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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
第一章 異世界生活と黒ローブ
12/132

11 知らない人にはご用心

何回見直してもちょこちょこミスを発見します。

見つけるたびに修正はしておりますが……打ち込みミス、変換ミスなどありましたらスミマセン。

「ねぇ、次はどうする?タルブ火山やモンルトワ雪原はちょっと厳しいと思うんだよねー」

「そうだな。まぁ、焦ることもないだろう。またメーヌの森かネーオールの森に魔法陣を仕掛けてみるか…だが、同じ魔法陣では駄目だ。やはり完全なる魔法陣に近づけないとな…」

「やっぱ王都かなぁ、魔法陣の書があるのって」

「フェルドーにはなかったから、サンブリーか王都だろうな」

「サンブリーは暑いから俺はパス」


 薄暗い部屋で何かを話し合う2人の黒ローブ。


「魔物は操れるのにねぇ。あ、でも水竜は良い感じだったじゃん?あの魔法陣じゃダメなの?」

「あれは上手くいくと思ったんだがな。突然解除されてしまった」

「1年の努力がムダになっちゃったもんねー。解除した奴、殺しちゃえばいいんじゃない?」

「誰が解除したのかわかるのか?」

「わかんなーい」

「それにしても……総裁はいつ目覚めるんだろうな」

「それも、わかんない」


 2人が目を向けた扉の向こうにいるのは…






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「おはようございます、パトリエール団長」

「おはよう、ミオ。国王の所に行ってきたのか?」

「はい。毎朝顔を出して欲しいって言われたので」

「そうか」


 ミオが王宮から魔導師団の執務室に向かっていると、騎士団とシャルルが何か準備をしているのが見えて声をかけた。

 ミオが王宮に行ったのは朝の挨拶のため。

 時々は食事をしたり話をしたりしたいと言ったものの、結局は国王が毎日ミオの顔を見たいと言うので、毎朝挨拶に行くことになったのだ。


 やっぱり……宿舎ではなく王宮から魔導師団に通った方が良かったのかな?

 王宮に1人で暮らすって、やっぱり寂しいわよね…娘がいるというのに。

 ミオは少し悪いことしたなと思っていた。

 メイドとかつけてもらわなくていいし、自由にさせてもらえるなら……王宮で暮らすという選択もあるかもしれない。


「騎士団はこれから討伐か何かですか?」

「ネーオールの森の魔法陣の捜索だよ。残り3つあるかもしれないと言っていただろう?」

「あ、それじゃあ私も!」

「今回は討伐はないだろうし、ミオは同行しなくても大丈夫」

「そう…ですか?」

「ネーオールの森はそんなに遠くないから、夜までには戻れると思う」

「そうなんですね。気をつけて行ってきてください」

「あぁ、ありがとう」


 優しく笑みを浮かべたシャルルは騎士達の所に向かい、準備が整ったようで出発した。

 ミオは騎士団を見送って、魔導師団の執務室へと向かった。


 そういえば……シャルルが率いてるのが第一騎士団ということは、他にも騎士団があるのだろうけど…見たことがないな、ミオは疑問に思いながら立ち止まった。

 夜勤と日勤で活動時間が違っているのかな?

 カミーユに聞いてみよう……再び魔導師団の執務室に向かって歩き始めた。











「他の騎士団?」

「はい。第一騎士団って言うんだから他にもあるのかなと思いまして…」

「王国騎士団は第三騎士団まであるぞ」

「そうなんですね。でも、一度も見かけたことがないんですけど?」

「そりゃあそうだ。第二騎士団はフェルドー、第三騎士団はサンブリーに配属されているからな」


 ぺリグレット王国が小さな国とはいえ、王都から王国全域の治安を守るというのは難しい話だ。

 そのため、騎士団を3カ所に配属して、南側と東側を王都の第一騎士団が、北側をフェルドーの第二騎士団が、西側をサンブリーの第三騎士団が担当しているらしい。

 各地の状況を把握するため、定期的に第一騎士団が視察に行ったり、王都に集まって会議を開いたりしている。


 ちなみに、フェルドーは北の雪原(モンルトワ大雪原)の近くにある王国で2番目に大きな町、サンブリーは西の火山(タルブ火山)の麓にある王国で3番目に大きい町だ。


「じゃあ、魔導師団も?」

「魔導師団はここだけだ」

「え、そうなんですか?」

「討伐で必要な時には借り出される」

「…なるほど」


 それじゃあ、緊急時には間に合わないと思うのだが……魔導師が不足しているため、仕方のないことなのだろう。

 早急に魔導師の育成を始めないとだ。


「早く魔導師の学校を設立することをおすすめします」

「それなんだがな……魔法を悪用される危険もあるだろう?黒ローブみたいに」

「まぁ…そうですね」


 確かに、魔法の知識を得た後、それを悪用する人も出てくるかもしれない。

 人間には、力を手に入れると悪に染まってしまう人が少なからずもいる。

 どうしてなのだろう?


