92 元の世界からの転生者
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エリアス達が、凍らされた魔物達を砕き消しながら進んで来ると、ミオが大勢の魔導師達と戦っていた。
その空中戦の激しさに目を見開く。
「フロージングランス!」
黒ローブを羽織った魔導師達の上空へと上がったミオが、器用に向きを変えて複数の氷の槍を放った。
黒ローブ達は散開しながらミオの攻撃を避け、ミオを取り囲むようにして攻撃魔法を放つ。
「ホーリーシールドリフレクション!」
黒ローブ達は、ミオのシールドで跳ね返された攻撃魔法によって爆撃されたけれど、上手く防御したのでかすり傷程度しかダメージは与えられなかった。
どうしよう、このままでは埒が明かない。
ミオは黒ローブ達の攻撃を避けながらポーションを飲んで魔力を回復させると、地面に降りて詠唱を唱えた。
「我が光の裁きをもって、開かれし封印の扉。我が名はミオ、ホーリーマジカルシーリング!」
黒ローブ達の首に、次々と光の輪がはめられていき、魔力を封じられた黒ローブ達は地面へと落下して行った。
全魔力を消費したミオは、急いでポーションを飲んで魔力を半分だけ回復し、黒ローブ達が逃げないうちにスノーフロストで凍らせて動けないようにした。
「ふぅ、終わったぁ……」
「終わったじゃない。私達のコレを解除してくれ」
「え?」
ミオが座り込んでいると、首に光の輪をはめられたエリアスと騎士達が、ミオを取り囲んでいた。
どうやら、近くにいたエリアス達魔導騎士団の魔力も封じてしまったらしい。
慌てて立ち上がったミオは、エリアス達の魔力封印を解除した。
「お前は大丈夫か?随分とボロボロになってるが」
「見た目だけですよ。あとで回復するんで大丈夫です」
「……無茶はするなと言っただろう」
「してませんよ」
「はぁ……やはりお前の大丈夫は信用できないな」
「何でですか!?」
「まぁ、いい。あと、こいつらの氷も解除してくれ。拘束して王宮に運ぶ」
「わかりました」
ミオが黒ローブ達を凍らせていた魔法を解除すると、エリアス達が逃げられないように拘束し、王宮へと連行する準備を始めた。
ミオは残りのポーションを飲んで魔力を回復させ、箒に乗りながら眺めていた。
すると、何処からか声が聞こえてきて、驚いて振り向く。
「こっちだよ、王女様」
「王女様?……え、誰のこと?」
振り返った先には誰もいなくて、王女様って誰だ?などと思いながら首を傾げていると、後ろから腕をつかまれた。
「あんただよ、あんた!そんなドレス着て何とぼけてんのさ!」
「ドレス?……あ、そうだった」
ミオの腕をつかんだのは、Tシャツにジーンズ姿の黒髪で無造作ヘアなのかボサボサなだけなのか……そんな髪型の見知らぬ男性だった。
そういえばドレスのままだったことを思い出す。
随分とボロボロにしてしまったな……どうしよう、ヒールでドレス直せないかな?
「王女様」
「……誰だか知りませんけど、その呼び方やめてもらえます?」
「他に呼びようがねぇだろうが……まぁ、いい。これ、外してもらえる?」
「え?」
男性が指差したのは、首にはめられた光の輪。
これをはめているということは……この男性にも魔力があるということだ。
黒ローブは羽織っていないけれど……仲間だろうか?
「……あなたも黒ローブの仲間なのでは?」
「黒ローブ?誰だよそれ」
「あの人達です」
「あ?あー、あんたが戦ってた奴らか。知らねぇよ?」
「……本当に知らないんです?」
「そんな疑いの眼差しで見るんじゃねぇよ!マジで知らねぇって!」
「……それ外したら攻撃して来るとか」
「絶対にねぇ!安心しろ、俺は魔法なんか使えねぇし」
「魔法が使えない?魔力があるのに?」
「マジで?俺に魔力があんのか?」
何言ってるんだこの人。
何だかとても怪しいけれど……黒ローブではなさそうかな?
「じゃあ、外しますけど……って、ちょっと待っててください!」
「はぁ?どこ行くんだよ!?」
「すぐに戻ります!」
ミオは、黒ローブのフードの下に何かを見つけて、エリアスの所に駆け寄った。
「エリアス様!」
「どうした?」
「ちょっとその黒ローブの後ろ見せてください」
「は?」
ミオが黒ローブのフードを持ち上げると、何かのマークのようなものが描かれてあった。
ペリグレット王国で捕まえた黒ローブにもあったのかな?
