27 びしょ濡れのお祭り
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「おはようございます」
「おはよう。今日は午前中でこっち側終わらせて第三騎士団と合流だ」
「はい」
黒ローブのことがとても気になるけれど、とりあえず今は結界の点検を終わらせることに集中しよう。
第二騎士団の皆は、昨夜も遅くまで飲んでいたようだが……大丈夫だろうか?
「よぉ、嬢ちゃんおはよう。よく眠れたか?」
「はい。皆さんは二日酔いとか大丈夫です?」
「俺達を誰だと思ってんだ?あれくらいの酒じゃあ二日酔いになんかならないよ」
「宿舎で飲んでる酒はもうちぃーっと強いからなぁ」
「……さすがですね」
「よし、じゃあ朝食を食べたら出発するぞ」
朝食を食べて、今日の点検を開始した。
昨日のこともあるので、黒ローブにも注意を払いながら進んで行く。
まぁ、さすがに黒ローブも同じように見つかるようなことはしないだろう。
順調に2つの魔法陣の描き替えが終わった。
少し早かったけれど、第二騎士団とともに昼食の準備を始めた。
ちょうど昼食が出来上がった頃に第三騎士団が合流し、一緒に昼食を食べて第二騎士団はフェルドーへと戻って行った。
ここからは第三騎士団とともに点検に回る。
「黒ローブか。俺達はまだ会ったことはないけどな」
「てゆーか、ミオはよく遭遇するな。呼び寄せてんじゃねぇか?」
「そ、そんなわけないじゃないですか!やめてくださいよ、クレール団長……」
「でもまぁ、ミオだけが毎回遭遇してるのは事実だな」
「師団長まで!?私、知らないですからね?黒ローブの組織なんて」
でも……黒ローブに遭遇した際には、いつもミオがいた。
え、どこぞの少年探偵のように、行く先々で事件とかないですよね?
少し不安になるミオだった。
この日も、無事に2つの結界の魔法陣を描き替えて、点検を終了した。
ここは近くに町がないため、野営をして夜を過ごすこととなる。
サンブリー近辺ということもあり、夜は少し寝苦しそうだ。
ミオはテントの中にアイスブロックを設置した。
「ミオ、こないだ箒で帰ってただろ。迷わないで帰れたのか?」
「迷いませんよ、真っすぐですもん」
「真っすぐ?」
「コイツ、道とか関係ないからな。確か半日くらいで帰って来たんだったか?」
「はい、そうですよ」
「半日だぁ?3日かかる道のりを?」
「だって、直線ですから」
「すげぇな」
騎士達が交代で見張りをしながら、何事もなく朝を迎えた。
野営は、見張りを立てないといけないから大変だ。
見張りはいつも騎士団がしてくれるのだけれど。
それに、やっぱりテントだとよく眠れない。
朝食を食べ終えると、午前中に2つの魔法陣を描き替え、昼食を挟んで午後に残り1つを描き替えて、第二騎士団はサンブリーへと戻って行った。
ここからは第一騎士団が同行する。
「問題はなかったか?カミーユ」
「初日から問題発生だ」
「何?」
今日はあと1つ魔法陣を描き替えて、次の魔法陣までの中間くらいで点検を終えることになっている。
移動しながらカミーユはシャルルに黒ローブのことを報告した。
「それから、問題と言えばコイツだ」
「え、私何もしてませんよ?……あ、黒ローブ呼び寄せてるって言うなら違いますからね!?」
「そうじゃない。ミオは、何故だかわからんが結界を通り抜けられる」
「結界を?」
「そうなんですよ。ほら……」
ミオが結界の中に手を入れて見せた。
「驚いたな」
「ミオはいろいろやらかすからなぁ、知らないで入ってしまうんじゃないかって心配してるところだ」
「何もやらかしませんよ…」
カミーユが魔法陣を描き替え、点検をしながら中間くらいまで進んで、予定通り今日の点検を終了した。
―――――――
―――――
―――
「どうする?シャルル」
「困ったな」
近くの町まで移動し、宿で宿泊の手続きをしたのだけれど、ここで問題が発生してしまった。
この町では、今日から祭りが開催されていて、明日まで観光客で賑わっているようだった。
そのため、泊まろうとしていた宿で1部屋、もう1軒の宿で1部屋しか空きがなかった。
3人ずつ泊まれるとは言うが、ミオは女性だ。
さすがに一緒というわけにもいかないだろう……と悩むシャルルとカミーユだったけれど、肝心のミオが大丈夫だと言うので、騎士3人と、ミオ・シャルル・カミーユの3人に別れて泊まることとなった。
「わぁ、お祭り楽しそうですね」
ミオが窓から外を見下ろすと、向こうの通りに露店が見えた。
たくさんの人が歩いているのが見える。
「行ってみる?」
「え、いいんですか?」
「カミーユも行くだろう?」
「お前ら2人で行って来いよ。俺は疲れた」
「皆で行ったら楽しいですよ?」
「……仕方がないな、少しだけなら付き合ってやる」
