100 暗躍する黒ローブの目的は?
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様々な国で、奴隷が殺される事件が起きていた。
どの事件も、人目につかないような場所で奴隷が殺されていて、やせ細った姿で発見されていた。
いったい、どういうことだ?
とある国で、たまたま殺害現場を目撃した者が現れた。
その人物は、見つかれば自分も殺される……そう思い、その場から犯人が立ち去るまで、必死に息を殺しながら隠れていたらしい。
その人物の証言によると、奴隷を殺した者は黒いローブを身につけており、殺した後に黒くて小さな丸いガラス玉のようなものを死体に翳して、何かを吸い取っていたとのこと。
黒いローブの人物が立ち去ってから、恐る恐る死体に近寄って見ると……死体はとてもやせ細っていた。
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「コルトさん、どうです?ショウさんは」
「やぁ、ミオちゃん。まぁまぁ、魔力操作上達して来てるよ。少しずつ攻撃魔法も使えるようになってるし」
「そうなんですね、ありがとうございます」
ショウは訓練場の的の前に立って、闇属性の攻撃魔法、メテオの練習をしていた。
メテオ……なんか響きがカッコイイな。
「私も闇属性の魔法、練習しようかな」
「ミオちゃんが闇属性使ったら、この世界が滅びそうで怖いんだけど」
「私、そんな悪人じゃないですよ!」
「悪人とかじゃなくて、魔力的にってこと」
闇属性はミオの得意属性ではないので、そこまでの威力は出ないのでは?などと思っていたけれど、ミオは特級魔導師なのだからそれなりに威力はあるし、いろいろと想定外のことが起こるから、絶対に何かやらかすとコルトに言われてしまった。
やらかすって何だ、やらかすって。
この世界では、闇属性魔法はあるけれど使える人は少ないらしく、とても強力な魔法故に習得するのが難しいのだとか。
だから、闇属性が得意属性だとしても、使いこなすことは困難なのだとコルトが説明してくれた。
そんな魔法を使えているアルバンは、やっぱり凄い魔導師なのだと思う。
ショウも、どれくらい使いこなせるようになるのかはわからないけれど、チート能力を持って転生して来るという異世界あるあるのないこの世界において、ある意味異世界特典なのかもしれない。
また、精神操作系の魔法も闇属性なのだそうだけれど、あまりにも危険な魔法のため禁忌魔法とされていて、魔導書はすべてルグミアン王国の書庫で厳重に管理されているらしい。
「そういえば、杖ってどうなんです?」
「あれは中級魔導師になってからじゃないと作れないから、今は無理」
「ふぅん、そうなんですね」
「もう少し魔力操作が上達したら、箒の作り方を教えるって言ってあるよ」
「なるほど」
「召喚魔法についてはまだ諦めてなさそうだけど」
「そ、そうなんですね」
「状態異常魔法については、ちょっと俺じゃ教えられないから、魔導書で覚えてもらう感じかな」
「すみません、丸投げしてしまって……」
「ホントだよ!まぁ、いいけどね」
「でも、コルトさんとは上手くやれてるみたいで良かったです」
「一応、同い年みたいだからな」
「え、そうなんですか?」
年齢でというよりは、コルトの対応が大人なのだろうと思うけれど、とにかくショウがコルトに歯向かうこともなく訓練が出来ているようで良かった。
「そういえば、ディナールさんは?」
「あぁ、アイツとは合わないみたいだな」
「……そうなんですね。なんか……すみません」
「ミオちゃんが謝ることじゃないよ」
魔法が使えるようになっても、ショウは魔導師団で上手くやって行けるのだろうか……とても不安に思うミオだった。
「何だよ来てたのかミオ」
「良かったですね、少しずつ魔法が使えるようになって」
「ちょうどいい、対戦してみようぜ」
「えーと……私とショウさんがですか?」
「当たり前だろ」
「お前、ミオちゃんに戦いを挑むなんて、命知らずだな」
「うるせぇよ。ほら、行くぞミオ」
「えー……」
ショウに手を引かれて訓練場へと降りて行くミオ。
これ、どう戦えばいいんだ?
