第17試合 掲示板の写真
『第17試合』
ベッドの中で指に感じる触り心地の良い柔らかい感触でぼんやりと
目を覚ますと、こともあろうに一緒に寝ていた岬の胸を僕の右手は
触っていた。
「はっ!」と言葉に出さずに手を離し、まだ眠っていると思っていた
岬の顔を見るとすでに起きていて僕をじっと見ていた。
「翼のえっち、おっぱい触ってくるから目が覚めちゃったじゃない」
「ご、ごめん、寝ぼけてたんだ、わ、わざとじゃないから・・・」
慌ててベッドから立ち上がろうとして僕はベッドで頭を打った。
「痛ったー!」
「大丈夫!?」と言いながら岬は笑い転げてる。
左手で頭を抑えながら僕は立ち上がったが、右手にはまだ岬の
胸の感触が残っていた。
なんとか理性を保っているけど、これでもしお酒なんかが飲め
たりしたら確実に欲望のまま岬を襲ってしまうかもしれないなぁ。
朝食を食べ、制服に着替える。
もう夏服なのでブレザーとかカーディガン着てるとさすがに暑い。
岬も長袖の白いブラウスに紺のスカート。
うちの学校の女子はチェックのスカートか紺のスカートどちらでも
好きなほうを選択できる。
着替え終わった岬を見るとスカート丈の短さと白のブラウスの下に
透けて見える下着のラインがまた僕を変な気持ちに追い込んでいく。
なるべく見ないようにして学校に行き教室に入るとクラスの
仲間から「よ、御両人さん!」といきなり呼ばれた。
「何?意味わかんないよ」
「掲示板見てきたらわかるよ」
僕と岬は校舎の中にある掲示板を見に行った。
掲示板には学校行事の予定とか、クラブの募集とかが掲載されるが、
どこかの部が優勝したりすると新聞部が掲載したりするのだが
掲示板にはやはりサッカー部が対抗戦で勝利して初優勝した事を
新聞部が大々的に取り上げてくれて貼り出していたわけであるが、
記事の内容はともかく、そこに写っていた写真が問題だった。
それは僕がPKを決めた瞬間、一早く岬が抱きついてきた写真で
当然他のみんなも僕に駆け寄ってきてるけど、現場にいなかった
人からすれば僕と岬が笑顔で抱き合っている光景があまりにも
衝撃的な抱擁に見えるようである。
ただ僕も岬もその写真を見ながら同じ事を口ずさんだ。
「ふーん、よく撮れてるね」
学校の一部教師からも写真について少し問題視する意見なども出た
みたいだが井原監督、担任の手塚の説明で大事には至らなかったが、
手塚からは「相部屋なんだし、間違っても変な気は起こすなよ」
とあらためて釘を刺された。
岬もその辺は心得ているようで、以前は男子トイレに一緒について
行ってたけど、最近は遠くても職員トイレまで一人で行くように
なり、教室でも前後に座ってながらあまり会話もしなくなっていた。
その反面、寮に戻って二人になってからの甘えっぷりは前よりも
酷くなってはいたが。
対抗戦での活躍で岬は校内だけでなく試合を観戦してた人からも
知れ渡り、一部ではアイドル的な人気が高まっていたが、当の本人は
全くそんな素振りは見せず、逆にそういう見方をする輩には無関心を
装っていた。
そんな中、写真よりも対抗戦に勝利したという新聞部の記事の内容の
ほうを真剣に読んでサッカー部への入部希望が5人集まった。
しかも全員サッカー経験者で2年生が3人、僕と同じ1年が2人で、
これには監督をはじめ、部員全員が喜んだ。
やはり結果を出さないと部員は集まらないとつくづく実感した。
新入部員を含めた初練習の時、岬がジャージに着替えずに制服のまま
マネージャーの仕事をしようとしていると部員の一人が
「あれ?練習しないの?」と訊いてきた。
それを機会に監督がみんなを一度集めて話をした。
「先日の対抗戦で途中交代ながら山本さんの活躍ぶりはすごくて
誰もがレギュラーにと考えているみたいだけど今まで通り彼女には
マネージャーとしてやってもらうことにする。
その理由はだな・・・」
「監督、自分で話します」
岬が井原を遮って話し始めた。
「先日の対抗戦で少しの時間だけど監督にお願いして出場の機会を
与えてもらいました。思ったよりも身体が動いて皆さんの役に
立てたみたいなのですが、やっぱり体力的に無理なんです。」
「そんなの練習すればいいじゃないの、岬ちゃんが入ったことで
試合の流れ変わったんだし・・」
部員の一人が発言したが、岬が話しを続けた。
「私、小さい頃からあまり身体が丈夫じゃないので試合だけじゃなく
練習も長い時間できないんです」
これにはみんな黙ってしまったので岬は笑顔で話してきた。
「それにね、私女の子だから接触プレイで胸やお尻触られたら嫌だし、
練習もこれからどんどん暑くなってくるから日焼けしたくないじゃない」
「そうだな、日焼けして真っ黒の岬ちゃんはあまりイメージできないな」
キャプテン福田の一言でみんなから少し笑いが出た。
「そんな理由で山本さんにはマネージャーとしてやってもらう。
ただ部員が5人増えたといってもまだ少ないので選手としても登録は
しておくつもりだ。ただ彼女はあくまでも最後の砦なので出場させない
ようにみんな頑張るように」
監督が付け加えて話は終わった。
身体が丈夫じゃないとはみんなに言ったが、本当は心臓が悪くて10分くらい
しか運動できないということは部員の中では僕しか知らない秘密になった
のであった。
新入部員が加わり、レギュラー争いも始まる中、僕は守備的ミッドフィルダー
から中盤の右サイドにポジションチェンジさせられた。
対抗戦での岬への正確なキックが認められたみたいで、それに加えてコーナー
キックやPKも任せられ、一年生の分際で責任重大になってしまった。
マネージャーとして練習に参加してるが、実は練習終了後に岬は密かに
個人練習を続けていた。
但し練習相手と見守りは監督ではなく僕。
「もう練習しなくていいじゃないの」
と僕が言うと
「いちおう選手登録してくれてるし、もしもの時に準備はしておかないと」
なんだかんだと岬は先日の試合に出れたのが嬉しかったみたいでやはり
サッカーが好きなんだろう。
練習はあまり無理をさせないように気を付けていたが、身体の調子が少し
いいと動き過ぎて結局おんぶして寮に連れて帰ることもあり、苦しそうに
している姿を見るといつか岬が消えてしまうような気がしたのだが、それが
現実のものになることを僕はまだ知る由もなかった。




