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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
第一章 異世界生活と黒ローブ
16/132

15 モンルトワ大雪原

のんびり更新中♪

 コンコンコン


 部屋のドアがノックされたけれど、この部屋の主はまだ夢の中を彷徨い中…


「ミオ?」

「……………」


 返事が返ってこない静かな部屋に、廊下で少し考え込むシャルル。

 もう一度ドアをノックして声をかけてみた。


「ミオ……大丈夫か?」


 そんなシャルルの声が、夢の中のミオの耳に届き……ガバッと起き上がったミオは、廊下から聞こえてくるシャルルの声に、慌ててベッドから降りてドアに駆け寄ってドアノブを回した。


「お、おはようございます、パトリエール団長」

「…すまない、起こしてしまったようだな」

「いえいえ、起きるところだったので大丈夫ですよ!」

「体は…大丈夫か?」

「はい、もうスッキリです。あんまり早起きしたんでお風呂に入ったら、部屋に戻ってまた眠ってしまって…」

「ふふ、ぐっすり眠れたようで安心したよ」


 シャルルがミオの髪の毛をとかすように撫でながらクスッと笑った。

 ミオはハッとして頭を抱える。

 きっと髪の毛がボサボサだ!


「すぐに支度をして降りていきますね!」

「ゆっくりでいい。それじゃあ、私は下で待っているよ」


 柔らかく微笑んでシャルルは下に降りていき、ミオは急いで顔を洗って髪の毛をとかし、着替えて鏡の前で身なりを整えると、1階へと降りていった。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「昨日は悪かったなぁ、お嬢ちゃん」

