29 訪れた平穏
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ミオが目覚めてから数日が経った。
黒ローブ達は、尋問の間に次々と死亡してしまったため、結局彼らの目的は聞き出すことが出来なかった。
ミオは、水竜に話があったためネーオールの森の見回りに同行している。
湖の周りを見回っていると、水竜が水面から顔を出しているのが見えた。
「ミオ」
「はい?」
「こっちを見ているようだが……」
「あー、気にしないでください。昼食を食べたら声をかけに行くので」
「良いのか?」
「いいんです」
こうして、湖を1周して昼食を食べ、ミオはシャルルや他の騎士達とともに湖の前にやって来た。
てゆーか、ちょっと水竜と話すだけなのに、付き合わせてしまって申し訳ない……
ミオは、湖の前で水竜に声をかけた。
「水竜さーん」
すると、盛大に水しぶきを上げながら水竜が飛び上がって来た。
ミオは慣れた手つきで、水しぶきを集めて湖に戻す。
―――はいはーーーい!僕はここだよぉー!
少し、聞きたいことがあるんですけど
―――なぁに?
水竜さんが他の竜達と話すことって出来るんです?
―――もちろんできるよー!
だったら、他の竜の皆さんに、こないだ水竜さんを操ろうとした人達のこと伝えてもらってもいいです?
大丈夫だとは思いますけど、念のためそういう人達がいるから気をつけてって。
―――それならもう伝えたよー?炎竜と氷竜にめちゃくちゃ怒られたし……
そ、そうなんですね(怒られちゃったんだ……ちょっと可哀想)
―――それよりさー、今日も遊んでくれる?
あー、まぁ、いいですよ。少しなら……
―――ホント!?やったー!
いつものように空中に放り投げられて水竜の頭に乗せられると、ミオを乗せた水竜は大空を飛び回った。
さすがにミオも慣れてきたようで、何となく乗りこなせるようになった。
前ほど乗っていて不安定ではない。
頭の角につかまって、立ちながら乗ることも出来るようになった。
あれ、私竜に乗る能力値高くないですか?
しばらく飛び回った水竜は、ミオを地上に降ろすと湖の中へと潜って行った。
「前よりも……乗りこなせるようになったように見えるが?」
「やっぱりそう思います?私も何となく上手くなったなと思ったんですよ!」
「やはり凄いな、ミオは」
「でも……竜に乗れても何の役にも立ちませんよ」
ミオはケラケラと笑った。
とりあえす今日の用事は済んだので、王都へと帰還する。
帰り道、ミオに声をかけた騎士が、自分も水竜に乗ってみたいと言っていたけれど……水竜はミオ以外も乗せてくれるんだろうか?
今度聞いてみることにする。
こうして、王都へと戻って来た騎士団とミオ。
そんな、騎士団と一緒に王宮へと入って行くミオを、物陰から見ている人物がいた。
「どうやってミオちゃんと会おうかなぁ……あの門番に呼び出してもらったら、会えるかなー?」
その人物は、しばらく悩んだ末に門番に声をかけることにした。
―――――――
―――――
―――
「ミオ?アイツなら部屋に戻ったぞ」
「お部屋ですか……わかりました」
魔導師団の執務室を訪れたのは門番をしていた騎士だった。
実はさっき、ミオに会いたいと言う人物が門にやって来て、会うことは出来ないと伝えると手紙を渡して欲しいと頼まれたのだ。
断ったのだけれど、その人物の口の上手さとしつこさに、手紙を持たされてしまった。
捨ててしまっても良かったが、さすがにそんなことは出来ず……手紙を渡すくらいならいいだろうと、ミオを探して魔導師団の執務室へと来た。
「はぁ……ミオ様の部屋か……俺、団長に殺されたりしないよな…」
手紙をカミーユに託そうかとも思ったけれど、ミオ宛の手紙だから直接渡すべきだろうと思った。
まぁ、そこまでする義務もないのだが。
本来は預かることのない手紙なのだから。
門番の騎士は、ため息をつきながらミオの部屋へと向かった。
「お手紙ですか?」
「はい……お渡しは出来ないと断ったのですが……その……あまりにもしつこい方でして…」
そこまでしつこい人物……ミオの頭の中に約1名浮かんできたけれど、まさかね……とりあえず、受け取らないと騎士も困るだろうし、ミオは手紙を受け取った。
騎士は頭を下げると足早に去って行った。
ミオはドアを閉めると椅子に座ってジーッと手紙を見た。
封筒には差出人の名前は書かれていない。
あまりいい予感はしなかったけれど、封筒から手紙を取り出して、内容を確認する。
手紙の差出人は、ミオが想像した人物だった。
内容は、話したいことがあるから、都合のいい日に会いたいというものだった。
毎日、昼の鐘が鳴る時間に、街の噴水広場で待っていると書かれている。
さて、どうしたものか……ミオは頭を悩ませた。
別に行かなくても文句を言われる筋合いはない。
でも、話したいことって何だろう?
