔導師としてはやっていけないよー」
「魔法が発展している国?え、そんな国もあるんですか?」
「あるよー。だって、俺はその国から来たんだもん」
「え!?」
「何!?」
まさかのラウルはこの王国出身ではなく、魔導師の国からやって来た人物だった。
そうか、王国以外から来ている人もいるわよね、当たり前のことだけど。
ミオはこちらの世界に来てから、この王国以外の国のことなど考えたこともなかったけれど、この世界にだってたくさんの国があって当然だ。
港町には他の国から多くの人が来ると言っていたし。
「確か……この王国からは随分離れている国だったよな?ルシヨット魔導国だったか?」
「そうだよ。魔導師が主体の国ね。俺さぁ、この王国に来てビックリしたもん。あまりにも魔導師が少なくてさー」
何だか異世界感が出て来たぞ。
ルシヨット魔導国?めちゃくちゃ気になる。
この王国からはかなり遠く離れた国で、海を渡って行かなければならないらしい。
船が苦手なミオは、絶対に行くことが出来なそうな国だ。
「ルシヨット魔導国に行けば、そのステッキが買えるんです?」
「何だよミオ、欲しいのか?」
「え、だって持ってたら魔導師っぽいじゃないですか」
「お前なぁ……」
「俺が前に使ってたので良かったら、ミオちゃんにあげるよー」
「……………」
欲しい。
でも、ラウルから貰うのは何か裏がありそうで悩んでしまう。
眉間にしわを寄せながら悩むミオに、ラウルは苦笑いを浮かべた。
「いやいや、ミオちゃん……いい加減俺のこと信用してくれないかなぁ……じゃあ、試しにコレ使ってみてよ。ステッキも魔力量によって使えないものもあるからさー」
「……じ、じゃあ、少しだけ」
ミオはラウルからステッキを受け取り、アイスブロックに向かってサンダーボルトを放ってみた。
すると、ミオの全力サンダーボルトや全力サンダーアローにも耐えたアイスブロックが、簡単に砕け散ってしまった。
そして、初めてサンダーボルトで地面を削った時よりも地面はかなり抉られていた。
「あ……」
「お前、また的がなくなっちまったじゃないか。それに……どうすんだよあの地面」
「す、すみません」
「凄いねミオちゃん!これなら十分使えるから、俺のステッキあげるよ。待ってて、今持ってくるからさー」
ラウルが部屋に向かって走って行った。
ミオは、ラウルに借りたステッキを使って、アイスブロックを設置し直した。
これで耐久力が上がった的になっただろう。
地面を直すことは出来ないけれど……
「これで大丈夫ですよ、師団長!」
「……地面は後でアルに直させるか。それにしても……魔力を増幅するステッキか」
カミーユは、こんなステッキが必要になる事態が起こらないことを祈りたい気分だった。
―――――――
―――――
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ルシヨット魔導国
この国は、国民の3分の2が魔導師と言われている魔法国家。
争いごとのない平和な国で、他国との関係もとても良好だった。
しかし、2年前に現国王に代わってからというもの、他国との戦争が繰り広げられるようになり、その権力を拡大しつつある。
ルシヨット魔導国国王、ガストビ・ルシヨット。
前国王は、ガストビの手によって暗殺された―――
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