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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
第一章 異世界生活と黒ローブ
13/132

12 魔物大量発生

のんびり更新中♪

読んでくださる方、本当にありがとうございます!

 王宮図書室―――


 ここには魔法に関する書物がたくさんあるため、ミオはよく足を運んでいた。

 今日は、とある書物を探すために図書室に来ている。


 魔法陣の書


 先日、街でミオをナンパしてきた金髪ショートヘアの男性が話していたものだ。

 もしもここにあるのならば、あの男性が探しに来るかもしれない。

 男性の手に渡るのは……何だか良くない気がした。


「どんなものなんだろう、魔法陣の書って…」


 カミーユに聞いてみたけれど知らないと言われた。

 そもそも本なのか?

 巻物みたいな文書もある。


 王宮の中の図書室だから、そんなに規模の大きな図書室ではない。

 でも、天井まで届くくらい高い本棚が並んでいて、それなりの量の本や巻物、製本されていない書物などがぎっしりと収納されているから、探し出すには骨が折れそうだ。


「……パソコンで管理されてたら楽なのに」


 便利すぎる世の中は人間をダメにする…そんなことも言われたりしていたけれど、やっぱり便利なことは良いことだと思う。

 パソコンみたいに魔法で管理できたらいいのにな。

 こう…検索画面が表示されて、文字を入れたらその本が本棚からスーッと降りてくる……そんなのは小説や漫画の中の世界だ。

 ミオは無駄なことを考えるのはやめにして、目的の書物を探した。


 こうしてどれくらいの時間が経過しただろう?

 結局、魔法陣の書という書物は見つけることが出来なかった。


「ここには、ないのかもしれないな…」


 ミオは図書室を後にした。

 それにしても気になる、魔法陣の書……いったいどんな内容の文書なのだろうか?

 ミオは王宮の外に出ると、いつも綺麗に手入れされている庭園を歩いた。


「この庭って本当に癒される~」


 こんなふうに手入れが出来る庭師さんって本当に尊敬する。

 ミオは昔から植物の世話が苦手だったので、こういう仕事は絶対に出来ないと思う。

 母親にも驚かれるほどに枯らしてしまうのだ……ミオは植物の天敵か?


 のんびりと庭園を歩いていたミオが足を止めた。


 あれ……何かを忘れているような…


 少し考えると、ミオはハッとして走り出した。

 向かったのは食堂。


「ギリギリセーフ!」

「惜しかったねぇ、ついさっきおしまいにしたよ」

「うぅ……」

「ほら、おいで。ちゃんと残してあるから」

「いつも本当にありがとうございます…」


 ミオはスージーにお礼を言いながら席に座った。

 こうして、美味しい昼食をいただく。


「ところでちょっと聞きたいんだけどね」

「何ですか?」

「あんたが持って来てくれたカレーの粉なんだけどね、カレー以外にも使えるのかい?」

「いろいろ使えますよ」

「ほう、教えてもらえるかい?」

「もちろんです!」


 ミオは昼食を食べ終えると、スージーにいろいろなカレー粉を使ったレシピを伝授した。

 カレーの次に好きなのは、カレー粉を使った魚のフライだ。

 エビフライなんかも良い。

 ピラフに野菜炒め、スープにだってできる。

 カレー粉は、合わないものがないんじゃないかと思うくらい、いろんなものに使える魔法のスパイスなのだ。


「マヨカレーもいいけど……マヨネーズの作り方知らないしな…」


 異世界転生する人って、何であんなに知識人なんだろう……ミオはいつも小説や漫画を読みながら思っていた。

 どの物語でも、たいていの異世界人はとんでもなく知識が豊富だ。

 何で普通の人生を送っていた主人公達は、あんなにもたくさんの知識を持っているんだろう?

 それに比べると……何の知識もないな、私。


 これ以上考えると悲しくなってくるので、考えるのはやめにしよう。

 そうだ、ここは小説や漫画の世界じゃなくて、現実世界なのだから!そういうことにしよう。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「全員集合しろ!」


 訓練場でミオや他の魔導師が練習をしていると、緊迫した表情でカミーユが皆を呼び集めた。

 何事?


