26 黒ローブとの遭遇
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「完全な操術魔法ってさ、魔法陣の核が必要じゃん?」
「そうだ。だから魔法陣の書を探してるんだろうが」
「あの材料ってさぁ、あくまでも人間に対するものだよねぇ」
「そうだ」
「でも、総裁は竜を操った……何使ったの?」
「それは……総裁が目覚めればわかる」
「ふぅん」
薄暗い部屋で、ラウルとロドリエルが話している。
「1年前は、どうやって水竜を操ったの?俺、最近ここに来たから知らないんだよねー。知っておいた方が良いと思うんだけど」
「……まぁ、そうだな」
1年前に水竜が凶暴化したのは、この黒ローブの組織が水竜を操ったから。
ネーオールの森の湖で水竜を呼び出す儀式を行って、姿を現した水竜に操術魔法をかけた。
儀式は黒ローブに所属する魔導師達が行った。
ロドリエルは魔導師ではないため、魔法を使うことも魔法陣を使うことも出来ない。
そんな彼が何故、この組織の幹部なのか?
それは、彼の両親が幹部だったからだ。
既にこの世にはいない両親の意志を継いで、ロドリエルは黒ローブの組織の幹部として指揮を執っている。
魔導師達が描いた魔法陣は、核がないため完全なものではなかった。
そのため、水竜の操術魔法はすぐに解除されてしまい、そのたびに魔法陣の強化を行ってきた。
そして、ラウルによって魔法陣が描き替えられ、森から出て王都にも被害が拡大し始めたのだが……
「何故か突然解除されてしまったんだ」
「まぁ、あれは俺も詰めが甘かったなぁとは思ってるよ?それまで操れてたからさ、あれくらいの魔法陣で行けると思ったんだよねー。で、竜を呼び出す儀式って?」
「それは……先日死んだ魔導師が中心となって行った」
「じゃあ、もう竜は呼び出せないってこと?」
「……いや、関わった魔導師が何人かいるから、ある程度のことはわかるはずだ」
「ふぅん」
ラウルはゴロンと寝転がって天井を見上げた。
「何で、水竜を操るの?他の竜は?」
「総裁が操ったのが水竜だったというのが大きいが……雪原は環境が厳しすぎて儀式は難しい。火山は人が立ち入るのは不可能に近い。そうなると、どちらかの森の竜を操るのが賢明だ」
「なるほどねー」
ロドリエルは、ラウルの魔導師としての能力を買ってこの組織に引き入れた。
だが正直、ラウルが何を考えているのかはわからず、完全には信用していない。
「じゃあさ、もっかい水竜操ってみようよ」
「は?」
「いつにしよっかなー」
ラウルは人懐こそうな笑みを浮かべながら、楽しそうにカバンから手帳を取り出して見ていた。
どこまで信用していいんだ……ロドリエルは、そんなことを考えながらラウルを見ていた。
―――――――
―――――
―――
「プロテクション!」
ミオは今、防御力や攻撃力を上昇させる魔法の特訓中。
まだまだ持続時間が短く、実戦で使うには難しい。
「だいぶ持続時間は延びたけどな。これじゃあまだ足りない」
「うーん……難しいですね。でも、頑張ります」
「攻撃力の方はどうだ?」
「そうですね……防御力よりは持続時間長いと思いますよ?」
「かけてみろ」
「はい。アグレクション!」
防御力上昇は持続時間が1分も満たないのに対し、攻撃力上昇は2~3分くらいは持つ。
ジーッとしている分には、3分は長くも感じるけれど、戦闘となれば短すぎる。
「レオポールさんと魔法をかけ合わせても、持続時間って延びないんです?」
「さぁな。レオポールが戻ってきたら試してみろ」
「はい」
レオポールは支援魔法を得意としていて、ミオよりも防御力上昇や攻撃力上昇魔法の持続時間が長かった。
同じ時期に習得した魔法でも、得意としている魔法の系統によって、その効果には個人差が出てくる。
残念ながらレオポールは今フェルドーに行っているため、今度戻って来た時に試すか、フェルドーに行って試すしかない。
月が替わったので、魔導師の配属先が交代したのだ。
王都にはリシャールが戻って来ている。
リシャールは攻撃魔法に特化していて、支援魔法は使えなかった。
「うーん……だったら、何回も重ねたらどうでしょう?」
「やってみろ」
「はい」
ミオがプロテクションを重ねがけしてみたけれど、持続時間は延びなかった。
