99 魔物に懐かれる体質です
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「そんなわけでヴィクシスさん、よろしくね!」
「マジっすか!?本当に俺でいいんすか!?頑張りますけど!」
魔王の封印が解除されてしまった時に、ミオが閉ざされた町に向かうことになっているけれど、その際にはヴィクシスが同行すると正式に決まったことを本人に伝えると、めちゃくちゃ驚いていた。
本当に解除されてしまうのかはわからないけれど、きちんと心の準備をして、しっかりと訓練を積んでおいてもらいたい。
きっと、魔力回復とか支援魔法は重要になると思う。
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―――
「なんだろう……壮観と言うか何と言うか」
「……とんでもない人数だな」
今日は、フェルドーやサンブリー、各領主のところに魔導師を派遣するため、ミオとカミーユ、シャルル達が引き連れて行くのだけれど……人数が人数なので、空中を大移動という感じになってしまう。
「これ、何か問題になったりしません?」
「地上の人間は驚くだろうな」
「出来るだけ、森の上を移動するようにしてはどうだろう?」
「そうしましょう」
サンブリーと、レヴィナス領、ラルゴス領にはカミーユとラウルが、フェルドーとロイヤー領にはミオとシャルルが向かい、残りのモルティエ領とシャルルの実家には明日行くことになった。
カミーユ達を見送って、ミオも出発の準備をした。
「ミオ……これは?」
「ロック鳥です。箒よりも乗り心地いいんですよ!」
ミオはロック鳥を召喚してシャルルと一緒に背中に乗り、魔導師達と一緒に王宮を出発した。
モンフォワールの上空を避けて、草原側を北に向かって飛ぶことにし、ミオはロック鳥を上手にコントロールしていく。
「ミオ様、ミオ様」
「え?」
ミオの隣に魔導師がやって来た。
「そのロック鳥って、召喚魔法なんです?」
「そうですよ」
「調教したのではなく?」
「ヒール使ったら懐いたんです」
「そうなんですね。私も今度やってみようかな」
「あー、でもラウルさんには、そんなわけないって言わましたけど」
「そうなんですか?うーん……でも、試してみます。ありがとうございました」
魔導師は皆の所に戻って行った。
なかなかに向上心のある魔導師だな。
「この魔物は、何人乗れるんだ?」
「こないだ3人乗りましたよ。4人だと……どうなんでしょうね?乗れなくもないかと思いますけど」
「数人で遠出するには便利だな」
「そうなんですよ!」
「私の母が乗りたがると思うぞ?」
「あー、そうかもしれませんね」
ミオとシャルルは、エミリーが乗りたがるのを想像すると、顔を見合わせて笑った。
ルシヨットの魔導師達のことを気にかけながら飛んでいたけれど、さすがは飛び慣れている魔導師達だ。
休憩の必要もなく、昼少し前にはロイヤー領に到着した。
領主への挨拶をしてフェルドーにも向かうため、少し早かったけれどロイヤー家がある町で昼食を食べることにした。
こうして、領主のロイヤーに挨拶に行き、ここに滞在する魔導師を騎士団の宿舎まで送り届けて、ミオ達はフェルドーへと向かった。
11月ということで、フェルドーには雪が降り積もり、すっかり冬景色となっていた。
1年の間で雪が消えるのはたった2ヵ月間だけれど、豪雪地帯という程の雪深さではないところは不思議に思うところだ。
この寒さに耐えられるかな、ルシヨットの魔導師達……などと思っていたら、ルシヨット魔導国も同じくらい雪が積もるので問題はないと言われた。
「嬢ちゃん……また凄い乗り物を手に入れたもんだな」
「お疲れ様です。とても乗り心地がいいんですよ、それに羽毛が暖かくてとても助かりました!」
ロック鳥、まさかの暖かい羽毛だった。
魔物とはいえ鳥なんだから羽毛なのは当たり前なのか?
箒だと上空を飛ぶのに寒いけれど、ロック鳥だととても暖かく移動が出来るという大発見だ。
なんて素晴らしい魔物だろうか!
魔導師達を第二騎士団の宿舎の中に案内し、団長であるランディに紹介すると、騎士達が空いている部屋へと案内してくれた。
気さくな騎士ばかりだし、今第二騎士団に派遣されているリシャールも話しやすい魔導師だし、特に問題はないだろう。
「それじゃあ、私はちょっと氷竜の所に行ってから帰りますね」
「気をつけて行けよ」
「大丈夫ですよ。雪兎が案内してくれるし」
「雪兎が?本当に凄い嬢ちゃんだな」
ミオとシャルルは宿舎を後にして、暖かいロック鳥に乗って氷竜のいるモンルトワ大雪原へと向かった。
雪兎が怖がりそうだし、雪原はロック鳥で進むのは無理かと思っていたけれど、雪兎がロック鳥を怖がることもなく。
ミオの膝の上に乗って来た雪兎を抱きながら、ミオとシャルルはそのままロック鳥に乗って、氷竜を呼び出す祭壇まで向かった。
―――また、随分と珍しいものに乗って来たものだな
暖かくて乗り心地もいいんですよ!
