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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
第一章 異世界生活と黒ローブ
3/132

03 魔法の練習と初めてのおつかい

のんびり更新で3話となりました♪

 ミオがぺリグレット王国にやって来て10日。

 王国魔導師団に配属となり、毎日のように魔法の修行を行う日々。

 でも、母親が簡単に箒を扱ったにもかかわらず、ミオはいまだに扱うことが出来ないでいた。


 カミーユは感覚だと言うけれど……どんな感覚よ?


 とにかく今は修行あるのみなのだ。





 ―――――――

 ―――――

 ―――






「とりあえず、的には当てられるようになったな。雷は他に何が使える?」

「雷はサンダーボルトしか思い出せていません。氷ならあと2種類使えそうですけど」

「雷よりは氷の方が得意魔法というわけか。よし、使ってみろ」


 得意かどうかはわからないけれど、思い出せる雷っぽい名前の技が他にないのだ。


 ミオは的に向かって手を翳して、氷魔法の一つであるフロージングランスの魔法陣を思い描いた。

 辺りに冷気が漂う。


「フロージングランス!」


 ミオの手から放たれた氷の槍は、見事に的に命中した。

 命中したのは良いのだけれど……


「だーかーらー、魔力操作をしっかりしろって。また的が壊れちまっただろうが」

「す、すみません…」


 どうも威力の弱め方が難しく、よく的を破壊してしまう。

 特に、初めて使う魔法に関しては難しい。

 的は魔法防御が施されているため、そう簡単には攻撃魔法でも破壊できないようになっているけれど、ミオの攻撃魔法はかなりの威力のようで、よく的が破壊されてしまう。


 今は単体攻撃の魔法の練習だからいいものの、範囲攻撃の魔法の練習ってどうするんだろう?


「箒の方はどうだ?」

「さっぱりです」

「まぁ、他の魔導師もで出来ないからな。中にはもう3年も修行している奴もいる」

「え、そんなにですか?私……扱える気がしないんですけど…」

「お前はカエデ様の娘なんだ、コツさえつかめれば扱えるようになるさ」

「……そう…ですかね」


 とりあえず、今日もひたすら魔力操作や攻撃魔法の練習を行う。


 小説なんかで読んだ異世界転生ものだと、転生者はお決まりと言っていいほどにチート能力を付与されていた。

 しかも、転生後普通に使えることがほとんどだった。

 ミオも母親が伝説の魔導師なんて呼ばれるほどのチート能力だったし、それを受け継いでいるはずだから小説通りだと言っても良いのだと思う。

 でも……魔法を使うってとても大変よ!思い描いていた異世界転生となんか違う!


 それに、現実世界とは違っていろいろと不便極まりない。


 まず、携帯が使えないのが最も不便だと思う。

 何かを調べるにも、誰かに連絡をするのにも、当たり前のように携帯を使っていたのだ。

 アナログで調べるのはとても大変だし、何よりも連絡手段が文書とかありえない。


 え、魔法で通信とか、転移とかないわけ?


 それに、この世界には電気がない。

 電気がないということは、生活をする上でこんなにも不便だとは思わなかった。

 震災なんかで電気の使用が制限されたことはあったけれど、全く使えなかったわけではなかったからな…


 不便さを嘆いてもどうしようもない。

 この世界に来てしまったのだから、順応していくしかないのだ。

 とにかく今は魔法に集中だ。


「魔力操作、魔力操作……うーん……こうかな?………よし、できた」


 母親の日記で見つけた、もう一つの魔力操作の練習のコツを試してみた。

 魔力の玉を作り出して、それを上手くコントロールしながら自在に操るというものだ。

 ミオの手のひらに小さな光の玉が出現し、それを動かして操る。

 直径5cmほどの小さな光の玉なのに、操作するのにはかなりの集中力を要する。


「これがスムーズに出来るようになれば…」


 ミオは、魔力を使って光の玉を動かし続けた。

 この練習はかなり効率が良く、光の玉の操作がスムーズになるほどに攻撃魔法のコントロールが出来るようになっていった。

 よし、これなら箒も………残念ながら箒はまだムリだった。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「買い出しですか?」

