閑話 師団長の独り言
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俺の名前はカミーユ・グレイヤール。
王国魔導師団の師団長をしている。
ここ、ぺリグレット王国は東西南北の4体の竜に守られた王国だが、その中の1体・水竜(ウォータードラゴン)の様子がおかしくなっている。
1年前くらいからだろうか?
突然近くを通りかかる人々を襲うようになった。
最近ではこの王都にまで被害が出始めている。
水竜がいるネーオールの森では、ふだんは存在しない中級や上級の魔物まで出現するようになってしまった。
いったい、何が起こっているというのか?
おかげで、王国第一騎士団と魔導師団は連日その対処に追われている。
たゆーか、竜って生き物は、眠ることのない生き物なのか?
ここ1~2週間は、昼も夜も気を抜けない状態で、騎士団も魔導師団もネーオールの森や王都の南側に出ずっぱりだ。
騎士団の疲弊もそうだが、人数の少ない魔導師団は厳しい状態だ。
「グレイヤール師団長!ケガ人をお願いします!」
「すぐに行く」
疲労の蓄積もあり、ケガ人の数も増えてきた。
ポーションを持って現地には行っているが、数には限りがある。
「グレイヤール師団長、ネーオールの森で魔物と戦っている騎士団のポーションが底をついたとのことです!」
「こっちも急いで作らせているが、薬草も残りわずかだし、魔導師の魔力も限界だ」
回復担当の魔導師も同行させてはいるが、彼らの魔力もすでに限界だろう。
かなりの魔力量を誇っている副師団長のアルバンも、さすがに魔力切れで休ませている状態だ。
守り切れるだろうか……そんなことを考えていても仕方がない。
とりあえず、今は目の前のケガ人を何とかしないといけない。
―――――――
―――――
―――
ケガ人の治療が一段落し王宮の外に出てみると、もうすぐ日が沈むところだった。
今夜もまた眠れないんだろうか……そんなことを考えていると、ネーオールの森に行っていた騎士団が戻って来た。
終わったのか?
俺が見ていると、騎士団の団長であるシャルルが誰かを抱えながら走って来た。
「何かあったのか?シャルル」
「カミーユ……この子が突然意識がなくなってしまったんだ。すぐに宮廷医に診てもらう」
「……誰だ?」
「説明は後でする」
「あぁ、そうだな」
見た所ケガはしていなさそうだったが……街の娘か?
シャルルのあの焦りようを見る限り、ただの娘ではないのだろう。
戻って来た魔導師に聞いてみると、伝説の魔導師だと言う。
「伝説の魔導師って……カエデ様か?」
「カエデ様ではなかったですよ。ミオと言っていました」
水竜にかけられていた魔法を解除してくれたらしいから、王国の危機を救った彼女は伝説の魔導師と言っていいだろう。
何にせよ、これでようやく休むことが出来る。
片付けをして魔導師達を休ませ、俺は執務室へと向かった。
しばらくすると、執務室のドアがノックされてシャルルが入って来た。
「ようやく終わったな」
「あぁ。さすがにもう駄目かと思ったが……そこに彼女が現れたんだ」
「伝説の魔導師だってな」
「カエデ様ではなかったがな……伝承に、光とともに降りて来た少女が王国を救ったというのがあっただろう?」
「伝承って言うか、その一文しか知らないけどな」
「それと同じように、光とともに降りて来たんだよ、彼女が」
「それで、伝説の魔導師か」
「水竜は元に戻ったし、危険な魔物も消滅した」
ミオと名乗ったその伝説の魔導師は、王都に戻ってくる途中で突然苦しみ出し、意識を失ったらしい。
高熱で呼吸も荒かったが、宮廷医の診察では特に病気などではないようだったとシャルルは言っていた。
目覚めるまで待つしかない。
「それでは、私も戻るとするよ。さすがに疲れた……少し休ませてもらう」
「しっかりと休め。俺ももう寝る」
―――――――
―――――
―――
「ようやく目覚めたのか?」
「あぁ。先程様子を見てきたが、体調は良さそうだったから午後に話を聞きに行くと言ってある。一緒に来てくれるか?」
「もちろんだ」
こうしてシャルルと一緒にミオの話を聞きに行った。
すると、ミオがカエデ様の娘だということがわかった。
伝説の魔導師であるカエデ様は、5年前に事故で亡くなってしまったらしい。
そのため、王国の危機に現れたのは、娘のミオだったということだろう。
それにしてもこのミオという娘……本当に伝説の魔導師の娘なのか?魔法についての知識が全くないのだが……魔導師団に所属ということにはなったが、先が思いやられる。
と思っていたが……ミオは魔法を使いこなせるようになれば、凄い魔導師になりそうだった。
さすが、伝説の魔導師の娘だ。
箒の操作にはかなり苦労していたが、それも出来るようになり……てゆーか、何でこんなに筋力ないんだ?女子ってそんな感じなのか?
