閑話 国王と伝説の魔導師
のんびり更新中♪
第二章の前に、閑話として1話入れました。
荒れ果てた街、所々が崩れてしまった王宮。
住民の数は減り、王宮に残されたのは1人の騎士と、1人の少女だけだった。
「誰も……いなくなってしまったな」
「そうだな。まぁ、でも争いは終わったんだし良かったんじゃない?」
この王国は誰が治めていくのだろうか……
それにしても、この少女はどこからやって来たのだろうか?
確かこの少女がここにやって来たのは、1年ほど前のことだったと思う。
いや、この少女がやって来たのは、確か昨年の7月に入ってからだったか。
魔導師がだんだん減っていき、3人くらいしか残っていない頃だった。
そんな彼女は、伝説の魔導師と呼ばれていた。
彼女の名前は……カエデ・サクライ。
この王国の民達は竜と王国との関係を忘れてしまい、争いが起こるようになっていた。
ここを去った魔導師達はどこに行ってしまったのだろうか?
残された魔導師達も、王国のために尽くそうという気持ちはなくなっていってしまった。
そんな中で、カエデは1人で努力を重ねて立派な魔導師へと成長していった。
私は、そんな彼女が魔導師達と言い争いをしているところを何度も見てきた。
カエデの言っていることは正しい。
だが、誰も理解しようとはしなかった。
やがて、王宮に残っていた3人の魔導師達もいなくなり、残されたのはカエデ1人だけになってしまった。
王国はどんどん荒んでいった。
街では人々が争いごとを繰り返している。
何故、この王国はこんなことになってしまったのか……私は国王に何度も訴えたが聞いてもらうことは出来なかった。
挙句の果てに投獄されてしまった。
私が投獄されている間に、国王も王宮に仕える者達も全て殺されてしまった。
国民も同じように殺されてしまったのではないだろうか?
もうこの王国は終わりだ。
滅びるしかない……そう思っていたけれど、カエデは1人で戦い、この王国を救ってくれた。
―――――――
―――――
―――
「この王国は、誰が治めていくのだろうか」
「さぁね。私にはわからないよ」
「お前は……この先どうするんだ?」
「さぁね」
カエデの目には、今の王国はどのように映っているんだろうか……私は、カエデがいなくなってしまうのではないかと、とても不安だった。
そんなある日、誰もいなくなった王宮に、生き残った人々が押し寄せてきた。
皆、カエデの言うことを信じなかったことを謝罪していたが、彼女は人々を許すでも許さないでもなく、ただ何も言わずに空を眺めていた。
本当に不思議な少女だと思った。
人々は、カエデに国王になって欲しいと言った。
だが、カエデはそれを拒否して私に国王になれと言ってきた。
彼女は自由に生きたいらしい。
カエデこそ国王にふさわしい人物だったが、私がいくら言っても彼女は首を縦に振らなかった。
だが、いつまでも国王が不在では、本当にこの国が滅んでしまう。
悩んだ末に、私は国王となることを決意した。
こうして、王国の復興が始まった。
元通りになるまでは、相当な時間がかかるだろう。
だが、仕方のないことだ。
これは、王国全体の責任だ。
しかし、生き残った人々だけで復興していくには、人の数が圧倒的に足りなかった。
私はこのまま復興できずに滅びてしまうのではないかと危惧したが、なんと、カエデが魔法で元に戻してしまった。
伝説の魔導師とは本当に凄い力を持っているのだなととても驚いたものだ。
何故、今まで魔法で復興しなかったのか聞いてみると、カエデはこう答えた。
「だって、彼らにも責任はあるだろう?それを簡単に魔法で解決してしまったら、何でも魔法に頼るようになるぞ。それに、反省もしなくなる」
確かにカエデの言う通りだ。
カエデの言うことはいつも正しい。
そして、いつも正しいことを言うカエデは……とても美しい。
そう、私にも少しずつ気持ちの余裕が出来ていたのだ。
だからカエデを見て改めて思った。
何て美しい少女なのだろう……
私はカエデをどこにも行かせたくはなかった。
だが、カエデはいつもフラフラと箒に乗ってどこかに行ってしまう。
そのたびに戻って来ないのではないかと心配になった。
それに、誰にもカエデに惚れてほしくないとも思った。
だから私はカエデに求婚した。
「カエデ、私と結婚してもらえないだろうか?」
「は?」
カエデからの返事はなかった。
私のことが嫌いなのだろうか?
