3話 酒場でガチャったら…
大聖堂ダンジョンから戻ったアクマは大聖堂を後にし、街に向かった。外はすでに日が落ちてきていた。
酒場に向かう途中にもプレイヤーが多く見られた。正式サービス開始に伴い、プレイヤーの数はかなり増えていた。さらに、今日はサービス初日ということで、20時からイベントがあるそうだ。
その他にも酒場にはログインガチャと言われる物が設置してあり、1日1回回すことができる。アクマもガチャ目当てに酒場に向かった。
酒場に入ると、それはすぐに目についた。ガチャに群がる行列…。
ある者は歓喜し、ある者は落胆する。そんな良いものがあるのかと興味を示すが、並ぶのは抵抗があった。
酒場では、ステータスバフがかかる料理が提供されるようになった。アクマはカウンターに座り、メニューを見る。
~本日のおすすめ~
牛鬼のタンシチュー 30分間VIT+10 1000G
黒蝙蝠のブラッドカクテル 30分間INT+10 1000G
翼竜の香草焼き 30分間STR+10 1000G
青鮫の刺身と海藻サラダ 30分間DEX+10 1000G
大兎の照り焼き 30分間AGI+10 1000G
…
メニューからどんな料理が出てくるか想像したアクマは、何も注文しなかった。まともに食べられそうになかったからだ。アクマは席を立ち、掲示板に向かう。
まずはお知らせ板だ。
~お知らせ~
本日20時~王都プリンス王国にてイベントを開催します。
内容については秘密です。是非"体験"して下さい。
そう書かれていた。
ヤバそうな雰囲気しか感じなかった。
情報掲示板にも新しい情報がいくつか出ていたので読んでみる。特に気になるような情報はなかった。なんならアクマしか知らない情報もいくつかある。
そうしているうちにガチャの列が減っていた。他にすることもなく、元々ガチャ目的で来たのだ。試しに並んでみる。
…
……
自分の番が来た。
【ログインガチャ】1日1回限定!
豪華ラインナップ
SR★★★★
《カード手帳》《SR武器箱》《SR衣装箱》《100,000G》
R★★★
《R武器箱》《R衣装箱》《上級ポーション10本》《10,000G》
UC★★
《UC武器箱》《UC衣装箱》《中級ポーション10本》《1000G》
C★
《C武器箱》《C衣装箱》《下級ポーション10本》《100G》
となっていた。武器箱は使用するとそのレア度の武器からランダムで1個、衣装箱は使用するとそのレア度の防具からランダムで1個、カード手帳は使用すると実装されたカードの中からランダムで1枚獲得できると説明に書いてあった。
アクマはガチャを回す。
『ガチャガチャ。ガコン!』
ガチャの取り出し口にカプセルが出てきた。列から外れたアクマはそのカプセルを開ける。
《R衣装箱》
「まあまあかな。R衣装箱って何が出るのかな」
アクマが発した言葉に周囲の視線が集まる。
「おい。レア衣装箱だって?」
「ちぇ。俺らなんか全員100Gだぜ…」
周りがざわつきだす。ログインガチャを引いた他のプレイヤーはカード手帳はもちろん、武器箱や衣装箱はほどんど出現しなかった。ましてやレアである。なので、レア以上を引いた者はほとんどが黙って酒場を去ったため、ここにいる人間はそれがさらに珍しく聞こえたのだ。
「これってそんなにレアなのか…」
テスト時代に揃えた装備のうちURが4つ、SSRが1つ、SRが2つだった。Rと聞いても、アクマにとってはそれほどレアに聞こえなかった。アイテムをイベントリにしまい、ざわつく酒場を後にした。
時刻は18時を回った所だった…。イベントまでまだ時間がある。
とりあえず、時間を見ながら街を散策する事にした。システムが追加されているため、街中も変わった所があるかもしれない。
テスト時代にあった施設はそのまま残っていた。プリンス王国の南、商人組合の正面に銀行、騎士団の正面に空港が新たに追加されていた。
