108 イベントの少ない世界なのです
のんびり更新中♪
「はぁ?クリスマスがないだと!?」
「ないです」
「年越しと正月イベント」
「ないです」
「バレンタインとホワイトデー」
「ないです」
「はぁ!?だったら何があんだよ!……ゴールデンウィーク」
「ないです」
「七夕」
「ないです」
「何もねぇじゃねーか!」
ミオとショウの会話を、不思議そうな顔で聞いているカミーユ、ラウル、コルト、ディナール。
午前の訓練が終わり、食堂で休憩中だ。
今日からショウも魔物との戦闘訓練に参加しているけれど……まだまだ騎士や他の魔導師との連携は難しそうだ。
今日は12月24日。
ミオがいた世界ではクリスマスイブだけれど、この世界には残念ながらクリスマスなんてものはない。
「ハロウィン的なイベントならありますよ。ちょうど、ショウさんがこっちに来た頃が収穫祭でした。あー、でも……仮装パーティーとかトリックオアトリートなんてのはないです」
「だったら何すんだよ」
「普通に収穫祭ですよ。でも、街の装飾はハロウィンっぽいし、楽しいですよ?あ……もしかしてショウさんって、仮装してスクランブル交差点とか行ってた人です?」
「行ってねぇ」
「ミオ、お前達の会話が1つもわからないんだが」
「えーと……この世界はイベントが少ないですねって話です」
「少ねぇってもんじゃねぇだろ!何もねぇじゃねーか!」
「お前らがいた世界は、そんなにイベントごとがあったのか?」
「ありましたよ」
ミオが元の世界でのイベントを簡単に説明すると、ラウル、コルト、ディナールの3人はとても目を輝かせながら聞いていた。
「いいなぁ、俺もミオちゃん達の世界に行ってみたいよー」
「私はこっちの世界の収穫祭とか、びしょ濡れになるお祭りも楽しいと思いますけどね」
「俺は年越しイベントも正月もねぇのが信じられねぇよ。異世界でもそれくらいあんだろ。ゲーム内でだってあるぞ」
「……ここは小説の中の異世界でもないし、ゲームの世界でもないので」
年越しのカウントダウンをするにも、この世界には時計というものがないので、いつ新年を迎えているのかが正確にはわからない。
朝起きたら新しい年を迎えているのだから。
まぁ、新年会くらいはあってもいいのかもしれないけれど。
そういえば、ルシヨット魔導国と戦った時に、ガストビが日付が変わるとともに攻撃して来ると予想していたけれど……あれってどうやって攻撃のタイミングを決めたんだ?
「お前ら、そろそろ午後の訓練に行くぞ」
「もう行くのかよ!?もう少し休もうぜ」
「十分休んだだろうが。ほら、行くぞ」
ミオ達は午後の訓練のため、食堂を後にして訓練場へと向かった。
12月も後半ということで、外では雪が舞っている。
今日は風もなく朝から雪が降り続けているため、地面にはうっすらと雪が積もり始めていた。
いよいよ本格的な冬の到来だな。
―――――――
―――――
―――
「そんなわけでお父さん、1月1日の夜は王宮の広間で今年もよろしくねパーティーしてもいいです?」
「別に構わんよ」
「お父さんは皆さんへの挨拶をお願いしますね」
「私なんかが挨拶せんでも……」
「王様なんだから、ありがたい言葉の1つや2つお願いします」
ショウがどうしても新年会をしたいと言うので、騎士団と魔導師団が全員入れそうな王宮の広間を使ってパーティーをすることにした。
談話室で皆とコミュニケーションを取るのは苦手なのに、新年会はやりたいとか……よくわからないな、本当に。
ミオの父親である国王は、快く許可してくれて、こういうのは毎年やっても良いかもしれないと言ってくれた。
父親と相談して、日頃の感謝も込めて王宮で働く皆にも参加してもらうことになった。
料理は、スージーと王宮の料理人達が協力して作ってくれるらしい。
皆、協力的で本当に感謝しかない。
ミオも手伝うと言ったら、笑顔で全力拒否されてしまった。
どんなパーティーになるかはわからないけれど、たまにはこうして王宮内全員でパーティーというのも良いかもしれないなと思うミオだった。
12月に入り魔物が凶暴化して以降、魔物達に変わりはなく王国内はとりあえず平穏に包まれていた。
シャトロワ王国も同じような感じのようで、騎士団の中でも怪しい動きをする者はまだ見つかっていないとのことだった。
自国の騎士団の中に敵がいる……そんな状況が続くのは、精神的にとてもキツイことだろう。
何か力になれることがあればいいのだけれど、どんなに考えてもミオが出来ることは思いつかなかった。
「閉ざされた町の入り口と、そこにつながる山道の入り口に、人間が入れない結界を張っとくってのはどうなんです?」
「そんなことは既にやっている」
「あ、そうなんですね」
「だが……当然、騎士団に潜り込んでいる者達が魔導師なら、結界の解除は容易だろう。奴らを見つけない限り、結界など何の役にも立たないがな」
ミオが考えることなど、エリアスは既に実施していた。
さすが、頭の出来が違うんだな、優秀な王子様だよ本当に。
ただ、入り口に結界を張ったとしても、周囲の険しい山岳地帯までは結界を張ることが出来ない。
険しすぎてとても人間が立ち入れる山々ではないけれど、その山岳地帯を抜けて閉ざされた町に入ることも不可能ではない。
確率的には、ほとんど0パーセントに近いらしいけれど。
騎士団に潜り込んでいる者達も魔導師だったとしたら、結界が何の意味もなくなってしまうというのは……もう、対処のしようがないのでは?
