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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
第一章 異世界生活と黒ローブ
25/132

23 港町オルレーヌ

のんびり更新中♪

 ぺリグレット王国の南側に位置する港町。


 この港町・オルレーヌは、商人達もたくさん出入りしていて、とても賑わいを見せている街だ。

 ぺリグレット王国の玄関口にもなっている。


 港町であるため、海の幸が豊富なのは当たり前だが、ここには他国から入ってくる珍しい商品も数多く売られていて、王都だけではなくぺリグレット王国中から足を運ぶ人も多い。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「師団長」

「何だ?」

「この辺りの森や雪原って、人間を襲わない魔物が多いじゃないですか」

「そうだな」

「この辺にいない魔物や、中級や上級の魔物ってどこにいるんです?」

「中級や上級の魔物?そりゃあ、雪原の奥の方とか王国の真ん中辺りにもいるし、メーヌの森よりも東側の王国を出た所からはわんさかいる」

「そうなんですね」

「何でそんなことを聞くんだ?」

「魔物の討伐の時に、パトリエール団長がよく『この辺りにはいない魔物だ』ってことを話しているので、じゃあどこにいるのかなって思いまして」


 雪原にはおとなしい魔物しかいなかったから、まさか中級や上級の魔物もいるとは思わなかった。

 襲ってきたりしないんだろうか?


「雪原の魔物は、上級でも人間を襲うことはまずない。生息地域が雪原の北側、海に面するほど奥の方だからな。馬鹿な奴が足を踏み入れて刺激しない限り大丈夫だ。まぁ、刺激したところでそいつが襲われて終わるだろうがな」

「そうなんですね……王国の真ん中辺りというのは?」

「王都とフェルドー、サンブリーに囲まれた中心部分だな。ここは周囲に町などもあるから、結界で囲んで魔物は出て来られないようになっている」

「なるほど」

「年に3回、結界の点検や中の様子を見に行っているんだが、次に行く時はミオも同行するからそのつもりでいろ」

「そ、そうなんですね。わかりました」


 結界とかよくわかりませんが?

 これは……勉強しておく必要がありそうだ。


「それで、次はいつ行くんです?」

「そうだなぁ……お、来月だ。早いな4か月って」

「え、もうすぐじゃないですか」

「俺も一緒に行くから心配するな」

「それは心強いです!」


 結界を張っているのがカミーユのため、そこの調査には毎回カミーユが同行しているらしい。

 討伐になることはほとんどないようだけれど、そこにいるのは中級や上級の魔物なわけだから気は抜けない。


「ところでミオ」

「はい?」

「お前、オルレーヌにはまだ行ったことがなかったよな?」

「オルレーヌ……どこですかそれ?」

「ネーオールの森の南側にある港町だ」

「港町!いつか行きたいとは思ってましたよ!」

「そうか……わかった」


 え、連れて行ってくれるんですか?

 期待してていいんですか?