こうして、3人で祭りに出かけて行った。
町のメイン通りには露店がたくさん建ち並んでいて、観光客や町の人達で盛大に盛り上がっていた。
「こっちの世界にもお祭りってあるんですね」
「あるよ。ミオの世界でもあったのか?」
「ありましたよ……お、綿菓子!」
「わたがし?どれだ?コットンキャンディーのことか?」
「あ、そうです。コットンキャンディー(まんま英語になってるんだ)」
ミオは綿菓子の屋台に駆け寄って、虹色の綿菓子を1つ買った。
ちぎって食べてみると、何だかフルーティーな味がする綿菓子だった。
「おー、美味しい!」
「良かったな」
「お前の世界にもあったのか?」
「ありましたよ。お祭りと言えばこれです」
他にも、輪投げや射的などもあって、何だか懐かしく思えた。
飲み物やお酒なんかも売っていたけれど、やっぱり氷はないので、そこが少し残念なところだった。
可愛いウサギのキャンディーを見つけて、ミオの目が留まった。
やっぱりウサギは可愛いなぁ……そう思いながら買わずに店を離れようとすると、シャルルが驚いたように声をかけてきた。
「ミオ、買わないのか?」
「え?」
「ミオの好きなウサギだったと思うが…」
「あれは……可哀想で食べられないので買わないです」
「……なるほど」
「ただのキャンディーだろ?」
「可愛いウサギのキャンディーですよ?師団長は普通に食べられるんですか?」
「そりゃ、食えるだろ」
「鬼ですね」
「オニ?何だよそりゃ」
「うーん……悪魔ですね」
「俺は人間だ!」
こうして、たくさんの露店を見て回り、3人は町の中心の広場へと出て来た。
広場にはたくさんの人達が集まっていて、皆傘をさしたり雨具を着たりしていた。
「ん?雨なんて降ってないですよね?」
「おい、シャルル。この祭りって……」
「そうだな」
「え?」
広場の中央に設置された、大きな鐘が鳴らされた。
すると、大量の水がまるで雨のように上空から降り注いできた。
「え、何ですかこれ!?雨?」
「放水祭りだよ」
「まぁ、涼むためにやる祭りだ」
あっという間にびしょ濡れになってしまった。
傘を持っていた人達も、いつの間にか傘を手放して水を浴びている。
「うわっ!」
横からも水が飛んできた。
見るとホースを持って放水している人達がたくさんいた。
な、何て激しい放水祭りだ。
「おい、シャルル。この祭りってこんなに激しかったか?」
「さぁな、忘れたよ」
「これ、いつまで続くんですか?」
「水がなくなるまでだ」
「え!?」
何処の水がなくなるまでですか?
こうして激しい放水を浴びていると、周囲から歓声が聞こえて来た。
今度は何だ?
すると、上空にいくつもの巨大な風船?のようなものが現れた。
あれはいったい……
「お、ついにフィナーレか?」
「そうだな」
「フィナーレ?」
見上げていると、風船が一気に弾けた。
そして……大量の水が落ちて来た。
始まった時の雨のようなものではなくて、まさに水が落ちてきたという感じだ。
滝行ですか……凄いぞ、放水祭り。
祭りのメインである放水は終わったらしい。
あとは露店を回って楽しむようだが……ずぶ濡れのまま回るのか?
「す……凄いですね、このお祭り」
「私も久しぶりに浴びたよ」
「昔はよく来てたもんな―」
このままでは宿に帰れないので、ミオが魔法で乾かした。
すると、それを見ていた人達が乾かしてくれと押し寄せて来て、ミオの前には行列が出来上がった。
仕方がないので、並んだ人達も乾かしてあげたけど……めちゃくちゃ大変だった。
「ふぅ……終わった」
「お疲れ様」
「人前でやるからだ」
とても激しい放水祭りだったけれど、たまにはずぶ濡れになるのも気持ちがいいものだと思った。
騎士達も参加したのだろうか?
誘ってあげれば良かったななどと思いながら、宿へと戻って行った。
水浴びは疲れるものだ。
ミオは昨夜の寝不足もあって、部屋に戻ると一気に睡魔が押し寄せて来て、ベッドに寝転がるとあっという間に眠りに落ちて行った。
「もう寝たぞ、ミオの奴」
「昨日は野営だったんだろう?ミオは野営ではあまり眠れないらしい」
「そうなのか?」
部屋の明かりを小さくして、シャルルとカミーユは明日の点検について少し打ち合わせをしてから、ベッドに入って早めの就寝とした。
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―――――
―――
ネーオールの森の湖の周囲に、黒ローブを羽織った者達が現れた。
湖を囲むように立った黒ローブ達は、魔法陣の札が貼られた壺や鏡を持って、何かを始めた。
彼らが始めたのはいったい……
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