2話 ギルドメンバーを募集しようとしたら…
「アクマ。お前は自分の仲間を探しなさい」
白羽がそう言ったので、大体の流れは察した。おそらく、父親である彼が仲間に頼んだのだろう。
話し合いを終え、この場に残ったのはアミとアインハルトの3人だ。2人はアクマと組んでも良いと言ってくれたので、他に誘える人を相談している。
「私はアインハルトしか知らないです」
「いや、俺の知り合いはそっちで集まってるらしいから無理だな」
「僕の知り合いと言うか、知ってるやつはいなくもないけど、組むのは嫌だ」
3人の結論はとりあえず、ギルドを立ち上げてから募集してみようということになった。
この日は解散する、
……
翌朝、アクマ達はギルド設立のため、飛行船で商業都市ハーバートに向かった。ハーバートは港町になっており、行き交う船と行商人で賑わいを見せている。
ギルド協会を見つけ、中に入る。
「いらっしゃいませ」
職員のNPCが話しかけてきた。アクマはギルド申請書を渡し、ギルドを結成する。
「承りました。ギルドの名前とリーダーの署名をお願いします」
ウインドが開き、入力を要求された。
「ギルド名どうしよう。考えてなかったよ…」
「アクマさんが決めてくれたのでいいです」
アミにそう言われ、ギルド名を記入し、署名する。
『魔の手』
…。
拍手喝采は起こらなかった。アミとアインハルトにギルド加盟の申請を送る。
「アクマと魔法をかけてみたんだけど変かな?」
「俺達は"手下"か"指"かな」
アインハルトはそう呟きながら承認した。遅れてアミも承認する。こうして、晴れてギルドが結成されたのだった。
「さて、せっかくここまで来たんだ。何か見ていくか」
「うん。私もそうする」
アインハルトとアミがそう言うので、集合時間と場所を決めて一旦解散する。
アクマは特に目的もなく、ぶらぶらと商店街を見て回る。そして、見覚えのある人物を見つけた。
「どうも!」
アクマはその人物に声をかける。栗色の綺麗な髪と青い瞳を持つ女性だ。
「あら?貴方は確か…」
「アクマと言います。以前、飛行船でお会いしましたよね?」
「そうですね。その時はお話ありがとうございました。私は心愛と言います。それで、アクマさんはどうされたのですか?」
心愛が不思議そうに尋ねた理由を問う。
「たまたま見かけたので、声をかけただけですよ。ここにはギルドを結成しに来ました」
「ギルドですか…。楽しそうですね」
「良ければ一緒に来ますか?」
「えっ?」
アクマは流れで勧誘してしまった。
心愛は困惑する。嬉しいのだが、自分のプレイヤースキルでは迷惑をかけてしまうと思っているからだ。何をやっても"ダメ"な子だと言われ続け、ゲームに逃げても戦えずに商人をしている。そんな自分がギルドだなんて、気が引けてしまうのだ。
「私、何もできませんよ?レベルも低いし、戦いも苦手で…。職業も"プリースト"ですが、回復魔法すら使えません」
テスター時代は習得条件を満たして手に入れたヒールも、今は覚えていたと赤羽は言っていた。どういう事だろう?
「ヒールは覚えてませんか?」
「いえ…何も」
覚える条件とかあるのかな?ゾンビ
「そうですか。なら一緒に覚えに行きましょうよ。お手伝いしますよ?」
「い、いいんですか?こんな私でも」
「はい。まだ3人しかいないギルドだけどね」
「よろしくお願いします」
こうして、心愛はギルドに加入することになった。
なったのだが…。
「アクマさん?ちょっといいですか?」
アミがアクマの服を引っ張る。あっ、これデジャヴ…
アクマはアミに引きずられていく。筋力筋力ではアミに勝てないのだ。
…
……
アミに事情聴取を受けた後、心愛は正式にギルドに加入した。
4人になった一行は飛行船でプリンス王国を目指す。ギルドを結成した事により、メンバーのレベルや職業が分かるようになってしまい、アクマがハイプリーストであることがバレてしまった。
アクマ[Master]ハイプリーストLv44
アインハルト[Member]ウィザードLv36
アミ[Member]ナイトLv38
心愛[Member]プリーストLv2
アクマ達は大聖堂に向かい、心愛は無事にヒールを習得できた。
「まだ4人だし、残りのメンバーはどうする?」
「うーん。掲示板で募集でもしてみる?」
アインハルトとアクマが話す。とりあえず、一行は酒場に向かっていた。時刻はすでに16時を回っている。
アインハルトはそろそろアニメがあるからと落ちていく。心愛はハーバートで仕入れた物を露店に並べるため、アクマ達と別れて南に進んだ。アクマとアミは酒場に入り、掲示板に向かった。
「あっ!昨日気絶してた人だ」
「ほんとだ。アクマさんこんばんは!」
話しかけてきたのは蒼とレンだった。
「どうしたの?2人共」
「別に何でもないよ」
「私たち、スキルを全然持ってなくて。どうやって手に入れるか探してたのです」
答えたのはレンだ。
「プリーストのスキルならいくつか教えてあげるよ」
「本当ですか?」
「いいとも。これから行くかい?」
「いいんですか?」
「あくまさんのロリコン…」
アミが口を挟んできた。レンは怯えて一歩下がる。
「そんなんじゃないから!」
アクマはレンとアミを説得する。説得に時間を要したため、狩りには行けなかった。
アミとレンは打ち解けたみたいで募集はせずに、5人目、6人目のメンバーが決まったのだった。
【次回予告】
新たに仲間になったメンバーはまだ初心者ばかり。レベリングのため、次なる冒険の舞台に選ばれたのは…
次回、ギルド創立編 第3話『メンバーを育成したら…』は3月5日夕方頃に更新予定です。
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