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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
第一章 異世界生活と黒ローブ
27/132

25 パトリエール3兄弟

のんびり更新中♪

 小高い丘の上から、港町へと下っていく1台の馬車。

 その中には、ミオと……パトリエール3兄弟が乗っていた。


「……兄さん達、仕事はどうされたんですか?」

「私は今から仕事に向かうんだが?」

「私は今仕事中だ」


 シルヴィーの仕事は、港町の商人達を取り仕切ったり、不正を取り締まったり、出入りする商人などの管理などだ。

 港町の商業全般に関わってる感じかな。


 ジェラールの仕事は騎士団の団長で、今日はミオとシャルルの護衛だと言う。

 護衛って……シャルルも騎士団団長だし、ミオは魔導師だし、特に護衛はいらないのでは?と思うのだが、父親に言われたらしいので断ることも出来ない。


「さぁ、ミオさん。今日は私が存分に案内してあげよう」

「シルヴィー兄さんは仕事に行くのでは?」

「今日は、案内しながら見回るのが私の仕事さ。ところで、ミオさん」

「はい?」

「私もミオさんのことを『ミオ』とお呼びしても構わないかな?」

「あ、はい。大丈夫で……」

「それは断ります」

「何故、シャルルが断るんだよ!私はミオさんに聞いているんだが?」

「だとしても断らせていただきますよ、シルヴィー兄さん」


 なんだろう?

 この兄弟、本当に面白い。


 シルヴィーは、なんだかんだ言いながらも、街を案内しながらきちんと店や商品のことをチェックしたり、店主と話して様子を伺ったりしていて、仕事はきちんとしているようだった。

 ジェラールも、護衛とは言いながらも街の様子にも気を配っていた。

 2人とも優秀な人達のようだった。


「ミオ、どうぞ」

「ありがとうございます!わぁ、美味しそう」

「シャルル、私の分は?」

「ご自分で買ってきてください」

「何だよ、兄に対して冷たくないか?」

「兄さんは、弟に対して干渉し過ぎかと思いますが」


 3人で並んでアイスを食べた。

 レモン風味のシャーベットで、とてもサッパリとして美味しいシャーベットだ。

 ジェラールは他の騎士の目があるためか、仕事中だと言って食べなかった。


「すまない、シャルル。少し外す」

「頑張って、ジェラール兄さん」


 ジェラールが走って行った。


「あれ、お兄さんどうしたんですか?」

「仕事だよ」

「時々ね、悪い奴が入って来てしまうんだよ。だが心配はいらないさ。うちの騎士団は優秀だからね!」

「そうなんですね」

「ところでミオさん」

「はい?」

「シャルルのどこが好きなんだい?」

「え!?」


 好き?

 どこが好き?

 そんなことを本人を目の前にして語れと?


「え、えーと……」

「ミオ、答えなくていいよ。シルヴィー兄さん、あまりミオを困らせないでください」

「おー、これはすまない!本人を前にしてはなかなか言いにくい質問だったな。では、今夜私の部屋で聞かせてくれ」

「それは断らせてもらいます」

「だから何でシャルルが断るんだよ!」

「あはは……」






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「2人とも、昼食はどうするんだ?」

「どうする?ミオ」

「私は……その……いろんなお店で美味しいものを頂いたので、お腹が空いてないと言うか…」

「そうだな、私もだよ」


 いろんな露店で、昨日のお礼だと言って食べ物を頂いた。

 イカ焼きだったり、エビ焼きだったり、魚だったり……

 こうして食べ歩きをしていたせいで、正直お腹は満腹状態だった。


「まぁ、私も同じだがな。だったら少し海の上に出て見るというのはどうかな?」

「海の上ですか?」

「船に乗ってだな」

「あ、私船はダメなので遠慮しておきます」

「何だって!?船がダメとは?」

「本当に船だけは無理なんですよ……すみません」


 ミオは元の世界にいた頃から、船だけは船酔いが酷くて乗ることが出来なかった。

 馬車や馬も、長時間乗っているのは厳しいけれど、幸いなことに箒があるおかげで何とかなっていた。

 でも、今は箒もない。

 船はたぶん乗った瞬間にアウトだから、ここは丁重にお断りしておく。


「そうか、船はダメか。それならば……シャルル、どうするんだ?」

「シルヴィー兄さんが案内してくれるのでは?」

「そうなんだが!」

「えーと……砂浜の海岸とかはないんですか?」

「砂浜?」

「どのような場所だ?」


 この世界には、海水浴というものはないのだろうか?