異世界転生ものだと、魔法の重ねがけとかあるのにな。
現実はそう上手くはいかないものだ。
魔導師団の力はまだまだ発展途中。
どれくらい向上できるのかは未知数だけれど、訓練を重ねていけばもっともっと強くなれるはず。
王国を守るため、これからやって来るかもしれない魔導師を育てるため、ミオ達の訓練に終わりはないのだ。
―――――――
―――――
―――
「カミーユばっかりずるいよぉ」
「仕方がないだろう。俺が行かないといけないんだから」
「ミオは連れて行かなくてもいいじゃん」
「コイツにも見せとかないとだろ?」
「だったら僕も連れてってよ」
「あのなぁ、副師団長のお前まで留守にしてどうする」
「あーもう、いいよ!カミーユのバーカ!」
「何だとコラ!」
「まぁまぁ、2人ともその辺にしましょうよ…」
今日から魔物を封じている結界の点検に出かける。
全部で15カ所を点検し、最後に内側の魔物を調査するので、1日では終わらず数日はかかってしまうらしい。
「そんじゃあ、行くぞ」
「はい」
散々文句を言っていたアルバンだったけれど、一応副師団長ではあるし……カミーユの留守中も問題はないだろう。
まだ子供なのに凄いなと思う。
「騎士団は一緒じゃないんですね」
「現地で合流だ。今日は第二騎士団と回ることになる」
「そうなんですね」
結界の点検には、エリアごとに近くの騎士団と行動するらしい。
第一騎士団だけで全てを行うとなると、負担が大きすぎるのだ。
第一騎士団は、一番最後に点検と内部の調査の両方を担当する。
ミオとカミーユは、合流地点まで箒で移動している。
この速さで行けば、そんなに時間はかからないはずだ。
「ミオ」
「何ですか?」
「また速くなってないか?」
「え、そうですか?」
ミオ的にはそんなに速く飛んでいる意識はなかったけれど、カミーユ的には速く感じるらしい。
まぁ、速く移動出来るということは良いことだ。
「それにしても、相変わらず道は関係なしか」
「だって、空ですもん」
2人は木々の上を通って真っすぐ目的地に向かって飛ぶ。
途中に障害物がないって、本当に気持ちがいい。
「お、見えてきたぞ。騎士団は……もう着いてるな」
「あれですね」
既に第二騎士団は到着していて、馬の整備をしたりしながら待機しているのが見えた。
ミオとカミーユは箒を下降させていった。
「よぉ、嬢ちゃんも来たのか」
「はい。お久しぶりです」
「それにしても、予定よりも早かったな」
「コイツが飛ばすからな」
「え、私そんなに飛ばしてないですよ?」
「まぁ、早く始められるし良かったじゃないか。早速始めるか?」
「そうだな」
今回は、第二騎士団の団長は来ておらず、副団長が3人の騎士を率いて来ていた。
点検だからそんなに騎士の数は多くなくても大丈夫らしい。
何ならミオとカミーユの2人でも出来そうだけれど、何かあった時のために騎士も必ず同行するとのことだ。
「まずはここからだ」
「ふぅん、これが結界ですか」
紫色で透き通ったバリアのようなもので、こちら側と内側が仕切られていた。
ミオが手を伸ばして触れてみると、スーッと手は結界を抜けて中に入った。
内側からは出れないけど、外側からは入れる仕様なんだろうか?
「何で入れるんだよ」
「え?そういう仕様なのでは?」
「そんなわけないだろ。誰かが迷い込んだら困るだろうが」
騎士が手で触れると、ちゃんとそこには壁があって中には入れられなかった。
何故だ?
あ、魔導師は入れるとか……カミーユも入れなかったので、そういうことでもないらしい。
「うーん……まぁ、迷い込まないように気をつけます」
「そうだな」
カミーユが結界の魔法陣に手を翳して、新しい魔法陣を重ねた。
魔法陣の上書きのような感じらしい。
次の魔法陣までは、途中に結界の不具合がないかも見ていくため、結界沿いに移動していく。
カミーユが手で触れながら点検していたけれど……ミオはやっぱり手が通り抜けてしまうため、点検を手伝うことが出来なかった。
「す、すみません……師団長」
「仕方がないだろ、どういうわけかわからんが、お前は入れてしまうんだからな」
こうして、2つ目の魔法陣の近くまで来た時、その場所の前に誰かがいるのを見つけた。
誰だ?