手紙にしてまで伝えてくるということは、何かとても大切な話なのではないだろうか?
「……明日……休みだしな…」
―――――――
―――――
―――
街中に、鐘の音が鳴り響いた。
昼の鐘だ。
昼時の時間帯ということもあって、街はたくさんの人々で賑わっている。
そんな賑わう街の中心にある噴水広場。
ミオは噴水の前に立っていた。
もともと、今日は休みだったので化粧水を探しに来ようと思っていたのだ。
だから、とりあえず手紙の主から話を聞いてみようと、書いてあった昼の鐘の時間に合わせて来てみたのだけれど……
「……え、もしかして騙された?」
噴水の前でしばらく待ってみたけれど、誰もやって来ない。
ミオは、フッ…と短く息を吐き出すと、手紙の内容を信じた自分がバカだったと思いながら、薬草屋に行くことにした。
こうして歩き出そうとした時、腕をつかまれて立ち止まった。
「ごめんごめん、行かないで!」
「……………」
ミオの腕をつかんだのは、手紙の主、金髪ショートヘアでいつも人懐こそうな笑顔のラウルだった。
「本当に来てもらえるとは思わなくてさぁ、ミオちゃんの姿見て驚いてたんだよー。ほら、俺あんまり信用されてないじゃん?だから、どう話しかけていいかわかんなくてさぁ……ホント、ごめん!」
「……話って何ですか?」
「ここじゃあ何だしさ、お昼食べようよ。俺奢るからさー」
「……自分の分は自分で払います」
「いやいや、そんなこと言わないでよ……てゆーか、やっぱ警戒されてんの?俺」
「……………」
「そ、そうだよねぇ。まぁ、とりあえずお店に行こうよ、美味しそうなお店見つけたからさー」
ラウルの後ろについて行き、店のテラス席に座ると、ラウルが店員を呼んで料理を注文した。
店員がテーブルから離れて行くと、ラウルはニコニコしながらミオを見ていた。
……いや、話は?
「あの、話がないなら私行きますけど」
「いやいや、話はあるからちょっと待ってよ!ごはん食べてからゆっくりね!」
「私、用事があるので、そんなにのんびりお付き合いするつもりはないですよ?」
「わかった!じゃあ、今から話すから!でも……途中で料理がきちゃうかもしれないよー?」
「別に構わないです」
「えーと、じゃあ……」
ラウルは警戒するように周囲を見回すと、紙とペンを取り出してミオの方を向いて話し始めた。
「ここに書きながら話すね。ちょっと聞かれたらまずい内容だから」
「聞かれたらまずい内容?」
「ミオちゃん達って、この集団と関りがあるでしょ?」
「……え?」
ラウルが紙に書いたのは、「黒ローブの組織」だった。
何故、ラウルが黒ローブのことを?
やっぱり、この人は黒ローブの組織の一員なのだろうか?
