91 魔物の大群による襲撃
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突然大量の魔物の気配を感じて立ち上がったミオ。
眉間にシワを寄せて困惑したような顔のミオに、一緒にいた父親やシャトロワ国王、王妃、エリアスが驚く。
「どうしたんだ?ミオ」
「何だよ、急に立ち上がって。何かあったのか?」
「ミオ王女?」
「……とんでもない数の……魔物が現れたと思います。あの城壁の向こう側に」
「何だと!?」
ミオが王宮の裏側、北側の城壁を指差し、エリアスが立ち上がった。
目を閉じて魔物の気配に集中してみたけれど、箒がないのでこれ以上はわからない。
でも、大量の魔物達がこちらに向かって来ているのは確かだ。
「お父さんと国王様は、皆さんを王宮の中に避難させてください!私は城壁の上に行きます!」
「わかった」
「エドワールは向こう側を頼む。私はこちら側に行く。お前は部屋で休んでいろ」
「……わかりました。でも、ミオさんは」
「私は大丈夫ですよ。本業は魔導師なので!」
「やはり、お前は馬鹿だろう?」
「失礼ですって!」
「私が城壁の上に案内する」
「ありがとうございます」
ミオはエリアスに案内されて城壁に向かって走ったけれど……ドレスって本当に走りにくいんですけど!?
てゆーか、パンプスで走るのって難しい。
ドラマとかでよく女優が走ってるけど、よく走れたなと思う。
どうせ足元なんてドレスで見えないんだし、ブーツを履いてくれば良かったと後悔したけれど、きっとそんなことはエレーヌが許してくれなかっただろう。
ドレスの裾を掴んで必死に走っていると、不意にエリアスに抱き上げられた。
これって……お姫様抱っこ!?
「ちちち、ちょっとエリアス様!?重いんで降ろしてください!腕折れますよ!てゆーか、恥ずかしいです!」
「うるさい。その格好だと走りにくいだろうが、大人しくしていろ。それに、ちゃんと食べているのか?軽すぎる」
「絶対に嘘ですよね!?重いですって!」
エリアスはミオを抱きかかえたまま、城壁に上がる階段を駆け上がった。
何でお姫様抱っこしながら、そんなに早く階段を駆け上がれるんですか!?
「ほら、着いたぞ」
「あ、ありがとうございます」
ようやくエリアスに降ろされて、ミオは頬を赤く染めながら礼を言って、城壁から魔物の気配を感じた方向を確認した。
ハッキリとはその姿を確認できないけれど、何かの大群がこちらに押し寄せて来ているのが見える。
「アレか」
「そうですね……とりあえず、範囲魔法で攻撃してみますけど……魔力回復のポーションとか頂けると助かります。凄く魔力使うんで……それと、どなたか私の部屋から箒と、ステッキが入ったカバンを持って来ていただけませんか?エレーヌさんがいるので、聞けばわかります」
「お前、取りに行ってくれ。ペリグレットの王女だ。お前はポーションを持って来てくれ」
「「はい!」」
エリアスの指示で騎士が動いた。
いったい、何体いるんだろう?
とても数えられる数ではない魔物の量に、息を呑む。
あれに攻め込まれたら、ここの騎士団で討伐しきれるだろうか?王宮が陥落してしまうということもあるかもしれない。
そうすれば、王都やシャトロワ王国は大惨事ではすまない……下手したら王国が滅んでしまうのでは?
何としても止めなくては。
ミオは深呼吸をすると両手を空に向かって翳した。
「空に瞬く星々よ、我にその力を授けよ。我が名はミオ、セレスティアルスター」
こんな強烈な魔法、使うことなんてないと思っていたけれど、ルシヨット魔導国で封印の書に出会えて本当に良かったと思う。
空から、まるで流れ星のようなたくさんの光が降り注いだ。
そして、押し寄せて来る魔物達を次々と貫いていく。
ミオが使える、最強の攻撃魔法だ。
ミオの魔力が続く限り、攻撃を続けた。
次第に息が上がって行く。
やっぱり、ステッキがないとここまでの威力しか出せないか……でも、かなりの数は削れたのでは?
