第7試合 NAKED HEART
『第7試合』
彼女の言葉に僕は自分の耳を疑った。
僕のこと・・・好き・・・だって!?
「そ、そんな・・だめだよ、そ、そりゃ見た目は男女に見えるけど
僕達は男同士なんだし・・・も、もちろん岬のことは・・・可愛い
とは思うよ」
とややしどろもどろになりつつ、返事をしてふと彼女を見ると
小さく寝息を立てて眠ってしまっていた。
僕はふぅと大きく息を吐いて、さっきの言葉はどこまで本気なのか
あくまで冗談なのか、どっちだったんだろう?と思った。
眠りについた彼女を確認し、寮長の野村の部屋に行き、まだ事の
経緯が聞けてないこと、今は落ち着いて眠っている事を報告した。
野村もあまり思い出したくない事だから時間がかかっても構わない
から彼女が話してくれるまで気長に待とうと言ってくれ、僕は
部屋に戻り、布団にくるまってぐっすりと眠っている彼女を見て
ベッドに潜り込んだ。
真夜中、身体にまとわりつく柔らかい感触に手を這わせながら
目を開けるとベッドの横に岬がいた。
「み、岬!な、なにやってんの?君のベッドは上だよ」
少し寝ぼけながら目を開けた彼女は
「あ、おはよう・・・トイレに起きたら少し寒くて上に上がるの
面倒で翼の横に入ったらあったかくてそのまま寝ちゃった」
そう言うと彼女は僕にピッタリとくっついてきた。
下着をつけていないのか、なぜか腕に僅かながら胸の膨らみの
感触があり、僕の鼓動は急激に高鳴っていった。
「寝ちゃだめだよ!上に戻って」
「いや・・翼とここで寝る・・・」
「僕が・・・万が一変な気を起こしてしまったらどうするの?」
「・・・・翼になら・・好きな人になら・・変な事されてもいいよ」
昨日の一言は冗談じゃなかったんだ。
「それに・・もうすでにベッドに潜り込んだ時、胸やお尻触られたし、
翼って意外と大胆なんだもん」
「そ、そんな事してないよ!」
と答えつつも、手を這わせた柔らかい感触ってもしかして・・・
「へへ、嘘だよ」
「君って奴は、ほんとに小悪魔みたいだな」
「でも・・・触りたかったら・・ホントに・・触ってもいいよ」
「だめ!だめ!絶対触らない!だから上のベッドに戻って」
「嫌」
このまま密着されてたら真剣に理性を失ってしまいそうだったので
僕は話題を変えた。
「眠くないの?」
「うん、なんか目が覚めちゃった」
「もし嫌じゃなかったら昨日の件、話してくれないかな?
岬が思い出したくないのなら話さなくてもいいし」
「いいよ」
手紙に書かれていた時間と場所に行くと、男子生徒が一人待っていた
ので近づいていくとすぐに隠れていた二人が現れて囲まれてしまった
らしい。腕を掴まれて逃げることができず、体育倉庫に連れ込まれて
三人は倉庫に鍵をかけると「男のくせに女の恰好してチヤホヤされて
いい気になってるんじゃないか、素っ裸にして男だという証拠を写真に
撮って学校中にバラまいてやる」と言って手足を抑えられ、ブラウスの
ボタンを外され、助けを求めたところに僕が登場したらしい。
「ほんとに怖かったんだよ、写真こそ撮られなかったけど、ブラはしてた
けど胸見られるし、スカートも捲り上げられてパンツも見られたし・・・」
「怖かったな、よく耐えたね」
「だって心の中で、誰か助けて!と願った時に一番最初に顔が浮かんだのは
翼だったんだ。そしたらやっぱりピンチの時に翼が助けに来てくれたんで、
私のヒーローは翼しかいないとその時思った」
「ちょっと褒めすぎで恥ずかしいよ」
「そんな事ないよ!ドアを蹴破って入ってきた時、ロベルト・カルロス
かと思ったもん!」
「え?ロベカル知ってるの?」
スポーツというかサッカーに興味ないと言っていた岬からこの名前が
出て僕は正直驚いた。
「し、知ってるよ、有名でしょ。サッカーに興味ない私だって
ワールドカップくらい観てたし、メッシとかロナウジーニョとか
ベッカムとかと同じでサッカー知らなくても聞いたことのある名前
だもん。ロベカル有名人だもん」
「そうだね」
この時少し焦っていた岬の言動に僕は気づいてなかった。
「あのさ、部活どこにも入らないって言ってたけど、岬もサッカー部に
入らない?」
「嫌!日焼けするし、筋肉つくから絶対に嫌!
それと・・・もう一つ部活入らない理由があるんだ」
「理由って?」
「家族と一部の先生しか知らない事なんだけど・・翼には言うね」
家族と数人しか知らないような大事なことを僕なんかが聞いて
いいのかと思っていると彼女は話し始めた。
「翼も知っての通り、私は戸籍上は男の子なんだけど、見た目は
女の子。そして身体も少しだけ女の子になってるんだよ」
「も、もしかして・・・胸?」
僕は彼女が密着してきた時の僅かな胸の膨らみが気になっていた。
「そう、ほんとはまだ早いと言われてたんだけど、女性ホルモンを
中学の頃から打ってるの。だからおっぱいが少し膨らんできて
腰辺りも女の子っぽくなってきてる。それと・・もう私には
ないんだよね」
「何がないの?」
「男の子に・・・ついてるやつ」
「男の子についてるやつ?」
「ほら、翼にも股間に二つついてるでしょ?
恥ずかしいから言わせないで」
「え?岬にはついてないの?」
「手術して取っちゃった」
「そ、そうなの?ちょっとびっくりした」
「まだ・・オチンチンはついてるんけど実際のところ、もう男性と
しての機能は果たせないんだよね」
「てことは、もう岬は戸籍上はともかく、ほとんどいや完璧な
女の子なんだ」
「それもあるからスポーツはやりたくないの」
「そうか・・・じゃあさ、マネージャーは?」
「翼はそんなに私と一緒にいたいの?やっぱり私の事好きに
なってきた?」
「ち、違うよ」
「そんなに全力で否定しなくてもいいじゃない」
頬を膨らませて拗ねた表情の彼女も可愛い。
「そうじゃなくて、今日の事件を考えたら君のそばにいたほうが
いいかなと思って。でも部活してたらその間君が見れないし、
それだったらサッカー部に入部したらどうかなと考えたんだ。
ただそういう理由があるのならマネージャーはどうかなと。
実際今いないし」
「そういう事ならやってもいいよ。そばに翼がいてくれたら
安心だし。今部員って10人しかいないんだよね?」
「うん」
「とりあえず部員兼マネージャーで」
「え?いいの?」
「名前だけだよ。部員が揃ったらマネージャーだけにするから」
こうしてサッカー部に11人目が加わった。




