ゾンビを倒してみたら…
お待たせしました!第4話のお届けです。
今回はゾンビと戦います。
初プリーストの彼にとって、どんな戦いになるのでしょうか?
お楽しみ下さい!
アクマは大聖堂に入り、祭壇奥にある初級と書かれた扉からダンジョンに進入していく。中は廃墟となった修道院をイメージしたものになっていた。手前は教会堂になっており、壊れた長椅子が置いてある。長く続く道の奥はチャペルになっており、十字架が掛けられているのが見える。
ゆっくり歩を進めると、椅子の裏から青緑がかった肌をしたゾンビが這い出て来た。ゾンビはアクティブモンスターになっており、アクマに近付いてくる。アクマはメイスを振り上げ、ゾンビを攻撃する。グギャっと短い声をあげ、ゾンビは光になっていく。
「なるほど。ここのゾンビはスライムより弱いみたいだ。戦う順序を間違えたかな」
アクマは次々と沸いてくるゾンビをメイスの一撃で粉砕していった。5匹目を倒し終わるとスキル習得の表示と共にレベルアップした。経験値も高めに設定されているようだった。
[ヒールⅠ]消費MP12 詠唱0sec
対象のHPを回復させる。※回復量はMAGに依存する。
習得条件:ゾンビを5体浄化する。
「よしっ!クエストは10体だったな。ついでにやっておこう」
そして10体のゾンビを倒し、クエスト達成の表示が出る。同時に奥のチャペルから鎧を纏ったゾンビが1体現れた。その雰囲気はまさにこのダンジョンのボスといった感じである。
「これは強そうだな…。」
フィールドの巨大スライムでさえあの強さである。スライムより弱いとしてもかなり手強い相手に間違いはなかった。しかし、アクマは回復魔法を入手し、レベルも上がっている。
「やれるだけやってみるか」
そう決心したアクマは自身に[プロテクションⅠ]をかけ、チャペルに足を踏み入れる。すると、鎧ゾンビがこちらを向き、襲い掛かって来た。先手必勝と言わんばかりにアクマはメイスを振り下ろす。メイスは鎧ゾンビの頭部に当たり、ダメージエフェクトが表示される。表示されたHPバーは僅かに減少するに留まった。そう、メイスの攻撃は物理攻撃である。つまりはSTR依存である。アクマのSTRは0に補正を足しただけで、ダメージを与えるには低すぎたのだ。
「くそっ!全然効かない?鎧だから防御が高いのか…。攻撃魔法さえあれば倒せるかもしれないのに」
鎧ゾンビは手に持っている錆びた剣で攻撃してくる。幸い巨大スライム程の攻撃力はなかったが、アクマのHPを確実に削ってくる。だが…
[ヒールⅠ]
こちらには回復手段がある。高いINTの恩恵もあり、ヒールの回復量はアクマのHPを全快できる回復量だった。これがあれば死ぬ事はない。あとは鎧ゾンビのHPを削るだけだ。
鎧ゾンビをメイスで攻撃しつつ、HPバーがレッドゾーンまて減るとヒールで回復を繰り返していく。プロテクションが切れ、受けるダメージが増加する。しかし、アクマは攻撃とヒールに集中しており、気付かない。さらに攻撃とヒールを続け、ついに鎧ゾンビのHPバーがイエローゾーンに突入する。
[パワーライズⅡ]
鎧ゾンビの攻撃が重くなる。今までの倍近くのダメージを受け、イエローゾーンで回復に切り替える。回数が増えたため、攻撃の手数が減っていく。それでも攻撃を続け、ゾンビのHPバーをレッドゾーンまで削った。瞬間…
[ゾンビスラッシュⅡ]
強烈な一撃がアクマのHPバーを吹き飛ばす。アクマは光の粒子となり、目の前が真っ白に染まった。
気が付くと、アクマはダンジョン前に転送されてた。
「はぁ、あともう一歩だったのに…。あんなのアリかよ…」
鎧ゾンビに倒されたアクマは残念そうに、そして悔しそうにしながら、呟く。あれを耐える為にVITを上げるか悩んでしまう。現実では打開策のないアクマにはどうしようもなかった。とりあえず、クエストの報告のため、クエストカウンターに向かって歩いていく。
「ゾンビ10匹の討伐お疲れ様でした。こちらが報酬になります」
NPCからクレジット、ロザリオ、スキルを受けとる。経験値も入り、レベルが上がる。
《退魔のロザリオ》Accessory
INT+3 DEX+3、不死系モンスターへの与ダメージ+10%
[アンデッドキラーⅠ]パッシブ
不死系モンスターへの与ダメージ+5%
習得条件:クエストクリア
ゾンビ討伐だけあって、装備やスキルは不死系モンスターに有利になるものばかりだ。せめて耐性があれば…と思うアクマであった。今の報告で、ゾンビ10体の討伐が消え、次のゾンビ20体の討伐がクエスト受注できる黒文字に変わっていた。報酬は不明だが、やる価値はある。クエストをこなせばレベルも上がるし、鎧ゾンビ攻略の糸口が見つかるかもしれない。
アクマは早速クエストを受注し、再び初級ダンジョンに挑む。先程と同じように教会堂エリアでゾンビを倒していく。10体目を倒すと、奥で鎧ゾンビが沸いた。鎧ゾンビのスポーン条件はこれで間違いなさそうだ。アクマは鎧ゾンビに構わず教会堂のゾンビを狩り続ける。そうしていると、初級ダンジョンの扉が開いた。
自分と同じ装備をした人が一人入って来た。その人もゾンビ討伐が目的らしく、通路の反対側でゾンビを狩り始めた。アクマも気にせずゾンビ狩りを続けた。レベルも上がり、20体目のゾンビを倒したため、報告に戻ろうとした時、ふともう一人の方を見た…。
[ヒールⅠ]
「グギャ」
癒しの光がゾンビに降り注ぎ、ゾンビは光になって消えていく。最初はメイスで殴ってたその人は5体でヒールを覚えたのか、ヒールで攻撃していたのだ。
そう、一般的に不死系に回復魔法を使うとダメージを与えるのだが、回復職の経験がないアクマは知らなかった。そのプリーストは討伐を終えたのか、扉に向かい、ダンジョンから出ていく。
「ヒールで攻撃…。そんな手があったのか。もしかしてこれなら…」
鎧ゾンビを倒せるかも。アクマはそう思い、再びチャペルに向かった。
チャペルに踏み入れると鎧ゾンビが向かってくる。魔法なら遠距離で攻撃できる!