毎日傷だらけになりながら練習しているのを見ていると、さすがに心配になってくる。
それにしても、魔法を使い始めて間もないミオが箒に乗れるようになったのに、何で他の魔導師は乗れるようになっていないんだ?
魔導師の訓練方法も考えていかないとだな……課題だらけじゃないか。
「シャルル、お前女性が苦手じゃなかったか?」
「家柄などを見て媚びてくる女性は苦手だな」
「そうじゃなくても、自分から女性に話しかけるとかなかったよな」
「お前は用もないのに話しかけるのか?」
「まぁ……用がなければ話しかけないか」
シャルルは見た目もいいからよく女性に声をかけられたりする。
だが、そういうことをあまり好まない性格だ。
侍女や食堂のスージーなどとは普通に話してはいるが、用がなければシャルルから話しかけることなどほとんどないだろう。
そんなシャルルが、ミオとはよく話しているのを見かける。
あんなに穏やかな顔で女性と話しているシャルルなど見たことがない。
シャルルの奴……
ミオは鈍感そうだからな、俺は陰ながらシャルルを応援することにしよう。
などと思っていたら、なんとミオは国王の娘だった。
本当にとんでもない奴だな、ミオは。
しかも、アイツは身の危険を気にしなさすぎる。
何回言っても1人で出かけようとするから困ったもんだ。
シャルルが休みの時は押し付けたりしているが、嫌な顔もせずにミオに付き合うんだから、シャルルの奴相当ミオのことを好きなんだと思う。
相手は国王の娘だが、シャルルなら何とかなるだろう。
それにしても……
黒ローブを羽織った奴らが何かを企んでいるらしい。
ミオはその黒ローブの魔導師と戦った。
俺達以外にも魔導師がいるということにも驚いたが、魔導師としての能力も相当のものだったとミオが言っていた。
残念なことにそいつは荷馬車の中で死んでいたが……黒ローブの組織にはそんな凄い魔導師がゴロゴロいるのか?
この魔導師団をもっと鍛え上げていかないと、今後対立することになったら太刀打ちできないだろうな……って、北と西にも魔導師を配置したから、魔導師不足はさらに深刻だ。
魔導師団の力を上げるにしても、こう魔導師が分散していては対戦も出来やしない。
このたくさんの課題はいつ解消されるんだか。
あー、誰か俺と師団長代わってくんねぇかな……
「カミーユ、ミオは?」
「訓練場にでもいるんじゃないか?」
「じゃあ、僕は訓練場に行ってくるね!」
「待て待て、お前には仕事がたくさんある」
「カミーユがやっといてよ」
「子供だろうが副師団長はアルなんだから、仕事はしろ」
「えー、面倒臭いなぁ。あ、そうだ!カミーユが師団長も副師団長もすればいいじゃん!」
「あのなぁ……いいから仕事しろ」
「あー、もうホント、カミーユのバーカ!」
「何だとコラ!」
何で俺が子守りまでしなくちゃいけないんだよまったく。
本当に、誰か師団長を代わってくれ。
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