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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
最終章 魔王と異世界生活
104/132

閑話 使用人のお仕事

のんびり更新中♪

「本日は、エリアス王子の婚姻の儀終了後、午餐会が行われる。打ち合わせ通り、各自気を引き締めて取りかかるように」


 大勢の使用人を束ねるリーダー、執事。

 彼の言葉で、使用人達は一斉に本日の仕事を開始した。


 今日は各国の国王や女王、他にも大切な国賓がここシャトロワ王国の王宮に集まる。

 昨日から王宮に滞在している人もいるが、今日はその何倍もの国賓が訪れて来る。

 午餐会になるとさらに招待客が増えるので、粗相のないように細心の注意を払って準備を整えなくてはならない。


 使用人のミスは執事の責任となる。

 そのため、執事が目を光らせている中で、使用人達はとてつもない緊張感を持ちながら動いていた。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「婚姻の儀が終わったらしいぞ。あと終わってないのは何だ?手が空いている者はそっちを手伝え」

「食器はこれで終わりです!」

「テーブルの花も終わりましたー」


 午餐会の会場の準備は整った。

 あとは料理の進み具合を確認して、それが終わったら招待客達を中に案内する……はずだった。


「何かあったらしいぞ」

「何かって何だよ?」

「まだわからんけど……うちの国王とペリグレット王国の国王が、皆を王宮内に避難させている」

「何だって!?」


 午餐会の会場で使用人達がザワザワしていると、執事がやって来て使用人達に指示を出した。

 まず、料理を作るのを一旦中断するよう厨房に伝える。

 そして、王宮内に避難している招待客達を待機させる部屋の用意と案内をする。

 他はこの場で待機。

 使用人達は、執事の指示に従って迅速に行動する。


「午餐会ってどうなるんだ?」

「ここまで準備して中止なんてことはないわよね?」

「どうだろうな~」


 裏方というものは大変な仕事である。


「大変だぞ!」

「何かわかったのか?」

「もの凄い数の魔物が押し寄せて来てるらしい」

「王宮に?」

「そうだ」

「マジか!?」

「王宮は大丈夫なの!?」

「騎士団がいるんだし大丈夫だろう?」


 武装国家と言うだけあって、シャトロワ王国の騎士団の戦力はかなりのものなのだろう。

 使用人達はざわついているものの、ここから逃げようと考える者はいないらしい。

 そこに、1人の使用人が飛び込んで来た。


「ねぇ!聞いてよ!」

「何だよ、お前今日はこっちじゃないだろうが」

「煩いわね!何か、とんでもない数の魔物が現れて」

「それ、知ってる」

「いいから聞きなさいよ!ペリグレット王国の王女様が戦ってるの!」

「うちの騎士団はどうしたよ?」

「それはエリアス王子が指揮を取ってるわよ。もうすぐ出ると思うわ」

「何でペリグレットの王女様が?」

「わかんないけど、凄い魔導師みたいよ?私、凄い魔法使ってるの見たもの!それに、騎士が王女様の箒とカバンを持って行って、王女様は箒に乗って飛んでったの!凄くない!?」

「へぇ、コレット妃とは大違いだな。彼女も魔導師のはずだけど」

「くっそー、俺も凄い魔法見たかったなー」


 使用人もなかなかにミーハーだったりする。

 凄い情報を持って来た使用人は、興奮しながら自分の持ち場へと戻って行った。

 午餐会の会場に残った使用人達は、今後の指示が届かずにそわそわし始めた。


「てゆーか、午餐会どうすんだ?」

「もしかして何か指示出されてんのか?」

「何も聞いてないわよ?」


 ザワザワ

 ザワザワ……


 そこに執事が入って来てとんでもない指示を出した。


 魔物の討伐を騎士団に任せるにしても、肝心なエリアス王子が討伐に出ているため、午餐会は開催出来ない上に、魔物の討伐にはまだ時間がかかりそうなので、午餐会は中止とし晩餐会へと変更する。

 よって、今からこの会場を使って招待客達に昼食をふるまう。

 昼食を食べ終えたら、招待客には客室または応接室でお休み頂く。

 安全が確認出来るまで、決して庭園には出さないよう注意すること。

 尚、エリアス王子とペリグレット王国の王女は、討伐から戻ってからの食事となるため、別室に用意しておく。

 招待客が全員この会場から出たら、早急に晩餐会の準備に取り掛かる。

 まず、円卓ではなく長テーブルに交換する。

 招待客の席はこの用紙に書いてあるので、各自しっかりと目を通すこと。

 それから、ペリグレット王国の王女は酒が飲めないらしいので、シャンパンをお出しする際には事前に飲み物を確認しておくこと。

 報連相をしっかりと取りながら、迅速に行動すること。


 この混乱の中、この指示を一発で全て把握して頭に入れられた使用人はいるのだろうか?

