現実世界でパーティーに出席したら…
本日2話目です。
今回はオフラインでの出来事になります。
序章から本編へと物語が動き出す回でもあります。
4月6日午前7時 運営チーム開発部で事件が起きた。
「どういう事だ!?」
出勤したチームメンバーの1人が、デスクに着く。モンスター管理が彼の仕事なのだが、画面を開くとアグナギウスが討伐済と書かれていたのだ。アグナギウスは事実上、討伐が出来ない設定だった。異常なHPに現在のレベルキャップや装備ではダメージすら与えられない防御力、一撃当たれば即死レベルの攻撃力、範囲攻撃にギミックなど多彩な設定を盛り込んでいた。すぐさま開発部全員に報告する。
「バカな!あいつは今のレベルキャップで倒せるような相手じゃないぞ!」
「誰だ!誰が倒したんだ!?」
「討伐者は…アクマ。えっ?プリースト!?」
「プリーストだと!?パーティー構成は?」
「それが…。パーティー情報なし…と。」
「まさか!プリーストがソロで倒したとでも言うのか!?あの炎帝をだぞ?」
「重大なバグがあるのかもしれん。全員でチェック入れるぞ。ログ確認急げ!」
「映像は残ってないのか!」
「あっ!映像ありました。モニターに出します。」
全員が画面に食い入る。アクマとアグナギウスが対峙し、爆発と分身を繰り返している。3時間に及んだ戦いはアクマの勝利で終わった。その様子を見ていたメンバーは…
「まさかこんな事が…」
「こりゃーあかんわ」
「DEF無視の爆発ダメージか。被ダメージも回復して無効化してやがる」
「プリーストが使うなんて想定してなかったしな」
「まさか分身を多量に作って爆発するなんて」
「とりあえず明日メンテナンス入れて。早急に修正が必要だ」
「どう修正するよ?」
メンバーが頭を悩ませた結果、ダメージストップを廃止し、ダメージを受けてレッドゾーンになった場合と修正し、他のボスモンスター達も同様に仕様変更をうける事になった。さらに、作成できる分身の数に上限を設定することになった。それとアグナギウスとの会話で求められた武器については本人と相談する事になった。
一方琢磨は開発部がそんな事になっているとは知らず、未だ夢の中であった。
…
……
………
琢磨が起床したのは昼を過ぎ、13時だった。
起床した琢磨は食事を注文しようとパソコンに向かった。すると、運営からメッセージが届いていた。
『メンテナンスのお知らせ』
4月7日 7:00~22:00
サーバーメンテナンスとVRマシンの機器メンテナンスを実施します。
『会食パーティーのお知らせ』
4月7日 14:00~16:00 1時間前開場
サーバーメンテナンスと平行して、テストプレイヤーの皆様と運営チームの顔合わせの機会とし、ゲームを盛り上げる意見交換の場を持ちたいと思い、会食パーティーを開催します。
『炎帝について』
炎帝討伐についての相談があります。営業時間内に開発部までお越し下さい。
営業時間7:00~20:00
琢磨は朝食と言う名の昼食を済ませ、開発部に向かった。琢磨は昨日の戦闘に使ったスキルが本来の想定を超えていたため、スキルの修正を行うと知らされた。どんな方法であれ、討伐したものは討伐した扱いとし、取得したアイテムやスキルについてはそのまま使用可能と説明された。また、炎帝の依頼?と今回の補填も兼ねて、専用武器を作成してもらえる事になった。さすがに炎帝が使ったスキルや他職のスキル使用可能にするのは困難と言われ、伝説級武器と同等の性能で承諾した。明日のメンテナンスで実装し、メッセージで送られてくる事となった。
今回の修正まで"爆裂のスカルアーマー"の使用を制限されたアクマは開発部を後にする。
「さて…。大事になってたみたいだ。今日はダイブするのやめとこう」
琢磨は実家に戻り、一夜を明かした。実家のパソコンからゲームにログインし、事の顛末をギルドで話すと爆笑されたのだった。
…
……
翌日、琢磨がVR世界にダイブを始めて7日目。今日はサーバーメンテナンスとVR機器メンテナンスの日だ。午後からは開発チームとテストプレイヤー達が参加する会食パーティーが予定されており、琢磨も参加する予定だ。
朝食は実家で済ませ、昼前に家を出た。テストルーム近くにあるホテルのレストランが会場になっており、琢磨は13時半に会場入りする。ここでもプレイヤー同士で情報のやりとりが行われていた。こういう雰囲気は苦手な琢磨は部屋の片隅にいた。
開発チームから挨拶があり、会食パーティーが始まる。琢磨は適当に料理を口にしながら聞いていた。テストプレイヤーは全部で50人いるそうだ。全員がノルマ以上にログインしたおかげで、早くも量産型のVRマシンが生産段階に入ったそうだ。全国の提携しているネットカフェやゲームセンターには、来週12日にVR機が設置されてるそうだ。
何人かの挨拶が終わると会場は開発チームとプレイヤーとの意見交換、情報共有で賑わった。その中で琢磨に声をかける人物がいた。
「やあ。アクマくん。楽しんでくれてるかな?」
開発チームの1人で昨日説明をしてくれた人だ。名前は確か…
「影山さん。昨日はありがとうございました。おかげさまで楽しんでます」
アクマが返事をする。
「君みたいなプレイヤーは貴重だからね。君の発想は我々にとって役にも立つし、脅威にもなる。テストの段階で修正できるのは助かるからね」
皮肉を言いに来たのだろうか。と思った琢磨をよそに影山が話を続ける。
「昨日の件だが、内密に頼むよ。あと、武器も出来上がったから試してみてくれ。それだけだよ」
じゃあ と手を降り、影山さんは去って行く。その後もパーティーは盛り上がり、終わりを迎えた。開発チームの1人が壇上に立つ。影山さんだ。
「えー。パーティーは楽しんで頂けたでしょうか?お時間も参りましたので、今日はこの辺でお開きにさせて頂きたいと思います。その前に皆様に重大な発表があります。我々テストチームは、現在のテストワールドをバーチャル・ワールド・オンライン(VWO)とし、4月12日から正式サービスを開始します!」
会場がどよめくが、かまわず続ける。
「現在、ご使用のキャラクターは正式サービス開始後も使用可能です。一部ステータスやスキルの変更はあるかもしれません。テスト期間は4月末までの予定でしたので、4月中は今まで通り、テストプレイと言う形でご参加下さい。5月以降ですか、希望者は当社での採用も考えおります。また、正式サービスに合わせてのアップデートがあるため、10日10時~12日12時の間はログインを停止します。アップデートは新MAPや新職業、アイテムやモンスターの追加、レベルキャップ解放などを予定していますので、お楽しみに」
こうしてパーティーは幕を下ろした。
今日もダイブはせずに琢磨は自室に戻る。明日を楽しみに、早めの就寝についたのだった。
重大な発表がありましたね。ついに正式サービス開始になります。
次回はテスト編最終話になります。
第16話「テストプレイが終わったら…」は2月11日0時更新予定です。