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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
第一章 異世界生活と黒ローブ
28/132

26 黒ローブとの遭遇

のんびり更新中♪

「完全な操術魔法ってさ、魔法陣の核が必要じゃん?」

「そうだ。だから魔法陣の書を探してるんだろうが」

「あの材料ってさぁ、あくまでも人間に対するものだよねぇ」

「そうだ」

「でも、総裁は竜を操った……何使ったの?」

「それは……総裁が目覚めればわかる」

「ふぅん」


 薄暗い部屋で、ラウルとロドリエルが話している。


「1年前は、どうやって水竜を操ったの?俺、最近ここに来たから知らないんだよねー。知っておいた方が良いと思うんだけど」

「……まぁ、そうだな」


 1年前に水竜が凶暴化したのは、この黒ローブの組織が水竜を操ったから。

 ネーオールの森の湖で水竜を呼び出す儀式を行って、姿を現した水竜に操術魔法をかけた。

 儀式は黒ローブに所属する魔導師達が行った。


 ロドリエルは魔導師ではないため、魔法を使うことも魔法陣を使うことも出来ない。

 そんな彼が何故、この組織の幹部なのか?

 それは、彼の両親が幹部だったからだ。

 既にこの世にはいない両親の意志を継いで、ロドリエルは黒ローブの組織の幹部として指揮を執っている。


 魔導師達が描いた魔法陣は、核がないため完全なものではなかった。

 そのため、水竜の操術魔法はすぐに解除されてしまい、そのたびに魔法陣の強化を行ってきた。

 そして、ラウルによって魔法陣が描き替えられ、森から出て王都にも被害が拡大し始めたのだが……


「何故か突然解除されてしまったんだ」

「まぁ、あれは俺も詰めが甘かったなぁとは思ってるよ?それまで操れてたからさ、あれくらいの魔法陣で行けると思ったんだよねー。で、竜を呼び出す儀式って?」

「それは……先日死んだ魔導師が中心となって行った」

「じゃあ、もう竜は呼び出せないってこと?」

「……いや、関わった魔導師が何人かいるから、ある程度のことはわかるはずだ」

「ふぅん」


 ラウルはゴロンと寝転がって天井を見上げた。


「何で、水竜を操るの?他の竜は?」

「総裁が操ったのが水竜だったというのが大きいが……雪原は環境が厳しすぎて儀式は難しい。火山は人が立ち入るのは不可能に近い。そうなると、どちらかの森の竜を操るのが賢明だ」

「なるほどねー」


 ロドリエルは、ラウルの魔導師としての能力を買ってこの組織に引き入れた。

 だが正直、ラウルが何を考えているのかはわからず、完全には信用していない。


「じゃあさ、もっかい水竜操ってみようよ」

「は?」

「いつにしよっかなー」


 ラウルは人懐こそうな笑みを浮かべながら、楽しそうにカバンから手帳を取り出して見ていた。

 どこまで信用していいんだ……ロドリエルは、そんなことを考えながらラウルを見ていた。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「プロテクション!」


 ミオは今、防御力や攻撃力を上昇させる魔法の特訓中。

 まだまだ持続時間が短く、実戦で使うには難しい。


「だいぶ持続時間は延びたけどな。これじゃあまだ足りない」

「うーん……難しいですね。でも、頑張ります」

「攻撃力の方はどうだ?」

「そうですね……防御力よりは持続時間長いと思いますよ?」

「かけてみろ」

「はい。アグレクション!」


 防御力上昇は持続時間が1分も満たないのに対し、攻撃力上昇は2~3分くらいは持つ。

 ジーッとしている分には、3分は長くも感じるけれど、戦闘となれば短すぎる。


「レオポールさんと魔法をかけ合わせても、持続時間って延びないんです?」

「さぁな。レオポールが戻ってきたら試してみろ」

「はい」


 レオポールは支援魔法を得意としていて、ミオよりも防御力上昇や攻撃力上昇魔法の持続時間が長かった。

 同じ時期に習得した魔法でも、得意としている魔法の系統によって、その効果には個人差が出てくる。


 残念ながらレオポールは今フェルドーに行っているため、今度戻って来た時に試すか、フェルドーに行って試すしかない。

 月が替わったので、魔導師の配属先が交代したのだ。

 王都にはリシャールが戻って来ている。

 リシャールは攻撃魔法に特化していて、支援魔法は使えなかった。


「うーん……だったら、何回も重ねたらどうでしょう?」

「やってみろ」

「はい」


 ミオがプロテクションを重ねがけしてみたけれど、持続時間は延びなかった。

 異世界転生ものだと、魔法の重ねがけとかあるのにな。

 現実はそう上手くはいかないものだ。


 魔導師団の力はまだまだ発展途中。

 どれくらい向上できるのかは未知数だけれど、訓練を重ねていけばもっともっと強くなれるはず。

 王国を守るため、これからやって来るかもしれない魔導師を育てるため、ミオ達の訓練に終わりはないのだ。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「カミーユばっかりずるいよぉ」

