105 王国を守る魔物達
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1体の巨大な鳥が、メーヌの森を抜けて城壁へと近づいて来た。
城壁の向こう側に集まった魔物達に向かって攻撃をしていた騎士の1人が、何かの気配を感じて振り向き……その巨大な鳥の姿を見て叫ぶ。
「オ……オイッ!後ろからも何か来てるぞ!あれは……炎帝ロック鳥だ!」
「何っ!?」
この隊のリーダーを務めている騎士が、背後からやって来た炎帝ロック鳥に向かって攻撃の指示を出し、騎士や魔導師が構えると一斉に攻撃を始めた。
すると、炎帝ロック鳥の前にシールドが現れ、攻撃は全て防がれた。
「シールドだと!?」
「何なんだあの炎帝ロック鳥は!?」
再び攻撃をしようとしたところに、上空から声が聞こえて来た。
「ち、ちょっと待ってください!私です、ミオです!攻撃をやめてもらえます!?」
「え……ミオ様?」
炎帝ロック鳥が城壁の上に降りて来ると、背中からミオ、ラウル、コルトの3人が降りて来て、騎士や魔導師達が慌てて駆け寄った。
「す、すみませんミオ様!まさかミオ様だとは思わなくて」
「てゆーか……何ですか、コレ?」
「炎帝ロック鳥です。私が召喚した魔物です……すみません、驚かせてしまって」
「ミオ……それで来るなら先に言っておいてよ……」
「あはは……すみません、レオポールさん」
ミオは城壁から森を見下ろす。
そこには魔物達が集まり、城壁に向かって攻撃をしている姿が見えた。
幸いなことに、騎士や魔導師達に負傷者はいないようで安心したけれど、攻撃を受けた魔物達の中には、負傷してしまった魔物もいるようだった。
「私が魔物を引きつけて行くので、攻撃しないで下さいね」
「引きつけてって……あの中に入るの!?そんな危ないことさせられないよ、ミオ!」
ミオが炎帝ロック鳥に乗ろうとしていると、レオポールが慌ててミオの腕をつかんだ。
「大丈夫ですよ、前にここには入ってるので。たぶん、あの魔物達は私のこと覚えてますから」
「いやいや、魔物が人間のことを覚えるとかないからね!?」
「まぁ、ここでこうしててもどうにもならないしさ、俺が一緒に行って来るからレオポール達は待っててよ。コルトもここで待っててね」
「え、ラウルさんも一緒に来るの?」
「だってさぁ、やっぱ1人じゃあ危険だよ」
「うーん……大丈夫だと思うんだけどな……じゃあ、行こうか」
ミオとラウルは炎帝ロック鳥の背中に乗り、城壁の向こう側に集まった魔物達の中へと降りて行った。
魔物達は、降りて来た炎帝ロック鳥をジーッと見つめると、炎帝ロック鳥を追って森の奥へと移動を始めた。
「お、ついて来たよ」
「この炎帝ロック鳥、ここで契約した魔物だし、仲間だと思ってるんじゃない?」
「ミオちゃん、魔物に仲間意識ないからね?」
「え、そうなの?」
まぁ、魔物達がミオ達のことを追って来るならそれでいい。
森の奥まで進んで行くと、シャトロワ王国側からも魔物達が集まって来て、ミオは炎帝ロック鳥を地面へと降ろすと、背中から降りて魔物達の中に立った。
そして、カバンからステッキを取り出すと深呼吸をして、魔力強化魔法を自分にかけて胸の前で手を組み、詠唱を始めた。
「光の精霊よ、我が祈りに癒しの力を。我が名はミオ、ホーリーヒール」
ミオの体から放たれた光が、周囲に集まった魔物達を包み込んでいき……凶暴化して攻撃的になっていた魔物達から、荒々しさが消えていった。
負傷した魔物達の傷も癒され、魔物達は普段と変わらない状態へと戻り、森の中に散らばって行った。
「この辺りはこれでいいかな」
「へぇー、本当にヒールで癒せるんだ。やっぱり凄いよね、ミオちゃんって」
「別に凄くないよ。北の方も行ってみようか、向こうにも魔物はいるだろうし」
「え、ここ全体の魔物を癒しに行くの?」
「全部は無理だろうけど……行ける範囲でね」
こうして移動しながら魔物達を癒していき、ポーションがなくなると城壁へと戻って行った。
城壁では、なかなか戻って来ないミオとラウルに、何かあったのではないかと騎士や魔導師達が慌てふためいていて……ミオ達が戻ると、レオポールがカミーユに連絡をしているところだった。
「ミオ!お前は……あまり皆を心配させるんじゃない!」
「え……えーと……ごめんなさい」
あれ、私怒られるようなことしましたか?