「メーヌの森に向かう草原で、上級の魔物が多数出現したらしい。遭遇した騎士団がかなりの重傷で戻って来た。現在、待機していた騎士が総出で向かい、シャルルとともに魔物と戦っている。俺達は救護と討伐にわかれて支援する」


 メーヌの森に向かう草原と言ったら、王都から出てすぐの草原だろう。

 下手したら王都に魔物が押し寄せてくる……とんでもない緊急事態なのでは!?


「ミオ、お前アルくらいなら箒に乗せられるか?」

「え!?いや、私2人乗りとかしたことないので…やってみないとわかりませんよ?」

「気合で乗せて行って、出来るだけ早くシャルル達と合流してくれ」

「……はい、頑張ってみます」

「3人は馬車で至急向かってくれ。残りは俺と一緒にケガ人の治療だ」


 カミーユの指示でそれぞれが動き出した。


「えーと……じゃあ、行こうかアル君」

「ミオの後ろに乗れるなんて嬉しいなぁ」

「しっかりつかまっててね。私、自転車も2人乗りしたことないんだから…」

「じてん…?何それ」

「私がいた世界にあった便利な乗り物よ。いい?動くよ?」

「オッケー!」


 後ろにアルバンを乗せてゆらゆらと浮上するミオの箒。

 きっと、自転車よりは簡単……そんな気がした。

 屋根の上まで浮上し、街の上空を通過しながら徐々にスピードをあげていく。


「もう少し速くしても大丈夫?」

「全然へーきだよ!」


 今出せる最速で草原へと向かう。

 どうか、皆が無事でいますように……そう祈りながら。


 こうして街から出て目の前には草原が広がったけれど、魔物と戦う騎士団の姿は見えなかった。

 王都からは少し離れているらしい。

 しばらく進んだ小川の手前で、魔物と戦う騎士団を見つけた。

 その魔物の数に言葉を失う。


「……え……何この数」

「これは…ちょっと大変かも?」


 騎士団を囲むように、辺り一帯に魔物が押し寄せていた。

 どこからこんな数の魔物がやって来たのだろうか?


「それじゃあ、この辺で僕は降りるね!」

「え、アル君!?」


 アルバンが箒から飛び降りていき、ミオは焦る。

 ここ、結構な高さなんですけど!?

 でも、すぐにアルバンの魔法攻撃が見えたので、ケガなどはしていないようで安心した。

 ミオは、騎士団に迫る魔物達の前に降り立つと、両手を上空に翳して詠唱を唱えた。


「サンダーストーム!」


 先日、訓練場に瓦礫の山を作ってしまった魔法だけれど……ここではきっと役に立つはず。

 上空に暗雲が立ち込めて、いくつもの竜巻に魔物達が吸い上げられていく。

 そして、雷を浴びて次々と魔物は消えていった。


「……魔物の数…減った気がしないな」


 ミオは、立て続けにサンダーストームを放ちながら、魔物を次々と消していく。

 いったい、どこから湧いてくるんだこの魔物達。


「ミオ!」

「……パトリエール団長!凄い数ですね!」

「突然現れたんだ……ミオが来てくれて助かったよ」

「アル君が向こうで戦っていて、馬車であと3人向かってきてます」

「そうか」


 それにしても……ぐるりと周囲を囲む魔物達に苦戦を強いられており、状況はあまり良くない。

 ミオは騎士団を中央に集めてスノーフロストを放った。

 敵が動かなくなるだけで、騎士団への負担も軽減するだろう。

 でも、その周りにはまだたくさんの魔物達がいる。


「私、外側から魔物を倒してきますね」

「あまり無理はしないで」

「はい」


 馬車でここに向かっている魔導師が到着するまでは、まだかなりの時間がかかるだろう。

 アルバンとミオ、騎士団でこの魔物達を相手にするのはかなり大変だ。

 魔物が湧き出る根源を見つけなくては……あれ?確かメーヌの森でもこんな感じで魔物が現れたわよね…もしかして魔法陣が……って、そんなの探す余裕なんてない!