「仕方がないだろう。俺が行かないといけないんだから」

「ミオは連れて行かなくてもいいじゃん」

「コイツにも見せとかないとだろ?」

「だったら僕も連れてってよ」

「あのなぁ、副師団長のお前まで留守にしてどうする」

「あーもう、いいよ!カミーユのバーカ!」

「何だとコラ!」

「まぁまぁ、2人ともその辺にしましょうよ…」


 今日から魔物を封じている結界の点検に出かける。

 全部で15カ所を点検し、最後に内側の魔物を調査するので、1日では終わらず数日はかかってしまうらしい。


「そんじゃあ、行くぞ」

「はい」


 散々文句を言っていたアルバンだったけれど、一応副師団長ではあるし……カミーユの留守中も問題はないだろう。

 まだ子供なのに凄いなと思う。


「騎士団は一緒じゃないんですね」

「現地で合流だ。今日は第二騎士団と回ることになる」

「そうなんですね」


 結界の点検には、エリアごとに近くの騎士団と行動するらしい。

 第一騎士団だけで全てを行うとなると、負担が大きすぎるのだ。

 第一騎士団は、一番最後に点検と内部の調査の両方を担当する。


 ミオとカミーユは、合流地点まで箒で移動している。

 この速さで行けば、そんなに時間はかからないはずだ。


「ミオ」

「何ですか?」

「また速くなってないか?」

「え、そうですか?」


 ミオ的にはそんなに速く飛んでいる意識はなかったけれど、カミーユ的には速く感じるらしい。

 まぁ、速く移動出来るということは良いことだ。


「それにしても、相変わらず道は関係なしか」

「だって、空ですもん」


 2人は木々の上を通って真っすぐ目的地に向かって飛ぶ。

 途中に障害物がないって、本当に気持ちがいい。


「お、見えてきたぞ。騎士団は……もう着いてるな」

「あれですね」


 既に第二騎士団は到着していて、馬の整備をしたりしながら待機しているのが見えた。

 ミオとカミーユは箒を下降させていった。


「よぉ、嬢ちゃんも来たのか」

「はい。お久しぶりです」

「それにしても、予定よりも早かったな」

「コイツが飛ばすからな」

「え、私そんなに飛ばしてないですよ?」

「まぁ、早く始められるし良かったじゃないか。早速始めるか?」

「そうだな」


 今回は、第二騎士団の団長は来ておらず、副団長が3人の騎士を率いて来ていた。

 点検だからそんなに騎士の数は多くなくても大丈夫らしい。

 何ならミオとカミーユの2人でも出来そうだけれど、何かあった時のために騎士も必ず同行するとのことだ。


「まずはここからだ」

「ふぅん、これが結界ですか」


 紫色で透き通ったバリアのようなもので、こちら側と内側が仕切られていた。

 ミオが手を伸ばして触れてみると、スーッと手は結界を抜けて中に入った。

 内側からは出れないけど、外側からは入れる仕様なんだろうか?


「何で入れるんだよ」

「え?そういう仕様なのでは?」

「そんなわけないだろ。誰かが迷い込んだら困るだろうが」


 騎士が手で触れると、ちゃんとそこには壁があって中には入れられなかった。

 何故だ?

 あ、魔導師は入れるとか……カミーユも入れなかったので、そういうことでもないらしい。


「うーん……まぁ、迷い込まないように気をつけます」

「そうだな」


 カミーユが結界の魔法陣に手を翳して、新しい魔法陣を重ねた。

 魔法陣の上書きのような感じらしい。


 次の魔法陣までは、途中に結界の不具合がないかも見ていくため、結界沿いに移動していく。

 カミーユが手で触れながら点検していたけれど……ミオはやっぱり手が通り抜けてしまうため、点検を手伝うことが出来なかった。


「す、すみません……師団長」

「仕方がないだろ、どういうわけかわからんが、お前は入れてしまうんだからな」


 こうして、2つ目の魔法陣の近くまで来た時、その場所の前に誰かがいるのを見つけた。

 誰だ?