「エリアス様とか王様の体が心配ですよ。身内に敵がいるって、精神的に相当キツイことですし……そういえば、お母様はもう体調悪くなったりしていないんです?」
「私も父も大丈夫だ。母もあれからは元気にしている。お前は……優しい奴だな」
「別に優しいとかそういうんじゃなくて、心配するのは当たり前ですよ。コレット様だって心配されてるでしょう?」
「アイツは、王宮にいるよりも実家の方が安全だと言って帰っている」
「……そうなんですね。ま、まぁ……王妃様ですし、戦ったりできませんものね。身を守るためには安全な場所で過ごすの一番ですよ」
「お前は前線で戦いそうだというのにな」
「わ、私は本業が魔導師ですもん」
「あぁ、そうだったな」
「ペリグレット王国からも援軍とか出せたらいいんですけど……王国を守ることで精一杯なのですみません」
「その気持ちだけで十分だ」
エリアスとの通信を切り、ミオはジーッとクリスタルを見つめながらエリアスに謝罪した。
シャトロワ王国がとても大変な状況だということはよーくわかっているけれど……王宮で新年会なんか開催することを許してください!
―――――――
―――――
―――
「今日が年越しなんて感じが全くしねぇ」
「いつも通りですからね」
ミオとショウは、カミーユに言われて薬草を買いにモンフォワールの街に来ている。
ショウも薬草を買いに来ることがあるだろうし、薬草屋を覚えておいてもらわないといけない。
この世界全体なのか、ペリグレット王国だけなのかはわからないけれど、年末年始というものがないため、モンフォワールの街は今日も通常営業だ。
「ここが薬草屋さんです」
「薬草屋ねぇ」
「こんにちは、パトリックさん」
「やぁ、ミオちゃん!いらっしゃーい……って、誰そいつ!?」
「新しく魔導師団に入ったショウさんです」
「そ、そうなのか。やぁ、俺はこの店の店主でパトリック・ラブリエだ、よろしく」
「俺はショウ・ヤマモトだ」
「今日はどうしたんだい?ミオちゃん」
「師団長のおつかいですよ。この薬草下さい」
ミオはカミーユからのメモをパトリックに渡した。
パトリックはメモを見ながら額に青筋を立てる。
「カミーユの奴、何考えてるんだまったく!いくらミオちゃんと新入団員の2人だからって、この量を持って帰れるわけがないだろうが!」
「え、またそんなに大量なんです?」
「大丈夫、馬車で運んでキッチリ文句言ってあげるからね!そこで紅茶でも飲みながら待っててよ」
「いつも、本当にすみません」
「ミオちゃんは悪くない!」
パトリックはベリーのミルクティーを入れてくれて、薬草の準備を始めた。
こうして、馬車に大量の薬草を積み終えたパトリックは、ミオとショウを乗せて王宮へと向かい、カミーユの顔を見るなり文句を言ったけれど、いつものように食堂で昼食をもてなしてもらって満足気に帰って行った。
カミーユにいいように使われてる感凄いんですけど……
「この薬草、何に使うんだ?」
「ポーションですよ」
「へぇ、ポーションがあんのか」
「あれ、見たことありませんでしたっけ?」
「ねぇな」
「ポーションは、アニメとかゲームに出て来るのと同じ感じなんですよ。この奥に製作所があるんで、見てみます?」
「おぅ」
ミオは、ポーション製作所にショウを案内した。
赤・黄・緑・紫・青・橙の液体が入ったガラス瓶が並べられており、ミオはそれぞれの効能や味などを説明した。
ここはカラフルなので、ミオ的には見ているだけで癒される場所となっている。
「タブレットとかになれば、戦闘中でも飲みやすくなるんですけどね……この世界にラムネとかタブレットがないので説明も出来なくて」
「薬剤師とか転生してくりゃいいのにな」
「ホント、それですよ」
ミオとショウは執務室に戻ると、ショウの戦闘訓練のため、カミーユも交えて訓練場へと移動した。
ショウはかなり魔法を使いこなすことが出来るようになってきたけれど、動く敵が相手だとなかなか攻撃を当てられずに苦戦していた。
自分も動かないといけないし、相手が攻撃してきたら避けないといけない。
それに、箒の操作も加わるとかなり難易度も上がる。
でも、こればかりは経験を積んでいくしかない。
「クッソ、全然当たんねぇ!」
「魔法の発動が遅いんだよ。もっと連射しろ」
「全力だっての」
「それと、俺の攻撃も避けろよ」
「あ?……うぉっ!?」
ショウはカミーユの攻撃を避け切れずに、まともに喰らって箒ごと地面に叩きつけられた。
カミーユが地上に降りて来てショウに歩み寄り、ヒールで傷を回復させる。
「クソ、追いかけながら攻撃して避けるとか……無理ゲーだってんだよ」
「無理だって思うなら、魔導師になることは諦めるんだな」
「うるせーよ。諦めるわけねぇだろうが」
「だったら次始めるぞ」
「はぁ!?もう少し休ませろってんだ!」
「実際の戦闘では休む暇なんかないぞ」
こうして、日が暮れるまでショウとカミーユの戦闘訓練は続いたのだけれど……ミオがここにいないといけない理由って何だったんだ?