「魔導師として学校を卒業したら、必ずフェルドーかサンブリー、王都の魔導師団に所属するって条件で入学させるとか」

「そこは考えているさ。魔導師団の人数を増やすんだからな。それに、人数も少人数でだ。教える側も限られてることだし。まぁ、そんなに多くが集まるとは考えられないけどな」


 そうか、学校を作るということは教える人が必要ってことだ。

 あれ……魔法を教えられる人って…


「お前も教える側だ」

「いや、無理ですよ」

「学校が出来るまでに教えられるようになっておけ」

「いやいや、だから無理ですって…」

「発案者はミオだろうが」

「それはそうですけど…」


 私、まだ魔法を使い始めて2ヵ月にも満たないぺーぺーですが?

 でも、魔法を教えられる人がいなければ、学校として成立しないんだから……これは大問題だ。

 頑張れ、先輩魔導師達よ!


 ミオは学校よりもまずは自分の魔力を向上させるため、訓練場へと向かった。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 本日、ミオは休日のためぶらりと街へとお出かけ中。

 そして、最大のピンチに遭遇している……なぜ、こうなった?


「この料理美味しいね!君と一緒だからかな?」

「……………」


 ミオと向かい合って食事をしている名前も知らないこの男性。

 なぜ、そんな名前もわからない男性とミオが、一緒に食事をしているのかというと…


 時間をさかのぼること約2時間ほど前。

 ミオは街へと足を運んでいた。


 今回は徒歩ではない。

 何といっても箒に乗れるのだから、これを活用しない手はない。

 あんなにお尻が痛いと思っていた箒だったけれど、乗りこなせるようになってくると乗り心地も良くなるものだ。

 揺れないし移動速度も速いし、最高の移動手段に思える。

 ただ、箒を持っていなくてはならないのが難点と言える。

 まぁ、背負えるから良しとしよう。


 こうして街についたミオは、まず雑貨屋に向かうことにした。

 場所は……何となく覚えてるから辿り着けるだろう。

 こうして街を歩くこと30分。


「……あれ……お店がみつからない…」


 記憶を辿って店を探したのだけれど、どうもミオの記憶と道が合っていない。

 どういうことだ?

 それは簡単なこと。

 ミオが方向音痴だからだ。


 こうしてあちこち彷徨い歩き、ようやく目的の雑貨屋を見つけて店に入ろうとしたところで、誰かに声をかけられて振り向いた。


「えーと……どちら様?」

「君、今ヒマ?」

「……ヒマではありません。それじゃあ」


 ミオに声をかけてきたのは、金髪のショートヘアで、エメラルドグリーンの目をした人懐こそうな笑みを浮かべる男性。

 シャルルやカミーユ達よりも背は低いけれど、ミオから見たら十分背が高い男性だ。

 ミオが再び店に入ろうとすると、今度は手首をつかまれた。


「……あのう…」

「俺と一緒に街を回ろうよー」

「………私、この店に用があるので…」

「偶然だなぁ、俺もだよー」

「……………」


 これは……ナンパなのか?

 今ここから逃げてしまうと、この店に来ることが出来なくなりそうだ。

 でも、この人と一緒に入るのは…何か危険を感じる。

 どうする?


 店は……またいつか来よう。


 ミオは男性の手を振り払って走ってその場から離れた。

 後ろから追いかけて来る……と思ったけれど、男性は追いかけてこなかった。

 パトリックほどしつこい人ではなかったらしい。


 ふぅ~っと息を吐き出して、近くにあったベンチに座った。

 これも…異世界あるあるだろうか?

 異世界じゃないな、小説や漫画あるあるだ。


 どこをどう走って来たのかわからないけれど、来た道を戻って雑貨屋に行こうと立ち上がったその時、目の前にさっきの男性が現れた。


「やぁ、また会ったね!偶然偶然、これって一緒に見て回ったらって神様が引き合わせてくれてるんだと思わない?」

「いや、まったく」


 困った。

 これは大変困った出来事だ。

 ここははっきりとお断りしよう。


「えーと……私、1人で見て回りたいので。それじゃあ」

「えー、絶対に一緒に回った方が楽しいのにぃ」


 頬を膨らます男性だったけれど、ミオには関係がない。

 ペコリと頭を下げると、たぶん走ってきた方向である道を戻って行った。

 その後、どうにかして雑貨屋に辿り着き、店の中をのんびりと見て回って、気に入ったペン立てを2個買って店から出た。

 1個は……シャルルへのお返しだ。

 何をプレゼントしたらいいのか全然わからなかったので、ペン立てならそんなに困らないだろうと、お揃いのものを買った。


 あ……お揃いって……嫌かな?

