17 「詰み」です
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「私がここで見つけた魔法陣について書かれている文書が、この机にある魔導書達です。見逃しているものも本棚にあるかもしれませんが……とりあえず、手分けしてこの魔導書を読んでみましょう」
本日、魔導師団は総出で図書室での作業を行います。
何故、このようなことになっているかというと……それは、前日のこと。
「ミオ」
「はい?」
「魔法陣を消す魔法だがな」
「はい」
「お前が知っている魔法を俺達に教えろ」
「えーと……どうやってですか?」
「魔法陣描けるだろ?」
「え、描けませんよ?」
「何で描けないんだよ」
「何でと言われても……それに、私の魔法はこの石とセットみたいなので、他の人には使えないと思います」
ミオは、首から下げられた母親のネックレスをカミーユに見せた。
ティアドロップを使う際にはこの石が光っているから、この石がないと発動しない魔法だと考えられる。
「やっぱり魔導書探すしかないかぁ」
「魔導書なら図書室にたくさんありましたけど……どうしたんです?」
「いや、魔導師を育てるには時間がかかるが、北と西への魔導師の派遣は早い方がいいと思ってな。今いる中からとりあえず派遣しようと考えている。だが、魔法陣消せなかったら、もしも先日のようなことがあったら意味がないだろ」
「あー、そういうことですね。図書室にはたくさん魔導書がありましたけど……ちょっと私には理解できなかったんで内容はわかりませんが、もしかしたら書いてあるかもしれませんよ?持ち出し禁止と言われたので、図書室でしか読めませんが…」
「よし、明日全員で図書室に行くから、お前はその魔導書を棚から出してくれ」
「わかりました」―――
このようなやり取りがあり、魔導師団は総出で図書室へと足を運んだ。
「……こんなにあるのか?」
「はい。関係のないものもあるかもしれませんが…」
「アルも学校休ませれば良かったな」
「いやいや、学校はちゃんと行かないとですよ師団長」
「仕方がないな……そんじゃ始めるぞー」
こうして、積み上げられた文献を1冊ずつ読んでいく作業が始まった。
ミオは一度読んでいるし、内容がほとんどわからなかったため作業から外れる。
「うーん……他の属性の魔法について調べてみようかな」
ミオは、自分が使える属性以外の魔法の魔導書を探して読んでみたけれど……いつもアルバンの手を借りて覚えている魔法を、1から自分で覚えるのはとても難しかった……というよりも、無理に近かった。
だって、書いてあることが全くといっていいほど理解できないのだから。
「何でこんなにも難解な文章を、皆は理解できるんだろうな…」
ミオはショートしそうな頭を冷やすように机に突っ伏した。
本当に頭から煙が出ているんじゃないかと思う。
「何やってんだ?ミオ」
「頭がショートしそうなんで冷やしてます」
「あー、前にもそんなこと言ってたな。確か……頭が爆発するんだったか?」
「そんな感じです」
「頭は爆発なんかしないから安心しろ」
「例えですよ、例え……何でこんな難しい文章が理解できるんですか?」
「はぁ?難解な魔法が使えるお前が言うことじゃないだろうが」
「え、難解な魔法?」
カミーユの言葉に驚いて顔を上げるミオ。
「ミオが使っている魔法は上位魔法が多い。理解は出来ても使うのは難しい魔法だ」
「そうなんですか?」
「そうだ。そんな魔法を使えるくせにこの文書が理解できないお前の頭が謎だよ」
「……あはは」
そうは言われても、全く理解できないのだから仕方がない。
ミオの母親も、こんなに難しい文章を理解していたのだろうか……ミオのように恵まれた環境ではなかったと思われる母親は、きっと自分で努力してたくさんの魔法を覚えたんだろうなと思うミオだったけれど、よく考えてみたら箒も簡単に乗りこなせた母親なのだから、魔法の習得も案外簡単だったのかもしれない。
机の上に山積みだった魔導書が少しずつ減っていき、関係のありそうな魔導書とそうでないものの仕分け作業が終わったところで、一旦昼食を摂って休憩することになった。
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「魔法って、使えない人でも訓練すれば使えるようになるんですか?」
「素質があれば使えるようになるんじゃないか?」
「素質?」
「魔法を使うには、持って生まれた素質が必要だ」
「それって……どうやってわかるんです?」
「生まれた時に光に包まれるんだよ。その後魔力が発動するのはほんの一握りだがな」
「素質を持って生まれてくる確率って高いんです?」
「さぁな。そんなことは調べたことがないからわからん」
生まれた時に光に包まれたかどうかがわかれば、魔導師の素質を持っている人を探すのは、案外簡単なのかもしれない。
でも、魔力が発動しているのかを見分けるのはどうすればいいんだろう?