 しかも…


「……ちょっとムリ!これ…見た目が虫すぎてムリ!」


 魔物の中には虫型の魔物もいて、ミオは鳥肌を立てながら必死に逃げながら攻撃をする。

 でも、苦手意識が強すぎて集中できず、上手く攻撃魔法を発動することが出来なくてかなり苦戦していた。

 箒で何とか上空に逃げ、気持ちを落ち着かせる。


「……こ、これくらい見えなければ大丈夫…」


 上空から、サンダーストームを放って、虫型の魔物がいるところを集中的に攻撃した。

 虫型はやめようよ……本当に…


 かなりの魔物を倒して消したにも関わらず、まだまだ魔物の数は多い。

 やっぱり魔法陣を見つけないことには、この戦いは終わらないのではないだろうか?

 ミオは、箒を全体が見渡せる高さまで浮上させた。


「うーん……あれかなぁ?」


 何となくだけれど、魔物が湧き出してそうな場所を2か所発見し、箒を急降下させていく。

 箒の扱いもずいぶんと上達したなと思う。


 ミオが向かった先には大きな魔法陣が描かれていた。

 その魔法陣が光るたびに魔物が出現している。

 メーヌの森でたくさんの魔物を出現させていた魔法陣とはどこか違っているようだ。

 魔法陣の端を足でこすってみたけれど……消すことが出来なかった。


「あれ、何で消えないの?」


 攻撃魔法を地面に当ててみたけれど、魔法陣を消すことは出来なかった。

 え、魔法陣って地面削ったら消せるんじゃないの?

 魔法陣の消し方を考えている間にも次々と魔物が出現してくるため、ミオは魔物を倒すことで精一杯で魔法陣に集中することが出来ない。


 そもそも、魔法陣を消すための魔法ってあるんですか?


 次々と攻撃魔法を放っているため、だんだん息が上がってきた。

 これって……魔力減ってるってこと?

 しまった、バッグ持ってきてないからポーションがない。

 先日の森の調査に同行した時にもらったポーションが、まだバッグの中に入っていたはず。

 でも、ここにはないのだから考えても仕方がない。

 今は魔物を倒すことに集中だ。


 それにしても…


「魔法陣を消す魔法か…」


 新しく思い出した魔法の中にあるのだろうか?

 まだ試していない魔法もあるけれど…




 ―――美桜


 お母さん!?


 ―――あなたは知っているのよ


 何を?


 ―――思い出させてあげたでしょう?


 だから、何を?


 ―――もう一度だけ教えてあげるから、しっかりと覚えておきなさいね


 ……お母さん?




 光に包み込まれてミオは目を閉じた。

 ゆっくりと目を開けて、少しずつ眩しさに慣れていくと、光が小さくなっていきミオの頭の中に入り込んだ。

 ミオの頭の中に魔法陣が浮かび上がり、詠唱の言葉が刻み込まれる。


「開かれし古の扉を封印せし。ティアドロップ」


 魔法陣に向かって両手を翳し、ミオが詠唱を唱えると……母親に貰ったネックレスの石が眩く光り、ミオの手のひらにその光が集まって、大きな雫となって魔法陣を覆った。

 すると、魔法陣から光の柱が立ち上がり、その光が消えていくとそこにあった魔法陣は消えてなくなっていた。

 これで、魔物の出現が止められる。

 ミオは急いでもう1つの魔法陣も消した。


 こうして、すべての魔物を討伐し終えた頃には、すっかり日が暮れて夜になっていた。

 この後、騎士団の治療を行って王都へと戻ることになったけれど、魔力をほとんど使い果たしてしまったようでミオは箒を操作することが出来なくなっていた。

 そのため、アルバンは3人の魔導師とともに馬車に乗り、ミオはシャルルの馬に乗せてもらい王都へと戻った。






 騎士団や魔導師団が王都へと戻りしばらく経った頃。

 草原に黒ローブを羽織った人物の姿があった。

 その人物は、魔法陣が描かれていた場所に立って人懐こそうな笑みを浮かべた。


「ふぅん。魔法陣消せる魔導師がいるんだぁ、面白いねー」






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 かなりの重傷を負っていた騎士達は、カミーユや他の魔導師の懸命の治療によってほとんど回復していた。