魔力の限界を感じて、両手をついて座り込むミオ。
「大丈夫か!?」
「ハァ、ハァ、ハァ……だ、大丈夫です。これ、魔力消費激しいんで」
「ポーションはまだか!?」
「お持ちしました!これをどうぞ!」
「ほら、ポーションだ。飲めるか?」
「ありがとうございます」
エリアスがポーションの蓋を開けてミオに手渡し、ミオは受け取ったポーションを飲み干した。
魔力が半分くらい回復し、ミオが立ち上がって魔物の様子を見てみると、近づいて来た残りの魔物を、魔導騎士だろうか?城壁の上から攻撃しているのが見えた。
「もう1本頂いてもいいです?」
「構わん」
「よし、これで全回復です」
「何だったんだ?あの魔物達は」
「うーん……よくわかりませんけど……もう終わりですかね?」
今のところ、新たな魔物の出現はなさそうだったけれど、少し様子は見ておいた方が良いだろう。
―――――――
―――――
―――
「……何だったんだ?さっきの攻撃は……あんな魔法使える奴が、シャトロワ王国にいるのか?」
「魔導騎士団にはいなかったと思うぞ」
「ルシヨットの魔導師でも来ているのか?」
「あの国は招待されていないはずだ」
「攻撃は止んだな。騎士団も出て来ていないようだ。もう一度攻めるぞ」
森の中に身を隠した黒ローブ達。
ミオが放ったセレスティアルスターによって、自分達にも危険が迫ったため、森の中に避難したらしい。
彼らが草原に描いていた魔法陣は、魔物を召喚する魔法陣。
10人がそれぞれの魔法陣の前に立って大量の魔物を召喚し、王宮に向かって放っていた。
「あのお方……魔王様が復活された際の拠点とするため、この王宮は落とさねばならん」
「わかっている。それに、今ここを落とせば十分な数の魂が手に入る」
黒ローブ達の目的は魔王を復活させること。
世界中に散った黒ローブ達が、死んだ者から魂を集めて回っているが、今ここで王宮を責めている黒ローブ達は、エリアスの婚姻の儀を狙い、一度に拠点とたくさんの魂を手に入れようとしていた。
王宮からの攻撃は止んだが、騎士団が出て来ることは確実だろう。
もう一度大量の魔物を攻め込ませるのであれば、今しかない。
先程の数倍の数を召喚すべく、黒ローブ達は魔法陣の前に立った。
どうやらこの魔法陣は、定期的に魔物を召喚させる魔法陣ではないようだ。
あの数を召喚するには、やはり直接魔導師が魔力を込めないと召喚出来ないのだろう。
「よし、行くぞ」
再び魔法陣が光り、大量の魔物達が召喚された。
―――――――
―――――
―――
「あ、また魔物が現れましたよ?たぶん……さっきよりも多いです」
「何だと!?」
「ステッキがあれば、もっと威力が増すんですけどね……」
「私は騎士団に指示を出しに行く。お前は騎士が戻って来るまで待機していろ」
「ステッキが届いたらもう一度さっきの攻撃魔法放つんで、巻き込まれないようにしてくださいね」
「わかった」
「たぶん、向こうに魔法陣があると思うし、範囲攻撃で削った後に見て来ます」
「1人でか!?」
「だって、ここには飛べる人いないじゃないですか」
「そうだが……無茶はするなよ」
「大丈夫です!」
「……お前の大丈夫は信用出来ん」
「酷いですね」
エリアスが城壁から降りて行き、ミオは騎士が箒とステッキを持って来るのを待った。
先にもう一度セレスティアルスターを使っておいた方がいいのかとも考えてみたけれど、たぶんもうすぐ騎士が戻って来るだろうし待つことにした。
魔物の大群が押し寄せて来ているけれど、まだ少し距離はある。
「お待たせしました!箒とカバン、お持ちしました!」
「ありがとうございます!」
ミオは騎士から箒とカバンを受け取った。
カバンを肩から斜め掛けし、中からステッキを取り出す。
「ポーション、何本か頂いてもいいです?」
「どうぞどうぞ、お好きなだけ持って行ってください」
「ありがとうございます」
3本ほどポーションを頂き、カバンの中にしまう。
そして、ステッキを持って自分に魔力強化魔法をかけると、両手を空に向かって翳した。
「空に瞬く星々よ、我にその力を授けよ。我が名はミオ、セレスティアルスター」
さっきよりもとんでもない威力の攻撃魔法が放たれた。
近くにいた騎士達もかなり驚いている。
ミオ自身驚きのあまり言葉を失っているほどだ。
これ……ちょっと威力ありすぎなのでは?