まずは銀行に行ってみる。アクマがテスト時代に稼いだCはGに変換され、銀行に保管されているため、現在アクマの所持金は3000Gだった。銀行に向かう間も露店がいくつか出ていたので覗きながら進んでいく。
銀行に着くと、G以外にもアイテムを預ける事ができると知った。必要なアイテム以外はすべて預けておく。アップデートで所持限界量が追加されたため、持ちすぎると拾えなくなってしまうのだ。
銀行からGを引き出し、所持金は1,364,200Gになった。ついでに商人組合に寄って商人トークンを雇っておく。商人トークンの使用方法についてレクチャーを受けたアクマは商人組合を後にした。
今度は空港に向かってみる。プリンス騎士団はナイトが一緒にいないと中に入れないので今回もスルーだ。空港に入ってみる。空港では新たに追加された都市との飛行船が利用できるようになっていた。1回の運賃は…
「ゲッ!?10,000Gだって!」
高値だった。歩いて行く事もできるが、数時間を費やしそうだ。また、一度行った都市なら次回から半額で利用できるらしい。飛行船は1時間に1本で運行しており、15分かけて各都市を回っている。飛行船に乗ってもよかったが、イベントの時間も迫っているので、今回は乗らない事にした。
それからアクマは適当に散策しながら中央広場に戻ってきた。時刻は20時5分前だった。
…
……
………
20:00 『カラーン!カラーン!』
大聖堂に設置された大鐘楼が鳴り響く。
『正式サービス記念イベントを開催します』
街のあちらこちらに魔法陣が出現する。
アクマはこの魔法陣に見覚えがあった。そう、ネクロマンサーやクロンと戦った時のアレだ。
召喚陣から次々とモンスターが現れる。
中には炎帝竜や死霊魔術師も混ざっている。
「これはヤバいんじゃ?」
アクマはそう思ったが、モンスター達は止まらない。プレイヤー目掛けて攻撃する
しかし、プレイヤーはダメージを受けなかった。
5分程続いたモンスターの来襲は映像を見ていたかのように霧散した。
『いかがだったでしょうか?まだ見ぬモンスター達はあなたの挑戦を待ってます。ささやかではありますが、サービス開始記念として、これから21時まで、各フィールドやダンジョンにイベント限定モンスター【ヴァルキリー】が出現します。ヴァルキリーは《正式サービス記念メダル》を確定ドロップします。ステータスはLv10ボス程度ですので、パーティーで挑むも良し。ソロで挑むも良しです。ヴァルキリーは討伐されると同フィールドにリスポーンしますので、何度でも挑戦可能です。メダルは今後実装されるコンテンツに使用しますので、頑張って集めて下さいね。』
運営のアナウンスが終わると、プレイヤーが一斉に走り出した。時間は50分しかないのだ。レベルが低い者はパーティーを募集したりしている。
アクマは比較的人が少ない北に進んだ。フィールドは広いが、ダンジョンなら狭い。アクマは大聖堂ダンジョンを目指していた。
大聖堂初級ダンジョンには先客がいた。あの碧眼のプリーストのパーティーだ。アクマはそのパーティーを無視して中級へ向かう。
中級ダンジョンは通路が狭いが、広くはない。初級がダメなら中級で狩る事にしたのだ。
スケルトンをホーリーライトで倒しながら進み、ヴァルキリーを見つける。
【ホーリーライトⅣ】
アクマの攻撃はヴァルキリーにも通じた。一撃で倒し、メダルを手に入れる。
21時まで狩り続けたアクマは最終的に37体のヴァルキリーを倒した。メダルは1枚確定ドロップだったが、他にもドロップ枠があったらしく3枚落とすヴァルキリーもいた。なので、集まったメダルはテスター配布を含めて65枚になった。
アクマは大聖堂に戻ると、満足してログアウトしていくのであった。
本日の更新最後です。
サービス開始編第4話『嫌みな奴らに出会ったら…』
2月13日0時更新予定です。