だが、カエデがこの王宮から出て行くことはなかったし、普通に私とも話をしてくれているのだから、嫌いということではないのだろう。
私はカエデのことを愛していた。
私も24歳だ。
気になる女性がいた頃もあった。
だが、これほどまでに愛おしいと思った女性などいない。
相変わらずカエデに求婚しても返事は帰って来なかったが、王宮は少しずつ人が増えて賑やかになった。
国民達の暮らしも、元通りに戻りつつある。
私は貴族の出ではないので、貴族のやり方はよくわからない。
それに、この王国を形式ばった貴族社会で縛りたくはなかった。
もっと、自由な王国でありたい。
貴族達からは反発の声も上がるだろうが、私のやり方に納得がいかないのなら、他国にでも行けばいいと思う。
―――――――
―――――
―――
「なぁ、カエデ」
「何だ?」
「愛している」
「なっ!?そ、そんなに何度も言わなくていい!」
私がカエデに気持ちを伝えると、彼女は決まって顔を真っ赤にした。
そんなカエデはとても可愛かったし愛おしかった。
カエデはすぐに顔を赤くする。
私がカエデの頬に手を添えたり、頭を撫でたり、顔を近づけたり、抱きしめたり……そうすると決まって彼女は顔を赤く染める。
私は自分がこんなにも意地悪な人間だとは思わなかった。
わざと彼女の顔が赤くなるようなことをして、彼女を困らせているのだから。
だが、仕方がないだろう?
私だってカエデに触れたくて仕方がないのだから。
「カエデ、いつになったら私と結婚してくれるんだ?」
ある日、私は思い切って聞いてみた。
すると、彼女は顔を赤くして私に言った。
「だ、だってあなたは国王だし……私はまだ16歳だし……けけけ、結婚とか……」
「何だ、そんなことを気にしていたのか?ここでは、16歳で結婚など普通のことだぞ?」
「でで、でも……私は庶民だ。そんな……国王なんかと……」
「私だって、元は平民の出の騎士だぞ?」
「それは……だが、私は王妃なんて柄じゃない……それに……」
「それに……何だ?」
「……国王なんかと結婚したら……私の自由はどうなる?私は縛られるのが嫌いだ」
「私は別にカエデを縛るつもりはない。カエデはやりたいようにすればいい。ただ……私の傍から離れて行かないでくれ」
「っ!?」
私はカエデを抱きしめた。
きっとカエデの顔は真っ赤なのだろう。
だが、私はこの腕の中にある幸せを、失いたくはないのだ。
「もう少し……考えさせて欲しい」
ようやくカエデから返事らしい言葉が返って来た。
嬉しかった。
それからカエデは1カ月ほど考えたようだ。
頬を赤く染めながら、カエデは私に言った。
「……何故、私なのだ?」
「何がだ?」
「……だから……何故、私と……その……結婚をしたい?」
「そりゃあ、カエデのことを愛しているからに決まっているだろう?」
「私のどこに、愛する要素がある?」
愛する要素?
何を言っているんだ彼女は。
「私は、カエデの全てが愛おしく思う。それでは駄目か?」
「わ、私にはそんな風に思われる魅力などないだろう」
「……何を言ってるんだ?」
何故か涙目になりながら見上げている彼女がいた。
相変わらず顔が真っ赤だ。
私はカエデを抱き寄せて言った。
「カエデにはたくさんの魅力があるし、愛おしいと思える魅力以外のものはないぞ」
「……………」
「改めて言うぞ。カエデ、私と結婚してくれ」
「…………はい」
―――――――
―――――
―――
「……何だか懐かしい夢を見たような気がするな」
ぺリグレット王国国王、エドワール・ペリグレット。
太陽の光が差し込む窓を見て、ベッドから起き上がった。
今日もまた1日が始まる。
「さて、今日も愛おしい娘の顔が見られるな。私は毎日幸せだ……カエデ、私に幸せを残してくれて、本当にありがとう。これからも、私はお前のことを愛し続けるぞ」
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