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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
最終章 魔王と異世界生活
112/132

101 闇を抱えた転生者

のんびり更新中♪

「範囲が広すぎるからムリ」

「やっぱり?」


 メーヌの森の東側に広がる、上級の魔物達が放たれている場所も結界で囲うことが出来ないかとラウルに相談したところ、無理だと即答されてしまった。

 ペリグレット王国の半分、もしかしたら半分以上の面積があるエリアなので、無理だと言われても仕方がない。


「そういえば、私まだ見たことなかったですけど、東側の国境ってどうなってるんです?」

「城壁で仕切られてる」

「今まで魔物が侵入してきたことってないんです?」

「聞いたことがないな」

「結界で守られているとか?」

「城壁だけだ」

「凄い城壁ですね」


 大昔に魔物を放った魔導師が、何か対策を講じていたのだろうか?

 城壁で地上の魔物達の侵入を防げたとしても、空を飛ぶ魔物は防げないだろう。


「もしも魔物達が凶暴化して王国内に侵入して来そうなら、城壁の上で結界を張るなりして防ぐしかないと思うよ」

「シャトロワ王国側は、向こうで対処してもらう感じ?」

「そうなるね。てゆーか、向こうも城壁とかあるんじゃないの?」

「あ、そっか」


 シャトロワ王国だって国境なわけだから、城壁くらいあるだろう。

 エリアスに確認してみると、やはり城壁で仕切られているらしく、時々立ち入ってしまう人間がいて、そのたびに魔物が攻め込んでいると話していた。

 シャトロワ王国でも全体に結界を張ることは難しいので、結界を張りつつ、結界を張れない場所には門番を配置して警戒に当たっているようだ。

 ペリグレット王国では何もしていないのかと驚かれてしまった。


「人がたくさんいるって羨ましいですね」

「それを言うな」


 訓練場での魔物との戦闘訓練の準備が整い、ミオは魔物を召喚するために降りて行くと、強化された魔物達を召喚して訓練を開始した。

 いつもなら魔物達が少なくなってからリヴァイアサンを召喚していたのだけれど、今日は訓練が始まって少しすると、こっそりリヴァイアサンを召喚させて戻って来た。

 リヴァイアサンに気がついた騎士や魔導師達がパニックになっている。

 今日は、リシャールやレオポールにも戻って来てもらって訓練に参加してもらっているため、ルシヨット魔導国の魔導師は参加していない。


「お前……悪魔みたいな奴だな」

「だって、もしかしたらこんな状況になるかもしれないじゃないですか。てゆーか、悪魔って酷くないです?」

「リヴァイアサンじゃなくて、もう少し弱いサンドワームとか出せないのか?」

「あれは見た目が好きじゃないんで契約してません」

「あのな」

「最近、フェンリルも契約しましたけど、召喚してみます?」

「やめろ!」

「とっても賢い子なんですよ?」

「ミオちゃんって、ホント凄いよねー。もしかして、フェンリルも手懐けちゃってるとか?」

「お手とかするよ」

「えー、見てみたいなぁ」

「いいよ」


 その場でフェンリルを召喚すると、訓練場の騎士や魔導師達がさらにパニックになった。

 安心してください、フェンリルは戦いませんので。

 ミオはフェンリルをその場に座らせると、お手や伏せを披露した。

 その後は、伏せたフェンリルにラウルと並んで寄りかかり、まるでVIP席にでも座っているような気分で、魔物との戦闘訓練を眺めていた。


「フェンリルの毛って、想像していたのと違ってモフモフで驚いたのよね」

「ホントだねー」

「師団長も寄りかかってみます?気持ちいいですよ?」

「俺はいい」






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 午前中の訓練を終えて、ミオ達は食堂で昼食を食べていた。