 気づかれないように近づいて行くと、それは黒ローブを羽織った人物だった。

 黒ローブの人物は、結界の魔法陣に手を翳した。

 一体何をするつもりだろうか?何かされる前に止めなくては。


「そこで何をしている!」

「!?」


 カミーユが黒ローブの前に出て声をかけると、その人物はとても驚いた顔をして、その場から立ち去ろうとした。


「逃がすかよ!」


 カミーユが魔法で攻撃をして、騎士達が黒ローブの前に立ちはだかる。

 黒ローブが、騎士達に向かって魔法攻撃を放ったため、ミオが騎士達の前に立ってシールドで防いだ。

 その後、激しい攻防戦が繰り広げられた後、黒ローブは木の上に跳びあがり、木の枝を伝って逃げて行った。


 何て身軽に動けるんだろう。

 これも魔法なのか?


「待って!」

「ミオ!あまり深追いはするな!」


 ミオは箒で黒ローブを追った。

 このままでは逃げられてしまう……ミオは魔法で攻撃してみたけれど、木を避けながらではなかなか当てられない。

 すると、何処からかもう1人の黒ローブが現れて、木の上を逃げる人物を乗せて箒で飛んで行ってしまった。

 木々の間をくぐり抜けて上空へと上がってみたけれど、どこにも黒ローブの姿を見つけることは出来なかった。


 ミオはカミーユ達の所に戻って報告する。


「2人?」

「はい。もう1人出て来て、箒で逃げられてしまいました。すみません」

「謝らなくていい。黒ローブか……何してたんだろうな」

「結界は?中に入ろうとしていたとかじゃないんです?」

「入ろうとしていたのか、入って出てきたところだったのかわからんが……とりあえず点検を終わらせるぞ」

「そうですね」


 カミーユが魔法陣を新しいものに描き替えると、昼食のために休憩を取ることになった。

 騎士達が準備をしてくれる。

 本当に騎士団って料理が上手だなと思う。

 騎士の養成所では、料理も習うのだろうか?


 昼食を食べてお腹は満たされ、馬も十分に休憩をさせてから、点検を再開した。


 ここまでと同じように結界の不具合を調べながら進んで行き、3つ目の魔法陣を描き替えたところで、今日の点検は終了となった。

 近くの町の宿屋へと向かう。


 フェルドーが近くなってきて、少し涼しい地域になってきたように思う。

 前にフェルドーに行った時のような防寒具はいらないけれど、上着くらいは欲しいかもしれない。


「フェルドーなら今は雪融けてるぞ?」

「え、融けることあるんですか?」

「また来月には降り始めるけどな」

「じゃあ、雪原も雪がないんです?」

「雪原は融けねぇよ。融けたら雪原じゃないだろうが」

「あ、そうですね」


 宿で出された夕飯は、何と鍋料理だった。

 こっちにも鍋料理があるらしい。

 中身はどんなだろう?蓋を開けるのが楽しみだ。


「あれが、前にパトリエール団長が言っていた黒ローブか?」

「はい。たぶん同じだと思います」

「それにしても……なかなかの魔法の使い手だったな」

「そうですね。箒も乗れてたし」

「あんなのを相手にするってなると、騎士団じゃあちょっと厳しいな。騎士団はどうしたって近距離攻撃になっちまうし。あんなふうに避けられちゃあ、攻撃のしようがない」

「黒ローブはあんな魔導師ばかりなのか?」

「わかりませんけど、私が前に戦った魔導師も強かったですよ?飛んだりはしませんでしたけど」

「あんなのが何人いるかはわからんが……魔導師ももっと強化していかないとだな」

「ですね」


 とりあえず、黒ローブが動いていることは確かだ。

 見回りも強化していかないといけないだろう。

 こんな時、通信手段がないのは本当に不便だ。

 今日のことは、一刻も早くすべての騎士団に伝えた方がいいのに……


「師団長」

「何だ?」

「私、サクッと王都に報告しに行ってきましょうか?たぶん……黒ローブが何か仕掛けるとしたら、ネーオールの森かメーヌの森だと思うんですよね」

「もう暗いんだぞ。それに1人で行かせるわけにいかないだろうが」

「うーん……MAXで飛ばしたら2時間くらいで戻って来れると思いますよ?」

「そのマックス?ってのが何だかはわからんが、許可は出来ん」

「最速でってことですよ。2時間かからないかもですよ?」

「黒ローブが逃げた方向から見て、途中で遭遇する危険もある」

「そうしたら、キッチリ倒してきます」

「あのな……駄目だと言ったら駄目だ。いいな」


 凄い知識人か魔導師が転生してこないかな……本気で願うミオだった。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 黒ローブ達が集まってテーブルを囲んで何かを話し合っていた。

 テーブルの上には地図が置かれている。

 そして、部屋の片隅には何かが入れられた壺がいくつも置かれていて、魔法陣が描かれた札が貼られていた。


「儀式に必要なのは、あと1つだな」

「明日には揃うか?」

「すべて揃ったら儀式を始める」


 また、何かが起ころうとしているのだろうか……



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