「まぁ、そんなには生まれてこないから魔導師が不足してるわけだが」
「確かに……それじゃあ、この魔導師団はどうやって集められたんです?」
「昔から魔法が使える奴は王都に来るよう言われてたからな」
「え、そんな感じなんです?」
「俺は7歳で親に連れて来られたが、その時にいたのはオーギーとザールの2人だけだ」
オーギーとザールは、ポーション製作の担当で、魔法は回復魔法に特化している魔導師だ。
それにしても……カミーユは7歳からこの魔導師団にいるということだろうか?それはそれで凄すぎる!
「オーギーはカエデ様がいる時に魔導師団に入ったらしい。他にも魔導師はいたようだが、病気や怪我などで魔導師としては働けなくなったと聞いている」
「てゆーか、皆さん独学で魔法を使っていたということですか?」
「そうだな」
「凄くないです!?」
ミオは母親の助けがあったから魔法を使うことが出来ている。
魔導書なんて難しすぎて理解できないものが多い。
そんな魔法を、皆は独学で使えるようになってここに来たとか……自分よりも皆の方が伝説の魔導師に相応しいのではないかと思うミオだった。
昼食を食べて休憩が終わると、魔導師団は再び図書室にこもって魔法陣を消す魔法について調べた。
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―――
「あー、疲れたー……1日中図書室にこもったのに何も見つからないとはな」
「ですね……」
結局、どの魔導書にも魔法陣を消すための魔法については書かれていなかった。
ミオの母親は、いったいどこでこの魔法を覚えたのだろう?
母親の日記は、この王国を救って国王と結婚したあたりまでは読み返してみたけれど、魔法のことは最初の方にコツが書いてあっただけで、それ以外は特に書かれていなかった。
こんな状況を詰んだとでも言うんだろうな……
「仕方がない、何かあった際にはミオに至急行ってもらうとして、とりあえず派遣はしよう」
「せめて迅速に連絡できる方法があればいいんですけどね。魔法を使って水晶で連絡するとかないんです?」
「そんなことが出来るのか?」
「私の世界の空想の世界ではそんな感じです」
「……空想じゃないか」
「まぁ……そうですね」
小説や漫画なんかだと、異世界に転生した人があらゆる知識を使って通信手段を確立したり、現実世界並みに便利なものを作ったりしているけれど……そんな知識を私にも恵んでください神様!