―――そうか。今日はどうしたのだ?魔王の封印はまだ解かれていないようだが
それなんですけど……封印が解かれた時に、この王国から竜が4体ともいなくなってしまうと、王国は滅んでしまうんじゃないかなと思うんです。やっぱり、守ってくれる竜がいないと……騎士団と魔導師団だけでは守りきれないんじゃないかと
―――確かにな、それはあり得ることだ
王国は守りたいです。でも、私は行かなければなりません。だから、何体か竜を残して行ってくれませんか?
―――そうだな……ならば、私と炎竜だけで向かうことにする
ありがとうございます
これで、王国の防衛力もかなり上がるだろう。
まぁ、残されるのが水竜と風竜というのが、少し不安なところではあるけれど……水竜は操られた時にあれだけ強かったんだし、風竜もルシヨット魔導国と戦った時に戦ってくれたし、きっと大丈夫だろう。
それから氷竜に、前に黒ローブがこの王国で竜を狙っていたことも魔王に関係しているのかを聞いてみたけれど、あの時は魔王の封印が解かれそうな兆候はなかったのでわからないと言われた。
ただ、無関係とも言い切れないらしい。
魔王の封印を解くために必要なものを手に入れるためと考えれば、黒ローブ達がこの王国を狙ったこともつじつまが合うのだそうだ。
魔王の封印を解くために必要なものは、いくらミオでも教えられないと言われた。
ミオが口外しないと言っても、それは絶対ではないからだ。
ミオの口から聞き出す方法などいくらでもある。
人間とは、賢い生き物なのだ……特に、闇に染まってしまう人間は。
「帰りましょうか」
「そうだな」
氷竜との話を終えて、ミオとシャルルは帰ることにした。
ロック鳥で王都まで飛んだら、余裕で夕食に間に合いそうだ。
本当に凄いなロック鳥!
「明日は、モルティエ領とシャルルさんの家ですね」
「母に泊って行けと言われそうだな」
「そうですねー」
「ミオが迷惑でなければ……泊ってもいいか?」
「私は迷惑だなんて思いませんよ。逆にいいんですか?いつも泊まらせて頂いてますけど」
「ふふ、問題ないよ。母はミオが大好きだからな」
「お母様はシャルルさんのことも大好きですよ」
シャルルの家には本当によく泊まらせてもらっている。
今年も舞踏会には招待されたし、それ以外でも顔を出すたびに泊って行けと言われて、時間がある時などは泊らせてもらっている。
こんなに泊まりに行って、本当に迷惑ではないのだろうかと心配になってしまうミオだった。
こうして翌日、モルティエ領に魔導師達を送り届け、オルレーヌへと向かったミオとシャルル。
魔導師達は停泊させている船で寝泊まりをすると言うので、ジェラリー達騎士団に紹介した後に、代表の魔導師を連れてパトリエール邸へと向かった。
ちょうどシルヴィーもいたので、シャルルの両親とシルヴィーに魔導師を紹介する。
「あらぁ、船で生活をするの?大変じゃないかしらぁ?」
「問題はございません」
「そう?それなら、差し入れを持って行くわね!」
「母上、あまりご迷惑はおかけしないで下さいね」
「あら、いやねぇ。迷惑なんてかけないわよ」
挨拶が終わると、魔導師は杖に乗って船に戻って行った。
案の定、エミリーに泊って行けと言われたので、ミオとシャルルは顔を見合わせて笑いながら、屋敷の中に入って部屋に荷物を置きに行き、リビングへと顔を出した。
「最近、港にケートスが顔を出すのだが……これも魔王が関係しているのかね?」
「ケートスがですか?街を襲ったりしているのですか?」
「いや、特に何の被害も出ていないよ。ただ顔を出すだけだ」
「凶暴化していないのであれば、関係はなさそうですが」
「明日、帰る前に見に行ってみましょうか?」
「そうだな」
また、港に迷い込んでしまったのだろうか?