こうして、ラウルがミオに話した内容は、次の通りだ。
黒ローブの組織は、昔竜を操ってこの王国を支配しようとした組織で、伝説の魔導師によって魔法陣の核が破壊されたことで、当時の首謀者である総裁は今でも意識がなく眠り続けている。
本当に眠っているのか、もう死んでいるのかは不明だ。
その総裁の意志を継いで、黒ローブはあれからずっと陰で活動し続けてきた。
1年前から水竜を操っていたのも黒ローブの組織であり、ここ最近起きている魔物の集団発生や先日の水竜の件も、すべて黒ローブの組織によるもの。
だが、先日の水竜の件で多くの魔導師が命を落とすことになったため、現在黒ローブの組織は魔導師が不足していて目的を遂行することが出来ない。
準備にも時間がかかるため、黒ローブの組織を壊滅させるなら、今が好機だ―――
「……なぜ、あなたがそんなことを?」
「まぁ、俺もその組織の一員だから?」
「なっ!?」
ミオが驚いて立ち上がると、ラウルが慌ててミオを座らせた。
微妙な空気になったところに、タイミング悪く料理が運ばれてきてしまい、話は一時中断する。
「わぁー、美味しそうだね!とりあえず……食べようか!」
「……………」
「ま、まぁ、ミオちゃん。そんな怖い顔しないで食べようよー、ちゃんと話すからさぁ」
とても料理を食べられるような気持ではなかったけれど、せっかく作ってくれた料理に罪はないわけで……ミオは複雑な気持ちで料理を食べた。
美味しい料理なのか、そうでないのか……味はよくわからなかった。
「俺はね、最近あの組織に入ったんだよ。一応幹部のロドリエルって奴に誘われてね。別に王国を支配するとか興味ないけどさー、面白そうだなって思ってね」
「……面白そう?たくさんの被害も出ているのに?」
「わー、待った待った!怒んないでよミオちゃん!」
「……………」
「俺は、竜を操って王国を支配するなんて、絶対に無理だと思ってるよ。それに、アイツらは総裁に洗脳されてると思うんだよねー。まぁ、俺がそう思うだけだけどさぁ」
ラウルが店員を呼んで飲み物を注文した。
「最初は面白そうだなって思って入ったけどさー、正直もう興味ないんだよね。こないだの件で、水竜を調教するのは無理ってわかったし。竜とか俺の仲間に出来たら最強だと思ったんだけどなー、絶対に無理だよぉ、あんなの」
「調教って……もしかして、テイマーなんですか?」
「テイマー?何それ。俺は魔物使いで召喚士だよー」
「……あ、いいです忘れてください」
この世界にはテイマーって単語はないのか。
それにしても、魔物使いで召喚士って……やっぱりこの人魔導師だったんだ。
てゆーことは、あの魔法陣って……
「水竜を操る魔法陣を描いたのって……あなたですか?」
「うん、そうだよー。まぁ、ミオちゃんに消されちゃったけどね。それよりも……あんなに酷いケガさせちゃって……ホント、ごめんね」
「見てたんですか?」
「いやぁ、今回はけっこう強い魔法陣にしたからさー、もう少し大人しく出来ると思ったんだよねー。でも、まさかあんなに暴れるなんてさー」
「……………」
「ホント、ごめんってば!心の底から反省してるんだよ?ホントだって!だからその……そんな怖い顔しないでよぉ……はい、これ。ここが黒ローブの組織のアジトだよ。今ならまだここに皆集まっているはずだから」
ラウルが紙にアジトの場所を書いてミオに渡した。
無言で受け取ってその紙を見つめるミオ。
「動くなら早い方がいいよ?」
「……………」
ミオには、ラウルの言っていることが本当のことなのかを判断することが出来なかった。
アジトの場所を教えたのも、何かの罠かもしれない。
でも、もしもこれが本当の話なら、ラウルが言うように今すぐにでも動いた方がいい。
化粧水……探したかったけれど、今日は急いで帰って報告するべきだろう。
「話は終わりですか?」
「まぁ、終わりと言えば終わりだけどねー。俺はミオちゃんともう少し話したいかなぁ」
「私、帰ります」
「えー、もう少し話そうよー。あれ、用事は?用事があるんだよねー?」
「それはまた今度にします。このこと……あなたが本当のことを話してくれたのかはわかりませんけど、すぐに報告はしておいた方が良いと思うので」
「いや、ホントの話だからね?信じてよミオちゃん……」
「とりあえず、行きますね。これ、私の分の代金です」
「え、あ、ちょっとミオちゃん!?……もう、俺が奢るって言ったのにぃ……まぁ、可愛いから許すけどさー」
ミオは店を出ると王宮に向かって走り出した。
街を出て来た道を戻って行く。
それにしても……走るのキツイんですけど!?
