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ハットトリック  作者: 北野 ソラ
10/26

第10試合 岬のお母さん

   『第十試合』



駅に到着し、岬は「ここでいいよ」と言ったが「家まで送りなさいと

言ったでしょ!」と母に叱られるのは目に見えたので僕は切符を買い

一緒に電車に乗った。岬はずっと僕と手を繋いだままだったが、僕が

切符を買うのを見て頬を赤らめ、嬉しそうに微笑んでいた。


電車を降り、少し歩くと「ここ」と岬が指をさした。

「へえ、うちより豪華だ」

「普通の家だよ。せっかくだから寄ってく?誰もいないし、襲い

 放題だよ」

「だ、誰もいないんだったら、駄目だよ」

「うそ、お母さんがいると思うよ」

さっきまでの少女のような表情からいつもの小悪魔の表情に

変わっていた。

玄関のドアを開け「ただいま」と声をあげると中から岬に

そっくりの母親が現れた。

「おかえり、岬。あら、お友達?」

「うん、いつも電話で話してる翼。さっきお家にお邪魔してお昼

 ごちそうになっちゃった」

「赤井です」

「そうなの、お世話かけました。翼くん?だっけ、上がって

 いってください」

「上がって!上がって!」

岬に手をひかれ、仕方なく僕はお邪魔することになった。


リビングの椅子に座らされると、「何か飲む?」と岬が

キッチンに歩いていくと、母親は僕の向かいに座った。

「岬と相部屋なんですよね?」

「は、はい」

「我儘な娘でご迷惑かけてるでしょ?」

「い、いえ、そんな事ないです」

とてもその通りですなんて答えられない。

「ほんとはね、女子寮を希望したんだけど無理でなんとか

 男子寮の一人部屋をと思ったんだけど相部屋になってしまい

 泣きながら電話してきたんですよ、もう学校辞めるって。

 でもせっかく入学したんだから少し我慢しなさいと説得したら

 それから辞めるって言わなくなったんですよ。よほど翼くんの

 事が気に入ったんですね」

「いえ、僕は何もしてませんから」

そこに岬が紅茶を持ってきた。

「お母さん、翼にあれこれ変な事言わないでよ」

「言ってないわよね?」

「ええ」

「翼も変な事聞こうとしたり、聞いたりしたら怒るからね!」

「紅茶だけ?冷蔵庫にケーキあるから持っておいでよ」

「わかった」

岬がキッチンに戻っていくとお母さんは少し小声で話し始めた。

「あの娘が友達連れてきたの君が初めてなのよ」

「そ、そうなんですか?」

「まだ小学生の頃に女の子の恰好をするようになって

 当然その頃は変態扱いされて虐められて、中学に入っても

 やはり虐められて、一部の人には理解されてたんだけどね。

 だからほとんど友達と呼べる友人は出来なかったし、本人も

 あえて作ろうとしなかったみたい。

 そんな岬が最近電話してくるたびに翼くん、君の話をいつも

 してきて、私は嬉しさと同時にどうしても一度会いたくなって

 今日こうして来てくれてほんとうにありがとう」

お母さんは涙ぐんでいた。

「いえ、ほんとに僕は何もできてないけど、彼女にそんな辛い過去が

 あったって事がきけて良かったと思います」

「あの娘のことを彼女って言ってくれてありがとう。

 聞き分けのない娘だけど宜しくお願いします。

 それとあの娘が君に話したと言ってたんだけど、女性ホルモンとかを

 接種してるのも影響してかあまり体力もなくて精神状態も良くない

 時がでてくると思うので何かあったら連絡してきてください」

と言ってお母さんは頭を下げてきたところに、岬がケーキを持って

戻ってきた。

「お母さん、何してるの?涙ぐんでるし」

「翼くんにあなたのことをお願いしてたの」

「は?別にお願いされなくても私は全然大丈夫だもん。

 翼も変な事聞いてないよね?」

「聞いてないよ」

「ね、こういう娘だから大変だと思うけど許してやってね」


僕はまだ家で食べた昼食でお腹いっぱいの中、ケーキと紅茶を

食べながらお母さんと岬のなにげない会話を聞いてたら、

母と息子ではなく、母と娘の会話になっていて僕はさらに胸とお腹を

満たされて彼女の家を後にした。



家に戻ると母と妹達からまた岬のことをあれこれと訊かれたが

ありきたりの返答をして不満がられたが、当然ながら岬と約束したので

彼女が実は彼であることは家族にも内緒にしておいたのは言うまでも

ない。



 





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