「手ぇ抜くんじゃねぇぞ」
「そう言われましても……」
「そんじゃ、行くぞ!」
対戦が始まった直後、ミオがスノーフロストを使いショウは首から下が氷漬けとなり、一瞬で勝敗がついた。
「ほらな。初心者が特級魔導師と勝負になるわけがないだろ」
「クソ、ここまで差があんのかよ」
「今日は魔物との戦闘訓練しないみたいだから、好きなだけここ使ってもいいですよ。頑張ってください」
「俺も早く魔物と戦いたいぜ」
「だったら、まずは箒を作れるくらい魔力操作が出来るようになるんだな」
「わかってんだよ、んなことは!つーか、早くこれ何とかしろよ」
「あ、すみません」
ショウを凍りつかせていた魔法を解除して、ミオはカミーユの所に向かった。
ルシヨット魔導国の魔導師が、騎士団と一緒に見回りに行ってくれているため、今日はミオはここで待機している。
ショウの訓練に付き合ってもいいのだけれど、まだ手伝えることもなさそうなので、コルトにお任せするのが良さそうだ。
ミオがカミーユのいる執務室に入ると、ミオのカバンの中でクリスタルが光っていることに気がついた。
エリアスからの通信だ。
「こんにちは、エリアス様」
「今、大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。何かありました?」
「少し、気になる報告を受けたのでな」
「気になる報告ですか?」
ミオがカミーユに目を向けると、カミーユも一緒に聞くためにソファーへと移動して来た。
「お前の王国では奴隷制度はなかったな」
「ありませんよ」
「それなら問題はないだろうが、一応お前にも報告をしておく」
「お願いします」
「多くの国で、奴隷が殺害されるという事件が起きている。しかも、殺された奴隷はどれもやせ細った姿で発見されている」
「え……奴隷が……ですか?」
「そうだ。ある国でたまたま殺害現場に居合わせた者がいたらしい。その者の報告で、奴隷を殺害した者は黒いローブを身につけていたようだ」
「黒いローブ……」
ペリグレット王国やシャトロワ王国を狙った黒ローブなのだろうか?
「その黒ローブの人物は、黒い小さなガラス玉のようなものを持っていたらしい。その黒いガラス玉を死体に向かって翳して何かを吸い取っていたそうだ。黒ローブが去った後に死体を確認すると、やはりやせ細っていたらしい」
「黒いガラス玉ですか……何でしょうね?それに、吸い取るって……何を吸い取ってるんです?」
「さぁな」
「……シャトロワ王国で王宮を襲おうとしていた黒ローブと同じ組織なんですか?」
「それはわからん」
「そういえば、捕らえた黒ローブ達からは何か聞き出せました?」
「いや、全員があのお方のためにだとか、もうすぐ目覚める、そんなことしか話さずに自害した」
「やっぱりそうなりましたか」
「やっぱり?どういうことだ?」
「私がこっちの世界に来た時に、黒ローブの組織が竜を操ってペリグレット王国を支配しようとしてたんですよ。その時に捕まえた黒ローブ達も、同じようなことを話してたんです」
「なるほどな」
「ちなみに、ペリグレット王国とシャトロワ王国を狙った黒ローブは同じ組織です」
「何だと?」
「シャトロワ王国で捕まえた黒ローブに、同じマークが入ってたんですよ」
「そういえば、あの時何かしていたな、お前」
「黒ローブ達は、その黒いガラス玉持ってなかったんです?」
「所持品は何もなかった」
奴隷を殺しているという黒ローブは、何故そのようなことをしているのだろうか?
それに、黒いガラス玉を使って何をしているのだろうか?
もしも、ペリグレット王国とシャトロワ王国を襲おうとしていた黒ローブと同じ組織なのであれば、魔王の封印とも関係しているかもしれない。
「ペリグレット王国に奴隷制度はないとはいえ、もしも前に王国を狙った組織と同じであれば、また狙われるかもしれない。十分に警戒しろ」
「わかりました」
エリアスとの通信を切り、クリスタルを見つめながら考える。
何か引っかかるような……何だ?