 ミオはバッグから形態を取り出した。


「こんな所です」

「ななな、何だこれは!?」

「これは、ミオの便利道具ですよ。なるほど、このような場所なら向こうにあるな」

「便利道具?」


 驚いていたシルヴィーも画面に目を向けた。


「行ってみる?」

「はい、行きたいです!」

「よし、それでは馬車に乗ろう」

「シルヴィー兄さん、仕事は?」

「これも仕事の一環だ」


 何だかんだ言いながらついて来るな、この人。

 3人は馬車に乗って移動した。

 砂浜は、パトリエール家に向かう坂道を上がる前に、脇道にそれて行くとあるらしい。


「こっちの世界では、海で泳いだりはしないんです?」

「海で泳ぐ?海に落ちてしまった人を助ける時などは泳ぐが……」

「それは……海水浴とは違いますね」

「海水浴?」

「まぁ、海で泳いだり、砂浜で遊んだりするやつです」

「ミオのいた世界では、海で遊べたのか」

「はい」

「こちらは……魔物がいるからな」

「なるほど」


 ミオとシャルルの会話を聞きながら、シルヴィーが首を傾げて眉間にしわを寄せていた。


「ちょっと待て。その……こちらの世界とか、ミオさんがいた世界とか……どういうことだ?」

「えーと……私、違う世界からこちらに来たので」

「は?」

「シルヴィー兄さんは、伝説の魔導師のことは聞いたことがないですか?」

「伝説の魔導師?あー、あれだろう?この王国を救ったという魔導師」

「ミオは、その伝説の魔導師の娘ですよ」

「…………何だって!?」


 シルヴィーは、メガネを指でクイッと上げながら、ミオの顔をまじまじと見た。

 まじまじと見ながら近づいてくるシルヴィーに、馬車の背もたれが邪魔でのけぞることも出来ない。


「あ、あの……近いですよ」

「私達と何も変わらないように見えるが?」

「それはそうですよ、私も人間ですし……」

「やはり、私とお付き合いをしてくれ」


 何故、そうなる?

 シャルルがシルヴィーの頭をグイーッと押して、ミオから遠ざけた。


「ほら、見えてきたよ」

「わぁー、海ですね!」

「港も海だよ、ミオさん」

「ま、まぁ……そうなんですけど」


 小さなプライベートビーチのような砂浜が見えてきた。


 港の海も、砂浜の海も、同じ海なのにこんなにも違って見えるのはどうしてだろうか?

 砂浜の近くで馬車を降りて砂浜まで歩いて来たミオは、ブーツと靴下を脱ぎ、バッグを置いて波打ち際に走って行った。


 波が押し寄せては引いていくのを見ていると、どんどん引き込まれていく感じがして不思議だ。

 でも、波打ち際に立ってるのって何だか楽しい。

 時折押し寄せてくる大きな波から逃げてみたり、引いていく波を追いかけてみたりしているうちに、何だか子供みたいにはしゃいでしまう。


「彼女は……何だか不思議な魅力があるな」

「いくらシルヴィー兄さんでも、彼女のことは譲れないですよ」

「……それにしても驚いたよ。まさかシャルルが女性を連れて来るとはな」


 波打ち際ではしゃぐミオを見ながらシルヴィーと話しをしていたシャルルだったけれど、あまりにもミオが楽しそうなので、靴と靴下を脱いで駆け寄った。

 それを見たシルヴィーもまた、裸足になって駆け寄った。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「あらぁ、もう帰っちゃうの?ミオちゃんだけでも置いて行けばいいのにぃ……」

「そうだよシャルル!ミオちゃんだけ置いて行くというのは良い案だと思うぞ!」


 いつの間にか、母親とシルヴィーの呼び方が「さん」から「ちゃん」に変わっていたのは気にしないでおこう。


「何が良い案なんですか。それでは、行こうかミオ」

「はい。あの、突然お邪魔してしまって……本当にありがとうございました」


 深々と頭を下げて、ミオはシャルルと一緒に馬車へと乗り込んだ。

 父親とジェラールは仕事に行ったらしい。


「また遊びに来てねー。何ならここに引っ越してきても良いのよー」

「えーと……また、遊びに来させていただきます」

「次こそは私とお付き合いをしてくれると嬉しい」

「それは断りますよ、シルヴィー兄さん」

「だから何でシャルルが断るんだよ!」

「……あはは」


 賑やかに見送られながら、パトリエール家を後にした。

 パトリエール家は、ミオが思い描くような貴族の家ではなく、何だかとても居心地の良い場所だった。

 国王もそうだけれど、この王国はガチガチの貴族社会ではないところがいい。


「ミオ、疲れてないか?」

「はい、大丈夫ですよ」

「騒がしい家ですまなかった」

「いえいえ、とても楽しかったです!」

「そうか、それなら良かった」


 初日からケートス事件があったけれど、それも今ではいい思い出だ。

 何よりも、シャルルのことをいろいろ知ることが出来て、ミオは何だか嬉しかった。


「あ、そうだ、パトリエール団長」

「どうした?」

「ネーオールの森の湖に寄って行ってもいいですか?」

「湖?かまわないよ」

「水竜が声かけて欲しいみたいで……すみません」

「随分気に入られたんだな」

「ど、どうなんでしょう…」


 大きな門をくぐってオルレーヌから出てくると、シャルルが馬車の御者に湖に寄ってから王都に戻るよう伝え、2人を乗せた馬車が出発した。

 森に入って湖が見えてくると……水面から顔を覗かせている水竜が見えた。

 見てる見てる。


「パトリエール団長」

「ん?」

「あそこ……見てください」

「……あれが…水竜?」

「はい。オルレーヌに向かう時も見えた気はしたんですけどね、気のせいかなって思ってたら、本当に見てたみたいで……ケートスの所に現れた時、ほんの少し拗ねてたんですよね」

