表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
最終章 魔王と異世界生活
114/132

103 人が作り出す闇と光

のんびり更新中♪

 騎士団の宿舎には談話室というものがあるらしい。

 考えてみれば、ここにはたくさんの人が住んでいるのだから、談話室くらいあるのが普通だろう。

 一般の家にだって家族団らんの部屋があるものだ。


「師団長」

「何だ?」

「なんで魔導師団の宿舎には談話室がないんです?」

「何言ってんだ?談話室くらいあるだろうが」

「……え?」

「何だ、お前知らなかったのか?」


 なんと、魔導師団の宿舎にもちゃんと談話室というものが存在した。

 ミオがここに来てから今まで、談話室を使う程魔導師の人数が潤ったことがなかったから、全く活用されていなかったらしい。

 確かに……日中全員で顔を合わせていることも多かったし、用があってもわざわざ談話室など利用する必要はなく、部屋に行けば済む話だった。

 今は、ラウル達が来て魔導師の人数も増えており、普通に談話室が使われているとカミーユに教えられた。

 マジですか……

 その日の夜にミオが談話室に行ってみると……本当に皆が集まって賑わっていた。


「あれ?ミオちゃんじゃん!珍しいね、ここに来るの!」

「うん……今日ここのこと教えてもらったし……」

「え、マジで!?」

「ミオ、談話室知らなかったの?」


 談話室のことを知らなかったと言うミオに驚くラウルとレオポール。

 逆に、何でラウルが知ってるんだ?

 こうして、無事に?談話室デビューしたミオだった。

 ミオが時々談話室を訪れるようになったことで、あまり多くは話す機会もなかったルシヨットの魔導師達とも親睦を深めることができて、何となくあった距離感が縮まったことがとても嬉しく思えた。

 やっぱり人とのコミュニケーションって大切だな。

 ただ、さすがに他国の王女ということもあって、ラウルのように「ミオ」と気さくに呼んでくれる魔導師はおらず、コルトとディナール以外の魔導師は皆ミオのことを「ミオ様」と呼んだ。

 まぁ、仕方がないことだけれど。

 そう考えると、他国の王様を「ラウル」と呼び捨てにしているペリグレット王国の魔導師達はどうなんだ?






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「うーん……なんだろうなぁ……」


 ミオは、携帯の画面を見ながらベッドの上でゴロゴロしていた。

 携帯の画面に表示されているのは、前にミオが写真に撮っておいた黒ローブ達の調書だ。

 こないだエリアスが言っていた、シャトロワ王国で捕らえた黒ローブが口にしていたという「あのお方」というのが気になるのだ。

 ペリグレット王国で捕らえた黒ローブ達は「総裁」を崇拝しているかのような発言ばかりで、ミオが気になった調書にあった「あのお方」も総裁のことを指しているのかと思っていた。

 でも、シャトロワ王国の黒ローブ達の「あのお方」が、総裁ではないことは明らかだ。

 総裁は発見した時には既に死亡していたし、今でも「あのお方」などと呼ばれる理由はないように思える。

 それならば、「あのお方」とは誰のことなのか?


 ミオが考えがまとまらずに枕に顔を押し付けていると、部屋のドアがノックされた。

 ベッドから起き上がってドアを開けると、そこにいたのはショウだった。


「どうしたんです?」

「ちょっとゲームさせろよ」

「え?あ、ちょっとショウさん!?」


 ミオが許可する前にズカズカと部屋に入って来るショウ。

 ショウは部屋の中央まで入って行くと、初めて入るミオの部屋をキョロキョロと見回した。


「へぇ、ここがお前の部屋か。王女のわりに普通の部屋だな」

「当たり前ですよ、ここは魔導師団の宿舎なんですから」

「確かに」


 ベッドにどっかりと座ってショウはミオを見上げた。


「対戦しようぜ」

「それなら、談話室にでも持って行ってラウルさんとかとした方がいいですよ?私、ゲームはへたくそですし」

「俺はあーいう場所は苦手なんだよ」

「コミュ障ですか?」

「だったらお前に声なんかかけてねぇっての」

「あー、それもそうですね」


 ミオはゲーム機を1台ショウに渡した。

 ショウは受け取ると、慣れた手つきでゲームを選択して始めた。


「これさ、最初からやり直してもいいか?お前のキャラ、育成が全然駄目なんだよ」

「別にいいですよ?私よくわからないまま進めてたんで」

「攻略とか見てねぇのか?」

「見ても良くわからなかったんですよ」

「……楽しめてたのか?それ」

「映像はキレイですし、ストーリーは好きです。でも、途中から攻略できなくなってしまって……」

「途中からってほど進んでねぇけどな」

「……あはは」


 まだ中盤にも進んでいないのに、ミオの頭ではどうすればいいのかがわからなくて、敵が倒せずに詰んでいたゲームだ。

 こうしてちゃんと攻略してくれる人が現れたことは、このゲームにとっても喜ばしいことだろう。

 ショウはゲームをリセットすると、新たにゲームを始めた。


「え、女性キャラでやるんです?」

「このゲームは女の方がいい装備出来んだよ」

「そうなんですか?」

「お、こうするとお前にそっくりじゃね?」

「……似てませんよ」

「髪の色くらいは変えてみるか……よし、これで決定な。名前はミオでいいか?」

「ダメですよ!」


 自分そっくりに作られた上に名前も同じでたまるか!

