13話 八岐大蛇と戦ったら…
【八岐大蛇Lv1,000】HP13,850,000
戦いが始まり、最前列にいたプレイヤー達は盾を構えて八岐大蛇の攻撃に備える。アクマも後ろで攻撃体勢に移る。
【ホーリーライトⅤ】8345!
アクマの攻撃が命中し、僅かだがダメージを与える。他のプレイヤーも攻撃しているが、その高い防御力でほとんどの攻撃を通さなかった。前衛は八岐大蛇の攻撃で次々と噛み殺されていく。苦労して八岐大蛇のHPを1割削る事に成功した。
【大蛇吐息】
八つの頭がそれぞれ口を開く。それぞれがブレス攻撃を放った。ブレスは頭が向いている八方をすべて覆う攻撃で、それぞれの頭に火、水、風、地、聖、闇、無、毒の属性が込められていた。
アクマ達には聖なるブレスが迫っていた。ブレスに焼かれ、アクマの前にいたプレイヤーは跡形もなく消し飛んだ…。アミは盾を構え、アインハルトと赤羽はアクマとアミの後ろに隠れる。ブレスを受けたアクマのHPはイエローゾーンに割り込む。アミのHPは一気にレッドゾーンギリギリだった。すぐさまエリアヒールで全員を回復する。
状況を確認するため、辺りを見渡すと、闘技場は地獄絵図と化しといた。各ブレスは戦場に爪痕を残し、あちこちに魂が蠢き合っている。魂達は、やがて消滅する。制限時間内に復活出来なかったのだ。
アクマはホーリーライトの連打を八岐大蛇に浴びせて行く。そして、ミライの姿も見える。ミライは炎?爆発?の魔法を連発していた。他にも生き延びたパーティーがいくつもあったが、最初の数から見ると2割程度しか残って居なかった。
順調にHPを削って行くが、1割減る毎に大蛇吐息が飛んで来る。ブレスには安全地帯が存在するらしく、ブレスモーションに入った八岐大蛇の頭部と頭部の間はブレスの範囲外になっていた。安全地帯は攻撃毎に変わるので、耐えきれない者は必死に移動を繰り返している。アクマは自身の防御で、ミライはヴィオラの盾で八岐大蛇の攻撃を耐えているため、攻撃に専念している。
ミライとアクマの攻撃力はほぼ互角に見える。アクマは知らないが、ミライは連鎖爆撃というエクストラスキルの影響で1発の詠唱とMPで2発、3発と連鎖してダメージを与えている。アクマのホーリーライトも1発の攻撃で、聖、火、水、風、地と5発分のダメージを与えている。
他の攻撃要員もいるが、2人のダメージの前では霞んで見える。おかげで、HP1割削るのに30秒もかからない。安地勢は文字通り"走って"いる。もうすぐ八岐大蛇のHPが半分に差し掛かる。
※安地勢とは安全地帯に陣取っていたプレイヤーを意味する
【神威解放】
八岐大蛇の体が蒼碧から金色に変わり、ステータスが上昇する。
【大蛇吐息】
金色となった八岐大蛇の攻撃は"速い"。走って安地勢が半分程、安地にたどり着けずに消滅した。アミも耐えきれず、魂になる。アクマはギリギリレッドゾーンだった。
【エクスヒールⅤ】
【大蛇吐息】
それはほぼ同時に放たれた。
僅かにアクマの方が早く、回復が間に合う。しかし、残った安地勢は消滅していた。ミライのパーティはヴィオラが耐えきり、アリーシェの回復が間に合っていた。
【リザレクションⅤ】
アクマはアミを復活させ、攻撃に戻る。アミは大人しく、下がろうとしたが、八岐大蛇の尾に光る何かを見つけた。アミは駆け出す。
「えっ!?あ、アミさん?」
アクマは驚いたが、攻撃の手は止めない。アクマが止めたとしても、ミライは止まらないだろう。そして、もうすぐ4割のブレスが来る。
【ブレッシングⅤ】
アクマはアミに補助魔法をかける。アミの移動速度が上昇し…
【大蛇吐息】
ブレスが襲いかかる。アクマは即座に自分を回復し、アミにリザレクションをかけようとターゲットを探す。しかし、アミは見つからなかった。
「アミが見つからない!」
アクマがそう叫んだ。
「あっ!あそこに!」
赤羽が八岐大蛇の尻尾にしがみついているアミを見つけ、声を上げる。
「「なっ!?」」
アクマとアインハルトの声が重なる。そして、次の瞬間!
アミは八岐大蛇の尾から一振りの刀を取り出した。その刀が輝きを放つ。その光景に、全員の手が止まった。アミは尻尾から飛び立ち、八岐大蛇の首の一つを刀で斬りつける。
八岐大蛇の首が一つ、アミに斬られて消滅した。
ギャオオオォォーー!!