「せめて魔王の封印の解き方がわかれば、黒ローブとの関係もわかるかもしれないんだがなぁ」
「そうですね……氷竜は知ってるみたいでしたけど、教えてくれませんでしたよ」
「そうなのか!?」
「私が誰にも話さないって言っても、聞き出す方法はいくらでもあるからだそうです」
「なるほどな」
「それに、黒ローブがもしも魔王の封印を解こうとしているなら、この王国を狙ったのもつじつまが合うって言ってました」
「どういうことだ?」
「それは……わかりませんけど」
何だかわからないことが多すぎる。
魔王の封印が解かれて、新たな魔王が現れてしまうかもしれないというのに。
でも、今は黒ローブを王国内に侵入させないことが最優先だ。
「私、オルレーヌに行ってこのことを伝えて来ますね」
「待て待て、1人では駄目だ」
「緊急事態ですよ?」
「駄目だ。訓練場にコルトがいただろう?一緒に行って来い」
「……わかりました」
ミオはクリスタルをカバンにしまうと、箒を背負って訓練場へと向かった。
コルトに事情を説明して、ショウにはこのまま魔法の練習をしていてもらおうと思ったのだけれど、連れて行けと煩いので、悩んだ末連れて行くことにした。
ロック鳥を召喚して、3人で乗って移動する。
ネーオールの森を通過する際、湖の近くを通ると水竜が嫉妬してしまいそうなので、迂回してオルレーヌの門へと向かった。
「お疲れ様です」
「これはミオ様。今日はシャルル様とご一緒ではないのですか?」
「シャルルさんは見回りに行ってますよ。ジェラールさんいます?」
「隊長でしたら、門の上にいますのでお待ちください」
「あ、私が行くんで大丈夫ですよ。お忙しいでしょうし」
「とんでもないですよ!」
「こんにちは、ミオさん。今日はシャルルとは一緒ではないのだな」
ミオが門番の騎士と話していると、門の上でミオの姿を見ていたジェラールが降りて来て声をかけてきた。
「お疲れ様です、ジェラールさん。少し、ジェラールさんにご報告があって来たんですよ」
「私に?それなら、少し早いが昼食を食べながらというのはどうだ?」
「それじゃあ、そうしましょうか」
「1人、見ない顔がいるようだが?」
「最近魔導師団に入ったショウさんです。転生者さんなんですよ」
「それは驚いたな。私はここの騎士団の団長で、ジェラール・パトリエールだ」
「俺はショウ・ヤマモトだ、よろしくー」
「ショウさん、ジェラールさんはシャルルさんのお兄さんです」
「シャルルって……団長の?へぇ、そうなのか」
この人、誰に対してもため口だな……
ミオ達は、ジェラールに案内されて移動した。
ジェラールに案内されたのは、シャルルと初めてこの港町に来た時に連れて行ってもらった店だった。
あの時はケートスが現れて大変な目にあったな……そういえば、今もケートスが港にいるんだった。
「コルトさん、後で港を見てきてもいいです?」
「港?何かあるの?」
「ちょっとケートスの様子を見て来ようかなと」
「はぁ?ケートス?」
「ケートスってあれか?巨大なくじらの魔物」
「そうですよ」
「戦うのか?」
「違います」
料理を注文して、運ばれてくるまでの間に黒ローブのことをジェラールに報告した。
また黒ローブか……と、ジェラールが険しい表情になった。
その者達が常に黒ローブを羽織っているとも限らないため、取り締まるのはかなり困難らしい。
それもそうだ。
前に黒ローブ達が竜を狙っていた時には、いかにも怪しい者ですと言わんばかりに黒ローブを羽織って行動していたけれど、あの格好でこの門をくぐったら警戒されてしまう。
「港でも門でも警戒はするが……それに、黒いガラス玉とはどれくらいの大きさなのだ?」
「うーん……小さなガラス玉とは言ってましたけど、実際には見ていないので大きさまでは分からないです」
「所持品の確認も行うようにするが、大きさによっては容易に隠されてしまうだろうな」
「そうですね……出来る範囲でかまわないですよ。すみません、お忙しいのに」
「何を言っている。王国への不審者の侵入を防ぐのは、我々オルレーヌの騎士団の仕事だ。出来る限り厳重に取り締まりをする」
「ありがとうございます」