「そういえば、もしも魔王の封印が解かれた場合、町の人達ってどこに避難するんです?」

「それぞれの町の集会場だな」

「建物くらいなら結界を張れるから、手分けして結界を張りに行くよ」

「でも、結界張れる人って限られるんじゃ……」

「俺が連れて来た魔導師は、皆結界張れるよ」

「え、凄くない?」

「ミオ、残念ながらここの魔導師団が少なすぎるだけだ」

「……残念ですね」


 小さな村などは集会場がない場所もあるけれど、そういう場合はだいたい村長の家に集まるらしい。

 全部の町や村を回るのは容易ではないけれど、出来る限り王国民の命は守りたいと思う。

 やっぱり、転移魔法を早く確立させてほしいものだ。


「魔王の魔力によって凶暴化する魔物って、操られているとか、状態異常みたいな状態ってことなんです?」

「違うと思うぞ。興奮状態って表現が近いんじゃないか?」

「たぶん、そうだろうね」

「だったら、ヒールで癒せるんじゃ……王国全体ヒールとかないですかね?」

「あるわけないだろうが」

「そんな魔法使えたとしたら神様だよ」

「ですよね……」


 そんな都合の良い魔法などあるわけがない。

 小説の中だって、そこまで凄い魔法なんてないだろう。


「師団長」

「どうした?」


 ミオ達よりも少し遅れて、コルトとショウが食堂にやって来て並んで座った。


「そろそろ箒を作らせてもいいかと思うんで、午後にモンフォワールで材料買って来てもいいです?」

「わかった。悪いな、任せっぱなしで」

「いいですよ。それじゃあ、昼食食べたら行って来ます」

「良かったですね、ショウさん」

「あぁ。箒作るのって難しいのか?」

「どうなんでしょう?私、作ったことないんで」

「お前も箒持ってんだろうが」

「これは、母が使ってた箒なので」

「そういや、お前の母親はここの王女様ってことになるのか?会ったことねぇな」

「私の母は、5年前……あー、もう6年前になるのかな?電車の事故で亡くなってるんで、ここにはいないですよ」

「……そりゃあ、悪いこと聞いちまったな」

「大丈夫ですよ、皆知ってることなので」


 一応、こういうことは気にする人なんだなと思った。

 とりあえず、箒が作れるほど魔力操作が出来るようになったということで、コルトには本当に感謝する。

 でも、ショウはミオが箒に乗せた時に怖がっていたんだったな、大丈夫なのだろうか?

 ロック鳥で空を飛んだ時には怖がっていなかったので、高所恐怖症ということでもなさそうだった。

 箒も、後ろに乗るのと自分で操作するのでは違うのかもしれないから、心配しなくても大丈夫だろう。


「お前も一緒に来いよ」

「え、何でですか」

「男2人で買い物ってのもなぁ」

「別にいいと思いますけど?」

「だったら、俺が一緒に行って来るよー。俺、箒の材料売ってる店も知ってるし」

「そういえばそうだったね。お願いするよ、ラウルさん」

「何でだよ!俺はミオと一緒に行きたかったんだっての!」

「煩い。いいから3人で行って来い」


 何だかんだと言っていたショウだったけれど、昼食を食べ終えるとラウルやコルトと一緒に出かけて行った。

 そして、ミオとカミーユは午後の訓練をするために、訓練場へと向かった。

 午後の訓練では、リヴァイアサンは召喚しなかったけれど、魔物に囲まれることもあるかもしれないなと思い、魔物との戦闘が始まって少しすると、ミオは反対側からも魔物を召喚してみた。

 魔物に囲まれた騎士や魔導師達は当然のことながらパニックに陥っていたけれど……こんなこともある、頑張れ。


「地獄のようだな……」

「本番はきっとあれよりも地獄ですよ」

「まぁ、そうだろうがな……それよりも、ショウのことはラウルから何か聞いてるか?」

「ラウルさんからですか?特に何も聞いてないですけど」

「ラウル的には、ショウは闇を抱えてそうだって話だ。俺にはよくわからんが」

「闇ですか?」

「闇を抱えている人間は、魔王の魔力に飲み込まれやすいから注意しろだとさ」

「なるほど……ラウルさんの言いたいことはわかるような気がします。ショウさんが闇を抱えてるかはわからないですけど」

「アイツ、お前の世界ではどんな奴だったんだ?」

「向こうの世界でショウさんに会ったことはないし、どんな人だったのかは知りませんけど……自殺して転生して来たって言ってたんで、それなりに辛いことはあったんだと思いますよ?」

「自殺だと?」

「私がいた世界……というか、私がいた国は平和ではありましたけど、ストレス社会でもあったんですよ。自殺する人はたくさんいましたから」

「自殺とか……どんな世界だよ」


 そういえば、こっちの世界で自殺とか聞いたことがない。

 黒ローブが自害したことはまた別の問題だ。

 人間、生きていればそれなりのストレスはあるだろうけれど、こっちのストレスと元の世界のストレスは性質が違いすぎる。

 平和な世界だったとはいえ、あのストレス社会の中で生きていくというのは、とても辛いことに思える。

 このストレス社会については、実際に経験してもらわないと、口で説明しただけでは伝わらないだろう。

 ショウが自殺したということは、それだけの理由があったということだ。

 転生して来たとして、闇を抱えていてもおかしくはない。


「闇を抱えてるから、得意な属性が闇属性なんです?」

「アルバンも闇属性が得意だが、アイツは闇なんか抱えてないぞ」

「あ、そうですね」

「とにかく、お前もショウのことは気にかけておけ」

「わかりました」


 まさかの闇落ちキャラだったりするんだろうか?

