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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
最終章 魔王と異世界生活
118/132

107 紛れ込むって案外簡単?

のんびり更新中♪

「どうだ?順調に集まっているか?」

「こっちはあと数人だ」

「こちらも残り10人くらいですね」

「俺の方は少し遅れているが……到着までには何とかする」

「私は……」


 クリスタルを通じて、複数で報告し合う人々。

 彼らは皆、黒いローブを羽織っていた。

 そのローブのフードの下には、逆さ十字が描かれており、その中央には悪魔が描かれている。


「では、私は今からシャトロワ王国に向かう。隠れ家で、お前達の到着を待っているぞ」


 クリスタルをローブの内側のポケットにしまい、黒ローブの男は船へと乗り込んだ。

 船が向かうのはシャトロワ王国。

 男は客室に入ると、手に持っていた四角いカバンをテーブルの上に置き、中から小さな黒いガラス玉……クリスタルを取り出した。


「長かったな……あと少しだ。あと少しで5000の魂が集まる」


 男は黒いクリスタルを見ながら微笑むと、またカバンの中へと戻し、カバンを閉じるとクローゼットの中に入れた。

 船はゆっくりとシャトロワ王国に向かって進んで行く。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「先日、突然魔物達が凶暴化しただろう?」

「そうですね」

「魔物の森の魔物達も城壁に向かって攻撃をして来た」

「はい」

「それが突然、森の奥……ペリグレットの方に向かって消えて行ったのだが……お前、何かしただろう?」


 ミオは今、クリスタルを通じてエリアスと話をしている。


「何かしただろうって……私、別に皆さんに迷惑をおかけするようなことはしてませんよ?」

「私は迷惑をかけたとは言っていないが?」

「えーと……森に入って、魔物達を落ち着かせましたけど……それがどうかしました?」

「森の中に入っただと!?凶暴化した魔物達がいる森の中にか!?」

「そうですよ?だって、入らないと何も出来ないじゃないですか……」

「馬鹿かお前は!」

「……なんでエリアス様に怒られるのかがわかりませんけど」

「怒っているわけではない!お前のことが心配なだけだ!」


 こんなに怒鳴られてるのに怒られてないんですか?私……

 そもそも、シャトロワ王国からミオがいた場所なんて見えなかったはずなのに、何故エリアスはミオが何かしたと思ったんだ?

 エリアスに尋ねてみると、「私の勘だ」と言われた。


「それよりも、誰も閉ざされた町には入っていないんですよね?今回は、前よりも魔王の封印が解かれそうな兆候が強かった……って氷竜が言ってましたけど」

「今のところ報告は入っていないが、私も急いで向かっている」

「報告するのにも時間がかかるんじゃないんです?」

「いや、ハヤブサを使っているからそこまで時間はかからない」

「ハヤブサ?この世界のハヤブサって話せるんですか!?」

「やはりお前は馬鹿なのか?……足に手紙をつけて飛ばすんだ」

「……ですよね」


 異世界だから、ハヤブサが話せてもおかしくはない……と思ってしまった自分が恥ずかしい。

 シャトロワ王国では、伝書鳩のような感じでハヤブサの足に手紙をつけて飛ばして連絡を取り合うらしい。

 なるほど、クリスタルがなくてもそんな方法があったのか。

 何でペリグレット王国では、クリスタルを設置する前にハヤブサを使わなかったんだろう?


「では、何かあればすぐに連絡する。お前は……あまり無茶をするな」

「大丈夫ですよ。連絡待ってますね」

「お前の大丈夫は信用できん」


 はいはい、そうですか。

 ミオはエリアスとの通信を終えるとベッドに寝転がった。


 氷竜の話では、魔王の核は封印されている間は近づく人間を取り込もうとするらしい。

 きっと、次の魔王を探しているのだろう。

 封印されているにも関わらず、とんでもない力を持っているものだ。

 魔物の凶暴化は、魔王の魔力が干渉しているから起こっているものだろうし、だったら魔王の封印に誰かが取り込まれたのだと考えるのが普通だろう。

 ということは……閉ざされた町には既に魔王の封印を解こうとしている人間が入っているということになる。

 厳戒態勢であろう閉ざされた町に、どうやって入ったんだ?

 シャトロワ王国の騎士団の中に先導した者がいるのではないか?ということが頭に浮かんだけれど……そんなことをエリアスに伝えていいものか悩んでしまう。


 ミオは携帯の画面に黒ローブの調書を表示させて眺めた。


「あのお方って……総裁じゃない気がするんだよね」


 さすがに、この王国に潜んでいた黒ローブ達が全員捕まったことや自害したことは、今動いている黒ローブ達だって把握しているはずだ。

 当然、総裁が既に死んでいたということも知っているだろう。

 だったら、あのお方が総裁というのはとても不自然なことに思える。

 もしも生き返らせるということならわかる気もするけれど……だったら何故死体を回収しようとする動きがないんだ?