―――――――
―――――
―――
「ペリグレット王国国王として、皆には本当に感謝しておる。今夜は存分に飲んで食べて羽目を外してくれ。これからもよろしく頼むぞ」
新しい年を迎えて、今夜はペリグレット王国初の新年会が開催されている。
堅苦しくはならないように、ビュッフェタイプの立食パーティーにしてもらったけれど、皆楽しめているだろうか?
残念ながら、フェルドーやサンブリーの騎士団や魔導師、領主の騎士団やそこに派遣されている魔導師などは呼ぶことが出来なかったので、せめてもの気持ちを……ということで、お酒やスイーツなどを配っている。
ショウはビンゴ大会をしたいとかなりごねたけれど、この世界にビンゴマシーンなんてないし、あのカードを手作りするってかなり大変そうだ。
仕方がないので、皆でちょっとしたプレゼントを持ち寄って、プレゼント交換をするということで何とか納得し、受付の時に皆からプレゼントを預かった。
「スージーさん、王宮の皆さんも、本当にありがとうございます。本当は皆さんのことも、おもてなししないとなんですけど……」
「何言ってるんだい。私らは楽しんで作らせてもらってるよ」
「そうですよ。たまにはこのようなパーティーも良いものですね」
「そう言って頂けて、本当に感謝しております」
料理を作ってくれた人達には、プレゼント交換ではなく父親と一緒に選んだプレゼントを用意している。
料理を作る手伝いは出来なかったけれど、片付けくらいは手伝おう。
それくらいなら……拒否られることもないだろうし。
美味しい料理を食べてお酒も入って、新年会はとても盛り上がっていた。
皆楽しそうで何よりだ。
「ミオのピアノが聴きたいのぅ」
「え、嫌ですよこんな大勢の前で」
料理を堪能していると、父親がミオにピアノを弾いてくれと言ってきて、ミオは即答で拒否した。
父親が残念そうな顔をしていると、そこにシャルルとカミーユも歩み寄って来て会話に交じって来た。
「私もミオのピアノが聴きたいよ」
「俺はまだ聴いたことがなかったな。弾いてみろ」
「えー……師団長が弾けばいいじゃないですか」
「俺が弾けるかよ!」
「なになに?ミオちゃんピアノ弾けるの?」
ラウル達も加わり、何となくピアノを弾くという流れに……何でこうなった!?
仕方がないので、ミオの知っている曲を何曲かメドレーで弾いてみたけれど、知っている曲がほぼ2年前以前の曲なので何だか古い曲に思えた。
そうか、もう新しい曲を知ることはないんだな……
「え、もしかして時々聞こえて来るピアノって……ミオ様だったんです?」
「そうですよ。あれ、知りませんでした?」
驚く騎士達に、そういえば言ってなかったかなと苦笑いするミオだった。
ミオが弾いたメドレー曲は、ショウも知っている曲だったようで、ピアノの傍に寄って来て楽しそうに聴いていたので、これはこれで良かったかなと思う。
こうして、サプライズのピアノ演奏が終わり、くじを引いて持ち寄ったプレゼントが皆の手元に行き渡り、大盛況の中新年会は終了となった。
プレゼントを開けて……「何だコレは!?」なんて声もあったけれど、それも楽しみの1つだ、どんなプレゼントでもありがたく頂こう。
きっと、これから想像もできないくらい壮絶な戦いが始まるかもしれない。
この新年会が、少しでも皆の英気を養えたことを願うばかりだ。
.
お読みいただきありがとうございました!




