I'm Liar
僕の家族は4人だけ。父さん、母さん、弟、妹の4人だ。妹はまだ幼く、今年小学校に上がったばかり。帰り道に小学校の近くを通る。僕がお迎え係になっている。
「お兄ちゃんただいま」
「お帰り」
待ち合わせは交差点。小学校前の横断歩道を渡り、200m程度の距離。そこからは一緒に帰る。弟は部活があるから一緒にはならない。大丈夫。妹は僕がちゃんと連れて帰る。
「ユキ、学校は楽しかった?」
「うん!お友達もできたよ!」
笑顔で話す愛らしい妹。余程楽しかったのだろう。家に着いても学校の話を続ける。何もかもが新しく、新鮮な刺激になっている。毎日楽しいといつも言っていた。妹は、まだ6才になったばかりだった。
「母さん、ユキが…」
弟からの連絡で全員が集まった。病院の安置室。妹は、車に轢かれて死んだ。妹に非はない。いつものように手を挙げて青信号を渡っていた。信号無視の車が、スピードを緩める事なく横断歩道に突っ込んだ。わき見運転が原因だ。カーナビを操作していた。最低な奴だ。
「かわいそうに…ひどい姿…」
未成長の体は激しく打ち付けられ、ぐちゃぐちゃに弾けた。関節は砕け、骨は剥き出し…可愛かった妹の面影もない。
「ごめん…間に合わなくて…」
「あなたのせいじゃないわ…仕方なかったのよ」
母さんが僕を抱き締めてくれる。あの日、僕はいつもの時間に遅れていた。急いで向かったけど、邪魔が入ってしまった。気が逸れてしまった。遅れてしまった。僕が間に合っていれば、こんな事にはなっていなかった。
「ごめん…ユキ…ごめん…」
怖かった…一瞬で失うことが、こんなにも怖いなんて知らなかった。白い布に滲む妹の赤。楽しいと話していた学校へはもう行けない。学校の前を通ることも無いだろう。
「轢き逃げ犯の捜索を始めます。何か情報があったら我々警察に」
「はい。必ず見つけてください」
「妹のためにもお願いします」
「いつもお迎えをしていたのは長男さんですよね?」
「はい」
「あの日、何か見かけたりしませんでしたか?見たことない車とか、怪しい人物とか」
「…いえ、見ていません」
警察にあの日について聞かれる。正直に聞かれた内容について答える。嘘はついていない。
「では、特に不審な点はなかったと」
「はい…」
嘘はついていない。
完