[ヒールⅠ]
癒しの光が鎧ゾンビに降り注ぐ。そして、鎧ゾンビのHPバーを一気にイエローゾーンまで削った。INT値の高さと装備、スキルの影響でゾンビに与えるヒールダメージはかなりのものになっているようだ。
[パワーライズⅡ]
鎧ゾンビは攻撃力増加スキルを使用する。アクマは追ってくる鎧ゾンビから距離を取りながら2発目のヒールを放つ。
[ヒールⅠ]
鎧ゾンビのHPゲージがレッドゾーンで減少をやめる。そして、
[ゾンビスラッシュⅡ]
鎧ゾンビの攻撃は距離をとっているアクマには当たらず、空を切る。続けて3度目の攻撃。
[ヒールⅠ]
3度のヒールでHPを全損した鎧ゾンビは光の粒子となった。アイテムをドロップしたが収集品だった。初級ダンジョンはそのチャペルで終わっており、十字架の下に中級ダンジョンと書かれた扉があった。アクマはそのまま踵を返し、満足そうに笑みを浮かべ、クエストの報告に向かった。
クエストカウンターに着くと、先ほどのプリーストが報告を終えた所だった。ダンジョン内では暗くて見えづらかったが、その特徴的な赤髪と長髪の女性はこちらに気づくと声をかけてきた。
「あら、さっき初級に居た子だ。あなたもクエストだったのね。」
「はい。アイテムとかスキルももらえるし、外のフィールドより倒しやすかったので。」
「確かにここならヒールで戦えるから楽だよね。私は不死特化のスキルより、パーティ向けのスキルを集めたいからこれから街に行ってみようと思うんだ」
確かにヒールの使い方を知ってれば楽だったかもしれないと思ったが、口には出さなかった。アクマは噴水で会ったプリーストを思い出し、彼女から聞いた事を伝える。
「なら酒場がいいみたいですよ。掲示板とかもあって、スキルの情報も書いてあるらしいです。」
女性はアクマの言い方を不思議な顔をして首をかしげる。
「あっ。えっと。街で会った人に聞いたんです。でも僕が未成年なので酒場はちょっとやめておこうかなって。」
「ここはゲームの世界なんだからそんなの関係ないと思うんだけどなぁ。情報があるなら入ってみるのも大事だと思うよ。一人じゃ心細いならお姉さんと行ってみる?」
思わぬ誘いに戸惑いながらも、チャンスだと思ったアクマはそれに乗る。
「ありがとうございます。確かにそうですね。気にするだけ損でした。場所も分かるし、ご一緒させて下さい。」
「じゃあ決まりね。えっと…。名前聞いてなかったね。私は流華。流れる華と書いてルカよ。あなたは?」
「僕はアクマと言います。あ、アクマって言うのは悪魔って意味じゃなくて、本名からもじっただけなんです。ずっとこの名前でプレイしてたので、なんとなくですが」
中学に上がった頃、中二病を発症して自称悪魔として近所やオンラインゲームで活動していたなんてのは言えない。過去最大の黒歴史だ。しかし、アクマと言うキャラネームはその頃から使用しており、親父達がやってたゲームでも慣れ親しんだ名前だったので、今もそのまま使用している。
そうして自己紹介を済ませた二人は大聖堂を後にし、街へと移動した。外はすでに日が落ちていた。
最後まで閲覧ありがとうございます!
やっぱりゾンビにはヒール!ですね(笑)
早く他の攻撃スキルも覚えたい所ですが、それはまた今度です。さて、次回はまったり情報開示がメインになります。
第5話「酒場に入ってみたら…」は2月3日0時更新予定です。
それではまた明日!
【登場モンスター設定】
ゾンビ
HP40 ATK30 DEF0
アーマードゾンビ
HP300 ATK160 DEF40
スキル
[パワーライズⅡ]→HP50%以下でATK+20%
[ゾンビスラッシュⅡ]→HP10%以下になった時、ATK200%で攻撃