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 1台の馬車がオルレーヌに向かって走っている。

 馬車に乗っているのはシャルルとミオの2人。


「何だか……すみません。せっかくの休暇について来てしまって」

「いや、私の方こそ付き合わせてしまったみたいですまない」


 何故、ミオがシャルルと一緒に港町に向かっているのかと言うと……


 3日前―――


「シャルル、お前オルレーヌに行くって言ってたよな?」

「あぁ、数日だが休暇をもらって帰ってくる」

「ミオも連れて行け」

「は?」

「え?」


 いつものように3人で夕食を食べていると、突然カミーユがそんなことを言い始めた。


「ち、ちょっと師団長、それはいったい……」

「お前、オルレーヌには行ったことがないって言ってただろ?」

「言いましたけど……」

「シャルルが休暇取って行くらしいから、一緒に連れてってもらえ」

「いやいや、そんな急に……パトリエール団長の予定というものがあるじゃないですか」

「私は……別にかまわないが…」

「ほら、シャルルもこう言ってるんだし、一緒に行ってこい」

「で、でも……」





 ―――――――

 ―――――

 ―――






 こんな感じで、カミーユによって強引に決められてしまった。

 いったい、何を考えているんだか……


「でも、港町には行ってみたいと思っていたので、とても楽しみです」

「私も、ミオと行けるのは楽しみだ」


 馬車の小窓から外を眺めているミオを見ながら、シャルルは考えていた。


 さて、どう説明しようか……






 馬車はネーオールの森の中を走り、湖の傍を通りかかった。

 ミオが何気なく湖を眺めていると……水面から、水竜がこっちを見ていたような……ま、まぁ、気のせいと言うことにしておこう。


 こうして馬車が走ること3時間くらいだろうか?

 大きな門の前で、ミオはシャルルに手を引かれて馬車を降りた。


「この門の向こうが、オルレーヌだよ」

「立派な門ですね!」


 港町には、他国からもたくさんの人が訪れてくる。

 港では大掛かりな検問を行うことが出来ないため、港町から王都に入るこの門で検問を行っている。

 中には不審者などもやって来るそうだけれど、港町の警備は厳重らしく大きな問題は起きたことがないらしい。

 凄いな、港町を警備している人達。


「ミオ、荷物は私が運ぶよ」

「いえいえ!自分の荷物くらい自分で運びます」

「遠慮しないで。貸してごらん」

「え!?……あ、あの……ありがとうございます」


 シャルルがミオのカバンも持ってくれて、ミオは申し訳なく思ったけれど、あんまり断ってしまうのも悪い気がしてそのまま持ってもらった。

 列に並んで門の中に入ると騎士団とは違う騎士がいて、シャルルを見ると皆が頭を下げた。


「これはシャルル様、お帰りなさいませ。お荷物お持ちします!」

「あぁ、すまない」


 シャルル様?

 やっぱり騎士団の団長ともなると有名になるんだな。


「この子はミオと言って、私の連れだ」

「ミオ様ですね。承知いたしました」

「えーと……よろしくお願いします」


 こうして門をくぐり抜けて行くと、とても賑やかな声が聞こえてきた。

 これが……港町・オルレーヌ。


 騎士は待機している馬車まで荷物を運んでくれたけど、ここからまた馬車で移動するのかな?


「私達は少し街を見てくるから、荷物はここで預かってもらえると助かる」

「承知いたしました!ごゆっくり回ってきてください!」


 騎士が頭を下げて立ち去ると、シャルルは優しい笑みを浮かべながらミオに手を差し出してきた。

 え、これって……手をつなぐってことですか?

 やっぱりこっちの世界では、手をつないで歩くのが当たり前なのですか?