ミオはカバンから携帯を取り出すと、そのマークをカメラで撮影した。
あとでラウルに聞いてみよう。
「ありがとうございました」
「何だそれは」
「あれ、見せたことありませんでしたっけ?私の世界の便利道具ですよ。こっちの世界じゃ、写真を撮るくらいしか使い道ないですけど」
「しゃしん?前に見せてもらったアレか?」
「そうですよ。ほら、こうして記録が残せます」
ミオは今撮った写真を見せながら説明した。
驚きながらも、エリアスはとりあえず写真について理解したようだった。
ミオはカバンに携帯をしまいながら男性の所に戻る。
「お待たせしました。じゃあ、外しますね」
「あぁ、頼む」
ミオが魔力封印を解除すると、男性は首元に手を当ててフーッと息を吐き出した。
「なぁ、あんたのそれ、スマホか?」
「……え?」
「さっき写真撮ってただろ」
「スマホ……知ってるんですか!?」
「知ってるかって……やっぱ、ここは異世界か何かなのか?」
スマホを知っていて、ここを異世界と言うこの男性は……もしかして転生者なのか!?
「ももも、もしかして……転生して来たんです?」
「やっぱそうなのか?」
「それは……知りませんけど」
「何だよそりゃ」
「何処から来たんです?」
「東京」
「そうなんですか!?」
「え、何、あんた知ってんの?」
「ま、まぁ……私もそこから来たので」
「マジか!あんたも転生者なのか!」
「私は……転生と言うか、ちょっと事情がありまして」
「事情?何だよそりゃ」
「まぁ、転生みたいなものですけど……もしかして、勇者です?」
「勇者ではない」
「えー」
「何ガッカリしてんだよ」
一瞬、勇者が現れたのかと期待してみたけれど、やっぱりこの世界に勇者はいないらしい。
魔王の封印が解かれるかもしれない、こんなタイミングで現れておきながら勇者じゃないなんて!
「魔導師なんです?」
「さぁな、魔力があるんならそうなんじゃねぇか?」
「どんな魔法が使えるんです?」
「さっき使えねぇって言っただろうが」
「あ、そうでした」
「練習したら使えんのか?」
「たぶん、魔力はありそうですし、使えるかと……あ、ちょっと待ってくださいね」
ミオは、前にエリアスに教えてもらったように、手のひらに魔光を浮かび上がらせると男性に向かって放ってみた。
すると、男性の周囲に光の膜が張られた。
これが……光を纏ったということだろうか?
よくわからないので、エリアスを呼んで来て見てもらった。
「これって、魔導師の素質があるってことです?」
「そうだ」
「だそうですよ。良かったですね、魔導師になれます」
「マジか!」
「誰だコイツ」
「知らない人です」
「は?」
「ここで声をかけられました」
「……お前、やはり馬鹿だろ。とんでもない馬鹿だろ」
「し、失礼極まりないですよ!」
「誰だ?そいつ」
「この王国の王子様です」
「へぇ。で、あんたが王女様ってことか」
「私は、違う王国の王女ですよ。本業は魔導師ですけど」
「王女が副業ってことはねぇだろうが。お前、馬鹿だな」
何なんだこの2人は!
揃いも揃って人のことを馬鹿呼ばわりとは。
「そろそろ行くぞ」
「はい。それじゃあ、頑張って魔導師になってくださいね」
「オイ、ちょっと待て」
「は?」
「え、何ですか?」
「俺に魔法を教えろ」
何故に上から目線なんだこの人。
「だったら、エリアス様の方が……」
「断る」
「俺だってお断りだ。お前が教えろ」
「いやいや、私が魔法を教えるなんてムリですから」
「何でだよ!」
「うーん……何となく使えてるだけなんで」
「んなわけあるか!」
「あるんですって」
困ったな、どうしよう……態度でかいし、何だか上からな人だけど、同じ所からやって来たということもあって、放っておくことも出来ないような……
「放っておけ。行くぞ」
「待てよ」
「え?」
エリアスがミオの手を握って立ち去ろうとすると、男性が反対側の手をつかんできた。
男性を睨みつけるエリアス。
「その手を離せ」
「離さねぇよ!こんな場所に置き去りにされてたまるかってんだ!」
「えーと……」
確かに、ここに置き去りにするわけにもいかないということで、とりあえず王宮に連れて行くことになった。
さすがに黒ローブ達を乗せた馬車に乗せるわけにもいかないので、騎士の馬に乗せてもらうことにした。
ミオの後ろに乗せろと騒いだけれど……無視だ無視!