地面、どうなってるかな……まぁ、緊急事態だし責められることはないだろう。
魔力を使い切って攻撃魔法が止むと、ミオはポーションを2本飲んで魔力を回復させて、箒に乗って浮上したけれど……パンプスが脱げてしまいそうだったので脱ぎ捨てた。
「その靴、後で回収に来るんで置いといてください」
「あ、ちょと!1人では危ないですよ!」
「大丈夫です!」
騎士が制止しようとしたけれど、ミオは箒で飛んで行ってしまった。
エリアスに怒られるんじゃ……青ざめる騎士だったけれど、それはないので安心して欲しい。
ちゃんとエリアスには言ってあるし。
魔物が出現した辺りに向かって、ミオは箒で飛んで行ったけれど、そこに魔法陣を見つけることは出来なかった。
どういうことだ?
あれだけの数の魔物を、召喚魔法以外で出現させられるのだろうか?
ミオは草原に降り立って、地面に魔法陣が描かれていないか見て回る。
そんなミオの姿を、黒ローブ達が森の中から見ていた。
「あれは……何処かの王女か?箒で来たということは、魔導師か」
「やはり、ルシヨットか?」
「いや、あの王国には王女はいない」
「……何を探しているんだ?」
「戻って行くようだぞ」
どれだけ探しても見つからない魔法陣に、ミオは王宮に戻ることにした。
再び箒に乗って、王宮に向かって飛んで行く。
途中でエリアスが率いる騎士団と遭遇したので、地面に向かって下降して行き箒から降りた。
「エリアス様」
「誰かいたか?」
「誰もいませんでしたよ。それに、魔物は魔法陣で召喚しているのかと思いましたけど、魔法陣もありませんでした」
「どういうことだ?」
「うーん……ちょっとわかりませんけど」
ミオは首を傾げながら、ふと、前にルシヨット魔導国と戦った時に、ラウルが魔法陣を隠していたことを思い出す。
もしかして、あの辺りに魔法陣が隠されていたのでは?
しまった、魔法陣を消す魔法を使ってみるべきだった。
「もしかしたら、魔法陣は隠蔽されてたかもしれないです。もっかい行って来ますね!」
「オイ、待て!」
ミオが箒で向かおうとした時、また魔物の大群が出現した。
やはり、魔法陣は隠されていたようだ。
「冷気に触れないよう気をつけて下さいね、凍っちゃうんで!スノーフロスト!」
ミオは魔物が出現した前方に向かってスノーフロストを放った。
次々と凍って行く魔物達。
箒に乗って戻って行くと、さっき魔法陣を探した辺りまで冷気は放たれたようで、黒ローブを羽織った人達が足元を凍らされて動けなくなっているのを見つけた。
え……黒ローブ?
ペリグレット王国で竜を操ろうとしていた、あの黒ローブと同じ組織だろうか?
ミオが困惑していると、黒ローブの1人が魔物を召喚した。
その際に魔法陣が光ったので、やはり魔法陣は隠されていたようだ。
スノーフロストで魔物を凍らせると、ミオは上空で箒を止めて詠唱を始めた。
「開かれし古の扉を封印せし。我が名はミオ、ティアドロップ」
ミオの胸元でネックレスの石が光り、手のひらに集まって雫となると10カ所に散った。
次の瞬間、10本の光の柱が立ち上り、浮かび上がった魔法陣が消された。
これで、魔物の召喚は止まった……なんて思っていたら、足元の氷を解除した魔導師が、杖に乗って飛び上がって来た。
マジですか!?
ミオに向かって攻撃して来る魔導師達。
次々とミオのスノーフロストを解除して飛び上がって来る。
いったい、何人いるんですか!?
必死に攻撃を避けながら逃げるミオ。
こっちが攻撃する余裕ないんですけど!
10人の魔導師対ミオ。
そんな魔導師同士の戦いを、森の中から見ている1人の人物。
黒ローブは羽織っておらず、Tシャツにジーンズという、ミオがいた世界ではよくある服を着ている人物……
その人物は、ただジーッとミオ達の戦いを見ていた。
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