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愛とムスコの出会い

「おーいっムスコ〜ムスコよ。」


せっかく親が命名した太陽と言う名を、英語変換し綴り変換し、ムスコと呼ぶのは春斗はるとだ。

太陽→SUN→SON→ムスコ


 やめて。中学のあだ名で記憶を呼び覚まさないでくれ。


 春斗は僕より明るく誰とでも仲良くなる。社交的だ、おかげで僕の静かな日々は少しばかりかき乱される。いや僕がかき乱すのかもしれない。


「ムスコっ先輩が呼んでんぞ」


「え?何故に?」


「知らん。おまえ何したんだよ?」


「検討もつかない」


「とりあえず中庭に来いってさ」


 僕の存在なんて上級生に把握されているわけがない。

山本なんてもう二人くらい居るはずだ、......間違いかな。


 中庭へ行くと何を食べればそんなガタイが良くなるのか聞きたくなるような男がいた。その隣にもいわゆるヤンキーチックな男がゆらゆらしていた。


「おまえが山本か?」


「はい」


「おまえよ、愛ちゃんのなんなんだよ」


「あ......え?」


「質問に答えろ。なんでいっつも愛ちゃんにへばりついてんだよっ答えによってはシバクぞ」


「おいっ狭山(さやま)こいつ、小便ちびるんじゃね?ど――みたって彼氏とかじゃないってぇ」


「あ、あの すいません」


「はあ?」


 僕はこういうなんの根拠もなくただ他人を罵るのが好きな人は嫌いである。どうせエスカレーター式の恩恵で学力もクソもない脳タリンだろう。


「僕は愛のなんでもありません」


「なんでもないってか。モヤシみたいな奴が呼び捨てか。ふぅん......キモっ」


「......すいません」


「―――――好きな人」


え?後ろから来たサラサラロングヘアをなびかせ、僕の腕にしなやかで細い腕を絡め共に中庭から退場したのは(あい)である。


「あんなこと言ったら勘違いされるよ」


「大丈夫でしょ」


  そうだ、誰も僕を愛の特別な存在だなんて思わないだろう。不釣り合いすぎる。

 勘違いされるなんて言った自分が恥ずかしいではないか。


 愛に連れ回されるモヤシ野郎はどんな奴だ?と、少しばかり興味を持たれただけであろう。


 彼氏などといった訳ではない、愛《《を》》好きな人って意味にもとれる。


 それは間違いではない。


 愛は僕の好きな人だ。


 この愛というクールビューティーは、今どき珍しく流行にのらない。清楚な子だ。


 流行にのらない点は僕と共通だ。

いや僕は流行にのれていない。

夜シャワーする前はこっそり鏡の前で眼鏡をはずし目に前髪被せてビジュアル系バンドのボーカルになりきる。

でも朝は静かに眼鏡をかけおとなしく登校する。眼鏡だって本当はかけなくてもいい程度の視力だが、視力悪化予防と他者と直接目を合わせないための盾でもある。


 自分では、ドラキュラフェイスがなかなか美しいと勝手に自惚れたりするが、周りはモヤシと認識している。


 いつからか愛が僕にかまってくれるようになった。

きっと物珍しい生き物だったのか。


 愛をおとそうと励む他のオスたちとは異なるワールドに置いてかれて、一歩いや十歩くらいは引いて愛をこっそり見守っていた僕がレアキャラに映ったか。


 または、僕とつるめば男子達が近寄らないとか。

可愛い女子たちでいる子に比べ、陰キャを連れ回す愛はたしかに変だろう。

僕は愛の厄除けかもしれない。



 入学から少しした頃


 愛が放課後ぽつんと教室にいた日があった。


同じクラスなのに、ガラガラっと開け放った扉を『間違えました』というのもおかしな話。


僕は高鳴る鼓動にムチを打つ―――鎮まりたまえ。



「あれここだっけジャージ。あったあ良かった。あれ?もう誰もいないな。窓際に花が咲いてるくらいか。じゃあねお花さん」って意味不明なことを言って教室をでた。

いや意味不明じゃないあれは、女性を花と呼ぶ、僕の最大限の誉め言葉だ。



 泣いていたような愛がいたから。

どうしたの?とか、何があったんだ?とかキザな呪文は唱えられない。いや返ってくる答えを聞いて解くキャパが無かったからだ。


 それ以来愛は僕の友達になった。

 いや僕を厄除けとして召喚した。



そんな事を思い出しながら授業中おなかも満たされた5時間目


I used to go shopping with my ....

心地よい誰かのリーディングを聞いて


バシッ


「いたっ」


 後ろの席の木下君にどつかれる。


「悪いね。回ってきたんですよ。山本君をたたけって」


 振り返れば窓際の愛と春斗が笑っている。

いいんだよ。君が笑うなら僕はいくらだってイジられるよ。


6時間目は僕が苦手な古文


 れろらろだの、るれだのと呪文を唱えられるやつだ。

そんな時は卓球のお下劣な漫画を.....


あれ?無い。机に忍ばせた卓球漫画


 教壇に立つ年配の先生が開いて読んでいる。

だれですか、先生の教科書とすり替えたの.....。

あれ、かなりの変態漫画である。

先生、頷きながら読書に励む。お気に召されたようです。


僕らは一緒に駅まで帰る。

ただ方向は愛だけ逆のホーム。春斗と僕はホームから大げさに手を振る。振りかえしてくれたことは、無い。


そんな平和な日々に突如、僕が知らない世界の扉が目の前に開かれた。

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