「そうだ。街に行ってポーションの材料となる薬草を買ってきてくれ」

「……私、薬草の知識とかないですけど」

「このメモを店主に見せればいい」


 昼食後、ミオはカミーユに呼ばれて執務室に行った。

 そこで薬草の買い出しを頼まれたのだ。

 買い出しに行くのはいいけれど、そもそも薬草がどんなものなのかを知らない。


「これが買ってくる薬草の一覧で、こっちが店のマークだ。この看板の店で購入してきてくれ」

「わかりました」

「街までの道は覚えてるよな?」

「門を出たらまっすぐでしたよね?」

「左に曲がってまっすぐだ」

「……え、曲がりましたっけ?」

「曲がったな」


 今聞けて良かった。

 そうじゃなかったらどこに辿り着いていたことか…


 ミオは、一旦部屋に戻って着替えると、カミーユからメモとお金を受け取って街へと出かけた。

 一人での外出はぺリグレット王国にやって来て初めてのことだから、何だかとても緊張する。


 小説なんかだと、街で絡まれたりするのがお決まりだよね…


 門を出て左に曲がり、あとは街までまっすぐだ。

 ミオは見覚えのある道を歩いていく。

 城から街までは歩いて30~40分くらい。

 社会人になってからはそんなに歩くこともなくなったため、この距離はなかなかのものである。

 しかも、今回は1人だからなおさらだ。


「うん、いい運動だと思うことにしよう」


 電車も自転車もないこの世界では、馬車か徒歩が移動手段だ。

 なんで異世界って交通手段がこれなんだろう?

 まぁ、異世界に転生したのに現代と変わらないのでは面白味もないのだけれど。


「そうか、箒を極めたら移動が楽になる」


 ミオの中で箒に対する練習意欲がとても高まった瞬間だった。


 そんなことを考えながら歩いていると、街の賑やかさに包み込まれた。

 煩すぎない街の賑わいが心地良い。


 ミオはカミーユに手渡されたメモを取り出して、薬草屋の看板を探した。

 こうして見てみると、街にはたくさんの店があり、さまざまな看板が取り付けられているのがわかった。

 武器屋や防具屋などは、看板を見れば何となく想像がつくものだった。

 そう考えると、薬草屋の看板もわかりやすい看板だ。


 こうしてキョロキョロと薬草屋の看板を探していると、不意に後ろから腕をつかまれて立ち止まる。

 振り向いてみると、腕をつかんでいたのは知らない男の人だった。


「ねぇ、何探してるの?」

「……えーと…薬草屋さんです」

「ふぅん……君、この街の人?」

「うーん………前は違ってましたけど、今はたぶんそうです」

「そうだよな!前からこの街にいたんだったら、君みたいな可愛い子知らないはずがない!」

「……え?」


 これってまさか……人生初のナンパですか!?

 まぁ、異世界あるあるっぽいけど…


「えーと、私急いでるんで」

「ち、ちょっと待てよ!」


 ミオが立ち去ろうとすると、その男性はミオの腕をガシッとつかんできた。


「少しお茶するくらいいいだろ?奢るからさ」

「私、お使いで来てるんで。お茶に誘うなら他の人にしてください」

「何言ってんの?君以上に可愛い子なんて他にいないだろ?」


 今まで可愛いなどと言われたこともないミオは、顔を真っ赤にしながら困惑した。

 ど、どうすれば……


 とりあえず……逃げよう。


 ミオは男性の手を振り払って走り出した。

 とりあえずあちこち曲がれば逃げられるかな。

 こんな時、小説なら屋根の上なんかに飛び乗るんだろうけど……うん、ムリだ、そんなジャンプ力は私にはない!

 やっぱり箒を使いこなせるようになろう……本日2度目の箒の練習意欲が増した瞬間だった。


 それにしても……しつこいな。

 どんなに曲がり角を曲がっても、男性は追いかけてくる。

 さすがに息が持たない。


 ミオは立ち止まって膝に手をつきながら、ハアハアと荒い呼吸を繰り返した。


「何で逃げるのさ。ちょっとお茶したいだけなのに」

「……私は別にお茶は…」


 この世界の女子は、お茶に誘われたら断らないものなの?

 てゆーか、何なのこのしつこさは?


「まあまあ、俺とお茶して損はないぞ?」

「……………」


 損のないナンパのお茶って何なのよ!?