ミオは箒に乗ってエリアスの隣を飛んだ。
王宮に戻ると、城壁の上で見張りをしていた騎士が、ミオの靴を持って降りて来た。
「ミオ様!お靴をお持ちしました!」
「あ、わざわざありがとうございます」
「お前……裸足だったのか?」
「だって、脱げちゃうんですもんあの靴」
「足見せてみろ、傷だらけなのではないか?」
「大丈夫ですよ、ヒールで治しますから」
そういえば、まだ傷を治してなかったなと思い、ミオはヒールで全身の傷を回復させた。
「あー、やっぱりドレスは直せないんですね」
「当たり前だ」
「なぁ、俺はどうすりゃいいんだ?」
そうだった……どうしよう?
ミオは男性の顔を見ながら苦笑いした。
「シャトロワ王国の魔導騎士団では……」
「いらん」
「あはは、ですよね……」
「俺だって嫌だね。お前んとこ連れてけよ」
「うーん……まぁ、魔導師不足なので、来てもらえると助かりますけど……あなたが思っているような異世界じゃないですよ?この世界」
「何だっていいさ」
ミオと同じ世界から来たってことは、少なからず異世界ものを知っているはずだ。
小説やアニメなんかの世界を期待しているんだとしたら、残念ながらこの世界は全然違う世界だ。
「それに……私の王国、たぶんこの世界でも最弱ですし……」
「そんなことはないだろう?ルシヨット魔導国には勝っただろうが」
「あれは……たまたまですよ」
「別に構わねぇよ。俺なんかまだ魔法使えねぇし」
「うーん……じゃあ、来ます?ペリグレット王国に」
「あぁ、行く行く」
何だか軽くないですか?この人。
「……私としては連れて行かせるのは反対だが」
「何でお前が反対するんだよ。関係ねぇだろうが」
「何だと?」
「まぁまぁ、エリアス様……うちの騎士団が使わせてもらってる部屋って、ベッド空いてましたっけ?」
「何人で来たんだ?」
「えーと、団長と、騎士が3人ですね」
「そんなに少ないのか?」
「ぞろぞろ引き連れて行くの嫌だって言ったんですよ、私が」
「……騎士は4人部屋だ、ベッドは1つ空いている」
「団長は?」
「個室だ」
「なるほど。だったら、その空いているベッドを使わせてもらってもいいです?」
「あぁ、構わん。私が案内しよう」
「一緒に行きますよ。説明しないとですし」
ミオは、エリアスと男性と3人で騎士団の宿舎へと向かった。
女性騎士にも会えるかななどとちょっと期待したミオだったけれど、残念ながら遭遇しなかった。
「そういえば、お名前は?」
「俺は、山本翔だ。こっちだと名前が先か?」
「そうですね。私はミオ・ペリグレットですけど……元々の名前は、桜井美桜です」
「へぇ、そうなのか。じゃあ、ミオでいいか?」
「別に何でもいいですよ」
「馴れ馴れしい奴だな」
「何だと?」
「まぁまぁ……喧嘩しないで下さいね」
第二騎士団が泊まらせてもらっている部屋につくと、ミオが事情を説明してショウを紹介した。
元から気さくな人達なので、すんなりと受け入れてくれて助かる。
そういえばこの人、転生したんだったらお金もないし服も着ている服だけよね……ミオは騎士達に、ペリグレット王国に帰るまでに必要なものを一緒に買いに行くようお願いし、カバンから財布を取り出して渡した。
明日は王都に出かけるけれど、護衛は必要ないと言ってあるし。
「てゆーか、嬢ちゃんボロボロじゃねぇか。大丈夫か?」
「見た目だけなので大丈夫ですよ。ヒールでドレスは直せなかったので……」
「そりゃあ、そうだ」
「それじゃあ、彼のことよろしくお願いしますね」
「任せとけ」
こうして、ショウを第二騎士団に預けると、ミオとエリアスは王宮へと戻って行った。
せっかくの結婚式なのに、とんだ出来事に遭遇してしまったものだ。
「午餐会って、予定通り開催されるんです?」
「おそらくな」
「せっかくの結婚式なのに……何だか大変なことになってしまって」
「別に構わないさ。退屈な式だ」
「うーん……」
「私は、お前と一緒にいられることの方が楽しいがな」
「……そんなこと言ってると、コレット様に怒られますよ」
「アイツは私のことなど関心がない」
「そんなことないですって!」
結婚初日からこんなに冷めた関係でいいんですか!?
大事件に巻き込まれた結婚式だったけれど、とりあえず負傷者も出なかったし、王宮への被害もなく済んで良かったと思う。
何故、こんなことをしたのかは、シャトロワ王国の騎士団が聞き出してくれるだろう。
黒ローブがペリグレット王国で問題を起こした組織と同じなのかは……調べればきっとわかるはずだだ。
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お読みいただきありがとうございました!