 本当に、裏方とは大変な仕事である。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「ふぅ……間に合いそうだな」

「間に合わせなかったらどうなることか……」


 晩餐会の会場の準備は無事に終わりそうで、使用人達も安心したように会場を見回していた。


「ねぇねぇ、聞いた?」

「何をだよ?」

「ペリグレットの王女様、凄い傷だらけで戻って来たって」

「大丈夫なのか?」

「あー、それなら戻って来た時に魔法で治してたぞ。すげーよな、魔法って。あの怪我が治っちまうんだからな」

「そんな酷い怪我だったのか?」

「王女様としては酷かったと思うぜ?凄いなぁ、あの王女様。あんな怪我しながら戦ってくれたんだろ?」

「一度でいいから戦ってるとこ見てみたいよなー」

「他国の王女様が戦ってくれてんのになぁ」

「おい、あんまそういうこと言うなよ。聞かれたらどうすんだよ」


 そんな話をしているとチェックしに来た執事の姿が見えて、使用人達は慌てて話をやめて仕事に戻った。

 執事のチェックが終わると、いよいよ招待客の入場だ。

 客室担当の執事が招待客を会場へと案内し、会場には次々と招待客達が訪れていた。

 こうして、ほとんどの招待客が席に着いたところで、使用人達は乾杯用のシャンパンを運び始めた。

 そして、全員にシャンパンを配り終えたところで問題発生だ。


「オイ、誰だよペリグレットの王女様にシャンパンをお出しした奴は。飲み物確認するんだろ?」

「あ、それ私だ。どうしよう」

「王女様に声をかけられて、俺がりんごジュースに交換したよ。めちゃくちゃ謝られて、気まずかっただろうが」

「え、文句言われたんじゃなくて?」

「そうだよ。めちゃくちゃ済まなそうな顔されて、どうしようかと思ったぞ」

「最初の料理、私が持って行ってもいい?ちゃんと謝って来る」


 シャトロワ国王とエリアスの挨拶が終わると、乾杯の合図で料理を運び始める。

 ミオに飲み物の確認をするのを忘れてしまった使用人が、ミオに料理を持って行き改めて謝罪すると……


「え、そんな……私の方こそすみません、先に声をかけておけば良かったですね。とても美味しいりんごジュースをご用意して頂いて、本当にありがとうございます」


 そんなミオの言葉を受けて、使用人は他の使用人にこう伝えた。


 ペリグレットの王女様は、とてもいい人だ!

 神様なんじゃないですか?あ、女神様かな?

 私、専属で料理運びたい!


 専属で料理を運ぶということは他の使用人達が許さず、ミオに料理を運ぶのは毎回ジャンケンで決めることになった。

 さらに、食器を下げたり飲み物のおかわりを持って行ったりするのもジャンケンで決めることになり、遂にはミオの所に行く権利を得るためのジャンケンとなった。

 料理の数は決まっているし、飲み物だってそんなに何回もおかわりできるものでもない。

 使用人達は何だかんだ理由を作っては、ジャンケンで権利を得て、ミオの所に向かった。


 こうして晩餐会で出す料理も、最後のデザートのみとなった。

 デザートに出すのは、マカロンと言う何とも可愛らしいお菓子だ。


「晩餐会のデザートで、こんな感じのお菓子を出したことなかったわよね?」

「エリアス王子の指示らしいぞ」

「エリアス王子の?何でだよ?」

「さぁな」


 こうして最後であろうジャンケンをして、見事権利を勝ち取った使用人が、ミオの所に紅茶とマカロンを運ぶ。

 すると、ミオが目を大きくしながら使用人の方に顔を向けた。


「マカロンですか!」

「は、はい。左様でございますが……お気に召しませんでしょうか?」

「いえ、大好きです!凄く好きです!」


 フラフラしながら使用人は戻って行った。

 他の使用人達が慌てて駆け寄る。


「何だ、何かやらかしたのか!?」

「フラフラじゃねぇか、大丈夫か?」

「大好きですって言われた。俺……もう死んでもいいかも」

「は?」

「嘘だろ?」

「ねぇ、それって……マカロンが大好きなんじゃなくて?」


 使用人がミオを指差した。

 ミオの周りにめちゃくちゃキラキラした何かが見えるような気がした。

 そして、マカロンを食べたミオの周りには、さっきまで見えていたキラキラがハートに変わって見えた気がした。


「馬鹿だなお前」

「うん、馬鹿だよ」

「馬鹿ね」

「うるせーよ!」


 晩餐会は無事に終了した。

 招待客達がぞろぞろと会場を出て行く。


「あ、これ……余ったマカロンって、ペリグレットの王女様に渡せって言われなかったか?」

「そうだった!」

「急いで袋に入れないと!」


 ミオが会場から出て行く前にマカロンを袋に入れなくては。

 急いで厨房から紙袋を貰ってきて、余ったマカロンを詰める。

 そして……今度こそ最後のジャンケンだ。

 勝った使用人が勝ち誇ったように紙袋を手にする。


「ミオ様、こちらをどうぞ」

「ん?これは?」

「余ったものはミオ様に渡すよう、申し付かっております」

「余ったもの?……って、マカロンじゃないですか!え、いいんですか?」

「はい、もちろんでございます」

「ありがとうございます!ありがとうございます!」


 ミオが深々と頭を下げるので、使用人はどうしていいかわからずに、アワアワしてしまった。

 そして、嬉しそうなミオの後姿を見送り、使用人達も何だか幸せな気分に浸っていた。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 晩餐会が終わったからと言って、使用人の仕事が終わったわけではない。

 会場の片付けなどと言う、とても大変な仕事が待っているのだ。

 でも、今日の使用人はいつもとは違う。

 やる気に満ちた使用人が溢れていた。

 そんなわけで、晩餐会の片付けは驚きの早さで終了した。

 会場の片付けの進み具合をチェックしに来た執事は、会場のドアを開けて固まった。


「……は?」


 晩餐会の会場は、いつも以上に磨きがかけられているのではないか?というくらい、綺麗に片付けられていて、部屋にはもう誰もいなかった。

 会場の中を一回りして、執事は会場のドアを閉めた。


 使用人達の、長い1日は終わりを告げた。

 裏方の仕事とは、大変だがやりがいのある仕事でもある。



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