 どうお茶のお誘いをお断りしようか悩んでいると、ミオの背後から男性の肩に腕が伸び、聞き覚えのある声が聞こえた。


「その辺にしておけ、パトリック」


 声の主に顔を向けてみると……王国第一騎士団団長、シャルルの姿があった。


「パトリエール団長!」

「何だ、シャルルの知り合いだったか」

「この子は王国魔導師団の魔導師だ」

「あー、だから薬草ね。ということはカミーユのお使い?」

「あの……」


 どうやらこのナンパ男は、シャルルやカミーユとは知り合いのようだった。


「俺はパトリック・ラブリエ。君が探していた薬草屋の店主だよ」

「え、そうだったんですか?だったら教えてくださいよ……あ、私はミオ・サクライです」

「だってさ、君がいくらお茶に誘っても逃げちゃうから。ミオちゃんか、今度はお茶してくれよな」

「パトリックがしつこ過ぎたんだろう?すまない、ミオ。相手にしなくても良いぞ」

「相手にしなくていいとはどういうことだよ!」

「あはは……ナンパとか慣れてないので…」

「ナン……?」

「何だよそれ?」

「えーと……初対面の異性を誘う…的な感じです」


 こちらの世界では、伝わりにくい言葉もたくさんある。

 よくわかっていないで使っていた言葉なんかは、説明がとても難しい。


「あ、えーと……このメモに書いてある薬草をください」

「はいはい。そんじゃ店に行こうか。シャルルも来るのか?」

「もちろんだ」

「す、すみませんパトリエール団長…」

「私の用事はもう済んだから問題ないよ。それに、パトリックと2人きりにはさせられないしな」


 ニッコリと微笑むシャルルに、ミオの心臓が何だかドキドキした。

 さすが…イケメンだ。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「書いてあった薬草はこれで全部だが……これを歩いて持って帰らそうとしていたのか?カミーユは。あいつ……悪魔だな」

「……あはは」


 パトリックが用意してくれた薬草は、とても1人では持ち帰れそうにない量の薬草だった。

 さて、どうしたものか。


「問題ない。帰りは私の馬車で帰るからな」

「え?」

「ミオの姿を見つけた時から一緒に帰るつもりだったが……迷惑だったか?」

「とんでもないですよ!え、いいんですか?私が乗せてもらっても」

「もちろんだ」

「俺も乗って行こうかな」

「駄目だ」

「何でだよ!」


 こうして帰りはシャルルの馬車に乗せてもらうことになり、3人で馬車まで薬草を運んだ。


「また薬草が必要になったら、ミオちゃんが買いに来てくれな」

「そ、それはお約束できませんが…」

「私からカミーユに、別の者に行かせるよう伝えておこう」

「あ、シャルルそんなことすんじゃねぇよ!」


 憤慨するパトリックをよそに、馬車は街を出発した。


「街までは1人で歩いてきたのか?」

「はい、そうです」

「事前に知っていれば乗せてきてあげられたのに」

「いえいえ、こんなに歩くことも少なかったので、丁度いい運動になりましたよ」

「そうだ。これを……ミオのお土産に買っておいたんだ。まさか街で会うとは思わなかったからな」

「え、いいんですか?」

「もちろんだ。ミオに渡すつもりだったのだから」

「これは?」


 袋の中を見てみると、ドーナツのようなものが入っていた。


「美味しいらしい。お腹もすいただろう?城につくまでに食べるのに手頃な大きさだ。遠慮せずに食べてくれ」

「私だけ食べるのは……半分ずつ食べませんか?」


 ミオは袋の中身を半分に割ってシャルルに差し出した。

 シャルルは一瞬驚いたような顔をしたけれど、微笑みながら手に取った。

 そのドーナツのような食べ物は、甘さは控えめだけれどとても上品な味わいの美味しいスイーツだった。


「わぁ~、美味しいですね!」

「そうだな」

「今度街に行くことがあったら探してみよう」

「そんなに気に入ったのなら、今度一緒に買いに行こうか?」

「え?」

「仕事ではなく休みの日にでも、街を案内してあげるよ。その時にこれを売っている店を紹介しよう」

「で、でも……ご迷惑では…」

「何故、私が迷惑だと思うんだ?私はミオと出かけられたなら楽しいと思ったのだが…」

「ご迷惑でないならぜひ!」


 歩きでは30~40分もかかった道が、馬車の中で楽しく会話をしているとあっという間に城についてしまった。

 もう少し話していたかったなと思ったことは……内緒だ。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「何だ、シャルルも一緒だったのか?」

