94 隣国からの帰路
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エリアスの婚姻の儀の翌日に王都を観光したミオは、本日王宮を出発して馬車に揺られている。
捕まえた黒ローブ達は何も話さず、今も拷問が行われているらしい。
10人中何人かは自害したとか……黒ローブ、どんな組織なんだ?
何かわかったらエリアスが連絡をくれることになっているので、今は待つことにしよう。
ミオが乗る馬車には、来る時と同じように父親であるペリグレット国王と第二騎士団団長のランディが乗っていて、さらに魔物との戦いの場所で出会ったショウも乗っている。
馬車に乗り込む前にショウのことを父親とランディに紹介した。
まぁ、ランディには騎士達が報告していたため知っていたようだけれど。
「ショウさん、この人が私の父です」
「どうも、山本……じゃなくて、ショウ・ヤマモトです」
「ミオの父親、ペリグレット王国国王、エドワール・ペリグレットだ」
「そ、そうでしたね……ミオ……さんは国王様の娘さんでした、すみません」
「それと、こっちは第二騎士団のプーレ団長です」
「それは知ってる、騎士に紹介してもらったからな」
「あ、そうだったんですね」
「そういや、財布返すの忘れてたぜ。サンキューな」
「いえいえ、必要なもの揃えられました?足りないものは、ペリグレット王国に帰ってから買いに行ってくださいね」
「案内してくれよ」
「はい」
こうして、4人で馬車に乗って、もう1台の馬車にエレーヌと騎士達が乗り、王宮を後にした。
これから1週間の馬車の旅だ、頑張ろう。
ミオは馬車の中でショウにこの世界のことや、ペリグレット王国のこと、その他ショウが聞きたいことについて説明した。
ペリグレット王国に帰るまでにはたっぷりと時間があるから、いくらでも説明が出来る。
「異世界転生っていうと、RPGとかの世界を思い描いてません?」
「まぁ、そうだな」
「残念ながらこの世界にはRPG要素なんてまったくないですよ」
「マジか。通りでステータスとか見れないわけだ」
「そうなんですよ。魔法は使えるし、魔法を使うのに魔力は消費しますけど、MPとか見えないんで感覚で掴んでくださいね。私もよくわからなくて、時々寝込んでたし」
「冒険者ギルドとか魔導師ギルドは?」
「ないです。別に冒険が出来なくはないですけど、そもそも冒険者って人達に会ったことがありませんから」
「異世界に転生してスローライフ的な感じか」
「まぁ、そんな感じだと思いますよ。ただ……」
「ただ?」
「今は魔王の封印が解かれちゃうかもって感じなので、ちょっとゴタゴタしてる感ありますけど」
「魔王!?マジか!……あー、だから勇者?」
「はい。でも、この世界に勇者は現れないらしいです」
「誰が魔王と戦うんだよ」
「決まってるじゃないですか、私達ですよ」
「もしかして、あの魔物の大群も魔王関係かよ?」
「それは……まだわかりませんけど」
ミオとショウの会話を不思議そうな顔で聞いている、父親とランディ。
あれ、そんなにわかりにくい会話でした?
「ミオ、もしかしてこのショウという人物は……ミオと同じ世界から来たのか?」
「あれ、言ってませんでしたっけ?そうらしいですよ」
「「そうなのか!?」」
父親とランディが驚いて目を見開いた。
そういえば……名前の紹介しかしてなかった気もするな。
「なぁ、ミオが異世界人ってことなら、この王様も異世界人なのか?」
「違いますよ。お父さんはこの世界の人です」
「はぁ?どういうことだよ」
「私の母が、15歳でこっちに転生というか転移?してきて、いろいろあった末に王様と結婚したんです。それで、私を産む直前に元の世界に戻って、私はショウさんがいた世界で生まれ育ったんですよ。で、1年半前くらいにこっちに来ました」
「死んでねぇのか?」
「はい。でも、元の世界での私の存在がどうなってるのかはわかりませんよ?」
「へぇ、それが事情ってやつか」
「まぁ、そうです」
元の世界の人だと、何だか話もスムーズで嬉しいなと思うミオ。
ショウはこんな感じだけれど、元の世界ではいろいろあったらしく……自殺をして転生して来たのだと話してくれた。
自殺でも転生って出来るんだな。
「こっちの世界、電気とかないしいろいろ不便ですけど……私は楽しいと思いますよ。魔法で工夫できることもありますし」
「やっぱ、魔法は便利なのか?」
「まぁ、便利なものもありますね」
「例えば何だ?」
「うーん……洗濯機ないけど、魔法使って洗濯機みたいにしたり……魔法で乾かしたり?ドライヤーないけど、魔法であっという間に乾きますよ」
「洗濯機がないって……手洗いなのかよ」
「そうですよ?それと、魔導師は箒に乗って飛べるんで、移動が楽です」
「電車も車もなさそうだしなぁ」
「ないです」