暴れてはいないようなので、早急に対処しなければいけないということもなさそうだけれど。
翌日、朝食を頂いた後に、ミオとシャルルはシルヴィーと一緒に馬車で港へと向かい、よくケートスが顔を出す辺りに連れて行ってもらった。
その時にはケートスの気配は感じなかったけれど、ミオが水面を眺めていると、海の向こうから猛烈な勢いでこっちに向かって来るケートスの気配を感じた。
「あ……なんか、とんでもない速さでこっちに向かって来てますね」
「ケートスがかね?」
「はい」
盛大な水しぶきとともに現れるのかと思い、ミオはすぐに対応できるように構えて待っていたけれど、ケートスは直前で止まり、水面からひょっこりと顔を出した。
よく止まれたな、このケートス。
ケートスは、ミオの顔を見ると何だか嬉しそうに体を揺らしていた。
良く見るとこのケートス、右側のヒレの付け根の所にハートっぽい模様がついていた。
そういえば、ルシヨット魔導国に向かう途中に傷を治してあげたケートスにも、同じような模様があったことを思い出す。
「あ……」
「どうした?ミオ」
「このケートス、たぶんルシヨット魔導国に向かう途中で傷を治してあげたケートスですよ」
「あの時のケートスだと?」
「はい。右側のヒレの付け根に、ハートっぽい模様がありますもん。たぶん、あの時のケートスです」
ミオは箒に乗ってケートスの傍まで降りて行った。
ケートスが嬉しそうにミオに顔を寄せて、ミオは優しく撫でながらヒールで癒してあげた。
「だだだ、大丈夫なのかね?ミオちゃん」
「大丈夫ですよ、シルヴィーさん。この子、大人しいですから」
「シルヴィー兄さん、どういうわけかはわかりませんが、ミオは魔物に好かれるんですよ」
「本当に凄いな、ミオちゃんは」
ミオはシャルル達の所に戻ると、箒から降りて水面から顔を出しながらこっちを見ているケートスを見下ろした。
「あのケートス、ここにいたいみたいですよ?」
「街を襲ったりはしないのかね?」
「しないと思います」
「だが、ここは船の出入りがあるだろう?」
「そうなんですよね……」
ミオは、竜達とは話が出来るけれど、魔物とは話したことがない。
ケートスに言葉が通じるかはわからなかったけれど、一応声をかけてみた。
「ここにいたいならいてもいいけど、ここは船が出入りするから、ぶつかったりしないように気をつけるんだよ?邪魔にならないようにね」
ケートスは分かったと言わんばかりに体を揺らした。
ミオが「じゃあね」と手を振ると、ケートスは水中に潜って船の邪魔にならない場所へと移動したようだった。
「話が通じたみたいです」
「凄いねミオちゃん!」
「時々様子を見に来ますね」
「見回りの時にも来れそうだからな」
「あ、ケートスが寂しくないように、リヴァイアサンも置いて行きましょうか?」
「「それは絶対にやめてくれ!」」
こうして、オルレーヌでの用事も済んだので、ミオとシャルルは王宮に向かって出発する。
来る時は、ロック鳥に乗ってネーオールの森を避けて飛んだので、帰りは箒に乗って森を抜けて、水竜とも話をしていくことにした。
水竜は相変わらず元気そうで安心する。
見回りの騎士達とも遭遇したため、挨拶をして森を抜けた。
ネーオールの森からは王宮までそんなにかからないので、このまま箒で移動することにした。
「そういえば」
「どうかしたか?」
「こないだシャトロワ王国に行った時って、第二騎士団が護衛に来てくれたじゃないですか」
「そうだな」
「私、出かける時っていつもシャルルさんと一緒だったから、隣にシャルルさんがいないと落ち着かないと言うか……なんか、そんな感じで。いつもシャルルさんが傍にいてくれるとは限らないんですけどね」
「まぁ……そうだが」
「こうしてシャルルさんが隣にいてくれると、やっぱりとても安心すると言うか……シャルルさんの隣はとても居心地がいいです」
ミオがシャルルに顔を向けると、シャルルは一瞬驚いたような顔をしたけれど、すぐに優しく微笑んだ。
「私も、ミオの傍はとても居心地がいいよ。出来ることなら、ずっとこうして傍にいたいと思っている」
もしもこの会話をカミーユが聞いていたら、進展しない2人の関係にやきもきしていたことだろう。
シャルルの言動や行動は、案外わかりやすいのだけれど……
2人のことはさて置き、魔王の封印が解除された場合に向けて、王国を守り抜くために今出来ることはやった。
あとは、連絡を取り合いながら対処していき、魔王の封印を解除しようとしている者が捕らえられることを願うばかりだ。
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お読みいただきありがとうございました!




