表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

過去編

これを繰り返して、どのくらいが経ったのだろうか。

軽く数百年は経っているだろうか。それとも、まだ数十年しか経っていないのだろうか。

ベッドで眠るアリーを見ながら私は深くため息をついた。

何度これを繰り返してもアリーはアルハーンに惹かれ、そして私は心を止められずにアリーを殺してしまう。

アルハーンに取られるくらいであれば、自分の手で殺してしまった方が楽なのだ。

一度目は、市場でアリーと買い物をしている時にアルハーンがアリーへ剣を向けた。

二度目は、真夜中屋敷を囲む塀の上にアルハーンが立っており、弓矢で私を殺そうとした。

三度目は、民衆を巻き込んで私を領主から引き摺り下ろそうとし、屋敷に火を付けてアリーを焼死させようとした。

四度目は、銃でアリーを殺そうとした。

五度目は、猛獣をけしかけてきた。


ああ、そうだった。今回は六度目だ。


いつもいつも、私の人生は魔女に会うところから始まる。

魔女はどうしてか、私たちが無限ループに入っていることに気づいているようで薬を求めるたびに「もう、そんなことはやめたらどうだ」と言ってくるが、アリーを失いたくない私は魔女の言葉を聞き入れられなかった。

今回は、どうするつもりなのだろうか。

アルハーンは既に牢獄に入れているので手を出せない。

このままアルハーンを殺してしまえれば良いのだが、アリーの心が離れていきそうで怖い。


「ねえ、アリー。私はどうするべきなんだ」


眠っているアリーの頬に手を滑らせて問いかける。

勿論、返事を望んでいたわけではない。


「万能薬をつかっても、人の心は動かせないのか」


こんなにも、愛おしく思っているのに、薬の効果が切れてしまった途端に貴女はアルハーンを求める。

泣いて、私から離れようとする。


「どうして」


今回は上手くいったと思っていた。最近は薬を飲んでいないのに、私への拒否反応がなかった。だから、もしかしたらと思ってアルハーンのいる牢獄にアリーが入るのを許した。

なのに、アルハーンのことを思い出して、また……


「もう、良いだろう」


気付けば、隣に魔女がいた。


「もう、疲れただろう」


魔女の手には、剣が握られていた。

一度目にアルハーンがアリーに向けていた剣だ。


「既に、アルハーンは死んでいる。アルハーンはそれを望み、この世界から解き放たれた」


そして、魔女はアリーの方へ剣を向けた。


「アリーを殺せば、これは終わる。薬の効果が完全に切れる」


私が望んだ効果は、完全にアリーの心を手に入れるまで死ねないこと。そして、アリーが私を好いてくれること。

魔女が最初に渡してきた薬はとても強力な物で、アリーと私を強く繋げたのだ。

その後にアリーに飲ませていたのはただの媚薬。


「アリーを殺すのだけは、やめろ」


アリーを殺して良いのは私だけだ。


「いいや、やめない」


そうして、眠っているアリーに剣を向け、心臓を刺した。

その瞬間、私の体が崩れる。

サアア、と砂になり、地面にはらはらと落ちたのだ。





「哀れな事だ」


最後に見た魔女の目から涙が落ちているように見えたのは、きっと気のせいだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