八岐大蛇が、断末魔に似た雄叫びを上げる。さらにもう1つ!
アミは八岐大蛇の首を落としていく。1つの首を落とす度に残りのHPから1/8減っていく。
【大蛇吐息】
ブレスを受けてアクマは我に返る。ヒールで回復し、攻撃を再開する。他のプレイヤー達も攻撃を再開していく。アミは気にせず、八岐大蛇をぶった斬っていく。アミの攻撃とアクマ達の攻撃でどんどんHPが減っていく。
【大蛇吐息】
残った4つの頭部からブレス攻撃が放たれる。数が減った事で、ブレスの範囲も減少する。アクマには当たらなかった。八岐大蛇はさらに2つの頭を斬られ、HPがレッドゾーンに突入した。
【破天荒】
突然の嵐がフィールドを襲った。風は吹き荒れ、雨が襲いかかる。アミも八岐大蛇から落とされた。破天荒による雨風で全員が持続ダメージを受ける。ダメージは1,000/秒…。ヒーラー泣かせである。アミやアクマはともかく、アインハルトや赤羽のHPは2,000を少し超えたぐらいのため、2秒毎に回復が必要になる。ヒールは発動後のモーションディレイで1秒を要する設定になっているので、4人分の回復は追い付かない。それに加えて…
【大蛇吐息】
八岐大蛇の攻撃も飛んでくる。しかも、範囲ブレスではなく、アクマを狙ったブレス…。もう一つの頭はミライを狙っていた。恐らく、ここまでにDPSを稼いだプレイヤーを狙ってきたものだろうと予想が付いた。ここでDPSが落ちれば討伐が困難になるからだ。
前回の金色ブレスを受けてレッドゾーンギリギリで耐えられたが、追加で受ける破天荒のダメージで倒されてしまう。秘湯めぐりの効果を考えてもマイナスになるのは見えている。
ここまでか…。アクマは目を閉じる。
アクマが倒されるのは久しぶりな気がする…。
「なんて顔してやがる」
「私達の分も頼んだよ」
気づくとアクマはブレスの射線から遠く投げ飛ばされていた。アインハルトと赤羽によって…。この状況では足手まといにしかならないと判断した2人は最善の策を打った。『アクマを生かす』という策を…。
ミライはヴィオラに守られるも、ギリギリ耐えたヴィオラが破天荒のダメージで堕ちてしまう。アリーシェはミライの回復に手一杯のようで、ヴィオラまで回らなかったようだ。
アクマは自分のHPを回復しつつ、ホーリーライトで八岐大蛇を攻撃する。ミライもエクスプロージョンに連爆を重ねて攻撃する。アミは…すでに破天荒の餌食になっていた。
2人の攻撃が炸裂し、ついに八岐大蛇は地に伏した。
【八岐大蛇討伐完了!】
討伐ボーナス:1,000pt
MVPパーティ:アクマ 1,000pt
MVP:アクマ 500pt
総防御回数:ヴィオラ 500pt
総回復量:アリーシェ 500pt
総与ダメージ:ミライ 500pt
『あなたのパーティがMVPに輝きました』
MVP特別賞
《天叢雲剣EX》Main ◇◇◇◇ 適性:Lv40 聖騎士
ATK+480 MAG+360 AllStatus+20 聖属性
物理攻撃で与えるダメージ+30%
ダメージ量ではミライに負ける結果になったが、アミの攻撃のおかげでMVPパーティはアクマに選ばれた。また、与ダメージ、非攻撃回数、回復量をトータルするとアクマがMVPに選ばれる事になった。
アクマは魂になったアミ、アインハルト、赤羽を復活させる。その姿をミライは遠くで見ていた。
「MVPだけ持っていかれるとはな…」
ミライは少し不服だったが、活躍という点では劣っていた事を認めているため、納得はしていた。それぞれが転移陣で酒場に戻る。八岐大蛇討伐の疲労感もあり、これ以上の戦意はなかった。
翌日、定期メンテナンスが行われ、イベントの終了とランキングが告げられた。
【総合ランキング】
1位:ミライ【11,650pt】
2位:アクマ【11,200pt】
3位:リュウ【9,600pt】
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4位:ガルド【8,850pt】
5位:レフト【8,200pt】
6位:流華【8,050pt】
7位:朱狼【7,900pt】
8位:40【7,750pt】
9位:蘭華【6,600pt】
10位:ハンス【6,550pt】
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今回のイベントでアクマ達は2位という結果に終わったのだった。
これでレイドボス編は終わりになります。最後まで読んで頂きありがとうございました。よろしければそのまま評価を頂けると嬉しいです。
次回からはギルド創立編になります。
ギルド創立編 第1話『ギルドについて相談したら…』は3月4日0時更新予定です。
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