電気はないけれど、何故かスマホやパソコン、ゲーム機のバッテリーがなくならないことにはショウも驚いていた。
「てゆーか、パソコンやゲーム機持って来てんのかよ!?」
「持って来れそうなものは持って来ましたよ。もう帰れませんし。ほら、ゲームなら今持ってますよ」
「マジか!?ちょっとやらせろよ」
「どうぞ」
ミオはゲーム機を1台渡した。
こうしてしばらくの間、ショウはゲームに没頭していた。
こんなに揺れる馬車の中でゲームなんかして、よく酔わないなこの人。
ミオは羨ましいと思いながら、小窓から外を眺めた。
―――――――
―――――
―――
「何で箒なんか乗ってんだよ」
「馬車は……酔うし退屈なので」
「俺も早く箒に乗りてぇ!」
「帰ったら、頑張って作ってください。あ、杖でも飛べるらしいですよ?魔力増強効果もあるし」
「だったらそっちの方が良くね?」
「ペリグレット王国には杖の作り方を知ってる人がいないですけど……もうすぐルシヨット魔導国の王様が来るんで、もし杖の方がいいならその人に教えてもらってください。頼んでおきましょうか?」
「おー、よろしく」
港町まであと2日。
さすがに馬車に乗りっぱなしは退屈なので、ミオは箒に乗って馬車の隣を飛びながら移動している。
「ミオよ、箒に乗るのはそんなに楽しいのか?」
「お父さんは乗ったことないんです?」
「ないなぁ」
「え、お母さんに乗せてもらわなかったんですか?」
「カエデは乗せてくれなかったからなぁ」
「え、何でですか……乗ってみます?後ろに」
「良いのか?」
「もちろんですよ」
シャルルよりも体格は良さそうだけれど……乗せられないこともないだろう。
馬車が休憩を取るために停車したところで、ミオは父親を乗せて飛んでみた。
初めての上空に、ミオにしがみつく父親。
もしかして、高所恐怖症か?
まぁ、この世界でこんな上空から地面を見下ろせるのは魔導師くらいだし、仕方のないことか。
地上に戻ると、自分には空を飛ぶのは向いていないと父親は苦笑いしながら、用意されていた紅茶を飲んで休憩した。
ショウも乗せてくれと言うので乗せてあげたけれど……この人も高所恐怖症か?箒を作っても乗れるんだろうかと心配になったミオだった。
休憩が終わり、再び港町に向かって出発すると、ミオは箒で上空へと上がってみた。
何処からかロック鳥が現れて来て、ミオが試しにヒールをかけてみると、やっぱり癒し効果があるようでロック鳥を手懐けることが出来た。
ミオがロック鳥の背中に乗って馬車の傍へと降りて行くと、馬車に乗っていた3人は目が飛び出すほど驚いており、後ろの馬車の御者は驚きすぎて手綱を手放してしまい、危うく気絶させてしまうところだった。
「何だよその鳥は!?」
「ロック鳥みたいですよ?箒よりも乗り心地いいんです。乗ります?」
「……よし、乗せてみろ」
ショウがミオの後ろに乗って来て、少し浮上させてみると……箒は無理そうだったけれど、ロック鳥なら乗れそうだった。
ショウ曰く、箒よりも安心感があるらしい。
箒だと、長時間乗っているとちょっとお尻が痛いなと思うこともあるし、ロック鳥で移動するのも良いかもしれない。
こうしてロック鳥は、ミオ達を宿まで運んでくれて、何処かに飛んで行った。
その翌日、港町に向けて出発しようとしていると、ロック鳥が姿を現した。
どうやら、ミオを乗せてくれるようだ。
まだヒールを使ったわけでもないのに、どういうことだ?よくわからなかったけれど、ミオはロック鳥に乗って出発した。
なんていい子なんだろう、連れて帰りたいぞこのロック鳥。
予定通りに港町へと到着したミオ達。
さすがに町中をロック鳥に乗って飛ぶわけにもいかないので、町に入る前にロック鳥とはお別れをして、ミオも馬車に乗り込んだ。
ちょうど昼時だったので、昼食を食べてから船に乗り込むことにした。
港町ということで、美味しそうな魚介類を扱う店がたくさんあり、どの店で昼食を食べようかと迷ってしまう。
父親が、シャトロワ国王のおすすめの店があると言い、その店を探して入ることにした。
なんと、伊勢海老よりも大きな海老があり、ミオの目がキラキラと輝いた。
お腹が満たされた後は、各自好きに観光して夕方に船に集合することになった。
ミオは父親と一緒に回ることとなったのだけれど……何故かショウもこっちについて来た。
こうしていろんな店を回り、美味しそうな食べ物を食べたりしながら港町を満喫して、ミオ達は船へと向かった。
船長達にもショウのことを紹介して、船に乗り込む。
いざ、ペリグレット王国へ。
隣国に来ただけなのに、半月なんて長旅になってしまうのがこの世界だ。
元の世界では考えられないようなことだ。
やっぱり、早くラウルが転移魔法を確立してくれることを心から願わずにはいられないミオだった。
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