「街で偶然会いました。てゆーか……この薬草の量、1人で歩いて持って帰って来るにはちょっと厳しいかと…」

「パトリックが運んでくれるさ」

「カミーユ、その件だが……次からはパトリックのところへの買い出しは他の者にさせてくれ。ミオが危険すぎる」

「……あー、わかった」


 私、危険だったんですか!?

 パトリックって、そんな危険人物だったんですか!?

 次に街に行った時には気をつけよう、ミオは心の中でそう思った。


「薬草はこれで全部だ」

「おぅ、助かったよシャルル」

「ありがとうございました、パトリエール団長」

「それでは私はこれで失礼するよ。ミオ、またな」

「はい、お疲れ様でした」

「俺には挨拶なしかよ!」

「お前には嫌でも会うからな」

「嫌とはなんだ!」


 シャルルは笑いながら執務室を出て行った。

 この2人、仲良しだなとつくづく思う。


「グレイヤール師団長とパトリエール団長って、何だか仲が良いですよね?」

「そりゃあ、幼馴染みだからな」

「あぁ、なるほど」

「ちなみにパトリックも幼馴染みだ」

「……え、そうなんですか!?どおりで、パトリエール団長とは随分と仲良しだなと思ったんですよ」

「今日はもう休んでいいぞ」

「はい」


 ミオは部屋に戻り日記を取り出した。






 ―――5月5日


 今日でこの世界にやって来て10日。


 魔法操作は何となくできるようになってきたけど、箒はまだ操作できなかった。

 うーん…何が足りないんだろう?

 とりあえず、今できる魔法の練習をしていこう。


 そういえば、パトリエール団長とグレイヤール師団長は幼馴染みらしい。あと、薬草屋のパトリックさんも。

 さすが異世界、思い出すと凄いイケメン3人だ!


 5月5日かぁ……向こうの世界じゃGWだ。予定が入らないままこっちに来ちゃったな。皆、何してるんだろう?私って向こうの世界じゃあどんな扱いになってるのかなぁ…






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「ううぅ……手が疲れるよぉ…」


 只今ミオは洗濯中。


 このぺリグレット王国では……というか、こちらの世界では洗濯は手洗いだ。

 電気というものが存在しないため、洗濯機がないのだ。

 向こうの世界にいた頃なんて、洗濯物を手洗いするなんてほとんどなかった。

 たまに手洗い表示の衣類を洗うくらい。

 しかも、ほとんどネットに入れて洗濯機でおしゃれ着洗いコースでピピッとやっていたから、実質手洗いなんて生まれてから1~2回くらいしかしたことがない。


 何て不便な世界だろう……


 いや、電気がなくても洗濯機は作れるはず。

 手動で回す方法ならあるわけだし。

 もしかしたら存在はしているのかもしれないと思ってカミーユに聞いてみた。


「せんたくき?何だそりゃ」

「……やっぱないですよね…」


 違う名前であるのかもしれないと粘ってみたけれど、手で洗う以外どんな方法があるんだ?と聞き返されて諦めた。


 それにしても……ハンカチとかならまだしも、服って手洗いするのめちゃくちゃ大変!

 これ、冬の季節は地獄じゃないの?


 想像しただけで身震いしてしまう。


 魔法で何とかできないものか……洗濯機ってグルグル回ってるのよね……あ


 そうです、そうです!魔法で水をグルグル回せれば洗えるんですよおそらくは!