せっかく魔法なんて便利な能力があるのに、何だかもったいないなと思うミオだった。
とりあえず、今日の業務は終了ということで、ミオは自分の部屋に戻って母親の日記を読むことにした。
今まで読んできた続きから読み進めてみたけれど、魔法陣に関するものは見つけられない。
そんな日記の中に、とても気になるものを見つけて困惑する。
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9月11日 曇りのち雨
ある町でとても高齢のおばあさんに会った。
おばあさんは魔導師のことをよく知っていた。
おばあさんが言うには、昔は魔導師がとてもたくさんいたらしい。
それがなぜいなくなってしまったのか……それは
いわゆる魔女狩りだ
そんなことがこの王国でもあったのだ。
信じられない……
こうして魔導師は全滅したのだとおばあさんは教えてくれた。
魔導師がいなくなって、長い長い年月が過ぎていった。
そんなある日、王国に1人の魔導師が現れた。
その魔導師は、国民に向かって言った。
「王国を守る竜を守るのは魔導師だ」
魔導師は魔導師団を作ることにした。
でもそれは、とてもとても大変なことだった。
魔法を使える人を探すのが難しかったからだ。
でも魔導師は何年も何年も諦めずに魔導師を探し続けた。
こうして、10年という年月を費やして、ようやく2人の魔導師を見つけて魔導師団を作ることが出来た。
おばあさんがなぜこんなに詳しいのか聞いてみたけど、教えてはくれなかった。
魔女狩り?
元の世界でも、遠い昔にヨーロッパの方で行われていたあの魔女狩りのようなものだろうか?
こっちだと本当に魔法は使えるわけだから、ちょっと違うかもしれない。
でも、何か良くないことが起こった時に魔導師に目が行ってしまうのは……人間の心理としては仕方のないことなのかもしれない。
悲しいことだけれど……
日記には竜を守るのが魔導師と書いてある。
竜と魔導師の関係っていったい何なんだろう?
「てゆーか……魔導師2人見つけるのに10年!?」
これを読むと、探せばいるかもなんていう自分の考えは間違っているのではないかと思ってしまう。
魔導師の学校なんて、やっぱり無理な話なのだろうか……
そんなことを考えながら読み進め、次に目に留まった日記を読んでミオは吹き出してしまった。
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11月28日 雷雨
エドワールが心配性すぎて困る。
絶対にエドワールは禿げると思う。
「……お母さん、何気に酷い」
でも、国王が心配性というのは、ミオにもわかる気がした。
とりあえず……今のところ禿げてはいないから、母親の心配は現実にはならなかったということで。
まぁ、今後禿げる可能性はあるのかもしれないけれど。
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3月18日 晴れ
竜と話をしてみた。
4体とも個性があって話すのは楽しい。
そして、氷竜からとても良い情報が得られた。
魔導師の素質を持った者は、生まれてくる時に光に包まれて生まれてくるらしい。
よし、光に包まれて生まれてきた者を探そう。
5月7日 晴れ
生まれた時に光に包まれていた者を探しているが、なかなか見つからない。
見つかったとしても魔法が使えない。
どういうことだ?
明日、氷竜に聞きに行ってみよう。
5月8日 晴れ
氷竜の話だと、光に包まれて生まれてくる者はそう多くはないらしい。
しかも、魔力が発動しなければ、持って生まれた素質はだんだん消えていくらしい。
これは、探すのに苦労するな。
やっぱり、魔導師を探すのはとても大変なことらしい。
それよりも……え、何?竜ってそんな気軽に話しに行ける存在なんですか?
確かに、氷竜は母親のことをよく知っていると話していたけれど……そもそも、タルブ火山の炎竜(フレイムドラゴン)ってどうやって会いに行くんですか!?
「お母さんって……いろいろと凄い人だったんだ」
そんな凄い人から、なぜ自分のような平凡な子供が生まれてきたんだろうなと不思議に思うミオだった。
母親の日記を閉じて、ベッドに寝転がるミオ。
魔導師を探すことがいかに困難なのかを知り、少しだけ挫けてしまいそうな気分だった。
魔導師を探すよりも、まずは通信手段を確立した方が良いのでは?
……どうやって?
ミオは頭を抱えながらベッドの上をゴロゴロと転がった。
やっぱり「詰み」なのではないだろうか……
魔導師団が抱えている課題は何もクリアしないまま、今日も1日が終わろうとしていた。
焦ってもどうにもならない。
少しずつ、前に進んで行こう。
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お読みいただきありがとうございます!