 ミオではない名前に決定して、新たなゲームが始まった。

 黙々と序盤のゲームを進めていくショウに、ミオはどうしたものかと思いながら、隣で画面を眺めていた。


「なぁ」

「はい?」

「お前、学生だったのか?こっち来た時」

「働いて2年目になってすぐですよ」

「マジで!?ってことは俺の1つ下かよ!?何の仕事してたんだ?」

「システムエンジニアを目指してましたけど、まだプログラマー見習いのような感じでした。新人だったのでほとんど先輩の雑用ばかりでしたけど……2年目になって、ようやくプログラミングの仕事をもらっのに、すぐにこっちに来てしまいました」

「すげーな、お前」

「凄くはないですよ」


 よく雑談しながらゲームができるなと感心してしまう。

 ゲームする時って皆こんな感じなのか?

 ただ、戦闘に入るとゲームに集中するらしく、雑談は中断されるようだった。


「お前の会社はどうだった?やっぱブラックだったりしたのか?」

「うーん……ブラックと言えばブラックでしたけど……ほとんど毎日深夜に帰ってたし。でも、会社がって言うよりは、先輩が……って感じですかね」

「あー、いるよなぁ、嫌な上司」

「終わるのが深夜になる理由が、先輩が押し付けて帰る仕事のせいでしたから」

「嫌な奴じゃねぇか」

「嫌な奴でしたよ」

「よく辞めなかったな」

「他はいい人でしたし、まだ2年目でしたから」

「へぇー、そうなのか」

「ショウさんも働いてたんです?」

「当たり前だ。俺のことを何だと思ってんだよ」


 ショウは何と営業職だったらしい。

 こんな言葉遣いなのによく営業に出れたなこの人。

 ミオの中では営業ってとても大変な仕事のイメージがあり、会社によっては厳しいノルマがあると聞いたことがある。

 偏見かもしれないけれど、ブラック中のブラックな職種だとミオは思っていた。

 ショウが勤めていた会社は、ミオが思っていたよりも過酷な労働環境だったようで、職場内での虐めなどもあったらしい。

 大人になっても虐めとか……などと思っていたら、案外大人の虐めは多いのだとショウは話していた。

 そんなに大変な労働環境なら、何ですぐに辞めて労基などに連絡しなかったのかと疑問だったけれど、簡単には辞められないシステムになっていたのだとか。

 どんなシステムだ!?恐ろしい……

 そんな過酷な日々を過ごし、耐えられずに自殺をしたのだとショウは語った。

 これが、ショウが抱える心の闇なのか……と思ったら、それだけではなかった。

 中学と高校で、在籍中ずっとではなかったけれど虐めを受けた時期があったらしい。

 そのため、不登校だったことも……


「ショウさん……」

「んな顔すんなって。俺はこうして転生して来れて良かったと思ってるし、それに……あの世界のことを知っているお前がいて良かったと思ってる。知らない奴に話したところで伝わらねぇしな」


 ショウの気持ちを理解するなどという無責任なことは言えないけれど、話を聞いてあげることくらいは出来る。

 少しでもショウの気持ちに寄り添うことで、ショウが抱える闇に光を照らしてあげられたらいいなと思うミオだった。


「あれ、何ですかそのイベント」

「はぁ?知らねぇってことは……だからこれのクリア報酬持ってなかったのかよ!」

「え、そんなに凄いものが貰えるんです?」

「ここで貰っとかねぇと、この先がめちゃくちゃキツイんだよ!」

「なるほど。だから進めなかったんですね、私」

「あー、それは別問題」

「えー」






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 激しく吹雪が吹き付ける中、黒ローブを羽織った1人の人物が険しい山道を進んで行く。

 ここは、閉ざされた町。

 共にここに来た仲間達の姿はここにはない。

 途中で意見がわかれ行動を別にした者、ここに来る途中ではぐれてしまった者、体力の限界を迎えて息絶えてしまった者……

 この過酷な環境の中を、何故1人になってまで進み続けるのだろうか?

 彼の目的は……


 この世界を混沌に陥れ、自分を虐げて来た人間に復讐を

 そして、この世界は我々の手によって新しく創られるのだ


 黒ローブの組織には、人々に対する復讐心を持つ者や、悪意に満ちた支配欲の塊のような者、自分の境遇に絶望し生きることを諦めてしまった者、この世界の未来に光を見出すことが出来ない者などが集まり、全員が共通して心に闇を抱えていた。

 彼らが目指すのはただ1つ。


 この世界を滅ぼし、自分達の理想の世界を創ること


 そのために、黒ローブの組織は魔王の封印を解こうとしているのだった。

 彼らは数十年という長い年月を費やして魔王の封印について調べて来た。

 そして、遂に封印の解除方法を見出したのだ。

 その後、失敗を繰り返しながらようやくここまで来た。

 あとは魔王が封印されている場所を見つけ出し、解除に必要なものを運ぶだけだ。


 彼は険しい雪山を登る。

 頂上まであとどれくらいだろうか?

 おそらく、魔王が封印されているのはこの先にある頂上だ、間違いない。


「俺を呼ぶ声がする。間違いない、この先にあのお方……魔王が封印されている。長かった暗黒が、これで終わる」


 激しく吹き荒れる吹雪の中で、彼の顔には笑みが浮かんでいた……


 こうして、遂に山頂まで辿り着いた彼は、岩山に掘られている洞窟を見つけた。

 この中か?

 洞窟の中へと足を踏み入れて、真っ暗な闇の中に光を灯して奥に進んで行くと……双三角錐の形をした、黒紫色の光を放ちながら浮かぶものを見つけた。


「これが……魔王?魔王にしては小さいように感じるが……封印されているのは魔王ではないのか?」


 黒ローブの者がその黒紫色の双三角錐に向かって手を伸ばした時、放たれていた光が彼を包み込んだ。




 ―――足りぬ……闇が足りぬ……まぁ、良い、何れ闇はここを訪れるだろう……この核を取り込み、その体が耐えられたのならば、しばし眠りに落ちて待つが良い……間もなく訪れる、目醒めの時を……



 .

お読みいただきありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