こうして報告が終わったところで料理が運ばれてきて、美味しい昼食でお腹も心も満たされて店を出た。
ミオが支払いをすると言ったものの、ジェラールがご馳走してくれて、深々と頭を下げてお礼を言う。
「港に行くんだったな、私も一緒に行こう」
「すみません、お仕事中なのに」
「これも仕事のうちだ。問題はないよ」
こうして4人で店の目の前の港に向かい、ミオが埠頭に立って海を眺めていると、遠くからケートスが近づいて来るのを感じた。
すると、海を眺めているミオの姿を見つけたシルヴィーが駆け寄って来た。
「やぁ、ミオちゃん!シャルルではなくてジェラールと一緒なのかね?」
「こんにちは、シルヴィーさん。今日はそうなんですよ」
コルトとショウにシルヴィーのことを紹介していると、海面からケートスが顔を出した。
驚くコルトとショウ。
「このケートス、ミオちゃんの言ったこときちんと守っていて偉いのだよ」
「それなら良かったです」
「ミオちゃん!?このケートスは!?」
「ルシヨット魔導国に行く時に、ケガを治してあげたら懐いてついて来ちゃったケートスですよ。とてもおりこうさんなんです」
「す、凄いねミオちゃんって」
「お前テイマーなのか?」
「テイムするってのとは違うみたいですよ?」
ミオが箒に乗ってケートスの傍に降りて行くと、ケートスが嬉しそうに顔を寄せて来たので、両手で撫でてあげた。
そして、ヒールで癒してあげるととても嬉しそうに声を上げて、ケートスはまた少し離れた場所へと戻って行った。
ミオがいない間も、時々船や港の傍まで寄って来ては顔を出して愛嬌を振りまいているようで、最近では港のマスコットキャラ的な存在になりつつあるらしい。
皆に可愛がってもらえるようになったらいいなと思う。
ミオがケートスと戯れている間に、ジェラリーが黒ローブのことをシルヴィーにも報告してくれたようで、港での検問は任せろとシルヴィーが胸を叩きながら言ってくれた。
この王国は大陸の端にあるけれど、入国できるのはこの港だけなので、入国者の検問がしやすい所が利点だろう。
陸続きなのに他国の侵攻を受けにくいのは、港からしか入れないからだ。
陸続き……あれ、メーヌの森の東側って、魔王の封印が解除されたらどうなるんだ?
「コルトさん、ちょっと急いで師団長に相談したいことがあるんで帰りましょう!」
「え、そうなの?それじゃあ、帰ろうか」
「シルヴィーさん、ジェラールさん、ありがとうございました」
「ミオちゃんも忙しいのだね。また遊びにおいで」
「気をつけて帰るのだぞ」
門まで歩いて移動すると時間がかかってしまうため、ミオは港でロック鳥を召喚して、街の外側を通るようにして王宮へと戻って行った。
ロック鳥を見るのが初めてではなかったジェラールは驚きもしていなかったけれど、初めて見たシルヴィーは、ジェラールの隣で目を見開きながら固まっていた。
緊急事態なので許してください。
「どうしたの?ミオちゃん」
「この王国の東側って、上級の魔物達が放たれてるんですよ。そのおかげで王国には港からじゃないと入れなくなってるんですけど……そのことをすっかり忘れてました。魔王の封印が解除されたら、東側がとんでもないことになってしまいます」
「マジか!?こないだの結界の所と同じように結界を張る?」
「どうなんでしょう?たぶん、この王国の半分くらいの広さじゃないかと思うんですけど」
「それだと、厳しいかもな」
「なぁ、俺にはさっぱりわかんねぇんだけど」
「えーとですね、この王国って大陸の最西端なんですけど、東側に大量の魔物がいるからそっちからは入れないんです。魔王の封印が解かれちゃうと、その魔物達が凶暴化するんで、この王国もシャトロワ王国も大変なことになるんじゃないかなって話です」
「俺には位置関係が全くわかんねぇよ」
「それは、図書室ででも調べてください」
このまま忘れていたらとんでもないことになるところだった。
対策が出来るのかはわからないけれど、とりあえず思い出した自分を褒めてあげよう。
ミオは王宮に向かって線速力でロック鳥を移動させた。
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