気づかれないように近づいて行くと、それは黒ローブを羽織った人物だった。
黒ローブの人物は、結界の魔法陣に手を翳した。
一体何をするつもりだろうか?何かされる前に止めなくては。
「そこで何をしている!」
「!?」
カミーユが黒ローブの前に出て声をかけると、その人物はとても驚いた顔をして、その場から立ち去ろうとした。
「逃がすかよ!」
カミーユが魔法で攻撃をして、騎士達が黒ローブの前に立ちはだかる。
黒ローブが、騎士達に向かって魔法攻撃を放ったため、ミオが騎士達の前に立ってシールドで防いだ。
その後、激しい攻防戦が繰り広げられた後、黒ローブは木の上に跳びあがり、木の枝を伝って逃げて行った。
何て身軽に動けるんだろう。
これも魔法なのか?
「待って!」
「ミオ!あまり深追いはするな!」
ミオは箒で黒ローブを追った。
このままでは逃げられてしまう……ミオは魔法で攻撃してみたけれど、木を避けながらではなかなか当てられない。
すると、何処からかもう1人の黒ローブが現れて、木の上を逃げる人物を乗せて箒で飛んで行ってしまった。
木々の間をくぐり抜けて上空へと上がってみたけれど、どこにも黒ローブの姿を見つけることは出来なかった。
ミオはカミーユ達の所に戻って報告する。
「2人?」
「はい。もう1人出て来て、箒で逃げられてしまいました。すみません」
「謝らなくていい。黒ローブか……何してたんだろうな」
「結界は?中に入ろうとしていたとかじゃないんです?」
「入ろうとしていたのか、入って出てきたところだったのかわからんが……とりあえず点検を終わらせるぞ」
「そうですね」
カミーユが魔法陣を新しいものに描き替えると、昼食のために休憩を取ることになった。
騎士達が準備をしてくれる。
本当に騎士団って料理が上手だなと思う。
騎士の養成所では、料理も習うのだろうか?
昼食を食べてお腹は満たされ、馬も十分に休憩をさせてから、点検を再開した。
ここまでと同じように結界の不具合を調べながら進んで行き、3つ目の魔法陣を描き替えたところで、今日の点検は終了となった。
近くの町の宿屋へと向かう。
フェルドーが近くなってきて、少し涼しい地域になってきたように思う。
前にフェルドーに行った時のような防寒具はいらないけれど、上着くらいは欲しいかもしれない。
「フェルドーなら今は雪融けてるぞ?」
「え、融けることあるんですか?」
「また来月には降り始めるけどな」
「じゃあ、雪原も雪がないんです?」
「雪原は融けねぇよ。融けたら雪原じゃないだろうが」
「あ、そうですね」
宿で出された夕飯は、何と鍋料理だった。
こっちにも鍋料理があるらしい。
中身はどんなだろう?蓋を開けるのが楽しみだ。
「あれが、前にパトリエール団長が言っていた黒ローブか?」
「はい。たぶん同じだと思います」
「それにしても……なかなかの魔法の使い手だったな」
「そうですね。箒も乗れてたし」
「あんなのを相手にするってなると、騎士団じゃあちょっと厳しいな。騎士団はどうしたって近距離攻撃になっちまうし。あんなふうに避けられちゃあ、攻撃のしようがない」
「黒ローブはあんな魔導師ばかりなのか?」
「わかりませんけど、私が前に戦った魔導師も強かったですよ?飛んだりはしませんでしたけど」
「あんなのが何人いるかはわからんが……魔導師ももっと強化していかないとだな」
「ですね」
とりあえず、黒ローブが動いていることは確かだ。
見回りも強化していかないといけないだろう。
こんな時、通信手段がないのは本当に不便だ。
今日のことは、一刻も早くすべての騎士団に伝えた方がいいのに……
「師団長」
「何だ?」
「私、サクッと王都に報告しに行ってきましょうか?たぶん……黒ローブが何か仕掛けるとしたら、ネーオールの森かメーヌの森だと思うんですよね」
「もう暗いんだぞ。それに1人で行かせるわけにいかないだろうが」
「うーん……MAXで飛ばしたら2時間くらいで戻って来れると思いますよ?」
「そのマックス?ってのが何だかはわからんが、許可は出来ん」
「最速でってことですよ。2時間かからないかもですよ?」
「黒ローブが逃げた方向から見て、途中で遭遇する危険もある」
「そうしたら、キッチリ倒してきます」
「あのな……駄目だと言ったら駄目だ。いいな」
凄い知識人か魔導師が転生してこないかな……本気で願うミオだった。
―――――――
―――――
―――
黒ローブ達が集まってテーブルを囲んで何かを話し合っていた。
テーブルの上には地図が置かれている。
そして、部屋の片隅には何かが入れられた壺がいくつも置かれていて、魔法陣が描かれた札が貼られていた。
「儀式に必要なのは、あと1つだな」
「明日には揃うか?」
「すべて揃ったら儀式を始める」
また、何かが起ころうとしているのだろうか……
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