 ミオは、何だかドキドキしながらシャルルの手に自分の手を乗せた。

 すると、シャルルが困ったように笑いながら言った。


「ミオ、それだと握手になってしまうよ」

「……そ、そうですね」


 何だか緊張してしまって反対の手を出してしまった。

 恥ずかしい……


「では、行こうか」

「はい」


 オルレーヌはとても賑わっていて、王都よりも人がたくさんいるんじゃないかと思う程だった。

 たくさんの店が建ち並び、どの店にも多くの客が足を運んでいる。

 元の世界では港町には行ったことがなかったけれど、きっと元の世界の港町はこんな感じではないと思う。

 これは、小説や漫画の世界の港町だ。


「凄い人ですね」

「ここは、他の国からもたくさん人がやって来るから、いつも賑わっているんだよ」

「へぇ~、そうなんですね」

「それに、ちょうどお昼時だからな。1日の中でも賑わう時間帯だ」

「なるほど」

「ミオは何が食べたい?」

「何も考えていませんでしたけど……おすすめとかあるんです?」

「おすすめか……私がよく行く店で良ければ案内するよ」

「是非、お願いします!」


 シャルルはミオの手を引きながら、港の方へと足を進めた。

 途中にある店からも美味しそうな匂いが漂ってきて、ミオのお腹を刺激する。

 ヤバい、お腹が鳴りそう……ミオはお腹が鳴りそうなのを、必死に堪えた。


 そんなミオの目にとまった一軒の店。

 店頭に並べられているのはシーグローブだった。


「パトリエール団長」

「ん?どうかした?」

「ご飯食べたら、あのお店を見てもいいですか?」

「構わないよ」

「ありがとうございます!」


 こうしてシャルルに案内されたのは、港のすぐ傍にある、テラス席が可愛いレストランだった。

 レストランに入ると、入り口にいた従業員が深々と頭を下げた。


「これはシャルル様、ようこそいらっしゃいました」

「テラス席に案内してもらえるか?」

「はい、かしこまりました!」


 凄いな、やっぱりシャルル様って呼ばれてる。

 かなりの常連客なのだろうか?


 ミオとシャルルは、案内されたテラス席に座った。

 海が見えて海風も気持ちの良い、素敵なテラス席だった。


 メニューを渡されて開いてみると、どれも美味しそうで悩んでしまう。

 パスタもいいけれど、グラタンもいいなぁ……シーフードが乗ったパンケーキ?え、甘くないの?

 気になる……


「ミオ、食べたいものはあった?」

「そりゃあもう、ありすぎて悩んでしまいます」

「そうか。ゆっくり決めるといいよ」

「えーと……ワッフルとシーフードオムレツにします」


 シャルルが注文をしてくれて、あとは料理が運ばれてくるのを待つだけだ。


「パトリエール団長は、このお店にはよく来るんです?」

「昔はよく来ていたが、最近はあまり来ていないかな。仕事もあるし」

「そうなんですね」


 まぁ、騎士団は忙しそうだしね。

 それに、団長ともなれば他の騎士達よりも業務は多そうだ。

 師団長もいつも忙しそうだし……


「それにしても、団長ともなると有名人になるんですね。ここの皆さん、パトリエール団長を呼ぶのに様つけてるし……あ、私も様つけた方がいいんですかね?」

「つけなくていいよ。あの呼び方は……私も抵抗はあるのだが、これは仕方がないというか…」


 ここに来るまでに、何人かの騎士を見かけたけれど、皆がシャルルに敬礼をしていた。

 ここの騎士も王国騎士団なのか?


「そういえば、門にもいましたが、ここに来るまでにも騎士の方を何人か見かけましたけど、王国騎士団の方なんですか?」

「ここにいるのは王国騎士団ではなくて、ここの領主の騎士団なんだ」

「ふぅん、そうなんですね」


 領主というのは……この辺の地主的な感じなのかな?

 その辺のことは正直よくわからないけど、要は土地をたくさん持っている凄い人ってことだろうか?


「この港町は、王都とは違った賑やかさですよね。ザ・港町って感じで」

「(ザ・港町?)ぺリグレット王国だけではなくて、いろんな国の人がいるからな」

「お店もたくさんあって、今日だけじゃ見て回れない気がします」

「大丈夫だよ、明日も来れるから」

「そうですね。でも……パトリエール団長は何かご用事とかあるんじゃ……」

「用事という程のことでもないんだ。だから、気にしないで」

「そうなんですか?」


 そんな話をしていると、テーブルに料理が運ばれてきた。

 想像よりも美味しそうな料理だ。


「わぁ、凄く美味しそうです!」

「ミオの口に合うといいが」

「パトリエール団長が選んでくれたお店にハズレはないです」

「そう……だと良いが」

「頂き……ま…………ん?」


 港の方から激しい水音がしてそちらの方に顔を向けてみると……とんでもない水しぶきが襲いかかろうとしていた。

 マジですか……?


「何だ!?」

「う、嘘でしょ!?」


 周辺では悲鳴や叫び声が飛び交い、道を歩いている人達が一斉に走り出した。

 いやいや、コレは逃げられないでしょう!?


 このままでは街が大洪水になってしまう。

 いったい何が起こった!?


 ミオは咄嗟に立ち上がると、両手を空に向かって翳した。

 シャルルがミオを庇うように抱きしめる。


 え……パトリエール団長、何をしているんですか?