「小説なんかだと、黒ローブ達が目覚めさせようとしているのは魔王ってのが定番だけど……ここ、異世界とはいえ小説とは違うしな……」


 残念ながら凡人のミオにはコ○ン君のような頭脳はないので、とりあえず明日カミーユに話そう……部屋の灯りを消して寝ることにした。


 そして、翌日―――


「黒ローブが魔王の封印を解こうとしてるだと?」

「そうなんじゃないかな……と思いまして」

「まぁ、なくはないよねー」


 魔導師団の執務室で、ミオは昨夜考えていたことをカミーユとラウルに話してみた。


「根拠は何だ?」

「何となくですけど、黒ローブの調書の総裁とあのお方は別なんじゃないかってことと……勘です」

「勘かよ!」

「うーん……魔王になるとか、魔王の封印を解く時って、たくさんの人間の魂が必要になったりするじゃないですか」

「お前、魔王の封印の解き方を知ってるのか!?」

「知らないですよ、私の世界に魔王なんていませんでしたし。私が読んだ小説とかの話です」

「小説かよ!」

「でも、魔王の核って近づいた人を取り込むって話だし、取り込んだだけで封印が解かれるなんてことはないと思うんですよね。きっと、封印の解除には媒体となる人間と、他にも何かが必要なんですよ。それが人間の魂だとしたら……黒ローブ達が死体から何かを集めているってのが魂で、魔王の封印を解こうとしているのは黒ローブってことになるんじゃないんです?」

「確かに、ミオちゃんの言ってることは一理あると思うよ」

「……まぁ、そうだな」


 ミオはすっかり冷めてしまった紅茶を入れ直した。

 するとそこにシャルルもやって来たので、シャルルの分の紅茶も入れてテーブルに運ぶ。


「ありがとう、ミオ」

「いえいえ」


 今まで話していたことを、カミーユがシャルルにも伝えて、話の続きを始める。


「それと、魔物達が凶暴化したのって、魔王の魔力が干渉したからなんですよね?閉ざされた町には誰も入っていないとエリアス様は言ってましたけど……私は誰かが入って魔王の封印に取り込まれたんだと思います」

「騎士団が厳重に警戒してる中、どうやって入ったんだ?」

「それはわかりませんけど……騎士団の中に手引きした人がいるんじゃないのかなって思うんです。でも、これをエリアス様に言っていいものか悩んでるんですよね。エリアス様も今閉ざされた町に向かってるって言ってましたけど」

「私は、伝えるべきだと思うよ」

「他の国の人に言われるのって、なんか嫌だったりしないんです?」

「どうだろうな?私なら言ってもらえた方が助かるが」

「俺も伝えた方がいいと思うよ?」

「今連絡してみろよ。何かあれば俺達が説明する」

「……わかりました」


 ミオはクリスタルを取り出すと、エリアスに連絡をした。

 そしてここで話していたことを伝えようとすると、少し待てと言われて通信が切れ、しばらくしてエリアスの方から連絡が来た。

 どうやら馬車で移動していたらしく、馬車から降りて周囲に誰もいないことを確認してから連絡してきたようだ。

 エリアスも、騎士団の中に魔王の封印を解こうとしている者達の仲間がいると考えており、ミオが伝えたこともすんなりと受け入れてくれた。

 魔王の封印を解こうとしているのが黒ローブかもしれないことも伝えておく。


「騎士団の中に、仲間が何人いるのかがわからない以上、閉ざされた町への侵入を完全に防ぐのは難しいだろうが……出来る限りの対策はする」

「すみません、何もお手伝い出来なくて……」

「お前が謝ることではない。いいか、無茶だけはするなよ」

「……はい」

「何だその間は」

「気にしないで下さい」


 シャトロワ王国への入国は、港からだけではなく隣接する2つの王国との国境からも入国できる。

 そのため、ペリグレット王国よりも出入国者の管理は難しいだろうし、ましてや騎士団に黒ローブが潜り込んでいるとすればなおさら困難となるだろう。

 何か良い方法がないものか。


「悪いヤツが入れない結界とかないの?ラウルさん」

「さすがにないよー」


 魔王の封印が解かれようとしていることは、既に全世界へと通達されており、各国で厳戒態勢が敷かれている。

 そんな中でも活動できている黒ローブって何者なんだ?

 とんでもなく凄い人達が集まる組織なのは間違いないだろう。


「……ここの騎士団や魔導師団は大丈夫ですよね?ちなみに……私は違いますよ」

「俺も違う」

「私も違うよ」

「俺は元だから、今は違うよー」


 ん?

 え、それ言っちゃっていいんですかラウルさん!?

 一瞬の間を開けて、ラウル以外の3人が目を見開いてラウルに視線を向けた。


「元ってどういうことだラウル?」

「元黒ローブってことだけど?」

「はぁ!?」

「どういうことだ?」

「ちょっとラウルさん、それ言っちゃっていいの!?」

「別にいいよ」

「ちょっと待て!ミオ、お前知ってたのか!?」

「……はい」

「「何だと!?」」


 シャルルとカミーユは、何が何だかわからないと言うような困惑した顔で固まった。


「俺が黒ローブの組織に入ったのは、たぶんミオちゃんがこっちに来る少し前だよ。竜を使えば父と弟を生き返らせることが出来るかもって思ってね。でも、それは無理だってわかったから抜けたけど」

「……ミオはいつから知ってたんだ?」

「えーと……黒ローブ達のアジトの場所を教えてもらった時に……」

「あれはラウルからの情報だったのか!?」

「……はい」


 誰か、この微妙な空気を何とかしてください……






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 窓のない部屋にロウソクが灯されて、ゆらゆらとした灯火が部屋の中を照らす。

 そんな薄暗い部屋の中には、黒ローブを羽織った数人の人達が集まっていた。


「残り4つか」

「そうだな。ようやくここまで来たのだ、焦らずに行こうではないか」

「間もなく訪れる新しい年が、私達が創る新しい世界を導いてくれることでしょう」

「ならば、我々を導く新しい年を祝いながら、4人を待つとしよう」


 部屋を出る際、羽織っていた黒ローブを脱いで出て行くその人物達は、何の違和感もなく街の人達に紛れ込んで行った。



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お読みいただきありがとうございました!

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