「いえいえ、大丈夫ですよ」


 ランディが申し訳なさそうに頭をかきながら謝ってきた。

 ミオは逆に心配をかけてしまったなと思いながら、笑顔で答える。


「いつ出発するんだ?パトリエール」

「明日にとは考えているが…ミオは大丈夫か?また少し長旅になるのだが…」

「大丈夫ですよ」

「そうか。今日はどうする?俺達は雪原の見回りに行くが…あいつらは雪かきだな」


 雪かきは遠慮したい、ミオは心の中でそう思った。

 だって、雪かきって力仕事だって聞くし…


「雪原は見てみたいかもです。氷竜(アイスドラゴン)がいる場所ですよね?」

「まぁ、俺達は見たこともねぇがな」

「それなら、雪原の見回りに同行させてもらうか?」

「はい」

「そんなに奥までは行かないが、歩きにくいから転ばんように頑張ってくれ」

「大丈夫です。私には箒がありますから」


 そう、ミオには箒での移動というとても便利な移動手段があるのだ。


 こうしてモンルトワ大雪原の調査へと出発したミオ達。

 雪原の入り口までは馬での移動のようで、町を抜けて雪道を馬で駆けて行く。

 朝の雪は、何だかキラキラとしていてとても奇麗だった。

 でも、この綺麗な雪のキラキラは肉眼でしか見ることが出来ず、どんなに写真に収めようと頑張っても無理そうだったので諦める。


「本当に箒で飛べるんだな」

「何回も落ちながら死ぬほど練習しましたから」

「死ぬほどって……そんなに落ちたのか?」

「おかげでヒールの練習にもなりました。一石二鳥です」

「私は死ぬほど心配だったよ」

「パトリエール、凄いなぁあの嬢ちゃんは」

「本当にな」


 あの頃は必死に箒の練習をしたなぁ……と、今ではいい思い出だ。

 箒の操作もかなり上達して、落ちることもほとんどなくなった。


 雪原の入り口には小さな小屋が建っていて、置いていく馬たちの世話をする人が待機するとのことだった。


 雪原の入り口の小さな森を抜けると、そこには一面の銀世界が広がっていた。

 今日は晴れているので青空が見えているけれど、雲が広がると空と地面との境目がわからなくなるらしい。

 それも見て見たかったなと思うミオだったけれど、それだと寒さも増すから今日は晴れていて良かったなとも思う。


 ミオは箒から降りて歩いてみた。

 踏み固められていない雪はフワフワで、歩くのがとても楽しい。

 でも少し油断すると…


「わっ」


 深みに足がはまって抜けなくなり、新雪の上に見事にダイブすることになる。

 埋もれて起き上がれないミオを、シャルルが慌てて引っ張り出してくれた。


「大丈夫か?ミオ」

「……冷たいです」

「ふふ、雪まみれだな」


 雪を払いて、ミオは再び箒に乗って移動することにした。

 こうして穏やかな雪原を進んでくと、少しだけ木が生えている場所で休憩を取ることになった。

 第二騎士団の騎士が、火を起こして温かい飲み物を作ってくれる。


「ん?ココア?」

「そうだよ。ミオの世界にもあった?」

「はい。でもこっちのココアの方が美味しいです!」


 寒い日には甘くて温かいミルクココアが体に染み渡ります。

 こうして休憩をしていると、ミオの視線の先に何か小動物のようなものが現れた。

 あの耳は…


「……ウサギ?」

「あぁ、あれは雪兎(スノーラビット)だよ。そういえば、ミオはウサギが好きだったな」

「大好きです!」


 ミオは、ココアを飲み干すと、カップを置いてゆっくりと雪兎に近づいて行った。


「あいつらは臆病だからなぁ」

「え、そうなんですか?」

「あんまり人間には寄って来ねぇよ」


 そうなんだ…と思いつつ、触りたい欲求の方が強く、ミオはゆっくりと近づく。

 そして…


「……わっ」


 またしても雪に向かってダイブしてしまい、こっちを見ていた雪兎達は驚いて跳び上がった。

 でも、逃げることはなくジーッとミオのことを見ているようだった。

 何とか自力で雪に埋もれた顔を上げたミオ。

 すると、雪兎がぴょんぴょんと飛び跳ねながらミオに近づいてきた。


 な、何て可愛いんだ!


 ミオの前で首を傾げるようにしてミオを見る雪兎。

 何とか起き上がってバッグから携帯を取り出して写真を撮った。


「か、可愛い~」


 携帯をバッグにしまって両手を差し出すと、1匹の雪兎がミオの手に乗ってきて抱き上げる。

 何だ何だこの生き物は!

 本当に可愛すぎるではないか!


 ミオは雪兎を抱いたまま、何枚も自撮りしてしまった。


 そんなミオの様子を見て驚く騎士団の皆。


「おいおいパトリエール。何なんだあの嬢ちゃん、雪兎を手懐けちまったぞ」

「本当だな」

「えー、俺も触りたかったのになぁ雪兎」

「行ってくりゃいいじゃねぇか。今なら触れるかもしれねぇぞ」


 こうして騎士が近づいて行くと……雪兎達は一斉に逃げて行ってしまった。

 固まるミオに平謝りする騎士を見て、ランディが大笑いし、他の騎士達もつられるように大笑いした。

 こうして休憩を終えて、再び雪原を進んで行く。


「それにしても驚いたよ嬢ちゃん。あの雪兎を手懐けちまうんだからな」

「愛ですよ。私のウサギ愛は半端ないですから」


 キラーンという効果音でもつきそうな表情でウサギ愛を語るミオ。


「ふふ、雪兎が羨ましくなるな」

「ウサギ愛で私に勝てる人はいませんよ」


 何となくシャルルの気持ちを察した騎士達だったけれど、ミオには届いていないであろうその気持ちに、心の中でエールを送る騎士達だった。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 次の休憩で、昼食となった。

 小川などは近くにないのに、水とかどうしているんだろうと思ったら、雪を溶かしているようだった。

 え、雪って食べちゃいけないやつじゃないの?

 そう思うミオだったけれど、こっちの世界には車なんてないし、考えてみれば空気を汚すものがないように思うから、きっと食べても大丈夫な雪なのだろうと思うことにした。


 手際よく昼食を作っていく騎士達を見て思う。

 こっちの世界の男の人は、料理上手が多いなぁ…


 ということは、シャルルも料理とかするんだろうか?


「はい、どうぞ」

「わぁ、美味しそう!ありがとうございます」


 本日の昼食は、ゴロゴロ野菜が入ったポトフと、何かの肉を焼いたものと、柔らかいパンだった。

 外でこんなに美味しい昼食が食べられるなんて素晴らしい。

 ていうか、馬車もないのにこの食材を持って歩いてきたんですか?凄すぎませんか?


 昼食を食べ終えて食器を下げて、ミオはまた雪兎がやって来ないかなとウロウロとしていた。

 すると、ゲームなんかで見たことがある祭壇のような場所を見つけた。

 何だろう、これ?


 そう思いながら見ていると、上空が大きな影で覆われて上を見上げた。


「……え……竜?」


 ミオの上空には、真っ白でとても大きな竜のような生き物がいた。

 遠くからシャルルやランディ達の声が聞こえる。


 白い竜は、祭壇のような場所に降りてきて、ミオに顔を近づけた。

 不思議と怖くはない。

 ジーッと目の前の竜を見つめるミオの頭の中に、何かが語りかけてきた。




 ―――お前が水竜を救ったのか?


 え?