ミオが戸惑いながらカミーユとの通信を切ってクリスタルをレオポールに渡すと、レオポールがすまなそうに頭を下げて来た。
「なんか……ごめんなミオ。師団長に怒られちゃって」
「いえ、大丈夫ですよレオポールさん」
「それじゃあ、魔物達も落ち着いたことだし、俺達は帰ろうか」
「うん、そうだね……あ、急がないと食堂がしまっちゃう!」
「それは大変だ!」
ミオ達は炎帝ロック鳥の背中に乗ると、メーヌの森を後にして王都へと戻って行った。
とんでもない速さで往復してくれた炎帝ロック鳥に、礼を言いながら首と辺りを撫でてあげると、ミオ達は食堂に向かって走った。
間に合いますように!
食堂にはまだ明かりが灯っていて、どうやら間に合ったようで安心した。
「ギリギリセーフ!」
「アウトだよ」
「えっ!?」
間に合ったかと思っていたらスージーにアウトと言われ、嘘でしょ!?と思いながらスージーの方を振り向くと、笑いながらスージーがミオの頭に手を乗せた。
「冗談だよ。魔物の討伐に、メーヌの森まで行ってたんだって?そりゃあお疲れ様だったねぇ。ほら、食事を運んであげるから座りな」
「ありがとうございます、スージーさん!」
ミオは安堵のため息をつきながら、シャルルとカミーユの姿を見つけて隣に座った。
ラウルとコルトも同席する。
「お疲れ様、ミオ。ラウルとコルトもな」
「随分と帰ってくるのが早かったな」
「炎帝ロック鳥は優秀なんですよ」
「俺も驚いたよ。まさかこんなに早く往復できるなんて思わなかったしねー」
「魔物達はどうだった?」
「だいたい癒してきましたよ」
「癒しただと?討伐したんじゃないのか?」
「だって……あの魔物達って、ペリグレット王国を守ってくれてる魔物達じゃないですか」
ミオの言葉に、顔を見合わせながら首を傾げるシャルルとカミーユ。
ラウルとコルトも良くわからないというような顔でミオを見た。
「ミオ、魔物達が王国を守っているとは、どういうことだ?」
「あの魔物達って、この王国を守っている4体の竜を連れて来た魔導師が放った魔物ですよね?陸続きの他国からの侵攻を防ぐために放たれてるんだから、この王国を守ってくれてるってことですよ」
「ちょっと待て、あの竜は元々ここにいたんじゃないのか?それに、魔導師が魔物を放っただと?」
「え……知らないんです?」
「知らないな」
「私も初めて聞いたよ」
なんと、竜が何故この王国を守っているのかも、何故王国の東側に魔物が放たれているのかも、シャルルとカミーユは知らないようだった。
「むかーし昔、ある魔導師が4体の竜を連れてここにやって来て、ここを安住の地にしようとしたんですけど、ある時他国が攻めて来たのを竜とともに撃退したんですよ。それで、4体の竜を東西南北に配置して守りを固めて、東側からは誰も入って来られないように魔物を放ってこの王国を守ることにしたんです。母の日記に書いてありました」
「そうなのか、驚いたな」
「何で学校でも習わないんだ?こんな大事そうなこと」
「え、もしかして誰も知らないんです?」
「知らないと思うよ」
「そうだな」
「何でですか!?」
後日、父親である国王にも聞いてみたけれど、やっぱり知らないと言われた。
これ、けっこう重要な出来事だと思うのですが?
せめて、王国を守る騎士団や魔導師団の皆は、知っておいた方がいいことだと思うのですが?
そもそも、何で母はこのことを父に教えなかったんだ?
自分の母親とはいえ、何故こんなに大切なことを誰にも知らせていなかったのかは、ミオにも理解しがたいことだった。
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