やっぱり街には箒で行きたいと心から思うミオだった。
急いで戻って報告しなきゃ……そう思いながら走ってみたけれど、さすがに限界だ。
「ハァハァハァ……私の……体力って……ハァハァ……死ぬ」
膝に手をついて苦しそうに呼吸をするミオ。
何とか呼吸を整えて再び走り出そうとした時、背後から声が聞こえた。
「ミオ?」
「……パトリエール団長」
「大丈夫?」
「いえ、死にそうなんで乗せてください」
ちょうど第一騎士団が見回りから帰ってきたところだった。
ミオはシャルルの後ろに乗せてもらい、王宮に向かった。
「走ってたのか?」
「はい、急いで報告したいことがあって。でもちょっと限界で……」
「すまない。もう少し早く戻って来ていれば、ミオを走らせなくて済んだのにな」
「いえいえ、そんな。私の体力の問題ですから!」
本当にシャルルは優しい人だと思う。
こうして王宮に戻ったミオは、カミーユとシャルルにラウルから聞いたことを報告した。
もちろん、街に1人で行ったことはきっちりとカミーユに怒られた。
いい加減、そろそろ1人で行っても良くないですか?
「この情報が正しいものなのか罠なのかはわからんが……どっちにしろ早く動いた方が良さそうだな」
「そうだな。この場所だと……今から向かえば明日には着く」
「ミオ、お前も一緒に行けるか?」
「あ、はい。行けます」
こうして、ミオは第一騎士団とともにラウルが書き記した場所へと向かった。
途中で野営をして翌日の昼前に目的地へと到着し、警戒しながら建物に入って行くと、ラウルが言った通りに黒ローブ達が集まっていた。
全員を拘束し、最後に総裁が眠っているという場所に入ってみると……総裁と呼ばれている人物は既に死亡していた。
王宮に戻り、騎士団が黒ローブ達に尋問をしたけれど、彼らの言っていることは到底理解できないことだった。
全員が、目的は王国を支配し、いずれ世界を支配することだと語った。
でも、結局のところ、支配して何がしたかったのはよくわからない。
総裁の意志を継いで……それが総裁による洗脳だったのだろうか?
総裁の死を受け入れる者は1人もいなかった。
総裁による洗脳を受けていないとされる幹部のロドリエルは、両親の意志を継いでこの組織を動かしていたと言う。
そして、他の者達と同様に、総裁の死を受け入れることはなかった。
彼の両親によって、間接的に総裁の洗脳を受けていたと言えるのかもしれない。
こうして、竜を操って王国を危機に晒す組織は壊滅した。
―――――――
―――――
―――
「うーん……やっぱり、私ってこのまま元の世界には戻らないのかな?」
あれから数日が経った。
ミオはいつも通り魔導師団の宿舎で目が覚めた。
黒ローブの組織が壊滅したことで、この王国に平穏が訪れたわけだけれど……ミオが元の世界に戻れる気配はない。
「まぁ、お母さんほどの功績は残してないけどね」
別にミオ自身はそれほど戻りたいとも思っていなかったので、このままでもいいと思っている。
母親に王国のことも託されたわけだし。
ミオはベッドから起き上がると、顔を洗って身支度を整えた。
「さ、お父さんと朝食を食べて……今日は何をしようかな」
騎士団への同行がなければ、魔導師としての訓練が待っている。
王国に平穏が訪れたとはいえ、王国を守っていくためにはミオの力はまだまだ不足しているのだ。
頑張って、伝説の魔導師という名に恥じない魔導師にならなくては。
ミオは鏡の前で「よしっ」と気合を入れて、部屋を出た。
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前に細かく章を設定してみましたが、変更しました。
第1章はここで終わりです。
次からは第2章の予定です。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
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