 ま、まぁ、使うか使わないかはその人の自由だ。


 次はどこに行こうかと歩き出そうとした時、聞き覚えのある声がしてビクッと体を震わせた。

 この声…もしかして……


「用事はすんだ?」

「……………」


 金髪ショートヘアの男性だ。

 いい加減、しつこすぎないか?

 ミオが無視して歩き始めると、男性は後ろからついてきた。

 箒に乗って上空を逃げることも考えたけれど……それはやってはいけない気がしてやめた。

 さて、どうしよう…


「次はどこに行くの?俺さぁ、この街初めてだからよくわからなくてさー。君と一緒なら楽しいと思うんだけど」

「……私もよくわからないので、他の人誘った方がいいですよ」

「あ、やっと話してくれた!」


 しまった…


「君、この街の人?あ、よくわからないってことは違うのかな」

「……………」

「もしかして君…魔導師さん?」

「…え?」


 魔導師という言葉に反応してしまい、金髪ショートヘアの男性が凄い笑顔で顔を寄せてきた。


「やっぱり?そうだと思ったんだよねー」

「……………」

「どんな魔法使えるの?」

「……見習いのようなものなので」

「ふぅん。じゃあ、箒は?」

「……練習中です」


 ぐるぐるとあちこち曲がりながら歩いたので、もう帰り道なんて全くわからなくなり泣きそうだ。

 でも、この男性を何とかしないことには帰るに帰れない。

 後を追いかけて来られても厄介そうだし…


「あ…あのう…」

「ね、お腹空いたね。ご飯を食べようよ!」

「え?」


 男性はミオの手をつかむと、向こうに美味しそうなお店があったと引っ張っていく。

 手をしっかりと握られて戸惑うミオ。

 知らない男性と手をつないで歩くって……これ、ダメなヤツ!

 手を離そうにもしっかりと握られているため離すことも出来ず。


 こうして、男性に手を引かれてとある店に入ったミオは、男性と向かい合ってテーブルに座った。

 しばらくすると、テーブルには男性が注文した料理が運ばれてきた。


「さ、食べようー。ここは俺の奢りだから遠慮しないで食べてね!」

「…え、えーと……私は…」

「ほら、美味しいよ!君も食べてごらん」


 とびっきりの笑顔で、一切れの肉をフォークに刺して差し出してくる男性。

 これって……食べないといけない雰囲気ですか?

 何かの罰ゲームか何かなんですか?


 ミオの口にくっつきそうなほど近くに寄せられたフォーク。

 少しずつ後ろにのけぞっていき、ミオの体は限界を迎えた。

 仕方がないので、差し出されたフォークに刺さった肉をパクリと食べる。


 あ、美味しいお肉。


「ね、美味しいでしょ!」

「………はい」


 戸惑いながら口の中の肉をよく噛んで飲み込む。

 自分で食べないとまた食べさせられそうなので、ミオは自分でフォークとナイフを持って食べることにした。


「この料理美味しいね!君と一緒だからかな?」

「……………」


 それにしても……誰なんだろう、この男性…

 てゆーか、いつも出てくるはずのパトリックは、なぜこんな時に顔を出さないんだ?


「君さ、魔導師なら『魔法陣の書』知らない?」

「え、何ですかそれ?」

「やっぱ知らないかぁ」


 即答してしまい、またしてもしまったと後悔するミオ。

 この男性……もしかして魔導師なのだろうか?


 魔法陣の書?


 そんな書物は図書館では見たことがない。

 どんなものなんだろう?

 名前からして魔法陣のことが書かれているのだろうけど。


 帰ったらカミーユに聞いてみよう。


「じゃあさ、伝説の魔導師は?」

「え?」

「何か知ってる?」

「えーと……」


 これって……何か探られてる?