 自分の身に起きていることが理解できなかったけれど、ミオはそのまま水属性の魔法を使って降り注ぐ海水を1か所に集めた。

 海水は、空中で大きな水の塊となる。


 いつまでも降りかかってこない水しぶきに、シャルルが顔を上げた。


「……ミオ?」

「あ、パトリエール団長。ちょっとあの海水を海に返してきます」

「海水?」


 シャルルが振り返って見ると、空中に大きな水の塊が浮いていて驚く。

 ミオがテラス席から港に向かって歩いていくと、水の塊もミオと一緒に移動した。


 このまま海に捨てたら……津波みたいのが来る?


 ミオは少し考えると、大きな水の塊を細かく分散させて、雨のように海へと戻した。

 綺麗な虹が架かり、周囲から歓声が上がった。


「やはり、ミオは凄いな」

「水竜対策しておいたのが役に立ちました」

「水竜対策?」


 ニコニコ笑っているミオの言葉に、シャルルは首を傾げた。

 ミオは、水竜の水しぶきを防ぐために、いろいろ考えてこの技を身につけたのだ。

 洗濯物や髪の毛などを乾かす魔法の応用だ。


「それにしても、何だったんでしょうね?あの水しぶき」

「この辺の海には、巨大海洋生物はいないはずだが…」


 ミオが海面を覗き込んでいると、海の中から何かが浮かび上がってくるのが見えた。


「え?」

「離れるんだミオ!」


 シャルルがミオの腕を引っ張って埠頭から離れる。

 海中から飛び上がって来たのは……巨大な……クジラ?


「あれは……ケートスだ!」

「ケートス?……クジラ的な生き物ですか?」

「この辺りにはいない、海の魔物だ」

「魔物!?」


 ケートスが海に潜ると、その勢いで再び激しい水しぶきが襲いかかると同時に、津波のような波が押し寄せてきた。

 そんな、両方防ぐなんて無理だ……ミオは一か八かアイスブロックで波を防ぎ、空中に舞い上がった水しぶきを1か所に集めた。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「海水……引きましたかね?」

「どうだろう?」


 こんな時、箒があれば壁の向こうに行けるのにな……箒を持ってこなかったことを少し後悔する。

 氷の壁を消してもいいのだが、ケートスがまた飛び跳ねるかもしてないし、このままにしておいた方が良いだろう。


 ミオは壁の端まで走って行き、向こう側の様子を覗いて見た。

 海水は全部引いているようで、港の地面が見えている。


「うーん……どうします?」

「あの大きさだと、拘束するのは難しそうだ」

「とりあえず、海水戻してきますね」


 ミオは港のふ頭に入って行き、空中の海水を分散させて海へと戻した。

 ケートスはどうしようかと考えていると、また海中から上がってくるのが見えてミオはケートスに向かって両手を翳して構えた。


 短時間なら……凍らせても死なないわよね?


 ミオは、再びケートスが飛び上がったタイミングで、スノーフロストを発動した。

 範囲を調整してケートスだけを凍らせる。

 そして、海に落ちそうになったケートスを何とか埠頭へと移動させた。


「ふぅ……これでとりあえずは大人しくなったかな」

「ミオ、大丈夫か?」

「大丈夫ですよ」


 ミオはアイスブロックをすべて消去した。

 壁の向こう側にいた人々がザワザワしながらこちらを見ている。

 その中から騎士達が駆け寄って来た。


「シャルル様!ご無事ですか!?」

「私達は大丈夫だ。それよりも、このケートスはどうした?」

「それは我々にもちょっと……」


 目は赤くはなっていなかったし、操られていたわけではないと思われる。

 まぁ、海だから魔法陣も描けないだろうし。


「この港に迷い込んで、パニックになっていたのだろうな」

「えーと……どうやって元いた場所に戻してあげたらいいんでしょう?」

「そうだな…」


 ミオ達が悩んでいると、上空を巨大な影が覆い、太陽の光を遮った。

 ……次は何が現れるんですか?


 ミオやシャルル、街の人々、それぞれが不安な気持ちを抱えながら空を見上げた。



 .

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