「ふふ、水竜を拗ねさせるなど、なかなか出来るものではないと思うよ」

「水竜は、4体の中でも末っ子感が強いんですよ」

「私も、末っ子だがな」

「パトリエール団長は、末っ子感は全然ないですよ」


 ミオがケラケラと笑うと、シャルルも一緒に笑った。

 こうして湖の畔に到着し、馬車を降りて水竜を呼ぶ。


「水竜さーん、来ましたよー」


 ミオが来るのが見えたのか、さっきまで水面から出していた顔は引っ込めたようだ。

 しばらくすると、激しい水しぶきとともに水竜が水中から飛び上がって来た。

 ミオは両手を翳して、降り注ぐ水しぶきを大きな水の塊にして湖に戻した。


「なるほど、水竜対策とはこのことだったのか」

「はい。前回ずぶ濡れになったので」




 ―――ミオー!僕出てきたよー!


 ケートスの時はありがとうございました


 ―――どういたしまして。ミオが困ってたら、僕はいつでも助けてあげるからね!


 ありがとうございます


 ―――今日も遊んでくれるの?


 今日ですか?うーん……




 シャルルもいるし、馬車も待たせてるしな……

 ミオは悩みながらシャルルに目を向けた。


「水竜が遊びたいと言っているのですが…」

「遊ぶ?」

「はい」

「どう遊ぶのかはわからないが……遊んであげるといいよ」

「それじゃあ、少しだけ。パトリエール団長も乗ってみます?」

「乗る?私は……遠慮しておこうかな」

「わかりました」




 ―――ミオ―


 あ、はい。少しだけなら遊べますよ


 ―――ホント?じゃあ、少しだけ遊ぼう!




 水竜が嬉しそうに空を仰ぐと、ミオを口にくわえて空に向かって放り投げた。

 ミオが空中で必死にバランスを保とうとしていると、シャルルが目を見開きながら驚いているのが見えた。

 水竜は落ちてくるミオを器用に頭に乗せると、背中の翼を大きく羽ばたかせて飛び上がった。




 ―――ミオ、何だか上手になったね!


 何がですか……てゆーか、乗せ方はもう少し何とかならないんです?


 ―――うーん……ムリ!


 お母さんも………わあぁぁぁーっ!ち、ちょっと前よりも激しくないですか!?




 以前にも増して上下しながら体を回転させて飛ぶ水竜。

 ミオは、振り落とされないように頭の角にしがみついた。

 箒に乗るために筋トレしといて良かった……




 ―――だってミオと遊べるの嬉しくってさー!


 ……お母さんも乗せてたんです?


 ―――カエデ?カエデは……あんまりやりすぎると怖かったからなー。僕はあんまり遊んでないんだー


 そうなんですね

(お母さん、ジェットコースター苦手だったもんな)


 ―――ミオは遊んでくれるから楽しいよ!




 水竜は、約束通り少しだけ遊ぶとミオを地上に降ろしてくれた。

 本当に素直でいい子だと思う。




 ―――それじゃあ、またねミオ!


 また来たら声かけますね




 水竜は上空を旋回すると、湖の中へと潜って行った。


「ふぅ……お待たせしました、パトリエール団長」

「大丈夫なのか?ミオ」

「何とか大丈夫ですよ……あー、御者さん大丈夫ですかね?」


 馬車を見ると、御者が口をあんぐりと開けたまま固まっていて、ミオとシャルルは苦笑いしながら馬車に乗った。


「私は乗らなくて正解だったよ。いつもあんな感じなのか?」

「今日は少し張り切ってたみたいです」

「ミオが空中に投げ出された時、私の心臓が止まりそうだったよ」

「あの乗り方は……どうにもならないみたいですね」

「ミオは平気なのか?」

「まぁ……私がいた世界にあった乗り物のような感じなので、何とか耐えられます」

「あのような乗り物があるのか?凄いな、ミオがいた世界は」

「慣れると楽しくなりますよ、たぶん」


 シャルルは、いつかミオと乗ってみたいと思いつつも、耐えられる自信もなく……なんとも複雑な気分だった。

 こうして馬車は王都に入り、まだ明るい時間に王宮へと到着した。


 馬車を降りて荷物を受け取り、馬車を見送る。


「はい、これはミオの分のシーグローブだ」

「ありがとうございます」

「宿舎まで送ろう」

「えーと……父にお土産を渡してから帰ろうかと思うので」

「そうか」

「何だか、突然お邪魔してしまって……でも、ありがとうございました。とても楽しかったです」

「いや、私が何も言わずに連れて行ってしまったんだ。ミオは何も気にしなくていいよ。それから……また、一緒に行こう」

「はい」


 こうして、カミーユによって仕組まれた感満載のプチ旅行は終わった。

 明日からはまた、シャルルは第一騎士団団長として、ミオは魔導師としての日々に戻る。


 王国の平穏を守るため、頑張ろう。



 .

お読みいただきありがとうございます!

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