 ヤバい、私嘘つくのあんまり得意じゃない。


「魔導師なら聞いたことくらいあるでしょ?」

「名前くらいなら…」

「ふぅん。まぁ、見習いじゃあ仕方がないかぁ」

「……………」


 どうしよう…このままではいつかボロが出てしまう。

 誰か、助けてください…


 自然に振舞おうとすればするほど、動きも言動もぎこちなくなってしまう。

 平常心を保ちながら嘘をつける人って本当に凄い人だ。

 この日ばかりは、ひたすらにパトリックの登場を願うミオだった。


 そんなミオの願いが通じたのか、パトリックの声が聞こえてきてハッとして顔を上げた。


「あれ~、ミオちゃんじゃん。今日はシャルルと一緒じゃないんだね」

「お、遅いですよパトリックさん!」

「へ?」


 涙目になりながら立ち上がるミオに、戸惑うパトリック。

 ミオの向かい側で食べていた男性は、驚いたような顔をしながらミオを見上げた。


「あれ、もしかして待ち合わせとかしてたの?ごめんごめん、俺がしつこく誘っちゃったからー」

「そ…それじゃあ私はこれで」

「ごめんねー。あ、彼氏さんも怒らないであげてねー」


 ミオはパトリックの腕をつかんで店から出ると、大きく息を吐き出してしゃがみ込んだ。

 驚いたパトリックが、オロオロしながらミオの背中をさすって隣にしゃがみ込む。


「ち、ちょっとミオちゃん!?大丈夫!?俺の店すぐそこだから、店で休もうか!」

「……す、すみません」

「大丈夫だから。ほら、立てる?」


 パトリックに支えられながら立ち上がり、とりあえずパトリックが営む薬草屋へと向かった。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「はい、どうぞ」

「ありがとうございます…」

「ハーブティーだよ。これ飲むと落ち着くから」


 ここは店ではなく、店の上にあるパトリックの自宅らしい。

 この世界にもハーブティーがあったなんて知らなかった。


「……あ、カモミールですか?」

「へぇ~、ミオちゃんわかるんだ?」

「時々飲んでましたから」

「なるほど」

「このお部屋のほんのり香るラベンダーも好きですよ」

「ミオちゃん……俺と結婚しよう!」

「えーと…それはちょっと…」


 ラベンダーと、カモミールティーのおかげで気持ちが落ち着いてきた。


「で、何があったの?」

「……その…何だかいろいろと探られてるような感じで……私嘘つくの苦手だから、どうしたらいいのかわからなくて」

「なるほどね。だからあんな泣きそうな顔してたんだ」

「…すみません」

「遅いなんて言われたから、何か約束してたのかと思って焦ったよ」

「本当にすみません…」


 何を探られていたんだろう?

 魔法陣の書、伝説の魔導師……一体彼は何者?


「俺、ちょっと店の方見て来るから待っててくれる?」

「あ、私帰りますよ」

「ダメダメ。ここで待ってて」


 帰ろうとしたミオだったけれど、パトリックにソファーに座らせられてしまい、このまま待つことにした。

 仕事中なのに……迷惑をかけてしまったな…


 それにしても、何だかとても落ち着く部屋だ。

 ラベンダーの香りもそうなのだけれど、置いてある家具とか観葉植物とか、どれも居心地がよく感じられる色合いやデザインだった。


 それにしても…


「美味しいな、このカモミールティー」


 買っていこうかな、そんなことを考えていると、ドアが開いてパトリックが戻って来た。


「さ、送っていくから帰ろうか」

「え、そんな。お仕事中ですし、私1人で帰れますよ」

「1人で帰せるわけがないだろう。俺がカミーユの所まできっちり送り届けるよ!」

「で、でも…」

「大丈夫。ほら、行こう」

「あ、その前に……カモミールティーください」


 こうして、カモミールティーを購入してパトリックに馬車で送ってもらい、宿舎へと到着した。

 パトリックは、執務室まで送ってくれて、カミーユに今日のことを説明してくれた。


「箒なんか持ってくから魔導師だってバレるんだよ」

「あ、そういうことですか?」

「あれ、もしかしてミオちゃん気がついてなかったの?」

「え…」

「街に行くなら箒は禁止だ」

「えー、だって歩くと遠いんですよぉ…」

「俺が迎えに来ようか?ミオちゃんが来そうな気配を感じたら」

「お前は来なくていい」

「何でだよ!」

「てゆーか、気配ってなんだ気配って!怖いだろうが!」


 確かに、ミオが街に行く気配なんて感じられたら怖い。

 でも、これからはカミーユの言う通り、箒で街に行くのはやめようと思ったミオだった。







 ―――――――

 ―――――

 ―――






「ただいまー」

「どうだった?魔法陣の書はありそうか?」

「それはちょっとわからなかったなぁ。それよりも聞いてよ」

「何だ?」

「かわいい子見つけた」

「………いっぺん死ね」


 薄暗い部屋で話す黒ローブをまとった2人の男性。

 そのうちの1人は、ミオが街で会った金髪ショートヘアの男性だった。



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