 魔王の封印が解除される前に、魔王の魔力干渉を防ぐ結界で囲っておきたいと思うミオだった。


 訓練場の方では、粗方魔物達が討伐されているようだった。

 戦力はかなり上がってきたように見える。

 ミオは訓練場に降りて行って副師団長のシリルに声をかけた。


「ルヴィエ副団長、お疲れ様です」

「お疲れ様です、ミオ様」

「だいぶ戦力上がって来たんで、全力で強化した魔物と戦ってみます?」

「さすがに今日は皆も疲れ切っているし、やるなら明日からでお願いします」

「そ、そうですね……とりあえず皆さんを回復しますね」


 地面にゴロゴロと寝転がっている騎士や魔導師達をヒールで回復するミオ。

 やっぱり、戦いながらでも簡単に飲めるように、ポーションをタブレットにしてもらいたいなと本気で考えてしまう。

 液体ってどうやってタブレットに変えるんだろう?


「ミオは見てるばっかで暇だったろ?2人で対戦したらどうだ?」

「2人でって……え、師団長とですか!?」


 リシャールがニヤリと笑いながら言ってきた。

 何故にカミーユと!?


「いやいや、私は別に暇だったわけでは……」

「師団長~!」

「あ、ちょっとリシャールさん!?」

「見ているだけで退屈だったでしょうし、ミオと戦ってみてくださいよ!」

「はぁ?何で俺が」

「お、それいいですね。見たいです、2人が戦ってるとこ」


 こうして、何故かミオとカミーユが対戦することになってしまった。

 訓練場の中央で向かい合って立つ2人。


「はぁ……ったく、何でこんなことに」

「私も聞きたいです……」

「さっさと終わらせるぞ」

「はい……じゃあ、私はフェンリルで戦いますね!」

「はぁ?オイ、ちょっと待て!」


 ミオはフェンリルを召喚すると、背中に乗って強化魔法を唱えた。

 青ざめるカミーユ。

 こうして、フェンリル&ミオvsカミーユの戦いが始まり、見ている騎士や魔導師達が盛り上がった。


「ミオ!これじゃあ、2対1だろうが!」

「師団長と戦うんですから、これくらいのハンデは必要ですよ!」

「お前の方が魔導師の階級は上だろうが!」

「それは……置いといてください」

「置いとけるか!」


 フェンリルが吐き出す紫色の炎や、ミオの攻撃から必死に逃げるカミーユ。

 カミーユの攻撃は全てミオのシールドで防がれてしまい、カミーユに攻撃の術がない。

 こうして、ミオとカミーユの戦いはミオの勝利で幕を閉じた。


「……疲れ果てた」

「フェンリル、なかなか強かったですね。今度からはリヴァイアサンとフェンリルの2体で行きましょうか、戦闘訓練」

「「「やめろ!」」」


 ちょうど、ミオとカミーユの戦いの勝敗がついたところに、モンフォワールへと買い物に行っていたラウル達が帰って来た。

 ミオとカミーユの戦いが見れなかったことをとても残念がる3人。


「もっかい戦ってよー」

「嫌だ」

「俺も見たかったな、ミオちゃんが戦ってるとこ」

「俺も戦いてぇ!」

「お前、まだ懲りてないの?凄いな」

「よし、だったらミオとショウで戦ってみろ」

「いやいや、師団長……」


 こうして、今度はミオとショウが戦うことになったのだけれど……フェンリルと戦いたいというので召喚すると、一瞬でフェンリルの紫色の炎に包み込まれて丸焦げになったショウの敗北で終わった。

 あっという間の対戦だった……何だコレ。


 闇を抱えた人間は、闇に落ちてしまいやすい。

 闇に落ちる前に、抱え込んだ闇を解放させてあげるには、どうしたらいいのだろうか……



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お読みいただきありがとうございました!

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