「水をグルグル回す魔法……?」

「水をグルグル回すって何?」


 ミオがいろいろ考えていると、アルバンが声をかけながら顔を覗き込んできた。


「アル君」

「悩み事?」

「えーと……魔法で水をグルグル回すにはどうしたらいいのかなと思って…」

「水属性の魔法を使えば簡単だよ」

「水属性?」

「そうだよ。水を操ればいいじゃん」

「なるほど!」


 そんな簡単なことだった!と喜んだのも束の間、水魔法が使えないことに気がついたミオはがっくりと項垂れた。


「そんなにガッカリしないでよ。僕言ったよね?ミオは全属性使えるって」

「あ、そうでした」

「水属性について覚えればいいだけのことだよ」

「ありがとうございます!さっそく水属性の勉強を……」

「ちょっと待って!」

「え?」


 水属性の魔法について調べようと立ち上がったミオだったけれど、アルバンに腕をつかまれてその場にとどまる。


「ミオが普通に話してくれないならこの腕は離さないよ」

「……わかったんで離してください」

「わかってないじゃん!」

「あー……つい、いつもの習慣で…」

「約束だよ?普通に話すって」

「はい……じゃなくて、うん、わかったよ」

「それじゃあ、僕が水属性について教えてあげるから、執務室に行こう」

「え、アル君が?それは助かるかも。ありがとうございます……じゃなくて、ありがとう」

「凄くぎこちないんだけど」

「……あはは」


 こうして2人で執務室へと向かった。











「覚えた?水属性の魔法陣」

「うん、アル君がこう手を翳してくれると頭の中に入って来るから。凄い技ですよね……じゃなくて、えーと……それも魔法なの?」

「魔法っていうか、僕の能力かな」

「ふぅん、やっぱり凄いよねアル君って」

「まぁね」


 初めてカミーユと修行をした時にしてくれたように、アルバンがミオの額に手を翳すとミオの頭の中に水属性の基本魔法陣が浮かび上がった。

 おかげで魔導書だけで覚えるよりも遥かに早く水属性の魔法陣を覚えることが出来た。

 副師団長というだけあって、やっぱりアルバンは凄いと思う。


「光の玉で魔力操作の練習してたでしょ?あれと同じように水の玉出してみてよ」

「えーと……うーん………こう……かなぁ………あ、できた」

「そうそう。そんで目を閉じて…」

「こう?」

「そうだよ。そのまま腕をもう少し高く……あ、そうそこ。そんで……こうだよ。このまま腕を固定して、水の玉を放ってごらん。あ、目は閉じたままね」

「ん?えーと……こう?」


 ミオの手のひらに浮いた水の玉は、目を閉じたミオの手から放たれると………見事にカミーユの顔に命中した。


「お前ら!!」

「あはははは!」

「え……わっ、ごめんなさい!!」

「何しやがる!」

「避けないカミーユが悪いんだよ~」

「え、えーと…本当にごめんなさい!」


 真っ先に部屋から逃げ出したアルバンを追って、ミオはカミーユに頭を下げると部屋から飛び出した。

 部屋に残されたのは、水も滴るイケメンが1人……











「あー面白かった!」

「ちょっとアル君!?」

「さ、続きはここでするよ」

「……師団長、怒ってないかなぁ…」

「大丈夫だって。ほら、始めよう」


 訓練場へとやって来たミオは、アルバンに言われるがまま練習を始めた。


 まず、水の玉を操作することから始めて、その後バケツにためた水の操作をする。

 水の操作は思ったより簡単にできた。

 よし、これで洗濯が楽になるはず。


「何でミオは水を操りたかったの?」

「それは……楽に洗濯するためです……じゃなくて、えーと…私がいた世界では、手で洗濯をするってあんまりなくて。同じようなことを魔法で出来たら楽だなと思ったの」

「え、洗濯を手でしないの?」

「うん。洗濯機がしてくれるから」

「何だよそれ!?いいなぁ、ミオの世界に行ってみたいよ」

「行き方がわかったらね。うーん……でも、どんな感じの世界だったかは見せられるよ?」

「見たい!」


 ミオはアルバンを部屋に連れて行き、携帯で写真を見せた。

 こうして見ていると、何だか向こうの世界が恋しくなってくるな……











 ―――――――

 ―――――

 ―――






 なかなかに不便な世界だけれど、魔法で工夫すれば何とかなることもあることがわかった。

 せっかく使える魔法だもん、上手に活用していこう!


 小説の中の異世界生活だと、皆元の世界におけるさまざまな知識を使って改革していたけれど……何の知識もないな、私。


 そんなことを思いながら夜空の星を見上げるミオだった。


 現実世界、小説のようには上手くはいきません。


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