 そして、ミオやシャルル達の治療もあるだろうと待ち構えていたカミーユだったけれど、その心配はないようだった。


「お前らケガは?」

「魔物を討伐してから皆さんのケガは治してきましたよ」


 アルバンも回復魔法が使えるし、他にも1人回復魔法が使える魔導師がいたため、ミオも含めて3人でケガをした騎士の治療を行った。

 おかげで3人とも魔力切れの状態だった。


 とりあえず、アルバンや他の魔導師は今日は休ませることにし、シャルルとカミーユは国王への報告に向かった。


「えーと……私、必要なくないです?」

「別に一緒に来たっていいだろ」

「すまない、ミオ」

「いえいえ、大丈夫ですよパトリエール団長」


 こうして、なぜかミオも一緒に国王の部屋に入り、今回の魔物の件を報告する。

 騎士団は、魔物の出現報告を受けて草原に調査に行ったらしい。

 そして、調査では魔物は発見できず、王都へと帰還している途中で大量の魔物に囲まれてしまったようだ。


「魔物は、2つの魔法陣から出現していましたよ?」

「それだと、魔法陣を描いた奴がいるってことになるな」

「そうですね……あ、それと、その魔法陣は魔法でしか消せませんでした。前にメーヌの森で魔物を出現させていた魔法陣とは何か違っていて…どう違うのかはわかりませんけど」

「なるほど。ミオが魔法陣を消したから、魔物をすべて倒すことが出来たというわけか……もしかしてあの光の柱がその魔法ということか?」

「はい、そうです」

「何でお前がそんな魔法知ってたんだ?」

「どうやっても消せないでいたら、お母さんが思い出させてくれました」

「カエデ…」

「ち、ちょっと!泣かないでくださいよ!」


 本当にすぐに涙ぐむ国王だな。


「今後は魔法でしか消せない魔法陣も出てくるかもしれないな」

「そうなると……ミオにしか消せないということか?」

「え、師団長とかも覚えればいいんじゃないですか?魔法陣の文書とかありますよね?」

「あるけどな、そんな内容は見たことがない」

「えー…」


 これは…また図書室にこもる必要がありそうだ。

 さすがにミオ1人だけでは対応しきれなくなる日が来ると思う。


「てゆーか、お母さんがこの国を救った時に、黒ローブって捕まえてないんです?」

「残念ながら、奴らの正体はわかっていないのだよ。カエデも調べていたようだったがな…うぅ…」

「あ、もういいです。この件は終わりにしましょう」


 国王が号泣する前に母親の話題から話を逸らす。

 でも、黒ローブが誰も捕まっていなかったということは、今回動いている黒ローブも同じ組織だと考えていいのだろうか?

 だったらなぜ今まで何も動きを見せてこなかったのだろう…

 今考えてもどうにもならないので、黒ローブのことは一旦置いておくことにする。


「今後はより一層警戒していく必要があるのう」

「そうですね。それに、戦力も上げていく必要がありそうだが…こればかりはすぐには難しいかと思われます」

「魔導師団なんか万年人不足だからな」

「……早く育てましょうよ」


 騎士団も魔導師団も、課題は山ほど見つかるけれど、どれもすぐには解決できないものばかりだ。

 でも、王国を守るためにはどうにかしていかないと。

 それに……やっぱり黒ローブの組織のことも調べていかないとだ。

 今回の件に黒ローブが関わっているのかはわからないけれど、放っておいていい組織ではない気がする。

 でも、どうやって調べれば……助けてコ○ン君!


 とりあえずこの日はこれで解散となった。

 本当に疲れた夜だ、早く眠りにつきたい……って、その前に夕食だ。

 シャルルやカミーユと一緒に夕食を食べて、そのあとお風呂に入って……そこからの記憶がないほど、ミオは死んだように眠った。






 平穏な時は、いつか崩れる日が来るものだ。

 その平穏を守り続けることが、ミオがこの王国に来た理由なのかもしれない。



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