 ―――お前が水竜にかけられていた魔法を解除したのかと聞いている


 あ、はい。たぶん……そうです。


 ―――そうか、ならば礼を言う


 私は……出来ることをしただけです。


 ―――カエデと同じ匂いがするな。そうか、そういうことか


 え……お母さんを知っているの?


 ―――あぁ、よく知っているとも。そうか、カエデの娘か。ならばこの王国のことをよろしく頼む


 あ、ちょっと待って!もっと話を…


 ―――お前の名前は?


 私はミオ!ミオ・サクライです!


 ―――ミオ。あぁ、覚えた。それでは私は行く


 あの!




 白い竜は雪煙を上げながら舞い上がり、どこかに飛んで行ってしまった。

 母親の……知り合い?え、どういうこと?


「ミオ!大丈夫か!?」

「オイオイ、嬢ちゃん。どういうことだ?」

「パトリエール団長、プーレ団長……あ、私は大丈夫ですよ。ちょっとビックリしましたけど」


 シャルルとランディが、血相を変えて駆け寄ってきた。


「驚いたのはこっちの方さ!ありゃあ、氷竜だぞ!」

「え……氷竜?あれがですか!あー、だからお母さんのこと知ってたんですね」

「は?」

「どういうことだ?ミオ」

「何か話しかけてきたので」

「話しかけてきた!?氷竜がか!?」

「はい。こう……何て言うんでしょう、頭の中に語りかけてくるみたいな?」

「こりゃ驚いた!さすが伝説の魔導師の娘だな、嬢ちゃん」

「私も驚きましたよ!でも、あれが氷竜なんですね。氷って言うから、あんなに真っ白な竜だとは思っていませんでしたよ。もっと氷っぽいのかと…」


 てゆーか、氷竜に王国のことを託されてしまった……プレッシャーが半端ないですけど!?


 皆の所に戻り、食後の飲み物として紅茶をいただき、ここでの休憩を終えると引き返すことになった。

 帰り道では、雪兎の他に、雪狐(スノーフォックス)と氷(アイス)スライムと遭遇した。

 どちらも大人しい魔物のようで、討伐の必要はないとのことだった。

 雪に覆われた大地に住んでいる魔物は、比較的に穏やかな魔物が多いらしい。


 雪兎……飼えるものなら連れて帰りたい…


 その日の夕食は、ミオの話題で大盛り上がりだった。

 そして、今日はランディもミオには酒をすすめてこなかった。

 大勢に囲まれて戸惑うミオ。

 話の隙に抜け出して、シャルルの隣に座って夕食を食べた。


「人気者だな、ミオ」

「そ、そんなことは……氷竜なんて出てきたからですよ」

「今日はミオに驚かされてばかりだったな」

「私も驚いてばかりでしたよ!」


 シャルルとミオは、顔を見合わせて笑った。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 翌朝


 ミオ達は荷物を馬車に乗せて馬車に乗り込むと、第二騎士団の皆に見送られてフェルドーの町から出発した。

 また来いと言われたけれど、そんなに近い場所でもないし気軽には来れないだろう。

 まぁ、でも……雪兎にはまた会いたいし、箒で飛ばせば1日で来れるのでは?などと思うミオだった。


「雪兎ってどんな感じなんだ?」

「雪兎ですか?そりゃあもう、めちゃくちゃ可愛いです!もふもふだし、目はクリンとしてるし、あのフォルムは何とも言えない可愛さですよ!見ますか?」

「え、見れるのか?」


 ミオはバッグから携帯を取り出して、雪兎の写真を表示させて見せた。


「おおー!凄いな、本当に雪兎だ!可愛いなぁ」

「はい、雪兎は最強です」

「本当にミオはウサギが好きだな。私もウサギになってみたいものだ」

「「え?」」


 それぞれがいろんな想像をする。

 ミオは頭の中でシャルルの頭にウサギの耳をつけてみて……頬を赤く染めた。

 か、可愛いかもしれない…

 騎士もまた、シャルルのウサギ姿を想像して驚愕の表情を浮かべる。

 どんな想像だ?


「……どうかしたか?」

「いえ、その……パトリエール団長にウサギの耳をつけたら可愛いかなと」

「……あまり、おかしな想像をしないでくれ」


 シャルルの前に座っている騎士達にもひと言。


「……お前もな」

「は、はい!」











 次に向かうのは、西側に位置するタルブ火山の麓の町、サンブリー。

 フェルドーから向かうと、やっぱり途中で2泊するらしい。

 車だったらきっと1日もかからずに移動できそうだけれど……こちらの世界は馬車なのだから仕方がない。

 やっぱり、酔い止めのポーションを開発してもらうのが最適解だろうと思うミオだった。



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お読み頂きありがとうございました!

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